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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第2章:勇者と奴隷と殺人鬼
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ちっちゃな身体に詰まった憎悪

「ぐすっ……リアのご主人様、人の心が無い……」


 しばらく結界を叩きまくってたリアだけど、その内僕には慰めて貰えないって分かったみたい。涙も引っ込んだのか一人で蹲って鼻をかみ始めたよ。

 ちなみにこの世界、ちゃんとティッシュもあるよ。さすがに安いトイレットペーパーみたいにゴワゴワなのはご愛敬ってところだね。


「何を言ってるんだ、ちゃんとあるよ。ほら、優しく抱きしめてあげよう」

「うわああぁぁぁん! さっき抱きしめて欲しかったあぁあぁぁぁぁぁぁっ!!」


 しっかり顔を綺麗にしたリアを改めて抱きしめてあげると、何やらまた泣き出し始めた。きっと僕の優しさに感動して胸が温かくなったんだろうなぁ。

 それはともかくばっちいからやっぱり離すね。うわっ、袖に鼻水ついた。最悪……。


「さて、スキンシップも済んだところで本題に戻ろうか。僕と取引してくれるかな?」

「ぐす……いいよ。アイツらにはいつか絶対復讐するつもりだけど、リアにはそのための力が無いもん。協力してくれるなら、リアはご主人様のためにどんなことでもしてあげる。もちろんエッチなことでもね?」


 ちょっと目尻に涙が残ってたけど、小生意気な笑顔を浮かべて頷いてくれるリア。これでめでたく真の仲間二人目をゲットだぜ! エッチなことはその内な!

 しかし現状の真の仲間は転生を繰り返す魔術狂いと、ロリサキュバスの復讐鬼かぁ……なんかイロモノばっかりだなぁ。まともな子は仲間にならないんだろうか?


「交渉成立だね。これからよろしく、リア」

「うん。よろしく、ご主人様――そういえばご主人様の名前ってなーに?」

「そういえばお前、僕の自己紹介遮ったっけ。僕はクルス。でもまあ勇者様でもご主人様でも好きなように呼んでいいよ」

「分かった。じゃあご主人様って呼ぶね? 正直もう全然勇者様って感じしないし……」


 そう言って、リアは僕の顔を蔑むような目つきでじっと眺めてくる。

 ハハハ、そんな生意気な顔してるととびっきりのお仕置きしちゃうぞ? というか僕の一番勇者らしいところを見て何だその言い草は。優しさに溢れた人畜無害そうな顔でとっても勇者らしいだろ?


「ところでさ、リアってどんな経緯で奴隷になったわけ? この世界で大規模な戦争が起きたのは随分前だって言うし、正直奴隷商人たちがどんな経路で奴隷を集めてるのか分かんないんだけど。誘拐とか略奪?」

「んーとね、リアは進んで奴隷になりに行ったからあんまり参考にならないと思うよ?」

「え、何それは……ドMなの?」


 自ら進んで奴隷になりに行くなんて、それはもうそういう趣味嗜好があるとしか思えない。

 しかもこの世界での奴隷の扱いははっきり言ってペット以下だ。こんなロリロリしい見た目でそんなドギツイ扱いを好むとか、あまりにも業が深すぎる。それは僕でもちょっと引くわ……。


「どえむ……?」

「えぇ……」


 とか考えてたら、リアは僕の指摘に首を傾げてる。

 この反応は予想外で僕もちょっと呆れたよ。まさかコイツ、SMという言葉すら知らないのでは? あるいは言語の翻訳の問題か? でも前にレーンが悪鬼羅刹とか言ってたし、こっちの世界の言葉が僕に分かる言語に翻訳されてる以上、逆もまた然りだと思う。

 となると単純にコイツに知識がないだけだね。マジでサキュバスたちは何も教えなかったみたいだ。これ絶対エッチについても良く分かってないでしょ? さては子供もキャベツ畑に生えて来るとか言い出すな?


「本当に無知だな、お前……」

「り、リアのせいじゃないもん! だって、誰も何も教えてくれなかったもん! リアは悪くないもん! 悪いのはリアを苛めて何も教えなかったアイツらだもん!」


 リアの実年齢はニ十歳のはずなんだけど、顔真っ赤にして地団駄踏む姿はどう見ても見た目相応なんだよなぁ。これでちっちゃなロリボディの中に、とんでもない憎悪と殺意が渦巻いてるんだから面白い。


「まあ捻じ曲がった知識を植え付けられなかっただけマシかな。そんなことより、進んで奴隷になったってどういうこと?」

「んー、あれは十六歳になってからしばらく経った頃かな? 何だか身体が重くて、だるい日がずっと続くようになったんだ。おまけにそれが日に日に酷くなってくの。リアを心配してくれる人なんていないあの村にいたら、このまま死んじゃうって思うくらいに」


 そうしてリアが語りだしたのは、自分の身に起きた不調の話。

 タイミング的にやっぱりハニエルが言ってたことが正しいんだろうなぁ。サキュバスにとっては快楽が必須の栄養素になるっていう……というかアイツは何故そこまで詳しく知ってたんですかね?


