お褒めの言葉
⋇性的描写あり
⋇黒い方の女神様
「……おや、ここは?」
ふと気が付くと、僕は広大な自然の中に立ってた。どこまでも続く草原と、遠くの方に立ち並ぶ雄大な山々。澄み渡る青い空とそこにかかる綺麗な虹。心地の良い日差しと風が吹いてるせいもあって、正直ここで草のベッドに横たわって眠りたい感じ。
だけど記憶を辿ると、僕はこの場所で意識を取り戻す前にすでに寝てた。つまりここは夢の中、女神様との逢瀬の場って事なんだけど……明らかにいつもの白一色の空間とは違うな?
「……何だろ、模様替えでもしたのか――なぁっ!?」
そんな疑問を抱いて首を傾げた瞬間、突如として僕の側頭部に何かが突き刺さった。
クソ痛い! 何!? めっちゃ深く突き刺さってるんですけど!? あっ、しかもそのまま中で蠢いてるぅ!?
「あっあっあっ――あっ、思い出した思い出した! 思い出したからもうやめてあっあっあっ!」
そのままグチョグチョと脳みそをかき回された結果、奪われてた記憶が不意に蘇る。
そうそう、ここは女神様との逢瀬の場ではあるけど、僕のポンコツ駄女神様ことナーちゃんの事じゃない。ナーちゃんなんかよりも有能で神聖に溢れ、段違いでヤバい女神様との逢瀬の場だ。
「ふふふー。クルスくん、お久しぶりぃ?」
頭から異物――もとい指を引き抜かれた僕が脳みそと血飛沫を撒き散らしながら振り向くと、そこには予想通りデュアリィ様が朗らかに笑いながら立ってた。たおやかな指を僕の血と脳の欠片に汚した状態でね。会った瞬間からのこのインパクトよ。
まあそんな猟奇的なインパクトも、ロリ巨乳で身体に薄布巻き付けただけみたいなエッチな恰好の前には霞んで見えるけどな! 相変わらず素晴らしい物をお持ちで!
「うん、お久しぶり。でもいきなり脳みそかき回すのはやめて欲しいなぁ?」
「えー? だってクルスくんに記憶を戻さないといけないでしょー? じゃなきゃ会う度に色々説明し直しだから凄く面倒だよぉ」
「もっと記憶の戻し方が他にもあると思うんですがね……」
僕の提案にデュアリィ様は頬を膨らませて不満顔になりつつ、指を振って汚れを払う。物理的に記憶を奪って物理的に戻しに来るのはたぶん趣味なんだろうなぁ。無意味に頭の中弄ってやたらに変な声上げさせてくるし。
とりあえず放っておいても治療はしてくれなさそうなので、頭の傷は自分で治癒しました。記憶が戻ったのに頭自体は軽くなったような気がするな。色々零れたせいか……。
「そんな事より、クルスくん凄いねぇ! あの化物を倒したんだぁ!」
「あー、ミカエルの事? あれ倒したって言って良いのかなぁ……?」
褒めてくれるデュアリィ様には悪いが、僕自身はアレを倒したとは言いたくない。もちろん殺し切る事がベストだったし第一目標だったけど、実際はどう足掻いても無理だったんだもん。それで第二目標として無力化、その方法として宇宙の果てへの追放を選んだってわけ。つまりは代替案に過ぎない。ぶっちゃけかなり悔しい。
「良いんじゃないかなぁ? どうせ戻ってこれないし、仮に戻ってきたとしてもその頃には星が寿命を迎えてるよぉ。クルスくんの勝ち逃げだねぇ?」
「んー、確かにそういう意味では倒したと言えるのか。いや、アイツの戒律的には勝ち逃げで倒した扱いになるのかな? 案外完璧な倒し方だったのでは?」
ミカエルの戒律は『何度倒れようと最後には必ず勝利する』だったかな? だとするとアイツは何度手酷く敗北しようが、最後の戦闘の機会さえ残っていれば『必ず勝利する』っていう戒律を満たすチャンスはゼロではない。実際昔のベルとの戦いでも決着がつかないままだったにも拘わらず、戒律破りにはなってないっぽいし。
しかし僕が存命の間に星に帰って来れないなら話は変わる。僕との再戦の機会が失われるから、実質僕が死んだ瞬間にミカエルは戒律破り確定だ。時間差があるとはいえ致命的な一撃をぶつけられるんだし、やっぱりこれはデュアリィ様の言う通り僕の勝ち逃げかもしれない。
「そうだよー、クルスくん凄いねぇ。頑張ったねぇ? 偉い偉い」
「わー、ありがとー」
