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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第14章:恋する乙女の末路
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再戦の誓い

 邪神討伐依頼メンバーとの食事は、色恋やバカ話を交えながら面白おかしく続いた。

 やっぱりコイツらは僕の事を死地を共に乗り越えた盟友とか、そういう感じに認識してくれてるっぽいね? 本当は全部僕の掌の上だったんですがねぇ? まあそんな風に思ってくれるのはとってもやりやすい――もとい嬉しいから、こっちもそのノリで適当に付き合ってあげよう。


「……さて。宴もたけなわという所で、そろそろ真面目な話をするか」

「そうですね。ずっとこのお二人のノリに付き合っていたら話が進みません」


 とはいえ馬鹿話は食事を終えるまで。全員が食欲を満たした所で、ようやく真面目な話が始まる事になった。

 なにせここにいる面子は現状世界で唯一、邪神との交戦を果たした奴らだからね。世界がどれだけヤバいかも一番理解してるはずだし、そりゃあずっとおふざけしてるほど余裕はないだろうよ。何かふざけてたのは僕とセレスだけな気もするけど。


「ひとまず、お前たちにこれを渡しておこう」


 そう口にしてカレンが僕らに渡してきたのは小さめの革袋。中からジャラジャラ聞こえる辺り、金属か何かが入ってそう。受け取って開けてみれば数十枚の銀貨が入ってたよ。えっ、こんなはした金渡されてもなぁ……。


「んー? ナニコレ?」

「冒険者ギルドからの情報料だ。依頼自体は失敗で成功報酬は無かったが、持ち帰った情報が情報だからな。向こうも出さざるを得なかったようだ」

「邪神には<隷器>による攻撃も効かず、また奴隷を使おうと意味が無い。正直な所、邪神の下僕の出現や奴隷の反乱があったせいで、これらの情報はほんの裏付け程度にしかなりませんがね」


 なるほど、情報料か。それならこのはした金も納得だ。だってコイツらがその情報をギルドに持ち帰る前に奴隷たちが解放されて革命を起こしたし、<隷器>の攻撃が通用しない邪神の下僕を名乗る存在も現れたからね。下僕がそうなら主人は同等かそれ以上だって事は誰でも予想できるだろうし、カレンたちが持ち帰った情報は単なる予想の裏付け程度にしかならなかったんだろうなぁ。いやぁ、すまんね?


「わー、ありがとー。出発前に何故か猛烈にお金が無くなったから助かるよ」

「何故か、って……クルスくん……」

「それはあなたが無駄に大盤振る舞いした結果なのでは……?」


 若干二名が呆れたような目を向けて来るけど、それは全部スルー。

 出発前にクズ共のやる気を出すために金貨をバラ撒いたから、正直銀貨程度じゃ足しにもならねぇ。まあ元々偽造金貨だから痛くも痒くもないんだけど、アホみたいに金をバラ撒いた奴っていうイメージはどうしようもないかぁ……結局クズ共は全滅(殲滅)して金は無駄になってるし。


「それで? <隷器>も奴隷も使えないって情報を得て、冒険者ギルドは今後どういう風に動くつもりなの?」

「……お前たちは、ピグロと融合する形になった聖人族の街の名前を知っているか?」

「うんにゃ、知らない」

「あたしも知らないや」


 本当はミザールっていう名前だって知ってるけど、ここはあえてすっとぼける。ちなみに何故知ってるかと言うと、街を融合させる位置はそれぞれの国の地図を見比べながら吟味したからだね。

 とはいえ今の僕は魔獣族の冒険者クルス。聖人族の街の名前なんか知ってたらおかしいしね。ここは無知を装いました。


「あの街の名前はミザールという。冒険者ギルドではギルマスは具体的な内容こそ口にしなかったものの、どうにもミザールの街と手を結ぶ事を考えていそうだったな。<隷器>も奴隷も使い物にならないのだから、それしか道が無いのは当然だが」

「へぇ? 敵種族との協力を考えるなんて、随分進歩的だね」


 やっぱりあの街はだいぶ進んでる、というか進まないと滅亡一直線だからか、世界全体よりも遥かに進歩的だった。

 あるいはあそこのギルマスが相当なやり手なだけか。元々僕らだって騙されて邪神討伐に向かわされたし、ついでに同盟を結ぶ時に邪魔になりそうなクズ冒険者たちの処理までさせられたからね。たぶんあの女狐ギルマスからすると、ここまでの展開は予定調和なのかもしれない。


「どうでしょうか。手を結ぶと言っても、裏切りと出し抜き前提の関係になる事請け合いでしょう。いかに相手を利用し最善のタイミングで裏切る事が出来るか、という点のみを考えているように思えましたよ」

