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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第14章:恋する乙女の末路
378/527

闇のゲーム?

⋇とても貴重なクルスによるツッコミの嵐

⋇性的描写あり



「………………」

「………………」

「この光景、少し前にも見たぞ?」


 セレスが屋敷を訪ねてきてから三日後の昼下がり。約束通りに再度来訪してきたセレスが、玄関前で再びクソ犬と睨み合い修羅場を演じてた。正しく三日前の再現としか思えない状況に、消失(バニッシュ)で姿を隠した僕も呆れてため息を零すレベル。まさかまた変な勝負でも始める気か、コイツら……?


「やはり来たね、小娘~。前回は少々不覚を取ったが、今回は油断などしない~。私も本気で行かせて貰おうじゃないか~?」

「油断していようと本気だろうと、あたしがクルスくんのお世話をした事実は揺らがないんだけどなぁ? おはようからおやすみまで。もちろん食事とか――トイレも、ね?」


 予想通りに謎の勝負が始まり、同時にセレスが勝ち誇ったような笑顔で先制攻撃を仕掛けた。僕の(肉人形の)下のお世話をしたという事実を、まるで勲章のように誇らしげにトゥーラに叩きつける。


「ぐう~っ!?」

「『ぐう~っ!?』じゃないわ。何ダメージ受けてんだ、コイツ。こっちがダメージ受けたい気分だわ」


 その言葉に対し、まるで重いストレートを受けたかのようにのけ反るトゥーラ。どうやら今の一撃は着実にトゥーラのライフポイントを削ったみたいだ。闇のゲームかな、これ?


「むっ、倒れない……」

「フフフ~。確かに、その点では私は負けている~。それは事実として受け止めよ~。だ~が~! 私には他で勝利できている部分が山ほどあ~る~! 例えば――主の初めてのセックスの相手は、この私だという事とかね~!」

「くうっ!?」

「『くうっ!?』じゃない。何でお前もこの茶番に付き合ってるんだ」


 トゥーラの反撃に対し、セレスは突風に耐えるかの如く両腕で顔を覆う。こっちもこっちでダメージを受けたんだろうか。

 というか肉体関係を持たない相手に肉体関係を持ってる事でマウントを取るとか、相当大人げないな、トゥーラ。でも何か楽しそうに見えるのは気のせいだろうか……?


「ふふっ、今の一撃はさすがに効いたよ……でも、あたしは知ってるよ。他ならぬクルスくんが話してくれたもん。それは嘘だね!」

「な、何ぃ~っ!?」


 と、ここでセレスが反撃。余裕の笑みを浮かべ、トゥーラの発言を嘘と断じた。これには攻撃を仕掛けた側も驚愕の面持ちだ。

 ところで何で僕は実況解説してるんだろうね? 帰って良い?


「クルスくんは言ってた。自分の初めては二人の獣人に無理やりに奪われたって。つまり、あなたの言ってる事は半分しか正しくない!」

「ぐおぉ~っ!?」

「言った事が完全に真実じゃないと逆にダメージ受けるの? これどういう勝負?」


 ズビッと指を突き付けながら叫ぶセレスに対し、痛い所を突かれたトゥーラは逆にダメージを受けた様にのけ反る。ただのマウント合戦かと思いきや、微妙に裁判染みてるのがちょっと笑える。

 ちなみにセレスの言う通り、正確には僕の童貞を奪ったのはコイツではなくキラだからね。まあそれ以外は大体トゥーラに奪われたんだが……あっ、思い出してちょっと泣きそうになってきた……。


「今度はこっちの番! あたしは、クルスくんにお姫様抱っこしてもらった!」

「ぐはぁ~っ!?」


 高らかに言い放つセレスと、大ダメージを受けたかのようにマジで吹き飛ぶトゥーラ。さすがに自分から跳んだんだよね、それ? ていうかセレスをお姫様抱っこなんてしたっけ?


「う、嘘だ、そんな事~……! 私だって、まだ主にそんな美味しい真似をされた事は~……!」

「本当だよ! そう、あれは野営の最中にエクス・マキナの襲撃があった時の事。クルスくんは空から降ってきたエクス・マキナに気付いて、同じテントの中に寝てたあたしを抱えて華麗に脱出! テントが潰される前にあたしを助け出してくれたんだ!」

「うぐあぁぁ~っ!?」


 明らかに真実としか思えない詳細な具体例を出され、トゥーラは追加ダメージを受ける。

 何だろ、一回嘘だと否定した事が裏目に出たんだろうか。相手の発言を虚偽だと確定させる事が出来ればダメージ無効化、出来なければ追加ダメージって感じ? 何だこの勝負。あとセレスさん、さりげなく同じテント内に寝泊まりしてた情報も加えてダメージの底上げをしてますね。狡猾な……。


