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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第14章:恋する乙女の末路
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ダブルデート?





 

「それじゃあ全員の生還を祝して、かんぱーい!」


 共に視線を乗り越えた三人の仲間たちとテーブルを囲み、グラスを打ち合わせて乾杯の音頭を挙げる。

 結局リアは連れて行かず、僕とセレスたちだけでお高い店の個室でお昼を楽しむ事になった。リアは泣きそうになってたけど仕方ないね。一人だけ幼女の恋人連れて場の空気を乱すわけにもいかないし。何故かセレスたちには連れて行かないのを責めるような目で見られたけど。


「ふうっ……まさか僕たち四人全員がこうして生き残るなんて、正に幸運だよねぇ」


 グイっと飲み物(ジュース)を呷った後、正に死地から生還した兵士みたいな事を口にしてみる。実際の所は全部僕の掌の上での出来事で、幸運どころか必然でしかないけどさ。それなのにこうして生還者たちで集まってしみじみ幸運を感じてるとか、愉快でたまらんね?


「正確には僕たち三人は気まぐれで見逃されただけですけどね。実力で生き残ったのはクルスさんだけでしょう」

「それでも生き残れたのは事実なんだから喜ばないと駄目だよ。あたしは心残りがあるまま死ぬ事にならなくて本当に良かったって思ってるしね」

「心残り、か……そうだな。俺はあの旅で自分自身と向き合い殻を破る事が出来た。そういう意味では、あの旅は無駄では無かったように思える」

「まあ、君ら二人は特に変わったよね……」


 セレスとカレンに視線を向けつつ、旅に出る前の姿を思い出しながら呟く。

 セレスの方は角も尻尾も翼もあるフローレス(完全無欠)な悪魔の姿をしてたのに、その姿は何と偽装。実際には翼しかないニカケの悪魔。カレンの方は露出ゼロの全身鎧でどう見ても男だったのに、その実態はまさかの女。それもワガママボディの褐色銀髪サキュバスっていう、性癖にダイレクトアタックを仕掛けてくる類の正体。

 そんな二人があの旅で偽る事を止めた結果、今もこうして真の姿を晒してるのは実に感慨深いね。

 あ、そうそう。テーブルを四人で囲んだ状態とは言ったけど、もちろん僕の隣がセレスでラッセル君の隣がカレンだよ。やはりダブルデートなのでは?


「それで? お前たちの関係は進展したのか?」

「おおっと、突っ込んできたな?」

「か、カレンさん。それはさすがに、プライベートな話なのでは……?」


 なんて思ってたら、カレンが真面目というか変わらず澄ました表情でストレートにその話題をぶち込んできた。さすがサキュバスだけあって遠慮が無いですねぇ。反面ラッセルくんは居心地悪そうに頬を赤くしてらっしゃる。


「あたし、告白しました! 今はちょっとした理由で返事待ちになってるけど、それでもかなり前向きな反応を貰えたよ!」

「躊躇無くゲロりおった」

「凄まじい度胸ですね、セレスさん……」


 そしてセレスはガタッと席を立ち、躊躇いなく報告をする始末。これにはこの場の男二人である僕とラッセル君も驚きだ。やはり恋する乙女は度胸が違う。


「ちょっとした理由? 何だそれは? 何故お前はセレスを受け入れないのだ、クルス」

「いや、受け入れたくないわけじゃないよ? ただまあ、僕もちょっと隠してる事があるから、それを伝えずに受け入れるってのは卑怯かなって。僕がその隠し事を口にする勇気が出るまで、告白の返事は待たせて貰ってるんだよ」

「……驚きました。あなたにそのような誠実な部分があったんですね」

「何だとこの野郎」


 僕の誠実を極めた発言に対して、凄い失礼な事をのたまうラッセル。さては僕には誠実さなんて欠片も無いって思ってたな? 確かにラッセルたちが知ってる情報だけでも恋人が何人もいたりするから、その時点で誠実さとは程遠いけどさぁ。


