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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第13章:最強の敵
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確かな結果

 両種族のお姫様二人を全世界同時火刑拷問生中継してから一週間。あの時に宣言した通り、しばしの余裕を与えてからのエクス・マキナによる襲撃を再開した。

 今回は今まで散々利用してた奴隷たちがおらず、むしろその奴隷たちが解放されて暴れ回った事による被害の穴埋めが済んでない。だけど僕がそれを憐れんで手心を加えてあげる必要性は薄いし、<隷器>だってあるからいつも通りの量のエクス・マキナを世界中にバラ撒いたよ。


『うおおぉぉぉぉぉ! くたばりやがれ、この化物共めえぇぇぇっ!』

『<隷器>が壊れた! 誰か変わってくれ!』

『任せろ! 俺の双剣が火を噴くぜ!』


 大丈夫そうか少し不安だったけど、大体の人らはエクス・マキナとの戦いにも慣れてきてる感じだから、問題無く撃退できてる感じだ。予想に反して小さな村や集落とかも、元々奴隷がいないからか何とか<隷器>で凌いでる感じ。それでも現在進行形で幾つか滅びた場所はあるけどね。コラテラル・ダメージ。


「いつも通りの<隷器>無双。まあ一週間程度で同盟結んだりするわけないよねー。知ってた」


 明確にヤバい状況に追い込まれてるはずなのに、以前と何も変わりない様子を繰り広げる両種族を目の当たりにして、僕はソファーに深く背を預けてため息を零す。

 今、僕は屋敷のリビングでクソ犬(トゥーラ)魔術狂い(レーン)を左右に置いて世界中の監視を手伝わせつつ、エクス・マキナを適宜必要な場所に追加派遣してる。何でこの二人なのかと言うと、二人とも頭が良い方だし並列作業も可能な器用さがあるからだね。幾つものモニターを同時に監視するってのは意外と目や頭が疲れるみたいで、ロリコンビにやらせた時には滅茶苦茶疲れてたんだよ。

 その点この二人なら大丈夫だろうし、何よりレーンなら苦も無くやるだろうって信頼感がある。そして僕が信頼を寄せてる所を見せれば、嫉妬したトゥーラも頑張ってくれる。あとで一撫でくらいすればそれだけで満足してくれそうだし、最高の人選だと思う。

 えっ、キラちゃんにはやらせないのかって? 逆に聞くけどアイツにできると思う? 途中で放り出して昼寝してそう。


「長きに渡る因縁を断ち切り手を結ぶには、七日程度では到底足りないさ。聖人族の国では一時同盟も考えられてはいたようだが、王がそれを頑なに拒絶しているし、何より裏切りが前提の酷い物のようだ。この様子ではしばらく現状維持が続くだろうね」

「魔獣族の方は魔将リリスのせいで結構な人数の元奴隷が無傷で残ったからね~。それらを魔法とは異なる方法で奴隷に加工できれば、聖人族よりは余裕があるんじゃないか~い? いずれにせよ、二つの種族が手を取り合うのはまだまだ先の話さ~」


 二人はしっかり監視をしつつも、世界平和への現状や懸念を口にして会話もしてくれるからより良い感じ。ロリコンビの時も最初は会話してくれたんだけど、途中からわりといっぱいいっぱいな所あったし、ミニスちゃんなんか『今集中してるから話しかけんなクソ野郎』ってオーラを全身から放ってたもん……。


「……やっぱり、どっちの種族もそういう方法で新しく奴隷を創り上げる事に邁進するんだろうなぁ。相変わらず救いようがないな?」


 契約魔術を使えなくなったから『苦痛を与え洗脳を重ねて無理やりに奴隷にしよう』っていう案が示し合わせたように両種族で出てるの本当に酷い。

 どっちでもまだ計画段階で実行に移ってはいないけど、それだって倫理的な問題とかを考えてるわけじゃないし。単純に自我や思考力が無くなると魔法が使えなくなるから、いかにしてそれらへの悪影響を減らしつつ都合の良い道具にするかって事を構想してるってわけ。こっちは世界を平和にするために頑張ってるっていうのに、こういう話聞くと定期的に滅ぼしたくなるわ。


「――とはいえ、それは世界レベルの話。縮小されたモデルケースの方だと、なかなか良い感じになってるじゃん?」


 でも今の僕は愚かな両種族を許してやれるくらいに機嫌が良かった。何故なら世界のモデルケース兼邪神討伐の拠点の街として用意したあの街では、とても好ましい光景が見られてるからだ。僕はそれを両隣の二人に見せるように、モニターを大きくして更に音声を付け加えた。


