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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第13章:最強の敵
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残念吸血鬼

⋇性的描写あり



「さてさて、バールはどうしてるかな?」


 ハニエルにちょっかいを出した結果、最終的にミニスに尻を蹴られながら部屋から追い出された可哀そうな僕は、次は朝食の席に顔を出さなかったもう一人の元に向かってた。

 真祖とはいえ吸血鬼という事で日光が駄目なバールだけど、僕の魔法によって日光は克服してるからその辺は問題無い。ただやっぱり日陰の種族って事であんまり日の光に当たるのは好きじゃないらしく、バールのお部屋は地下に用意する事になった。

 とはいえすでに僕の屋敷は地下四階まで作ってあるし、さすがにこれ以上階層を増やすと街の下に広がる某魔法陣があった空間に到達する問題がある。なのでバールのお部屋も地下二階、ダミー用の牢屋がある階層を横に広げる事で増築しました。諸事情あって広い方が良いみたいだし、地下二階はかなり広大な居住スペースみたいな感じになってるよ。屋敷の下にもう一つ屋敷がある感じ?


「――いらっしゃいませ、クルス様。ご主人様に何かご用でしょうか」


 そんな地下二階のバール用居住スペースに入った所、近くにいたメイド服の女の子が話しかけてくる。

 一見美少女に見える女の子だけど、肌は病的に白くて表情も無く、声は感情を失ったようにあまりにも平坦。でもそれも当然。この子は僕の魔法によって生きたまま無理やり動く死体にされた、バールのメイドにして肉奴隷の一人だ。こういうのが何人もいるから、居住スペースを広く作る必要があったわけです。全く、良い趣味してるよね?


「朝食の席に来なかったからちょっと様子を見にね。やっぱりまだ寝てる?」

「いいえ、つい先ほどお目覚めになりました。今は朝の支度に励んでいる所です」

「やっぱり寝坊だったか。まあ今まで夜型だったし仕方ないよね」


 集団生活をするにあたって、生活リズムをみんなに合わせるのはなかなかに骨だ。まして活動時間が真逆とも言える吸血鬼ならなおさらだね。魔法で睡眠時間とかそういうのは調節できなくもないけど、さすがに生活リズムを逆転させる魔法なんてのはちょっと抽象的過ぎて使えないし。睡眠不足くらいなら何とかなるけどさ。

 まあ頑張ればできそうなんだけど、そんな頑張りをしてまで新しい魔法を創り出すくらいなら、当人に頑張ってリズムを整えて貰った方が早いし手間も無い。そんなわけで生活リズムの調整を頑張って貰う事、そして朝食と夕食はなるべく全員で取る事、っていう決まりを改めて伝えるために、僕はバールの寝室へと向かった。内装や構造はアロガンザにあるバールの城とほとんど変わりないから、さすがに迷わず辿り着けるよ。そもそも増築した時にしっかり構造を頭に入れる必要があったしね。


「おーい、バールくーん? もしもしー?」


 バールの寝室の前に辿り着いた僕は、扉をノックして声をかける。でも別段返事がないし、物音も聞こえてこない。扉が厚めだから聞こえてないんだろうか? それとももしかして二度寝でもしてらっしゃる? しゃあない、入るか。


「おーい、寝坊助吸血鬼。朝がやってきた――あっ、ごめん」


 そして扉を開け――即座に閉めた。

 何故って? いやぁ、ちょっとベッドの上の光景がヤバくてさ。まさか朝からあんな事してるとは思わなかったわ。整った顔してやる事やってますねぇ?


「……4Pか。朝からお盛んだなぁ?」


 動く死体同然のメイドたちとの淫らな4P。朝からもの凄い光景を見た僕は、微かな悔しさと敗北感を覚えて壁を背にして蹲る。

 だって僕まだ3Pまでしか経験できてないんだもん。4P以上になると女たち側の相性的な問題が強烈に影響するし、何より僕の女たちの三人くらい(犬猫とサキュバス)はケダモノ染みてるからね。リアもベッドの上だと犬猫に負けず劣らず体力凄いし……。

 とりあえず4Pのメンツを考えるなら……ケダモノ三匹を相手にすると僕が死ぬし、かといってケダモノ二匹でも辛いだろうから無し。となると、リアとミニスとレーンが妥当か? ミニスちゃんも絶望的に相性が悪い犬猫と違って、この二人なら抵抗は少ないだろうし。

 良し、その内僕も4Pに挑戦してみよう。リアと一緒にミニスちゃんとカルナちゃんをひぃひぃ言わせて楽しむんだ……。







「……すまんな。少々見苦しい物を見せたか」


 しばらくして扉が開かれ、ちゃんと服を着た状態のバールが部屋に迎えてくれた。栗の花みたいな臭いが漂ってそうで正直入るのは嫌だったけど、何かお香でも焚いてるみたいで甘い匂いがするだけだったよ。ちゃんと気遣いが出来てて嬉しいね?

