新しいバグキャラ
⋇性的描写あり
束の間の自由を得た僕は、里帰りさせたミニス達が帰ってくるまでひたすら怠惰で邪な日々を送って過ごしました。クソ犬を組み伏せてハッスルしたり、逆に組み伏せられて性的に襲われたり、あるいは地下牢の囚人たちを八つ裂きにしたり火炙りにしたりと、とても楽しく欲望を解消する日々だったよ。禁欲の旅で溜まった欲求不満がようやく完全に解消された感じ。まあ空いた時間の半分以上はエクス・マキナの製造に当ててたけどさ。
ちなみに四日くらいしてミニスたちが帰ってきたから、それじゃあ今夜にでも今後の話をしよう――なんて思ってたらキラにも性的に襲われました。これがもう飢えた猛獣みたいなヤバさで、屋敷で再会するなり場所も時間も考えずに襲ってきたんだよ。そういやキラも禁欲の旅をしてたようなもんでしたね。性欲だけじゃなくて殺人欲求もあるから大変だったらしい。
なお、飢えたイカれ猫のせいでそこから更に数日ほど爛れた日々が続きました。リアは別にそんな風に襲ってこなかったのに、何でこの犬猫はサキュバスより発情してんの……?
「――というわけで、近い内に計画を第二段階に進めようと思います。またしても世界情勢が激しく変化するから、今の内にやりたい事とかある人は早めに済ませておいてね」
「はーい!」
「了解だ~!」
そして僕が屋敷に帰ってきてからおよそ十日後。ミニス達もド田舎から帰ってきて、ついに仲間たちと今後の作戦を話し合う事ができた。
今回の話し合いのメンツはレーンを除く真の仲間たち全員。ちょうど夜で起きてるだろうし、関係の無い話でも無いからバールも連れて来てるよ。
とはいってもある程度の概要は邪神降臨の前にすでに話してるし、『第二段階に進みます』だけで通じるから凄く楽。みんな話が速くて助かるよ。ちょっと心配なリアも頭は悪くないから、しっかり覚えてるっぽいしね。あんなに元気よく返事しておきながら何も覚えて無いとかさすがに許さないよ?
「それから第二段階に移ると共に、真の仲間は全員この屋敷で暮らすようにするんだけど……みんなその辺大丈夫? レーンだけじゃなくて、ペットのハニエルも連れて来るよ?」
「さすがに大天使をペット扱いは酷くない……?」
などと控えめにツッコミを入れるのはミニスさん(一般村娘魔獣族)。敵種族の首級に相当する大天使だっていうのにそんな同情を見せるだなんて、やっぱりだいぶ丸くなったねぇ?
それはともかく、幾らハニエルが頭お花畑で精神崩壊気味だとしても、大天使っていう聖人族の象徴みたいな存在なのは変わらない。集団生活をするにあたって不満が溜まるのは良くないし、頭のキレる僕は予め皆に尋ねておくことにしたんだ。『ここで大天使と暮らすことになっても大丈夫?』って。レーンとの顔合わせはみんな済んでるし、別に問題無さそうなのも分かってるけど、トゥーラやバールはハニエルと顔合わせた事無いもんね。
「私は別に構わないよ~? むしろ望むところだね~。これでいつでもリベンジができるというものさ~」
「あたしも別に気になんねぇな。つーかむしろレーンからしたら魔獣族の国とか針の筵じゃね? そっちの方を心配しろよ」
「リアも大丈夫だよー! リアが嫌いなのはサキュバスだけだもん!」
「まあ、大天使だろうがまともな人間が来てくれるのは正直助かるわ。異常者しかいなくて頭おかしくなりそうだし、この屋敷……」
少しの間ハニエルと一緒に旅してたメンツも、そしてトゥーラも問題無いっぽい。というかトゥーラはハニエルに興味無さそうだね。レーンといつでも第二次正妻戦争が出来るって事の方が重要そう。いや、今は第三次か? どっちでもいいか。
ミニスに関しては心無しか嬉しそうに見える。ハニエルはこの狂った世界で相当貴重な常識人だからねぇ。そんな奴が来てくれるんだから、現状異常者の群れの中で暮らしてるミニスとしては心強い事この上ないんだと思う。でもこの反応、ハニエルが未だにぶっ壊れてる事知らないな、コイツ……むしろ余計に心労増えるだけじゃないかな? とりあえず面白いから黙っておこう。
「我も別に構わんぞ。多少の問題や混乱は起こるだろうが、すでに我が不在であろうと街と軍は成り立つようにしておいた。そして大天使との同居も別に構わぬ。しかし大天使をこの屋敷に連れてくるのなら、もう一人賛同を得るべき者がいるのではないか?」
バールも受け入れてくれたけど、何か少し気になる事を口にした。賛同を得るべき者が他にいるってさ。そんな奴いたっけ?