「理由や内容がどうあれ、憎き聖人族との共闘を考えられるだけ進歩的だよ。魔獣族が今どんな計画進めてるか知ってる? アレに比べれば感動の涙を禁じ得ないほどだね」

「新たな奴隷作り、か……」

「さすがに、アレは無いかな。あんなの、酷すぎるよ……」


 僕の発言に対し、女二人が侮蔑に近い表情を浮かべる。一瞬僕に対してそんな顔してるのかと思って興奮しかけたけど、まあ僕じゃなくて魔獣族に対しての感情だろうね。

 カレンが口にした通り、今魔獣族がやってるのは魔術契約に依らない新たな奴隷作りだ。どっかのサキュバス魔将のせいで大量に元奴隷が確保出来てるから、それを加工して従順な奴隷を作ろうとしてるらしい。

 とはいえ一朝一夕でそんな事が出来る訳も無い。何せ薬物や拷問、洗脳で以て従順な奴隷を作ろうとしてるんだからね。かといってその手法を確立させるために元奴隷たちを消費するのは本末転倒という事で、今は主に(・・)同族の重犯罪者を切り刻んだり薬漬けにしたりして試行錯誤してる段階らしい。『主に』っていうのは、まあ……どこの世界も闇は深いって事で……。


「……必要性自体は、理解できます。その手法も、契約魔術が使えない以上は仕方ないのかもしれません。ですが相手は契約魔術を強制的に破棄させる魔法を世界規模で放つ事の出来る邪神です。そのような方法で新たな奴隷を創り上げたとしても、同じように処理されるのがオチでしょう」


 女二人だけでなく、ラッセル君も新たな奴隷には賛同しかねる感じだ。

 実際そういう奴隷が完成した場合、必要になればまた排除するだけだしね。『対策が出来た!』ってしばらく喜ばせた後に潰した方が色々な意味で楽しそう。


「ま、国がそんな動きをしててもピグロの街の方はまだ進歩的な考えをしてる辺り、両種族共に絶滅っていう最悪の事態だけは避けられるでしょ。あそこが最後の砦になる、っていう時点でもう最悪の展開な気がするけど」

「そうだな。是非とも国そのものが手を結ぶ方向に動いて欲しい物だ」

「僕もそう思いますが、今のままでは難しいでしょうね。恐らく聖人族の方も新たな奴隷を創り出す方向で動いているでしょうし……」


 苦い顔をするラッセル君が聖人族の動きを予想してるんだが、まあ実際その通りだ。向こうでも新たな奴隷製作方法を確立させるため、主に同族の重犯罪者相手にゲス外道な行為をしまくってるらしいよ。

 ただ聖人族の方は捕らえた元奴隷の絶対数が少ないから、そこまで力は入れてないっぽいけどね。というか王様が一刻も早く娘を助け出したくて暴走気味ならしく、それへの対処に国全体が参ってるらしい。大丈夫か、あの国……?


「動きと言えば、二人は今後どうするの? あたしとクルスくんは拠点がこの街だけど、二人は違うでしょ?」

「そうだな……ひとまず、しばらくの間はここで過ごそうと思う。武器を新調する必要もあるし、それなら首都の品揃えが一番だろうからな。ラッセルも俺と同じ意見のようだ」

「ええ。随分と暗器も失ってしまいましたし、しばらくはここで冒険者として稼ぎながら武装を整え、更なる強さを目指して邁進する予定です。それに首都にいた方が色々と情報に詳しくなれそうですからね」


 どうやらおねショタコンビもしばらく首都に滞在するらしい。邪神との戦いで<隷器>を含めて武器はほぼ全て駄目になったらしいし、それなら首都で新調するのが一番だっていうのは理解できるね。

 しかし、二人とも田舎に引っ込んだりはせず邁進するのを止めないのか。目が戦意に燃えてるし、これは邪神倒す事を諦めてませんね……。


「……いつかリベンジを果たすつもりなのかな?」

「もちろんです。あのような大敗を喫したままでは悔しくて夜も眠れません。必ず再戦を挑み、今度こそ勝利を掴みます」

「俺も同意見だ。あのような無様を晒したまま終わるつもりは毛頭無い。次こそ必ず奴を討つ」

「あたしも悔しくて堪らないし、再戦は当然だよね! 次は絶対負けないよ!」


 さすがに三人とも高ランク冒険者で死地を乗り越えた(仕込みだけど)強者たちだけはあるらしい。全員が全員、恐怖ではなく戦意を漲らせて再戦を誓ってたよ。無駄に熱い奴らだなぁ?

 ていうか、何か三人揃って僕を見てる……あ、これもしかして僕も強制参加な感じです? 邪神である僕も邪神に再戦を誓って今度こそ倒さないといけないの? 何だその手の込んだ自殺は。

 

「……そのためには、聖人族と魔獣族が手を結ばないと始まらないよね。そんな未来をみんなで祈ろうか」


 さすがに自殺する気は無いし、とりあえず良い感じの事を口にして濁しておきました。それでも三人は満足気に頷いてくれたからオッケーだ! やっぱり僕の事を信頼のおける仲間と思ってくれてるみたいだね! 単純な奴らだなぁ!




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