表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第13章:最強の敵
373/527

閑話:クソ犬とデート2

⋇前回書き忘れましたがこれも時が消し飛んだ三ヵ月の間の話

⋇性的描写あり




「むふふ~、これで主との夜の営みが更に充実したものになるね~?」

「わざわざレジに僕を連れて行きやがって。ド変態がよぉ……」


 SMショップを後にした僕らは、再び寄り添いながら(一方的にくっつかれながら)街中を歩いてた。

 信じられる? トゥーラの奴、エログッズを大量に抱え込んだ上で僕をレジに連れてったんだぞ? まるでエログッズを女の子に買わせ、その様子を横から眺めて楽しむ鬼畜みたいな絵面になったけど、実際は立場が全く逆だからね。無駄に良い笑顔で嬉々としてエログッズの会計をするアホ女に僕が辱められてる状態だから。

 全く、デート始まってすぐにそれって初っ端から飛ばしてんなぁ。先行き不安で堪らないの僕だけ?


「おっと~、そろそろお昼だね~? 昼食はどうするんだい、主~?」

「そうだねぇ。お前を連れてレストランとかに入ると途中で叩き出されそうだし、そこら辺で買い食いで良いんじゃない?」


 どうせこの調子だと昼食の最中も『このソーセージは主のに似てるね~!』とか言いながらベロベロ舐め回すんでしょ? 知ってる。営業妨害だし普通に下品。だからレストランには行かんぞ、絶対。


「なるほど~、それもなかなか良いねぇ~? 私たちの熱烈なラブラブっぷりを公衆の面前で見せつけるというわけか~」

「ごめん、一瞬耳が遠くなった。誰と誰が熱烈でラブラブだって?」


 とか思ってたらトゥーラは勝手かつ強引なポジティブ解釈で買い食いに賛同する。ラブラブって何? 僕とクソ犬が? ハハッ、冗談が上手いなぁ?


「おお~! ちょうどあそこに屋台があるよ~! お昼はあそこで買ったもので済ませよ~!」

「聞けやクソ犬。僕をツッコミ役にするな」


 フリーダムなクソ犬は僕のツッコミを完全にスルー。かといって存在を無視してるわけでもなく、腕を引いて屋台へと引っ張って行く始末。やっぱり僕はまともな方だから、真にイカれてる奴が相手だとツッコミに回るしか無いんだろうか?

 それはともかく、屋台で焼き鳥に近い感じの肉の串焼きをそれなりに購入した僕らは、近くにあったベンチに二人並んで腰を下ろした。飲み物が無いから僕の魔法でちょちょいとお茶を創り出し、水筒に入れてお供にする。魔法ってマジ便利ぃ……。


「もぐもぐ……うむ。ベルが作る主の世界の料理には負けるが、これもなかなか美味いね~?」

「そうだね。この世界独自の料理もわりとバカに出来ないなぁ。やっぱどこの世界でも人間が食に貪欲なのは変わらないんだなって」


 そして二人で串焼きをもぐもぐと食らう。謎の甘辛いソースが良い感じに食欲を刺激してとても美味しい。これ単体で食べられる絶妙なラインを攻めてるね。もうちょっと味が濃かったら白米が必要になりそうだ。おにぎり片手に食べるのも良いかもしれんなぁ……。


「はい、主~。あ~ん♪」


 とか思ってたら、トゥーラが僕にスッと串焼きを差し出してくる。正確にはわざわざ串から肉を外し、タレで指を汚しながら手掴みで。コイツ、そこまでして僕に直に『あーん』をしたいのか……!


「………………」

「あ~ん♪」


 無言で呆れの視線を向ける僕に対し、満面の笑みで催促してくるトゥーラ。僕の冷めた視線など何のその、全く意に介した様子が無い。欲望に正直過ぎだろ、コイツ。

 なので諦めた僕は、差し出されるままそのお肉を口に含み――


「むふふ、主が食べてくれ――あ~!? 主、違う~!? それは私の指だ~!?」


 トゥーラの手をガシっと掴み、そのまま指ごとガシガシ齧る。負けるのはちょっと悔しいからね。ソースがねっとりついてたので美味しかったです。さすがに食いちぎりはしなかったが歯型はたっぷりのこしてやったぞ。ざまあみろ。


「何だ、指ごと食いちぎってくれって事じゃなかったのか」

「そんなわけがないだろ~? まあしっかり美味しく食べてくれるのならやぶさかでもないが~……」

「美味しく食うなら良いのかよ……」


 相変わらずのヤバさに、反撃をしたつもりなのにやはりドン引きしてしまう。

 ていうか今思い出したけど、ここ普通に公衆の面前なんだよね。周囲から見ればそんな場所で美少女(見た目は)に『あーん♡』をされ、あまつさえその指をしゃぶりまくった僕の方がヤバい奴に見えているのでは……?