「ふ、フフフ……なかなか、やるじゃないか~。それならば、こちらも奥義を切らせて貰うとしよ~。悪く思わないでくれたまえ~?」

「奥義……! これはさすがのあたしもマズイ予感……!」

「君ら本当は仲良いでしょ?」


 ゆらりと立ち上がるトゥーラと、緊張の面持ちで一歩後退るセレス。

 何か良く分からん勝負してるけど、考えてみれば他のメンツじゃあこんな事にはならないだろうなぁ。セレスは僕に対してまともな愛情を抱いてるし、トゥーラも抱いた経緯とかを脇に置けば愛情もあるし深い方だ。もしかするとお互いシンパシーを感じてるからこそ、こんな変な勝負をしてるのかもしれない。


「君も恐らく知っているだろうが、主は基本的に意地悪で冷酷だ~。しかし、自分の女である私たちには時折優しい一面を見せてくれるんだよ~」

「っ……! そ、それくらい、あたしにだって見せてくれるもん! だからその程度じゃ効かないよ!」

「クックック~。話は最後まで聞きたまえ~?」


 余裕綽々の殴りたくなる笑顔で、噛みつくセレスを嗜めるトゥーラ。今までやられてたのが嘘みたいな余裕だ。ライフ四千スタートならもう五百以下なくらいに追い詰められてたと思うんだけどねぇ。


「数いる女たちの中でも、主は私に対して特別な感情を見せてくれる~! 蹴って殴ってどついて電流を流して、これでもかというほど粗雑に扱ってくれる~! 他の女にはしない私に対してだけの扱い~! これこそが特別の証、そして正妻の証だ~!」

「きゃあっ!!」

「『きゃあっ!!』じゃないよ。信じちゃったの?」


 DVを受けてるという事実を、まるで誇らしいものであるかのよう言い放つマゾのクソ犬。そして痛烈なダメージを受けたかの如く、今度はセレスが吹き飛び地面に尻餅をつく。

 最後の発言だけ信憑性は欠片も無いけど、それ以外は嘘を言ってないのがまた性質悪いよね。粗雑に扱ってるのは事実だし、他の女にしないって事も事実だし。確かにそこを考えると特別と言えなくも無い。

 でもさすがにこんな玄関前で『DVされてます! めっちゃ嬉しい!』なんて叫ばれるのは世間体がよろしくない。トゥーラが世間から変態として見られるのはどうでも良いけど、僕がDVするクソ野郎として見られるのはちょっと問題アリかな?


「ううっ、そんな……それは確かに、特別かも……」

「トドメに具体例を挙げてあげよ~! 例えば夜のベッドでの事~! 主は私の服を剥ぎ取り魔法で後ろ手に拘束した後、まるで獲物を貪る獣のような激しさで私のおっ――ぱあああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 段々内容が過激になってきてさすがにこれ以上言わせるのはヤバそうだったから、容赦なく回し蹴りを放ってトゥーラの発言をキャンセルさせる。一人でエキサイトしてて隙だらけだったトゥーラは面白いくらいに吹き飛び、そのまま虹色の花が咲き誇る花壇の中に――あっ、ヤベッ。


「ぐはあぁ~っ!?」


 ちょっと落下地点がよろしく無かったから、追いかけてそのまま追撃。再度の蹴りで花壇に落ちないようにトゥーラの身体を弾き飛ばす。花壇が滅茶苦茶になるとうちの神話生物が激おこだからね。まあ僕のやった事ならしゅんとする程度で済ませてくれるだろうけど。

 ちなみにまさかの追撃を貰えた事で、トゥーラはいっそ惚れ惚れするような満面の笑みを浮かべてたよ。このドMがよぉ……。


「そこまでだこの変態。玄関先で変な事を叫ぶんじゃない」


 マゾ犬が花壇の向こうに消えてったのを確認してから、消失(バニッシュ)を解除して姿を現す。

 解除するシーン見せて良いの? って思われそうだけど、まあ大丈夫だと思う。ちょうど屋敷にも消えるメイドがいるし、これ自体は別にそこまで難しい事ではない。そして何より、姿を現した僕を見て感極まったように表情を緩め、目尻に涙を溜めてくセレスがそんなどうでも良い事を気にするとは思えないしね。


「……クルスくんっ!!」


 予想通り、セレスは何も気にせず泣きながら僕に抱き着いてきた。あ~、めっちゃ良い匂いする~。着やせしてる膨らみが胸に当たってるぅ~。


「久しぶり、セレス。寂しかった?」

「うん……うん! 寂しかった! ずっとずっと……会いたかったよ、クルスくん!」


 なんて嫌らしい事を考えてる事実はおくびにも出さず、セレスの背に両腕を回して抱き返す。そしたらもうセレスはゾクゾクするくらい泣きじゃくりながら強く抱き返してきたよ。傍目から見れば、まるで引き裂かれた恋人同士が数年越しに感動の再会を果たしたみたいな光景に見えるだろうなぁ。僕の方はだいぶ心が冷めてるっていうか、押し倒して無茶苦茶にしたいなぁって思ってるけど。

 とにもかくにも、今の僕はまだ一般冒険者クルス。なので子供みたいに泣きじゃくるセレスが落ち着くまで、ただずっと抱きしめて頭を撫でてあげたよ。僕ったら何て出来る男なんだろうねぇ?

 決闘者用のBGMを聞きながら書いてたお話です。感動の再会で涙が出て来るなー?

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