お姫様を誘拐
⋇性的描写あり
⋇残酷描写あり
⋇暴力描写あり
⋇軽い分からせあり
「ふぅ……ここを歩くのは久々だなぁ?」
レーンとの背徳コスプレエッチから数日後。僕は草木も眠る丑三つ時に城の中を歩いてた。
ただし城と言ってもここは邪神の城じゃない。魔獣族の首都にある魔王城の中だ。ちょっとした目的があって絶賛不法侵入中ってわけ。たまに警備の兵士と思しき吸血鬼たちと擦れ違うけど、消失で完全に気配や痕跡諸々隠蔽してるから何にも気付かれないよ。
えっ、そんなことよりレーンとのコスプレエッチがどうだったか気になるって? こらこら、スケベな事ばっかり考えてちゃ駄目だよ? まあ気持ちは分かるけどね。だってマジで最高だったし。頬を僅かに朱色に染めて、悔しそうに歯噛みしながらも僕の命じるままどんな衣装でも着てくれたんだよ? 挙句奉仕だって何だってしてくれたんだよ? あのクール系のレーンが。そりゃあもう滅茶苦茶興奮したに決まってるだろうがよぉ? フヘヘ。
「さて、反応は……よし。ちゃんと部屋で寝てるな」
とにもかくにも、今は大事な任務の真っ最中だからスケベな話はここまでだ。なので僕は目的の人物が部屋の中にいるかどうか、そして睡眠中かどうかをしっかりと確かめながら目的地へ向かって歩いてく。
以前二度ほど魔王城の中を探索した事はあるけど、一度目はちょっとハニートラップに引っかかって碌に探索できなかったから、実質これが二度目かな? 構造自体は頭に入ってるから特に迷う事も無く、目的地へ辿り着く事が出来たよ。
「ここだな。よし、それじゃ失礼しまーす」
そして誰にも聞こえない断りを入れると、透過の魔法で扉をすり抜けて中に入った。扉の両脇に警護の兵士が二人ほどいたけど、消失発動中の僕を雑魚が認識できるわけもない。何のお咎めも無く不法侵入成功です。
そして部屋の中に入った所で、真っ先に結界を展開。これで中でどれだけ騒ごうが外には音も魔力も漏れない。ついでに時間の流れも弄ってあるから、この中で昼寝でもして無駄に時間を浪費しない限りは絶対に誰も入ってこない。完全な密室の出来上がりだ。
「なるほど、ここが魔王の娘の部屋かぁ……」
準備を終えた僕は一旦消失を解除して、部屋の中を見回しながらじっくりと観察していく。
そう、僕が侵入したのは魔王の一人娘の部屋だ。魔獣族の国のトップの子供、それもたった一人の子供で娘という事も相まって、どうやらかなり愛されてるっぽい。部屋の中にはかなり豪華な調度品が目白押しだよ。シャンデリアとか金やら宝石やらでゴテゴテだし、天蓋付きのベッドも正直僕の寝室のやつよりも大きくて豪華かもしれない。成金+中二病みたいな感じ、って言えば詳細を説明せずとも部屋の様子がどんなもんか何となく分かるかな。
「フフフ、良く眠ってるなぁ? これから自分を待ち受ける過酷な運命も知らないで」
ベッドの所まで行くと、件の魔王の娘が安らかに眠ってる姿が目に入る。魔王譲りの赤毛が目立つ、かなり勝ち気そうな美少女だ。シーツの盛り上がり方からして、胸はそこそこ大きい感じ? これは色々な意味で調教のし甲斐がありそうですねぇ。
ちなみに以前来た時ももちろん魔王の娘を探したんだけど、どうにも家出癖があるらしくてその時には城にはいなかったらしいんだよ。悪運の強い子だよね?
「ほーら、お目覚めのキスだよ。お姫様?」
とりあえず眠り姫を起こすために、僕は優しくその唇を奪った。舌でベロリと一舐めした後、さながら揉み解すよう丹念に啄んでね。
えっ、寝てる女の子にそんな事するなんて最低だって? 大丈夫、後々これが可愛く思えるほど酷い事しまくる予定だから。
「んっ……ふっ……ん、んんっ!?」
たっぷり十秒くらい唇を味わってると、ようやく魔王の娘も目が覚めたっぽい。小さく喘いでうっすらと目を開けたかと思えば、唐突に目をかっぴらいて驚愕の声を上げたよ。まあ僕と濃厚に唇を重ねてるから声にはなってなかったけどさ。
とはいえ次の瞬間には僕を両手で突き飛ばし、ベッドから飛び出てうっすいネグリジェに包まれた身体を隠すようにしながら、こっちを全力で警戒し始めた。さて、ここで解析!