「うわ~、主の歯形がしっかりと刻まれてしまった~……」


 何か居心地悪くなってきた僕の隣で、盛大に歯型がついた自身の指を見つめて途方に暮れた感じの声を零すトゥーラ。がっつり反撃したから、親指と人差し指が歯型だらけな上に、僕の唾液でベチョベチョだった。

 さすがのトゥーラもこれには嫌そうな顔をして――あれ、してねぇ。ていうか何か、ニヤニヤしてない?


「……じゅるり」

「………………」

「……いただきま~すっ!!」

「させるか変態め! 絶対やると思ったぞ!」


 唾液塗れの自分の指をしゃぶろうとしたド級の変態に対し、その腕を掴んで力ずくで押さえる! チクショウこの変態、無敵か!? 

 ていうか無駄に力が強いし、油断するとこっちの力をするりと受け流されそうになる! これだからパワー系かつ技巧派の変態は手に負えない!


「うう~、離してくれ主~! 主がしゃぶりつき歯型を残した指を私もしゃぶる事で、主との熱烈な間接キスをするんだ~!」

「百歩譲ってそれは良いとして、公衆の面前ではやめろ! 皆見てるから!」


 身体能力を馬鹿みたいに強化して力技で動きを抑え込もうとする僕と、超絶技巧を駆使して力を流そうとする馬鹿(トゥーラ)

 クソが! 通りがかりの一般人たちが困惑気味の目で見てやがる! こんな変態犬を飼ってる事を知られたら、この国でコツコツ積み上げてきた僕のイメージと世間体がぶっ壊れる!


「じゃあ、代わりに今キスしてくれるかい~?」

「お前、さては最初からそれが目的だったな……?」


 僕が周囲を気にし始めた辺りで、途端にトゥーラは素直に抵抗をやめる。

 どうやら最初から僕のキスをねだる作戦だったっぽいな? 何が性質悪いって、アホみたいな攻防によって人目を集めた後にキスさせようとしてるのがね……いやまあ、唾液塗れの指をしゃぶる変態の姿を見せるよりは、仲睦まじい恋人的な姿を見せた方がマシか……。


「んっ――」


 ヤケクソ――じゃなくて、やむを得ず、トゥーラの首の後ろに手をやりグイっと引き寄せて唇を奪う。あとその間に魔法で唾液塗れの指を洗浄してやり、両方を得るという浅ましい行為だけは阻止する。

 唇を重ねた途端、馬鹿みたいに犬尻尾がぶんぶん振られるんだから、喜んでるのは明白だ。そしてそれを理解したのは周囲で見てた一般人も同じ。図らずも見せつける形になったのが本当に腹立つ。どうしてこんなクソ犬と相思相愛みたいな光景を衆人環視の中でやらないといけないの? 絶対これ罰ゲームじゃない?


「……むふふっ、主とのデ~トでキスまでしてしまった~♪」


 反面トゥーラは最高にご機嫌。朱色に染まった両頬に手を当て、はしゃぎ回るようにぶんぶんと身体を振り乱して喜びを表現してる。その喜びは僕とのデートでキスもしたから、あるいは一見ラブラブに見える光景を一般人に見せつけてるからか……いずれにせよ、コイツこそ人目の無い無人島デートにするべきだったかもしれないな……。






 どんどんと後悔が積み重なっていく中、次に僕らが訪れたのはだだっ広い公園。運動神経や身体能力が高い獣人が走り回れるように配慮してるのか、普通に野球とかサッカーできそうなくらい広い草原みたいな空間が広がってるよ。

 え、そこでトゥーラに乗馬ならぬ乗犬して走らせてるのかって? さすがの僕も公共の場でそこまで高尚なプレイをする性癖は無いよ。でもまあ、当たらずとも遠からずって感じかな……。


「さあ、さあ! 早く投げてくれ、主~!」


 数メートルほど離れた所に立つトゥーラが、瞳を輝かせ尻尾をブンブン振りながらそうせがんでくる。まるでボール遊びしてる最中のワンコみたいでしょ? 実際そんな感じだよ。


「………………」


 僕はそれを冷ややかに見つめながら、望まれるまま手の中の円盤状の遊び道具――フリスビーを投げる。

 別に力はそこまで込めてないけど、フリスビーはかなりの速度で空を裂き遥か彼方へとかっ跳んでく。投げナイフとかの投具を扱う技術もコピーしたのが原因かな?


「うおおぉぉぉ~! 待てえぇぇぇ~!」


 そしてそれを喜色満面で追いかけるトゥーラ。さすがに四足歩行ではないけど、誰が見ても十中八九、犬としか思えない様子と行動だよ。信じられるか? これデート中の光景なんだぜ?