ニコニコ微笑みながら背伸びして手を伸ばし、頭を撫でてくれるデュアリィ様。
まるで純真な子供のような見事な演技と、角度の問題でロリ巨乳の谷間がくっきり見える見事な光景に、僕もどうしようもなく表情を緩ませちゃったよ。グヘヘ。
「……ところで気になったんだけど、ミカエルは本当に何だったの? 最初からああいう設定で生み出されてたの?」
「うーん、どうなんだろうねぇ? 大天使を創ったのは聖人族が魔物に滅ぼされそうになった時だから、慌てたせいでナーちゃんが調整をミスしたのかもしれないねぇ? 少なくとも私が渡したマニュアルには、あんな化物になるような要素はなかったもん」
「つまりマジで発生したバグの節があるのか……」
冗談みたいな発生理由に、さしもの僕も言葉に詰まる。
確か駄女神ことナーちゃんは今回の世界を創る際、デュアリィ様からそのまま使えるファンタジー世界種族マニュアルみたいなものを貰ってたはず。さすがに人間に関してはマニュアルいらないだろうからさておき、大天使を創る際には使用したと思われる。
とはいえ駄女神様の事だから人間が滅びそうになってる事に慌て、マニュアルをそのまま使わずミカエルに能力を盛った可能性は大いに存在するし、何か間違った使い方して変な風に出来上がった可能性も否定できないのが辛い所。まあいずれにせよ駄女神ナーちゃんが全て悪いって事にしよう。悪い子め!
「あんなのが生まれたから、ベルフェゴールの方は釣り合いが取れるような感じにマニュアルを調整してあげたんだぁ。あの子にとっては災難だよねぇ?」
「あ、そんな事情があったんだ。マジ災難だな、ベル……」
そしてここで明らかになる衝撃の事実。何とベルちゃんがあんな風(化物)に創られたのは、対を成す存在であるミカエルが化物染みてたからだったらしい。確かにそうしないと戦力的な釣り合いが取れないから仕方ないけど、ベルが完全に理不尽なとばっちり食らってる件について。
偶然そういう風に生まれちゃったならともかく、神様の不手際のせいで醜い化け物として作らざるを得なかったとか酷すぎん? これさすがにベル本人には言えない情報だな? 怒りのあまり世界を滅ぼされても困るし……。
「どっちも化物なのに、片方は完全に排除してもう片方はメイドにしちゃうなんて、クルスくんったら本当に凄いねぇ? 偉い偉い」
そうして再び僕の頭をナデナデしてくるデュアリィ様。上から胸の谷間がガッツリ見えるせいで、僕はムラムラしそうです。できれば息子の頭もナデナデしてくれない?
「ありがとう。それじゃあそんな偉い僕に、ご褒美としてその見事なおっぱい揉ませて貰っても良いかな?」
「図に乗るなよ、低能な劣等種風情が」
「大変申し訳ありませんでした。女神デュアリィ様のご機嫌を損ねてしまった事、深く反省させて頂きます」
ちょっと欲望が口から零れ出た瞬間、一気にデュアリィ様の口調も表情も氷点下へと変貌する。もちろん即座に伏して謝罪したよ。さすがに冗談が過ぎたかもしれんね? 揉みたいのは掛け値なしの本音だけど。
「……なんてね、ふふふー。冗談だよー、冗談。別にそれくらいなら良いよー?」
土下座から恐る恐る上を見上げると、さっきまでと同じくにっこり微笑んでるデュアリィ様のご尊顔が目に入る。さっき『低能な劣等種風情』って口走ったとは思えないくらい可愛くて穏やかな笑顔だ。中身は真っ黒だろうけど。
「……じゃあ、失礼して」
「ここで怖気づかずに攻めの姿勢を崩さないクルスくん、嫌いじゃないよー?」
一瞬の躊躇いを経て、僕はデュアリィ様の巨乳に手を伸ばす。
本当に触って良いのかとか、命が惜しくないのかとか、相手は駄女神様と違って中身暗黒の真なる邪神だけど大丈夫かとか、考えた事は色々あった。
だけど目の前にいるのは中身を脇に置けば、信じられないくらいに可愛らしく神々しいロリ女神様。その胸元で大いに存在を主張する、薄布に包まれた白くて大きな果実の魅惑には抗えなかったんだ。原初の人間が禁じられた知恵の実を食べてしまったように、同じ人間である僕はその業には逆らえない。僕はこの果実を揉む! それこそが人間だ!
