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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第12章:呪われた旅路
335/527

こっちも誘拐

⋇性的描写あり

⋇残酷描写あり






「っと――ここに来るのはマジで久しぶりだな。旅立った時からもう一年近いんじゃない?」


 などと感慨深い思いを抱きながら降り立ったのは、今度は聖人族の首都にあるお城の中。そう、僕がこの異世界に初めて降り立ち、そして旅立った城だ。何だかんだでここに戻ってきたっていう事実に、少し懐かしいものを感じるね。

 とはいえあの時とは色々と立場ってものが違う。あの時は聖人族が召喚した傀儡勇者だったけど、今は真なる世界平和を実現するために働く神の下僕だ。まあ表向きの役割が無くなっただけで、最初から内面はそれで一切ぶれてなかったんだが?


「さて、それじゃあ早速目的その二を果たしに行くか」


 懐かしさをほんの僅かに楽しんだ後、薄暗い城の中を歩き出す。

 さて、ここでもの凄く昔の話をしようか。僕が仲間たちを選び、この城から旅立つ直前の出来事を覚えてるかな? あの時に軍資金を手渡しに来てくれた女神様似の幼女がいたよね? 結局その正体は王妃のババアが魔法で幼女に化けた姿で、勇者を都合良く扱うための演出だったらしいけどさ。あの時僕は詐欺師の王妃の顔面に一発入れるって心に誓ったんだわ。

 それはともかく後々になって判明した事なんだけど、実はちゃんと本物のお姫様がいるみたいなんだよ。他にも王子が三人とかいるらしくて、その中でもお姫様は一番幼い上に唯一の娘枠だから溺愛されてるみたい。ハニートラップ紛いの事をお姫様当人にやらせないのもそういう事なんだろうね。まあ元々使い潰す予定の勇者なんかと愛娘を触れ合わせたくないって考えるのも当然か。

 というわけで僕の目的は魔王の城でやった事と同じ、お姫様の誘拐だ。何で誘拐するのかって言うと、そこは後々明らかにするから今は秘密ね? 決して僕の純情を弄んだ事に腹が立ったから、本物のお姫様の純潔を弄びに来たってわけじゃないよ?


「よし、ここだな。それじゃあ失礼しまーす」


 レーンから貰ったお城の地図を頭に思い浮かべて進み、目的の部屋に辿り着く。やっぱり部屋の前に護衛と思しき兵士がいたけど、消失(バニッシュ)使用中の僕にとっては障害になり得ない。当然の如くスルーして、扉を透過してあっさりと中に入りました。


「ほうほう、こっちのお姫様の部屋はいかにもそれっぽい感じだね?」


 例の如く結界を張って諸々の準備を整えた後、部屋の中を見回して心に浮かんだ感想はそれだった。

 確かに豪華と言えば豪華な調度品や装飾が見られる部屋だけど、あっちの国のお姫様に比べればそこまでじゃない。女の子的な趣味をベースに、高級品で染め上げたって言えば分かりやすいかな? 可愛らしいピンク色でフリフリなカーテンだけど、一目見て最高級の生地を使ってるのが分かるレベルとか、ハート型でピンク色が目立つシャンデリアの装飾がよく見るとダイヤモンドだとか、そういう感じ。

 部屋の様子から察するに、きっと正にお姫様って感じの性格なんだろうなぁ。少なくともあっちのお姫様より慎ましいと信じたい。そんな風に思いながら、僕は大きくて豪華なベッドに歩み寄る。


「やっぱ女神様に似てるよなぁ……」


 そこに眠ってるのは、あの日あの時見たのと同じ、女神様似の少女の姿。美しい金髪にあどけない顔付き。あの時見たのは王妃が化けた偽物とはいえ、再現度はかなりのものだったみたいだ。まあ本物の女神様と比べればどっちも数段劣るのは否めないが?