「……分かるだろう、言わなくとも。お前の、その……メイドだ」
「あー、ベルか。そういえばアイツも魔将だったね」
僕が首を捻ってると、少し表情を歪めたバールが名前は口にせず遠回しに伝えてきた。
そうだそうだ、メイド長ことベルも魔将だった。ベルは真の仲間じゃなくて協力者ポジションだけど、魔将って立場を考えるに確かに予め聞いておいた方が良さそうだ。ていうかバールさん、やっぱりまだ名前も口にしたくないくらいベルの事が苦手なんですね……。
「僕が言えば首を横には振らないだろうけど、一応後で聞いてみた方が良いかな。何か逆鱗に触れてせっかく連れてきたハニエルを消滅させられても困るし」
「そうしておけ。アレは魔将の中でも特別な存在だからな……」
ベルにビビってるバールが、ちょっと切実さを感じる表情で頷く。
まず無いとは思うけど、断られたらどうしようかなぁ? ぶっちゃけベルとハニエルを天秤にかけると、働き者で屋敷のあらゆる雑務をこなしてくれるベルの方が重要度高いんだよなぁ。ハニエルは心壊れてて要介護状態でクソの役にも立たないし。
でもこの世界の未来にとってはハニエルの方が重要度圧倒的に高くて、逆にベルは災害と天災の類でしかないし……うーん、悩むところだ。その辺はとりあえず聞いてみて後で考えよう。
「しかし魔将の使命と立場を放り捨て、この屋敷に住居を移すのは構わんが……どういった筋書きで我が退場する事になるのかは決めてあるのか?」
「もちろんそこも決めてあるよ。ただぶっちゃけ最初と最後しか決まってないから、後は本人たちで決めて貰おうかなって」
バールにそう答えつつ、視線をキラに向ける。そしたらニヤリとあくどい笑みが返ってきて、更に鉤爪を装着してその鋭い爪を嫌らしく舐めるという狂戦士的な演出付き。正直ああいう自分の獲物を舐める行為って衛生的にどうかと思う。
とはいえその好戦的な笑みと行為を見て、バールも何となく退場の筋書きに思い至ったらしい。一つ頷いて僕に視線を戻してきたよ。
「なるほど、そういう事か。ではレーンの方は……」
そしてバールは一瞬の逡巡を経て、その視線を今度はトゥーラに向ける。釣られて僕も視線を向けると、トゥーラは快活に笑いつつ自らの拳を無言で打ち合わせてたよ。その反応からも分かる通り、バールの予想は正解だ。
「……大丈夫なのか?」
「……たぶん」
でもキラと違ってトゥーラはこれでもかと闘志を迸らせながらの反応だったから、最後にバールは少し心配そうな目を僕に向けてきたよ。トゥーラが僕の命令を無視するとは思えないけど、最終的な結末はともかくとして途中の流れはだいぶヤバい事になりそうだなぁ……とりあえずレーンには頑張って貰おう。うん。
お話を煮詰め終えてとっぷり夜も深くなった頃、僕は大天使をこの屋敷に住まわせる事を伝えるためにベルの元を訪れる事にした。今回は話の内容的にこっちがお願いする立場になりそうだから、呼び出しはせずに自分の足で出向くよ。
魔法で調べたらベルは玄関の外にいるのが分かったから行ってみたら、そこには玄関のほんの数段しかない階段に腰かけて庭を眺めるベル(トゥーラの2Pキャラ)の姿があった。どうやら花壇を所狭しと埋め尽くす七色のお花、イーリス・フロスを眺めて楽しんでるみたいだ。一体いつから眺めてたのかは知らんけどね。どうにもコイツ全然眠らないみたいだし。
「ベル、ちょっと良い?」
「む? どうした、ご主人様。何か用か?」
「ちょっと聞いておきたい事があってね。実は計画を第二段階に進めたら、聖人族の国にいる僕の仲間もこの屋敷で暮らすようになるんだ。一応ベルにもその辺の同意を得ておこうかなって思って」