「あんっ♡」
どうやら賭けには勝ったようで、特に肉体や魂を消し飛ばされる事も無く果実を鷲掴みにする事が出来た。同時にわざとらしいエッチな声を上げるデュアリィ様だけど、それでも僕のアダムはしっかり反応しました。
「おお、すっげぇ……」
そのまま両手で丹念に揉み回し、感触にどっぷり浸ってく。
さすがは数多の世界を管理する有能な女神様と言うべきか。信徒たちの妄想――じゃなくて信仰によって形作られる肉体は、外見だけでなく触り心地も完璧だった。柔らかさ、弾力、反発感、全てにおいて最高水準で筆舌に尽くしがたい。正に揉むために生まれてきたような胸をしていらっしゃる。数多くの信徒たちの理想が詰まった胸なんだから当然と言えば当然か。
「なかなか上手だねぇ? 胸のおっきな子ばっかり狙って強姦してるだけはあるかなぁ?」
「おっと、やっぱりその辺も知ってたか。さては覗いてたな? エッチな女神様め」
「やぁん♡」
お仕置きするみたいにちょっと強めにお胸を握ってあげると、途端にデュアリィ様はわざとらしくもエッチな声を出す。妙に楽しそうですね、全く……。
えっ? 巨乳の子ばっかり狙って強姦してるって何だよ、って? そのままの意味ですが? 何故か分からないけど、僕の女たちは基本みんな胸が控えめだからね。たまにはデカいのを貪りたくなるし、そうなるとその辺の巨乳の子ばっかり襲う事になるってわけ。地下のサキュバスをヤろうとするとリアが闇を漂わせるし……。
「ふふっ。君に中出しされて絶望の表情を浮かべる女の子たち、とーっても可愛かったよねぇ?」
「このレズめ。でも分かる。大いに分かる」
ここにきて初めて、本当に快感を覚えたような恍惚の表情を浮かべるデュアリィ様。寝取られ好きのレズリョナラーを自称するのは伊達じゃない反応だ。やっぱ僕に揉まれても全然感じてないな、これ……。
「――はい、おしまい! サービスは終了だよぉ?」
「むぅ、残念……」
そして揉み始めてから大体一分くらい。サービスタイムは終わりを迎えた。
できればデュアリィ様を僕の手で鳴かせたい所だったけど、さすがに相手はマジの邪神だけはあったね。いや、僕もまだまだ修行が足りないって事か。もっと行き摺りの巨乳の子を犯して辱めて経験値を溜めないと……。
「そんなに残念がるなら、あの大天使に手を出しちゃえば良いのにぃ。三千年物の処女のおっきなおっぱいだよぉ? 滅茶苦茶にしたらきっと凄い達成感があるよぉ?」
ただデュアリィ様は残念がる僕の反応をもっと揉みたがってるんだと勘違いしたっぽい。ニコニコ笑顔でハニエルを犯せば良いって提案してきたよ。やっぱ頭イっちゃってるな、この女神様……何故だろう、凄い親近感が湧いてくるな?
「それは何度も考えてるんだけどさ、まかり間違ってそのせいで僕に激しい憎悪でも抱かれたら困るんだよ。平和な世界の維持っていう役目を放り捨ててまで僕に復讐しようとしてくるかもしれないからね。あと単純に今のハニエルは反応薄そうだしつまらなさそう。もっと無様に泣き叫んで悲鳴を上げて欲しい」
「あ~、分かる~。大いに分かる~」
泣き叫び悲鳴を上げる女の子が大好きっていう発言に、デュアリィ様は大いに賛同を示してくれた。僕らは性癖で繋がった仲間だもんな! 分かってくれると思ったぜ!