「じゃあこっちも目覚めのキスをしないとな! しかもできる限り深いやつ! というわけで、頂きまーす!」


 何にせよ、眠り姫を起こすのは王子様のキスと相場が決まってる。というわけで、遠慮なくお姫様の唇を奪い貪り熱烈な目覚めを提供してあげた。多少劣化してるとはいえ女神様に似てるから、女神様の唇を奪ってるような気分になれて最高に楽しかったよ。


「んっ……ちゅ……く、うぅっ!?」


 しばらくたっぷりねっとり貪ってると、眼前のお姫様の目が徐々に開き、ある時点でカッと見開かれる。チッ、起きたか。どうせならもっと凄い事もやろうかと思ってたのに。

 などと考えつつ、僕はまたしても突き飛ばされました。夢だと思って続きをさせてくれる展開とかないの?


「な、何ですの貴方は!? はっ!? そ、その角は……魔獣族!?」


 僕を突き飛ばしベッドから抜け出て警戒を見せるまでは、あっちのお姫様と同じ反応。

 ただしこっちのお姫様は僕の頭で燦然と屹立する立派な角を目の当たりにして、どうやら魔獣族に寝込みを襲われたと思ったっぽい。瞬く間にその可愛いお顔が真っ青になっていったよ。


「な、何という事……! 私の唇が、こんな下劣で卑しい畜生風情に蹂躙されてしまいましたわ……!」


 そして凄まじいショックを受けたが如く、血の気の失せた顔でぷるぷると震えながら自分の唇に手を当てる。その動作がまるで傷口を確かめるみたいな触り方なの本当に酷いよね? さて、今の内に解析(アナライズ)だ。



名前:ジェニシィ・オルディナリオ・テラディルーチェ

種族:聖人族(人族)

年齢:16歳

職業:姫

得意武器:杖

物理・魔法:1対9

聖人族への敵意:無し

魔獣族への敵意:極大



 ふむふむ、名前はあっちのアポカリピアとかいうお転婆お姫様に比べればマシだな? ちゃんと若い正真正銘の少女だし、そこは安心だ。相変わらず敵種族への敵意が極まってて泣きそうになるけど。


「誰か! 誰か来てください! 薄汚い畜生の下等生物が、私の寝所に侵入していますわ!」

「コイツお嬢様言葉の癖にすっげぇ口悪いな」


 そして助けを呼ぶお姫様ことジェニシィ。さっきから言葉の端々に育ちの良さというか、魔獣族への敵対心が滲み出てるんだよなぁ。なまじお嬢様言葉なだけにすっげぇ違和感を覚える。

 あっちのお姫様もニカケの(姿に扮してる)僕に凄い差別的な態度を取ってたし、同族でさえあれくらいの反応だった辺り、たぶん聖人族の姿だったらこっちのお姫様と似たような反応したんだろうなぁ。国のトップの娘が敵種族殲滅過激派とか、こっちとしては色々困る……まあ、やりがいを感じなくも無いが?


「ど、どうして誰も来ませんの!? まさか、護衛の騎士たちはもうすでに……!?」

「女神様に似てるって思ったけど、こうして改めて見ると全然似てないな。僕の女神様はもうちょっと柔らかくてアホっぽい顔立ちしてるし。コイツは何かヒステリーな迷惑女っぽい」


 安定の助けが来ない状況に困惑するジェニシィを眺めつつ、そんな感想を抱く。

 確かにベースは似てる感じだったけど、こうして素を出してる姿を見ると全然違う事が良く分かる。女神様はブチ切れても可愛いお顔が崩れないのに対して、コイツは目付きがだいぶ悪くなってるしね。あと僕の女神様はよく暴力を振るってくるとはいえ、別にヒステリーではない。と思う。


「詳細話すのも面倒だからそういうことで良いよ。というわけで、助けは来ないから大人しくしてね?」

「……例え助けが来なくとも、お前たち魔獣族の言いなりになどなりませんわ! まして身体を穢されるなど死んでもお断りですわ! お前たちの慰み者になるくらいなら、いっその事自分で死にます!」


