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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第12章:呪われた旅路

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指導者の育成



 お姫様二人を攫ってきた僕は、一旦屋敷に戻ってから邪神城の玉座の間へと転移した。そのままいつものように死んでる二人と無理やりに一方的な契約を結んだ後、治療を施して傷一つない死体へと戻す。死体愛好家のバールが欲しがりそうだけど、コイツらには役目があるからあげることはできないんだ。ごめんな?

 そんなわけで色々と準備を終えた後、遂に二人へ蘇生の魔法を施して無理やり現世に引き戻した。僕は邪神の姿へと変身して、玉座に余裕たっぷりに腰かけた状態で待機だ。


「ん……」

「ここ、は……?」


 しばらくして二人は目を覚まし、ぼうっとした表情で身体を起こして立ち上がろうとする。でもその途中にお互いの姿が目に入ったみたいで、そのままピタリと固まった。

 目の前には敵種族。抱く敵意は極大の殺意。うん、この後二人がどんな行動を取るか火を見るよりも明らかだよね?


「――聖人族っ! くたばれ、害虫っ!」

「――魔獣族っ! 滅びなさい、ケダモノっ!」


 二人は弾かれたように距離を取ると共に、お互いを罵り合いながら魔法で攻撃しようとした。凄いなぁ、タイミングも反応もまるで鏡合わせみたいな完璧さだった。対応も明らかに似た者同士のそれだよ。本当にこの世界は敵種族への敵意が根深いな?


「嘘っ!? 何で魔法が使えないの!?」

「おかしいですわ!? どうして魔法が使えませんの!?」


 そして安定の魔法が使えない事に気付き驚愕する反応。ていうかその反応、少し前に見たなぁ……さてはコイツら、直前の記憶に思いを馳せるとかそういう事は一切せず、脳死かつ反射で真っ先に怨敵の排除に移りやがったな? 


「――それは私の魔法の影響下にあるからだ」

「誰っ!?」

「何者です!?」


 状況説明しないとそのまま殴り合いに発展しそうだったから、やむなく僕は脳内を邪神としてのキャラに切り替えて語り掛けた。即座に二人はほぼ同じタイミングでこっちに視線を向けて、驚愕に目を見開く。


「目覚めて早々、己の立場や周囲の状況を確認する前に怨敵を滅ぼさんとするか。いっそ愛らしさを覚えるほどに愚かしい生き物だ。我が伴侶もそういった部分を愛していたのかもしれぬな」

「あ、あんたは――」

「――邪神、クレイズ!」


 そして二人のお姫様は僅かに後退すると共に、僕こと邪神の方にも敵意をバリバリに向けてくる。

 それ自体は別に問題ないんだけど、この期に及んでお互いにも敵意と警戒を向けてるのが本当に困る。何で三つ巴みたいな状態になってんの? 何で破滅の権化とも言える僕を前にして、バトルロイヤルが選択肢に入ってんの? 実は結構余裕なの? 


「どうした? 私の事など気にせず、目の前の怨敵と滅ぼしあうがいい。魔法が使えないのなら拳で殴り殺せばいいでは無いか。貴様らにとっては怨敵の殲滅こそが、何よりも優先されるべき使命なのだろう?」

「くっ……!」

「っ……!」


 お姫様二人にそんな皮肉を投げかけるけど、やっぱりお互いへの警戒は解かない。

 うーん、想定では僕だけを警戒してくれるはずだったのになぁ。敵意が本当に筋金入りで困る。仕方ないからもうこのまま話を進めちゃおう。一応警戒してるだけで殺し合いは再開してないんだし、最低限の理性と知能は残ってるはずだ。たぶん。