名前:アポカリピア
種族:魔獣族(悪魔族)
年齢:47歳
職業:姫
得意武器:レイピア
物理・魔法:7対3
聖人族への敵意:極大
魔獣族への敵意:無し
ふむふむ、女の子にしては何か変な名前してんな? まあ親があの筋肉ダルマを越えた筋肉ダルマである魔王だし、まともなネーミングセンスは無さそうだからさもありなん。年も悪魔にしてはもの凄い若いし、これも別に良い。
問題は聖人族への敵意。父親譲りの殺意の塊じゃん。これは後々厳しそうだなぁ……。
「誰よあんた!? ていうか今、この私の唇を……!」
寝てる間に唇を奪われた衝撃にわなわなと震えつつ、こっちを怒りに燃える黒い瞳で睨むアポカリピア。やっぱ意外とスタイル良いな? というか当然のように角と尻尾と翼が全部揃ってる件。これは絶対傲慢で威張り腐った性格だな。間違いない。
「誰か! 誰かさっさと来なさい! 変態の賊が出たわ! とっととコイツを処刑して!」
僕がささっと体勢を立て直してると、予想通りに傲慢な命令を叫び出すアポカリピア。何だよ、ちょっと寝てる所に熱烈なキスをしただけじゃないか。それで変態の賊呼ばわりとか失礼しちゃうよね?
「ちょっと!? 早く来なさいよこのクズ共! あんたたちの可愛くて素敵なお姫様が賊に襲われてるのよ! 何で誰も来ないのよ!?」
しかしすでにここは僕のフィールド。いくら叫んでも外には聞こえないし、仮に聞こえたとしても外とは時間の流れが違うから絶対にすぐには来ない。
ていうか、自分で『可愛くて素敵なお姫様』とか言う? 確かに美少女なのは認めるけど、どんだけ自己評価高いの? もうすでにこの時点でわがまま放題の傲慢お姫様だって事が手に取るように分かる件。
「助けを呼んでも無駄だよ。この部屋にはすでに結界を張ってるから、この中でどれだけ騒いでも声は外に漏れないし」
「だったら私が直接あんたをぶっ殺してやる! よくも下賤なニカケの分際で高貴な私を穢したわね! その罪、万死に値するわ!」
丁寧に教えてあげたら、今度は僕に対して右の掌を向けてくる。どうやら魔法で僕を害そうとしてるみたいだ。お姫様直々に処刑して貰えるとか嬉しいなー?
「話は最後まで聞いたら? 言っておくけど、この結界の中では魔法も使えないよ?」
「デス・フレイム――嘘っ!? どうして!?」
当然の如く魔法は不発。驚愕に目を見開いて自分の掌を見つめるアポカリピア――ちょっと長いしいまいちだな。街で聞こえて来た話とかだとリピアって呼ばれてたし、次からそう呼ぼう。
名前云々はさておき、この世界の魔法はとても自由度が高くて便利だからこそ、それを封じられた時の衝撃はかなり大きい。ましてやワガママなお姫様なら自分が魔法を使えないなんて状況を受け入れられるわけも無い。だから絶対今の状況を認めず何度も魔法を使おうとすると思ったんだけど……。
「だったら――直接叩き殺してやる!」
「血の気の多いお姫様だなぁ……」
何をトチ狂ったのか、拳を握って僕に突進してくるっていうあまりにもぶっ飛んだ行動を取ってきた。
いや、素でも戦えるっていうならまだ分かるよ? でもどう見ても一般人に毛が生えた程度の動きや足運びにしか見えないんだよなぁ。得意武器はレイピアって、物理七割の戦いをするってなってたのに……あっ、そうか。考えてみればそれらの情報と強さは直結しないな? 単純にそういう武器を使ってそういう戦い方をするだけか。
「ぐぶっ……!?」
とりあえず殴られるいわれも無いから、遠慮なく回し蹴りを叩き込んで迎撃した。リピアの細い胴体に僕の蹴りが吸い込まれるように直撃。そのまま身体は吹き飛び、豪華なテーブルを粉砕した後に壁に叩きつけられた。
多少加減はしたとはいえ、それでも骨の何本かはイったんじゃないかな? よろめきながらも起き上がろうとしたリピアは、それなりの量の血を吐いて倒れかけてたし。
「よ、よくも……よくもニカケの屑が、高貴なこの私に血を流させたわね! 許さない! 絶対に処刑してやる!」
「おうおう、これはこれは……」
そして上手く立てずに手足を震わせながらも、僕を殺意と憎悪のこもった素敵な目で睨みつけてくる。その目はまるで反抗的なミニスを彷彿とさせる生意気具合で実に愛くるしい。沸き上がる興奮に楽しくなってきた僕は、一つ舌なめずりしてからリピアに歩み寄って行った。
ミニスと同じくらいの気の強さならたっぷり楽しめそう。時間の流れは弄ってあるし、この場でちょっと楽しむのも悪くないんじゃない?