「キャ~ッチ! 取った! 取ったよ、主~!」


 最後に水面から飛び跳ねるイルカの如き無駄に華麗なジャンプを決めて、フリスビーをしっかりキャッチするトゥーラ。そうしてこれでもかとキャッチした事をアピールしながら、僕の下に一直線に駆けてくる。何も悩みなんて無さそうな満面の笑みでね。


「見て、アレ。獣人をまるで犬みたいに……」

「最低な奴だな。近付かないようにしよう。ゲスが移る」

「ママー、あのおにーちゃんたち、どうしてワンちゃんみたいに遊んでるのー?」

「しっ! 見ちゃいけません!」


 そんな僕らを――主に僕を見つめて陰口を叩くのは、通りすがりの公園利用者たち。

 忘れがちだけど獣人を動物扱いするのは本来NGだからね。それなのにこんな場所で堂々と犬とやるみたいにフリスビーで遊んでたら、そりゃあ冷たい視線と陰口くらい貰うわ。むしろ因縁つけられて殴られても文句言えないまである。


「主、もう一回! もう一回だ~っ!」


 そこまでの状況に陥ってないのは、恐らく他ならぬトゥーラが滅茶苦茶楽しそうに会心の笑みを浮かべてるせい。お前そんな純真な笑顔が出来たんだ、ってくらいに輝く笑顔を浮かべてるよ。そりゃあまともな奴ならこの笑顔を見て邪魔する事なんて出来ないだろうね。


「あのさ、お前本当は僕の事嫌いだったりしない?」


 とはいえ僕は他ならぬトゥーラのせいで針の筵みたいな状況に追い込まれてるわけなので、心中とっても複雑だ。まさか日頃から塩対応で暴力振るってる恨みか?


「ん~? 何を言っているんだい、主~? 私は主の事が死ぬほど大好きに決まっているじゃないか~」

「だったら何で僕を公衆の面前で差別主義者みたいに仕立て上げてるわけ? 道行く人の視線が痛すぎるんだが?」

「他人の視線など気にしてはいけないよ~。確かに獣人を動物扱いする行為は差別的だという風潮はあるが、当人が楽しくやっているのだから問題無いじゃないか~?」

「僕は楽しくないけどな!」


 思わず僕がツッコミに回ってしまうこの状況よ。やはりボケは大ボケに喰われる運命なのか。チクショウ、僕はこのアホと違ってまだ恥じらいとかが捨てきれないからなぁ……。


「どうせ主の正体は差別主義者よりも酷いわけだし、今更気にする必要は無いだろ~? さあさ、主! もう一度投げてくれ~!」

「チクショウ、この畜生めっ!」

「ワフ~ン! 待て待て~!」


 やり場のない怒りをぶちまけるように、渾身の力を込めてフリスビーを投擲。クソ犬はご機嫌にそれを追いかけて行き、僕への冷たい視線と影口が増える一方。文句とか蔑みはそこのクソ犬に言ってくれ!


「――ワンワン!」

「あ~!? 何だお前は~!? それは私のフリスビーだぞ~!」


 なんて思ってたら突如として中型犬が颯爽と現れ、トゥーラがキャッチしようとしたフリスビーを横からかっ攫った。首輪とリードついてるし、多分散歩中に逃げてきたやつだな。これにはクソ犬も心底おこで、強引にフリスビーを奪おうとしてたよ。


「グルルル……!」

「え~い、離せ~! 離さんか~!」

「……頭痛くなってきた」


 そして人の尊厳的なものを放り捨て、フリスビーを咥えた中型犬と綱引きしてるアホの姿。あまりにもみっともない姿に頭痛がしてきたよ。僕はアレとデートしてるってマジ? 誰かアイツいらない? 欲しければあげるよ?


「ワンワン! ワンッ!」

「ぐあ~っ!? この犬畜生が~っ!」


 挙句の果てに綱引きに負け、涙目で這い蹲って悔しがる始末。犬畜生はお前定期。犬獣人の癖に犬に負けてどうすんだ――って思ったけど、トゥーラが本気でやればフリスビーは犬の首ごと取れただろうし、あんなアホでもちゃんとその辺を考えて手加減とかしてるんだなって。

 ていうかそういう事考えられる脳があるなら、何故に主であるこの僕をいたたまれない状況に追い込んでる……?


「ワンワンッ! ワフワフッ!」

「こら~!? 今は私と主が遊んでいるんだぞ~!?」


 中型犬は何故か僕の下に走ってくると、足元にフリスビーをポトっと落として一声鳴いてきた。尻尾フリフリしながら周囲を駆け回り、『早く投げて! 早く投げて!』って感じにはしゃいでる。何でだろ、クソ犬(トゥーラ)だとウザいのに普通の犬だと純粋に愛らしく思える件。


「クソ犬に比べればこの子の方がお利口で遥かに可愛いな。よーし、お前の名前はチョビ――いや、ティンダロスだ! 投げるぞー、ティンダロス? そーれっ!」

「ワンワンッ!」

「えぇ~いっ! ポッと出の犬畜生になんか負けるか~!」


 中型犬ことティンダロスのためにフリスビーを投げたのに、今度はトゥーラが大人げない空中二段ジャンプを決めて奪い取る。そして着地後、ティンダロスに襲い掛かられて再びの綱引き。もうこれデートっていうより、犬の散歩とかドッグランで遊んでるとかそっち系だよね。段々何もかもが馬鹿らしくなってきた……。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