 ただ臭いに配慮出来るなら、相手にしてた死体メイドたちを下がらせるとかしても良いんじゃない? 何三人とも当たり前みたいに給仕させてんの。そういうプレイか?


「見苦しいっていうか猟奇的っていうか……もしかしてあれがモーニングルーチンなの?」

「そういうわけではない。だが煩わしいしがらみから解放され、お前に住処も用意された事で、我も少々羽目を外したくなってな。魅力的なメイドたちを用意していたのも相まって、つい抑えられなくなってしまったのだ。許せ」

「別に怒っちゃいないけどさ、ああいう事は普段からやってたんじゃないの? 腐っても魔将でしょ?」


 バールは一つの街を治める領主にして、魔獣族を守護する使命を帯びて二千年くらい前に生み出された魔将。だから実際には魔王よりも強いし、権力も同等かそれ以上でしょ。

 そんな奴なら自分の城の中で乱交パーティ開いたって、誰も文句は言わないと思うけどねぇ。某サキュバス・クイーンとか結構頻繁にそういう事してるみたいだし……。


「幾ら魔将とて、死体に性的興奮を催すという趣味嗜好を公言出来る訳もあるまい。まして同族の死体すらその対象なのだぞ。人目を忍び、戦々恐々としながらでしか行えないに決まっているだろう」

「実家暮らしでするオナニーかな?」


 どうやらバールは意外と世間体を気にする性質の様子。野郎の癖にちょっと頬を赤らめてるよ。とてもさっきゾンビもどきとの4Pをしていた異常者とは思えない反応だね。

 でも考えてみれば城でお話した時も、死体は氷漬けにして空間収納に入れてたか。周囲の目を気にしてビクビクしながら、たまに引っ張り出して見抜きでもしてたのかなぁ? 何かどんどんバールのキャラが情けなくなってく。金髪赤目のイケメン吸血鬼なのに……。


「まあ、そういう事なら今の状況は夢みたいな状況だよね。誰にはばかる事も無く、好きなだけ死体を貪れるし」

「死肉を食らうハゲタカのような言い方はやめろ。愛し合うと言え」

「ハゲタカの方がなんぼかマシだと思うんだよなぁ……」


 少なくともハゲタカはバールと違って死体を凌辱しない。愛し合うとか抜かしてるけど、ゾンビもどきたちのその愛は植え付けられたもので本当の感情じゃないし。どう考えても生存のために食事をしてるだけのハゲタカの方が高潔な件。


「それはさておき、プレイや性癖についてはとやかく言わないよ。ただ僕の屋敷でのルールとして、朝晩は出来る限り皆で食事するっていうルールがあるから、それは守ってほしいな」

「了解した。だが我は吸血鬼故、貴様らとは少々生活に時間のズレがある。それを修正するのに五日ほど貰うぞ」

「……本音は?」

「もう少し、何者にも邪魔されぬ時間を過ごしたい」

「正直でよろしい。じゃあ一週間は免除してあげるよ」

「やはりお前は話が分かる。感謝するぞ、クルスよ」

「何言ってんだ、僕らは仲間だろ? 色々な意味で」

「フッ、そうだったな」


 僕らはガシッと固い握手を交わしつつ、不敵な笑みを向け合う。

 せっかく実家暮らしで周囲に気を配りながらの自慰から解放されて、存分に羽目を外す事が出来るようになったんだ。同じ男としてはそれを祝福こそすれ、邪魔する理由はどこにも無い。だから僕は好きなだけ羽目を外す事を許可してあげた。でも握手した手は後で念入りに洗っておこう。


「そうだ、話は変わるけど実はちょっと聞きたい事があったんだ。あのサキュバス・クイーンの魔将、リリスについてなんだけどさ。アイツ魅了とか魅惑とかその手の力を持ってる感じだよね? 何で教えてくれなかったの?」