「ふむ。理由はどうあれ醜く争う事を止めたか。少しは賢明な判断が可能な知能が残っていたようだな。ならば早速本題に入ろう。貴様らの立場と、役目を教えてやる」

「役目、ですって……?」


 ぽつりと呟き眉を顰めるのは、聖人族のお姫様であるジェニシィ。一応は自分が危険な状況に置かれてる事は分かってるみたいだし、話を最後まで聞く気もあるみたいだ。魔獣族のお姫様であるアポカリピアことリピアは無言で殺意のこもった目を向けて来るけど、こっちも似たような感じかな? 良かった、さすがに話も聞かずに殺し合いを始めるほど蛮族じゃなかったか。


「現状、私は大幅に力を失い弱体化した状態だ。神なる力を取り戻すためには、地道に負の感情を喰らっていく必要がある。怒り、憎しみ、殺意、妬み、悲しみ……極論種類は問わないが、それでも強い感情であればあるほど私の力は増大する。そこで私は考えた。ならば負の感情を意図的に育て、それを喰らえば効率が良いと。いわゆる養殖のようなものだな」


 さも名案だとでも言うように口にしたけど、実際の所あんまり良い考えとは言えない。感情の深度にだって限界があるだろうし、わざわざ養殖みたいな真似をするよりは大勢に雑に恐怖でも与えた方が効率良さそうだしね。まあそれはここでは口にしないが。


「養殖って……あんた何様のつもりよ! 私たちを家畜か何かとでも思ってるわけ!?」

「その言い方は家畜に失礼ではないか? 少なくとも私は、お前たちが家畜より優れているとは思っていない。貴様らは下手に理性と言語を持つ分、家畜よりも性質が悪い」

「なっ……!?」


 怒りのままに噛みついてきたリピアに対し、何てことも無いように返す。これには開いた口が塞がらないみたいな反応してるよ。

 実際家畜の方がまだマシだもんなぁ。肉食ならともかく、別種族同士で無意味に争ったりはしないはずだし。


「考えてもみるが良い。山火事などの天災によって危機的状況に追い込まれた野生動物は、例え天敵や獲物が周囲にいようと生存を最優先の目標として行動するものだ。だが貴様らはどうだ? 私という空前絶後の脅威が降臨したにも拘わらず、他ならぬ私の目の前でいがみ合い憎しみあう始末。その様で家畜より優れているなど、一体どの口で抜かすのだ?」

「や、やかましいですわ! 私たちは家畜より、そしてこのようなケダモノよりも優れているのですわ!」

「はあっ!? そのケダモノに勝てない貧弱なモヤシ風情が生意気言ってんじゃないわよ!」


 そして家畜より劣ってる事実を示すように、僕の前で再び罵り合いを始めるお姫様二人。

 罵倒の嵐はどんどんヒートアップして行って、今にも邪神が目の前にいる事を忘れて殴り合いを始めそうなほどだ。やっべぇな……これ最早病気でしょ? 隔離病棟にぶち込んで集中治療(意味深)しなきゃ……。


「……耳障りだ。口を閉じろ」

「っ!?」

「っ、あ……!?」


 黙らせるために魔力で威圧。途端に二人は恐怖に顔を青ざめて、呼吸を封じられたかのように苦しみながらその場に膝を付く。

 良し、調整に調整を重ねた魔力の放出は成功だな。僕が何の加減も無く魔力を放出すると核が落ちたみたいな有様になっちゃうからね。


「話が少し逸れたな。お前たちの役目だが――我が部下による拷問をひたすらに受け続け、出来る限り苦しみ抜いて負の感情を蓄える事だ。恐怖と苦痛に咽び泣き、尊厳を徹底的に踏みにじられ、終わる事の無い責め苦に負の感情を醸造しろ。私の力となるために」


 というわけで、黙った二人に対して僕はそんな役割を命じた。お姫様二人はちょっと理解が追い付かないのか、はたまた現実を受け入れたくないのか、揃ってぽかんとした顔をしてる。

 うん、分かるよ? 『この外道め!』って言いたいんでしょ? でもこれはどうしても必要な事なんだよ。いや、確かに趣味と性癖も入ってるけど、それが全てじゃないんだよ。だって世界が平和になったとしても、今まで王制だったんだからやっぱり指導者が必要でしょ? ハニエルはそれには向いてないだろうし、また別にそういう役割を持つ奴も用意しないといけないんだ。

 そこで白羽の矢が立ったのはこのお姫様二人。これからこの二人の肉体と精神を限界まで追い詰めて、お互いにその傷を舐め合わせて、お互いへの敵意や嫌悪を薄れさせていき理想の指導者を創ろうと画策してるんだ。名案でしょ?