 そこまで言い切ったジェニシィは部屋の隅にあった可愛らしい机に走りよると、そこからナイフらしきものを取り出して自分のか細い首にその刃を押し当てた。そのままキッと僕を睨みつけ、震えながらも絶対にやるという気迫を滲ませる。

 しかし何で机にナイフがあるんだろ? 鉛筆でも削るのに使ってるんだろか。あ、豪華な装飾で分かりにくかったけどペーパーナイフか。というか泥を啜って汚れてでも生き残るのではなく死を選ぶとか、本当に敵種族への敵意が極まってるなぁ。仮にもお姫様なんだから、自分の意志で自殺とかしちゃ駄目じゃない?


「どうぞ? 仮にも民を護る王族の一員が、その責務やら何やらを全て投げ捨て楽な死を選ぶ恥晒しだって言うならね?」

「っ……!」


 せっかくだからむしろ自決を勧めつつ、一歩ずつゆっくりと距離を詰めてく。

 一応は王族としての責務とか役目とかがある事を思い出したみたいで、ジェニシィは一瞬身体を固くして自決を躊躇ってた。


「――か、はっ……!」


 だけどそれは一瞬の事。躊躇いを振り切り、自らのか細い首をペーパーナイフでかき切った。首から鮮血を迸らせながら、絨毯の上にその身体が崩れ落ちる。

 どうやら敵種族の慰み者にされる、なんて末路は我慢ならなかったみたい。このお姫様は国民たちよりも自分自身が可愛いようで。こっちも調教のし甲斐があるんじゃない?


「……まあいいや。どうせ一回は殺す気だったんだし、手間が省けて助かった」


 とはいえ自決されようと木っ端微塵に吹き飛ぼうと、僕の前では全くの無意味。そんなわけで動かなくなったジェニシィの身体を空間収納に放り込み、部屋に飛び散った鮮血も綺麗に消して証拠隠滅。

 一夜で二人もお姫様を誘拐するという偉業を成した僕は、そのまま上機嫌に部屋を出た(扉をすり抜けて)。


「さあ、これで両種族のお姫様を確保したぞ。あとは一方的に契約を結んだ後に蘇生させて、自分たちの立場ってものを分からせてあげないとな!」


 ただしその前にちょっと確認したい事があって、城の中をしばし歩く。

 城の中のマップはレーンが地図をくれたから、予め頭に入ってる。ただレーンでも入ってはいけない区画があるっぽいから、一部は空白なんだよね。今回はその空白部分にちょっと用があるんだ。だって僕の予想が正しければ、ベルと対等に戦えるヤベー奴がそのどこかにいるはずだから。

 そんなわけで、まだ見ぬ大天使の姿を探して未踏域に踏み入ろうとする僕なんだけど――


「あー……これはマズいかもしれん。やめとこう」


 何だろうね? 危機意識がかつてないほどの警鐘を鳴らし始めたから止めといたよ。あんまり当てにならない僕の危機意識とはいえ、それでも明確に『マズそう』と感じるレベルだからね。

 一応ベルから、その大天使がどんな奴かは聞いてるよ? ただベル自身も戦った事は一回しかなくて、向こうの能力の原理とかの詳細はいまいち分かってないみたいなんだよね。だからできればその辺を探りたかったんだけど……コイツは聖人族の最終防衛線みたいな扱いだから、マジで国が危機に陥らない限りは出てこないはずだ。それこそ首都にベルが本来の姿で攻めてくるレベルの脅威でも迫らない限り。だからまあ、しばらくは放っておいても大丈夫でしょ? うん、大丈夫。きっとそう!

 そんなわけで僕は自分を納得させ、さっさと屋敷に転移で戻りました。別に面倒になったから後回しにしたわけじゃないんだからね!

 






盛大なフラグが立ちました。

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