『おい、ケダモノ! 俺らは向こうの奴らを片付けるぞ!』

『指図すんなモヤシ野郎! テメェに言われなくたって分かってんだよ!』

『攻撃が遅いぞ、このクソ悪魔! もっと効率良く殲滅できないのか! そのデカい角に頭の養分を吸われてるのか!?』

『うっさいわね、クソ天使! あんたの動きが悪すぎるせいでこっちもやりにくいのよ! その鳥みたいな翼引っこ抜いて手羽先にしてやるわよ!?』


 モニターに映ってるのは、あの街でエクス・マキナと闘う奴らの光景。大抵の奴らは自分の街の側で<隷器>を手にして戦ってるけど、チラホラとどちらの街も関係なく行動してる奴らが見受けられた。

 人間と獣人の野郎コンビや、天使の少年と悪魔の少女のコンビが、罵り合い敵意を向け合いながらも確かに協力してエクス・マキナを撃退してる。今にも殴り合いを始めそうなくらいにピリピリしてるけど、それでも協力が出来てるだけ褒めてあげたいくらいだよ。


「……ふむ。今にも瓦解しそうな一触即発の雰囲気を感じるが、ギリギリの所でかろうじて協力体制を取っている。それも一人や二人ではなく、相応の数の聖人族と魔獣族が。正しく驚きの光景だね」

「ここは世界で一番危ない場所だからね~。大量のエクス・マキナが数日おきに襲撃してくる上、邪神の城に一番近い場所だ~。下手に敵種族と争って戦力を疲弊させてしまえば、早々に街が滅亡しかねない~。争っている暇なんてどこにも無いんだろ~」


 この光景にはレーンも感嘆の声を零し、トゥーラも満足気に笑ってる。

 何せ僕らが無理難題に挑んで頑張ってる中で、ようやくほんの少しずつその成果が出てきてるんだ。それが例え意図的に創り上げた街一つだけの事とはいえ、苦労した僕らとしては喜びもひとしおだよ。いつも噛みついてくるペットの犬がようやくお手を覚えたような嬉しさがあるね?


「まずはこの光景が世界の至る所で見られるようになると良いんだけど、まだそれは難しいだろうなぁ。そもそも人の行き来が無いし」

「国境の砦は意味を成さなくなったが、だからといって敵国への侵入が歓迎されるわけではないからね。まあ諜報員の類はそれなりに行き来しているようだが……」

「国が大々的に同盟を決定して発表しない限りは無理だろうね~。それでも敵国を無防備に歩いていたら闇討ちされそうだが~」


 この街だけが大いに進んでる理由は、やっぱり世界では種族の行き来が無いっていうのが一番大きな要因だと思う。無理やりに街と街を半分ずつくっつけて、なおかつ定期的に脅威を与える事で敵種族同士がお隣さんっていう状況を強制的に維持させてるからね。この時点で世界に比べれば状態が二段階も三段階も進んでる。

 一応は元・国境の砦もお隣さん同士っていう状態ではあるんだけど、あっちは何か睨み合いみたいな状態になってるんだよなぁ。やっぱり魔将と大天使がいるってのが大きいんだろうか。


「まだ人の行き来は難しいよねぇ。じゃあやっぱりジワジワと脅威を与えて行って、徹底的に危機感を覚えさせるくらいしか今出来る事は無さそうだ。その加減がなかなか難しいんだけどね……」


 やり過ぎると滅びちゃう。でも加減しすぎると脅威は与えられない。その塩梅はかなり難しい。今更ながら女神様がどれだけの無茶ぶりをしてきたかが分かるってもんだよ。一体誰だぁ? 女神様を手に入れられるからって安請け合いしたエロ男はよぉ?


「……とはいえ、難しくてもやらないわけにはいかないね。せっかくかなり良い感じの奴らも見かけるようになってきたんだし」


 そこで僕は再度モニターを弄り、二人にかなり見どころのある奴らをピックアップして見せる。

 何と驚くべき事に、さっきの奴らよりも進んでる奴ら三組くらいいるんだよ。もうあの街だけ残して他は全て焼き払っても良くない? 駄目?