「じゃあ処刑される前に殺すか。どうせ処刑されちゃうんだし、何やったって変わらないよね?」
「ご、ばっ……!?」
なので何とか立ち上がろうとしてるリピアの腹を容赦なく蹴り上げた。今度はさっきよりも強めにね。その一撃で内臓が弾けたか肋骨が肺に刺さったのか、かなりの量の血を吐きながら苦しんでるよ。
しかしそれは気にせず暴力的に仰向けに転がすと、吐血しながら咳き込む様を眺めつつその腹に跨ってマウントポジションを取る。そして固く拳を握りしめて――
「ぎいっ!? がっ! ぐうっ!」
ワガママお姫様の顔面を容赦なく殴りつける。もちろん一回じゃ済まない。何度も何度も肉を打ち、骨を軋ませる感触を感じながら、一心不乱に殴り続ける。あー、高貴なお姫様を組み敷いてそのご尊顔を無茶苦茶にしてる状況って最高に興奮するねぇ!
「や、やめ――ぶっ! やめ、ろぉ――があっ!」
殴られ悲鳴を上げながらも、視線で僕を殺そうとするかのように睨み続けるお姫様。
良いねぇ、その強気な反応素晴らしいよ? 殴る拳の痛みさえ、この興奮を彩るスパイスにすら感じられるほどだ。よーし、もっとギアを上げていくぞ!
「やめっ、やめ、て――いっ! もう、やめ――あがっ!」
なんてこっちが燃え上がり始めた所だっていうのに、段々とリピアの反骨精神が目に見えてすり減ってく。さっきまでこっちを親の仇みたいに睨んでた瞳は、気付けば完全に閉じられてポロポロ涙を零すだけ。怒りと殺意に塗れてた声も、今は臆病で力ない儚い声音になってる。
どうやら顔を十数発殴られた程度ですっかり反抗心が無くなっちゃったっぽい。何だコイツ、根性ねぇなぁ? あれだけ傲慢で高慢だった癖にこの様かよ。やっぱ甘やかされて育ったお姫様は駄目だな。
「はー、つまんね。じゃあこれで終わりにしてやろう――ひとまずは、ね?」
「あっ――」
急速に萎えた僕は最後に拳の一撃を放つと共に、その衝撃を操作してリピアの心臓を爆散させて殺した。ビクッとその身体が痙攣して口から大量の鮮血が迸る様を横目に見つつ、殴り過ぎてちょっと皮が向けた自分の拳を治療する。
せっかくミニス並みの鋼メンタルっ子を見つけて存分に苛められると思ったのに、単なる鋼メッキでがっかりだよ。ミニスなら例え何発殴られようが絶対睨みつけるのをやめないぞ? さすがに真の仲間となった今はそんな事できないから、あくまでも予想だけどさ。全く、期待させやがって……。
「さて、契約と蘇生は……あとで良いか。説明が二度手間になるし」
魔獣族のお姫様を殺した僕は特に感慨も無く、淡々と魔法を用いて証拠隠滅を図る。飛び散った血痕を痕跡を残さずに綺麗にして、壊れた家具も元通りに修復。リピアの死体は空間収納に放り込む。これで対応は完璧だぜ。まるでお姫様が密室で突然消えたような状況にしか見えないね。
「よし、気を取り直して次行こう――転移!」
萎えた気持ちを奮い立てるように自分を鼓舞しつつ、次の目的を果たすために転移の魔法を行使する。
しかしメンタルが鋼メッキで酷くがっかりだったけど、考えてみればこれはこれで楽しめるな? これからは長い付き合いになるわけだし、徹底的に遊ばせてもらおうっと。さーて、向こうの子はどんな感じかなー?
家出癖があるせいで奇跡的に今まで主人公にエンカウントしなかった魔王の娘。だがその悪運もここまでだぁ……。
最後とんでもなく不穏な事言いまくってますがきっと気のせいです。