 しかしそれはそれとして、別の事情でちょっとバールを詰めなきゃいけない。なので僕はブラザーに向ける感情を一旦脇に置き、笑いながらも威圧しつつそれを尋ねた。

 それというのも、リリスのせいで予想外の数の奴隷が生き残ってしまったのが理由だ。元々多少生き残るのは想定の範囲内だったとはいえ、それでも残る奴隷の数はほんの僅かになるはずだった。戦力として扱えるほどは残らないくらいにね。ただ結果として、リリスのせいで魔獣族側にはかなりの数の奴隷が残った。しかも契約で縛られてるわけでもないのに大人しくしてるから困るんだよ。

 こんな状況になったのは、リリスが他者を魅了して従わせる力を持っている事を知らなかったから。そしてそんな力を持ってる事を確実に知ってそうなのは、リリスと同期である魔将の面々。ハブられてたベルちゃんは仕方ないとして、バールは確実に知ってたはず。にも拘らず、どうしてそういう能力があるって事を事前に教えてくれなかったのかなぁ?


「それは……」


 笑顔を維持しながらも目で訴えると、バールはスッと視線を逸らして言い淀む。

 目ぇ逸らしてんじゃねぇぶん殴るぞ、って一瞬思ったけど、何かバールの表情がもの凄い複雑で首を傾げちゃったよ。具体的にはこう、死んだ目をしてるって言うか、黒歴史を思い浮かべて放心してるっていうか、そんな感じ? メイドゾンビたちの方がまだ目が輝いてるように見えるレベル。

 これは黙っていた事を悔やんでるとかそういう感じじゃなくて、自分の過去を振り返って精神ダメージを受けてるような感じだな。あれ? これってもしかして……。


「もしかして、それでからかわれた事ある感じ?」

「……解答を拒否する」

「その答えはほぼ肯定みたいなものなんだよなぁ……」


 どうやらバールくん、リリスにその魅了の力で大いにからかわれた事があるみたい。死んだ目をして回答を拒否してきたよ。

 これは酷い。僕みたいに逆レイプされた奴は早々いねぇだろって思ったけど、同士がまさかの身内にいた件。この時点でもう情報出さなかった事とかどうでもよくなってきたよ。やはり君は僕のブラザー……!


「うん。お前の悲惨な過去に免じて、今回黙ってた事は不問にしてあげるよ。下手すると僕以上に酷い目にあってそうだし」

「……すまない」


 親しみを込めて肩をポンポン叩くと、絞り出すような謝罪の言葉が返ってきた。自分の黒歴史を暴露しろって言ってるようなもんだし、黙るのも仕方ないよ。うん。

 とはいえすでに半ばゲロったようなもの。ここは少し我慢してもらって、リリスの情報を教えて貰うとしよう。


「で、アレの能力の詳細ってどんな感じ?」

「そう、だな……我も全てを知っているわけではないが、効果としてはまるで運命の相手に感じるような深い愛情を無理やりに抱かされる。発動条件は恐らくリリスに目視される事。そしてリリスの姿をこちらが目視する事の二つだろう。単純だが実に強力な力だ」


 あまり気乗りしない様子ながらも、一度黙ってた負い目があるせいか素直に教えてくれるバール。何か痛々しい表情してるけど気にしない。

 しかし、お互いに目を合わせるとかじゃなくて姿を認識する事が条件なのか……条件かなりゆるゆるだな? その癖効果は運命の相手に抱くレベルの愛情を無理やりに抱かされる鬼畜具合。サキュバス・クイーンの名に恥じない恐ろしい力だ。これは僕も食らったらヤバいかもね……。


「ふーむ。持続時間はどれくらい?」

「分からん。が、少なくとも年単位で持続するのは確実だ。そして奴と身体を重ねると、その偽りの愛情は消滅する。我の知る範囲でそれ以外に影響を脱する方法は思い当たらん」

「なるほどね。それってつまり、バール君は……」


 魅了の力でからかわれたらしいバール君が、身体を重ねる以外の魅了を解除する方法を知らない。それはつまり、知っている方法で解除したというわけで……。


「………………」

「……ドンマイ」


 哀愁漂う儚い表情で視線を逸らすバールに対し、僕はその肩をポンポンと叩いて慰めてあげた。

 何か思った以上に残念で、なおかつ僕に似た所があるよね、コイツ……。



 初登場時の威厳はどこ……?

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