『フッ、獣人が身体能力に優れているというのはデマだったか。私に追いつく事も出来ないようではな』

『な、何だと! 俺だってやれるんだぞ! 見てろよぉ!』


 モニターの中には、さっきの奴らよりも明らかに距離が近い奴らが三組いた。

 例えば小馬鹿にするような顔をした聖人族の女剣士と、怒りに顔を真っ赤に染めた犬獣人の少年。女剣士の方はかなり動きも良くて歴戦の勇士って感じがするのに、犬獣人の少年の方はそれについていけてない。身体能力で聖人族よりも優れてるはずの獣人が負けてる事実に女剣士は優越感を覚え、犬獣人の少年は悔しさに歯噛みしてる。そして二人はお互いを見下し見上げながらも、れっきとした協力関係を築いてエクス・マキナを次々と倒してく。自分が相手より上だと証明するために競いながら。

 明らかに敵意を向け合ってる二人だけど、それでも前の奴らに比べれば信じられないくらいにマシな方。少なくとも殺意は向け合ってないし、純粋な実力で相手を上回ってやるって感じのストイックさが感じられるね。


『あなた聖人族にしてはなかなかやるじゃない♡ どう? これが終わったら私のペットにならない? 毎晩可愛がってあげるわよ♡』

『くたばれ、痴女め。野良犬にでも股を開いていろ』


 他に目に付くのは、この中で一番物理的に距離が近いコンビ。長い金髪のサキュバスに背後から抱き着かれた天使の青年だ。一見とっても仲良さそうに見える二人だけどサキュバス側は良く分からんし、青年側は背中に大質量の膨らみが押し付けられてるのにすっげぇ冷ややかな顔して塩対応。ひょっとしてロリ派?

 そんな青年がサキュバスを振り払わないのは、曲がりなりにも協力してくれてるから。後は自分を守ってくれてるからだろうねぇ。どうにも二人とも魔術師っぽいんだけど、青年の方は実力に難があるのか自分の身が疎かになるっぽい。さっきから金髪サキュバスが自分と青年を魔法で守りつつ攻撃に参加してるし。

 だからこそ青年は安心して攻撃に全リソースを費やせるし、金髪サキュバスの攻撃もあるからエクス・マキナを素早く処理できる。どちらかと言えば自分が足手纏いなのを助けて貰ってる自覚があるからこそ、引っ付いてくるサキュバスを振り払う事が出来ないんでしょうねぇ。意外と義理堅いんだろうか。


『どうしたオッサン。もうへばったのか? そんな体力じゃベッドでも碌に動けねぇだろ。可哀そうになぁ……』

『うっせ、バーカ! 獣人基準で物を考えるのやめろ! こちとらもうピークは過ぎて右肩下がりなんだぞ!』


 最後に目に付くのは、男勝りな女獣人と良い年した聖人族のオッサン。コイツらはこの中で一番敵意の向け合いが少ない感じ、かつ慣れた様子で協力してエクス・マキナを処理して回ってる。ちょっと片方だいぶ息切れしてる感じだけど。

 ていうかコイツら、何か見た事ある気がする……もしかして、一番最初に協力姿勢を見せたあの時のコンビかな? はえー、まだコンビ続行してたんだ……。


「やはり荒療治は効果があるようだね。少々一方的な感情が多い気もするが、比較的良好な関係を築いている者たちがこれほど出てくるとは……」

「逆に言えば、極限状態に追い込まれてようやく変わりつつある愚か者たちだがね~。まあ他に先駆けて変わりつつある点だけを除けば、非常に好印象かな~」

「だねぇ。この調子でみんなどんどん敵種族と仲良くしてくれたら嬉しいな」


 とにもかくにも、比較的仲が良く見える敵種族コンビが現れ始めたのは実に嬉しい事だ。この三組には是非とも先駆けとして頑張ってほしいし、あわよくば後続のためにもっと深い関係になって欲しいもんだね。そしたらこの街限定になるだろうとはいえ、きっと続く奴らもぽつぽつと増えてくるはずだし。

 そのためにもやっぱり定期的に脅威を与えないといけないし、次からは更にエクス・マキナの数を増やそうっと! 小さな村や集落がまた幾つも滅びるだろうけど、どうせ地図にも載らないような場所だし問題無いでしょ。世界平和のための礎となるのだ……!


「ではそのお手本を示すために~、私とベッドで仲良くしようじゃないか主――あふん!」


 身を乗り出して僕の膝に乗ってきたトゥーラに、ノータイムでビンタをかまして床に落とす。コイツ隙あらばこんな調子だからなぁ。

 とはいえ、お手本かぁ……場合によってはそれもアリかもしれないな? 夜の営み生中継とかは絶対しないけど、もっと別の内容で敵種族と仲良くするお手本を示すのは良い考えだと思う。まあ今はまだその時じゃないし、またしばらくは脅威を与えつつ経過観察と行こう。あんまり手がかかるようだと焼き払って滅ぼしちゃうぞ?

 融合した街だけは何とも良い感じになってきている模様。しかしそれでもまだまだ。

 なお、次話でこの章は最後です。

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