それはさておき、ハニエルをヤらないのはそういう理由があったりする。僕に犯される事で強い憎しみを抱き、全てを投げ捨てて復讐に走る可能性がゼロとは言えないからね。別にハニエル程度が歯向かってきた所でどうとでもなるけど、僕への復讐のために平和になった世界を壊されたら堪らないじゃん?
というかどうせヤってもすぐに心が壊れてレイプ目でマグロになりそうな気もするし、正直つまらなさそう。だったら危険を冒してハニエルを犯すよりは、そこらの巨乳を強姦する方がコスパが良いし楽しいわけよ。最悪見た目だけハニエルに変身させて犯すっていう反則的な手段もあるし。
まあそんなこんなで、僕とデュアリィ様はその後しばらく性癖トークで盛り上がった。あとはナーちゃんの現状とかのお話かな? 素直なナーちゃんは僕に唆された通り目と耳を塞ぐために、現在デュアリィ様のお家にお邪魔してるらしい。お家っていうか神域っていうか、管理する領域みたいな感じだけどね。常日頃から罪悪感に苦しむナーちゃんの姿が見られるって事で、デュアリィ様は大変喜んでるっぽい。胸を揉ませてくれたのはそのお礼もあったそうで。
しかし、良いなぁ……僕もナーちゃんが苦しんでる光景見たい……。
「――あっ、そろそろ時間かなぁ?」
たっぷりと実りのある会話をした後、不意にデュアリィ様がそんな言葉を口にした。
女神様(駄女神様含む)との夢での逢瀬を重ねたおかげで、それがどういう意味の発言なのかは考えなくても分かる。夢の時間の終わりが迫っていて、僕の目覚めが近いって事だ。それはつまり、再び僕の頭を指が貫くという事!
「――逆転障壁! 歪曲領域! 時間停止領域! 次元位相領域!」
即座にその場から飛び退き、考えはしたけど使う機会がどこにもなかった防御魔法を大量に展開する。
外側から順に、触れたものの運動ベクトルを逆転し、そのまま反射するようにお返しする障壁。領域内の空間を切り刻むような形で滅茶苦茶に歪ませ、侵入したものがその歪んだ空間に従ってひしゃげて壊れ引き千切れる防御。領域内に侵入した瞬間、時間停止という絶対の理で凍り付く防御。そして最後の防御は領域内の存在を一時的に別次元に移すことで、現在の次元との相互作用を完全に絶つ究極の防御。
過剰すぎて恐らく現世では使う機会が一切無い防御魔法の数々! これなら簡単に僕の頭を指で貫けまい!
「はい、ドーン!」
「ぐはぁ!?」
なんて都合の良い事は無かった! 一切合切無視して普通に僕の側頭部に指を突き込んできやがった! チクショウ!
「ごめんね~? 神としての権能があるから、そんな魔法を幾ら重ねても防御なんてできないんだぁ」
そして始まる脳みそグチュグチュ。頭の深い所が指でかき混ぜられ弄られていく身の毛もよだつ感触が僕を襲う。
まあ女神様に対して単なる魔法を使ってもこうなるのは当然だよねー? それが予想出来ててもどうにもならなかったのは、こうして別れる度にその記憶を奪われるから対策を用意する時間が無いせい。かといって脳みそに指突っ込まれた状態じゃあ思考もイマイチ働かなくて対策の立てようがない。
「あっあっあっ! 悔しい、次こそはぁ……!」
デュアリィ様の本性に関しての記憶が奪われ、同時に意識が薄れてく。次こそは何とかこの一撃を防いでみたいけど、あれだけやって駄目ならたぶん何やっても駄目だろうなぁ……もっと根本的に別の方法を考えるべき?
なんて事を碌に働かない頭で考えながら、僕の意識は闇の中に落ちて行った――
というわけで、第13章は終了です。一番目障りな敵を宇宙に不法投棄したお話でした。次回からも普通に隔日投稿で続きます。
次章は遂に恋する乙女が帰ってくる……のですが、その前にクソ犬の閑話を挟みます。誰得?