 えっ、だったら王子とかでも良くないかって? それに魔法で頭の中を作り替えちゃった方が早いって? まあ、うん。否定はしないけどさ……それじゃ興奮できないしつまんないだろ!? 何が悲しくて野郎を調教しなきゃいけないわけ!?


「ああ、最大限に安全には配慮してやるから安心するがいい。決して死にはせず、狂う事も心を壊すことも無く、最高の苦痛を甘受出来るように計らってやろう」

「い、嫌……!」

「やだ……そんなの、やだぁ……!」


 絶対に苦痛から解放される事は無いって遠回しに伝えると、途端に二人は青ざめた顔で泣きそうになりながら拒絶の言葉を口にした。ワガママで血の気の多いリピアが若干幼児退行してるのがちょっとウケる。


「貴様らは嫌がり泣き叫ぶ奴隷の頼みを聞いた事があるのか? 清潔な寝床を与え、温かい食事を与え、苦痛も不幸も無いひと時を与えた事が一度でもあるのか? 無いだろう? 次は貴様らが上位者に虐げられる番というわけだ。因果応報だな」


 僕は二人を興味なさげに見下ろしながら、自分たちの行いがそのまま返ってくるだけだと冷たくあしらった。絶望の面持ちでショックを受けてる二人のお姫様に愉悦が零れ出そうになるのを必死に抑えながらね。

 これでこのお姫様たちには敵種族への差別や虐殺、拷問などは良くないって少しでも刻み付ける事が出来たと思う。まあこの調教に関しては一朝一夕で出来る事とは思ってないし、たっぷり時間をかけて少しずつ認識を変えて行こうと思う。決して長く楽しみたいからってわけじゃないよ? 本当だよ?


「では、後は任せたぞ。我が忠実なる部下たちよ」

「――はいはい、了解~! この二人にひたすら苦痛を与えてやれば良いんだね~?」

「任せてください、ご主人様。今の僕なら効率良く最大限の苦痛を与える事ができます」


 そうして僕が声をかけると、どこからともなく二人の忠実なる部下(加虐趣味の変態)が現れる。一人はトゥーラで、もう一人はヴィオ。どっちも人を痛めつける事が大好きな破綻者だ。基本的にはこの二人にお姫様たちの拷問を任せ、僕は空いた時間に趣味で調教するって感じかな。

 ちなみに二人とも猛烈に脅すような言葉を口走ってるけど、最初の拷問は僕の役目なので牢にぶち込むだけだったりする。さては怯えるお姫様たちの反応を楽しんでるな、コイツら……。

 えっ、やっぱ趣味じゃないかって? うるせぇ、趣味で悪いか! お姫様なんて引きずり下ろして穢すために存在する属性だろ!?


「い、嫌ああぁああぁぁぁっ!!」

「やだああぁぁぁぁぁっ! パパ助けてええぇぇぇぇぇ!」


 というわけで、これから地獄の日々が幕を開ける事になるお姫様二人は絶望の悲鳴を上げてたよ。精々二人で自分たちの境遇を嘆き悲しみ、お互いに傷を慰め合って頑張ってね?

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[一言] どちらの種族の姫も同じ苦痛の境遇を味わった相手として 少しぐらいは友情?的な思いが芽生えたらなぁという 遠回しな思いとクルスの趣味120%
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