「メイドでしかない私にまで、わざわざ話を通すのか。ご主人様もなかなかマメだな?」
とりあえず隣に腰を下ろして話を始めると、トゥーラの顔でトゥーラが浮かべないような感じの苦笑が返ってくる。髪とか目の色は違うけど、顔の造形は全く同じだから違和感が凄いね? というか向こうが変態でヤバい表情をする事が多いせいか、違和感どころかこっちの方がまともに感じる節がある。
「別に構わんぞ。聖人族の国にいる仲間というのは、あの落ち着いた物腰の魔術師の事だろう? 以前何度か屋敷の中で見かけた事があるし、会話をした事もある。話の通じない狂人というわけでもなさそうだし、何の問題も無いな」
「ある意味では狂人に近いんだけど、まあそこはひとまず置いておこう。実はそいつの他にもう一人連れてくるんだ。ただそのもう一人っていうのが聖人族を守護する大天使の一人で――おっとぉ?」
僕が『大天使』と口にした瞬間、ベルは目に見えて警戒を露わにした。気配はもちろんの事、トゥーラ譲りのふさふさ尻尾が逆立ち、耳が伏せられたから実に分かりやすい反応だ。やっぱ魔将としては大天使は駄目な感じなんだろうか。いや、でもベルは聖人族も魔獣族も両方嫌いだしなぁ……。
「やっぱり大天使は駄目な感じ?」
「……その大天使の名前は、何というのだ?」
「ハニエル。頭お花畑のハニエル」
かなり緊迫した声音で尋ねてきたベルに対し、誤魔化さず正直に答える。わざわざ名前を尋ねてきた辺り、もしかすると大天使全般じゃなくて特定個人が駄目なのかもしれないしね。戦争で前線行った事無さそうなハニエルならベルと接点無さそうだし、たぶん大丈夫だと思うが……。
「……うむ、それなら大丈夫だ。すまないな、ご主人様。大天使と聞いて少々警戒してしまった」
やっぱり予想通り、特定個人の大天使が駄目らしい。ほっと息を吐いてベルは警戒を解いてたよ。万が一連れてくるのがその駄目な大天使だったら、一体どんな反応をしたんだろうか。ちょっと気になる。
「それは良いんだけど、お前が大天使如きにそんなに警戒する必要ある?」
「確かに私にとっては大天使だろうと、少し大きくて目障りな羽虫でしかないな。ただ、最初の一人――原初の大天使を除いてな」
「原初の大天使……?」
怒りと憎しみのこもった声で紡がれたその単語を、思わず反芻して考える。
ベルの言い方に倣うなら、ベル自身は原初の魔将だ。その強さ、というか圧倒的理不尽さが折紙付きなのは今更語る必要は無いよね。僕でさえちょっと無力化の方法が分からんし。全てが凍り付く絶対零度の中でも平気で動く奴だし。
そんなベルと同じ原初の存在で、なおかつベルが警戒する相手。え、待って? それ滅茶苦茶ヤバい存在じゃない?
「お前がそこまで言うとか、そいつもしかして滅茶苦茶強いのかな?」
「そうだな……私が真の姿を解放し全力で戦おうと、恐らくは決着がつかない奴――と言えば強さが分かりやすいか?」
「なにその化物。ちゃんと人の形してる?」
恐ろしい事に僕の予想はドンピシャだったみたいで、とんでもねぇ答えが返ってきた。あの動くSANチェック、悍ましさの極致、神話生物と名高いベルの真の姿で戦おうと決着がつかないってマジ? どんな化物よ、それ。
とりあえずその原初の大天使の話、後で可能な限り聞いておいた方が良さそうだな。今のところ最も僕の障害になりそうだし……。
ベルと対を成すバグキャラの類と覚えておけば大丈夫です。前も言った気がするけど。