「確かに驚きだ。お前は隠し事をして罪悪感を覚えるどころか、むしろそれを相手が知らない事をほくそ笑んで楽しむ類の人種だと思っていたが」

「君ら酷すぎない? 僕は共に死地に向かった仲間ぞ?」


 更にカレンが容赦なく罵倒に近い指摘をしてくる始末。

 何が酷いって的を射た発言だって事だよね。実際コイツらが僕の正体を知らない事に何度もほくそ笑んでたし。ぶっちゃけ何一つ否定できない。


「大丈夫! あたしはクルスくんがそういう人だって知ってて好きだからね!」

「セレスすら否定してくれない……」


 挙句の果てに、セレスも僕の人間性を否定はせずに受け入れるっていう……。

 おかしいな? コイツらと過ごしてた時はそれなりに猫を被ってたはずだけど、被る猫が足りなかったんだろうか? 最悪な人間性が露呈している……。


「お前の隠し事がどんなものかは知らないが、そこまで気にする事も無いだろう。セレスならどのような秘密であれ受け入れるに違いない。あまり待たせてやるなよ」

「そうですね。立派な男では無い僕も、長く待たせるのは最低の行為だと思います」

「チッ、外野がうっせぇなぁ……」


 何か腰抜けって責められてる気分がして、不快感に舌打ちを零す。

 別に発破かけられなくたって時が来たらちゃんと話すよ。機会を窺い最高のタイミングで、ね?


「だったら、そういう君らはどうなんですかねぇ? 君らは告白とかしましたかぁ?」

「なっ!?」

「あっ、それはあたしも気になるなぁ。あたしが目を離した隙に、二人も進展があったんじゃないのー?」

「そ、それは……!」


 反撃のために、セレスと共に面白がる笑みを浮かべておねショタコンビに視線を向ける。途端に慌てて顔を赤くしながら、チラチラとカレンを見るラッセル君。純情な反応ですねぇ?


「おやおや。この反応、さては何かありましたねぇ、セレスさん?」

「そうだねそうだね。これは絶対何か良い事あったよね、クルスくぅん?」


 愉快痛快な反応に僕とセレスのテンションが急激に上がる。お互いに顔を寄せ合いニヤニヤ笑いながらラッセル君を見る。君のそのノリ嫌いじゃないよ、セレス。


「いや、残念ながら特に何も無かった。期待を裏切って悪いがな」

「ちぇっ。なーんだ、つまんない」

「ちぇっ。がっかりー」


 しかしカレンの方からそんな言葉が出てきたから、途端にテンションの下がる僕ら。

 これが実は進展あったけど隠してるってのなら余計にテンションが上がる所だけど、顔色一つ変えず涼しい表情で答えるカレンを見るにマジで何もなかったんだろうね。つっまんねー、お前もサキュバスなんだからもうちょっと頑張れよ。自分を慕ってくれるショタを襲いたくならんの?


「……人をからかって面白がるその反応。本当にあなたたちはとてもお似合いですよ。ええ」

「本当!? あたしとクルスくんはお似合いのラブラブカップル!?」

「そこまで言ってません! というか今のは皮肉です! 素直に受け取らないでください!」

「何だ、皮肉かぁ……」


 僕らの反応に酷い皮肉を返すラッセル君だけど、内容が悪かったみたいでセレスは目を輝かせて立ち上がった。そして皮肉と教えられて意気消沈して座り直す。君も大概感情の乱高下が激しいね? テーブルの下でさりげなく手を握ってあげたら、今度は再点火したみたいに眩しい笑顔を浮かべてくれたよ。単純で扱いやすいなぁ?


「しかし、何だ。本当に何も無かったの?」

「逆に聞きたいのだが、お前たちが期待していたのは一体何なのだ? 俺とラッセルが恋人同士にでもなっていて欲しかったのか?」

「もちろんそれを何段も飛ばして先に進んでても良いけど、最低限それくらいはあって欲しかったかなー?」

「………………」


 チラチラとラッセル君に視線を向けながら、そんな希望を口にする。どうやらラッセル君が日和ってたっていうか、いまいち勇気が出なかったみたいで、居心地悪そうに視線を逸らしてたよ。男らしさを求めてる癖に告白も出来ないのかぁ? んん?

 しかしおねショタでは基本的におねの方が優位なのが一般的だ。だからこんな失望するような結果になるのも仕方ないか。でもそれなら少なからずラッセル君の事を想ってるカレンの方が行動を起こしそうなものだけど――


「馬鹿を言うな。戦士としての憧れの対象としてならいざ知らず、俺のような奴がラッセルの恋愛対象になるはずがないだろう。不貞と不埒の象徴とも言えるサキュバスだぞ。真面目で誠実なラッセルがそんな奴を恋人に選ぶなどありえないだろう」

「あー……そうっすか……」


 どうやらカレンの方に問題があったらしい。自分自身を不貞と不埒の象徴とか言ってるし、ラッセル君が潔癖に近い誠実さを持ってると確信してる感じの反応だよ。こんな相手に告白とかそりゃ難しいわな? ラッセル君、何か死んだ目をしてる……。


 真面目で誠実と認識されているのは嬉しいのに、それが原因で脈無しみたいになってる悲しい状況……。

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