「その頃からもうアイツらへの復讐は胸に誓ってたから、絶対に生き残らなきゃいけなかったの。でもリアを助けてくれるような人たち何て思い浮かばなくて……それで聖人族の奴隷になれば、もしかしたら助けてもらえるかもしれないって思って、頑張って国境まで行ったんだよ。体調も悪くて身一つで、魔物から逃げ回りながらの旅だったから、本当に苦しくて辛くて……」


 なるほど、奴隷になったのは延命のためだったか。

 確かに商品の価値を下げないために、ある程度の治療とかはしてくれるだろうね。わざわざ敵種族のところにまで行ったのはもう誰も信じられないからだろうなぁ。何せ親にまで見限られてたらしいし、同族を頼るよりはまだ敵の方が信頼できるって判断したんだと思う。


「色々あったけど、リアは今幸せだよ? だって、リアの復讐に力を貸してくれる素敵なご主人様に会えたんだもん」

「一見お涙ちょうだいな台詞だけど、びっくりするくらい色気が無くて狂ってるね……」


 そんな苦渋に満ちた選択と苦難の旅の末、最底辺の奴隷に落ちた割には、リアはそれはもう可愛らしい笑顔を浮かべてる。頬を緩めてにっこりと。

 ピンクの瞳の奥にどす黒い暗黒が渦巻いてるから見事に台無しだけどな! 


「しかし魔物から逃げ回りながらの旅ってことは、もしかして武術とか魔法とかもからっきし?」

「武術なんか何にも知らないよ。魔法は生きていく上で必要だったから、多少はできるけど……」

 

 なるほど、じゃあ今のままでは戦力面では期待できないな。ゾンビ兵たちだってまだ構想段階だし、仮に完成したとしても勇者として振舞ってる間は使えないし。同族の屍を操って戦わせるネクロマンサー系勇者とか、ちょっと僕のイメージしてる勇者像とは違うしね。

 となれば、困った時の魔法頼みだ。無理やりにでも戦力にできるか試してみよう。


「じゃあ僕の真の仲間になってくれたお礼に、これをプレゼントしよう。命令だ、受け入れろ――技能複製(スキルデュプリケイト)


 だから僕はリアの頭を鷲掴みにして、自分の記憶をコピーして流し込むイメージで魔法を発動する。コピーする記憶は短剣の扱いに関する武術と体術の記憶。もちろんコピーに関しては試してないから実験も兼ねてだよ。

 下手をするとペーストされる方に何かしらの不具合が発生するかもだけど、こればっかりは死体相手じゃ確認できないからね。まあ相手は僕の奴隷だし文句を言われたりはしないでしょ。言われたら黙れって命令すれば実質文句はなし。


「いたっ! え……あ、あれっ? な、何これ……!」


 うん、無事に成功したみたいだね。リアは流れ込んできた情報に一瞬顔を顰めて頭を抑えてたけど、すぐに目を丸くして自分の手を眺めてたよ。

 そしてエア短剣で剣舞を踊る……お前バスタオル姿でそんなことして大丈夫だと思ってるの? 尻尾が裾から出てるからその分隙間が増えて、大事なところがわりとチラチラ見えてるよ? 誘ってんのか、メスガキがぁ……。


「魔法で僕が身に着けてる武術の記憶と経験をコピーして、お前の頭に直接送り込んだんだ。まあこれ自体は僕が適当な冒険者を殺して頭から奪ったものなんだけどさ」

「な、何か凄く酷いことしてる……! でも、凄い! 魔法なんて、リアは焚き火の火種を作るくらいしかできなかったのに!」


 興奮に瞳を輝かせて、尊敬の視線を向けてくるリア。

 いやぁ、こんな風に純真に賞賛してくれるのって本当に良いね。どいつもこいつも僕のこと、鬼畜だのサイコだの罵倒してくるからさ。


「はっはっは、もっと褒めろ。僕は女神様から無限の魔力を貰ってるんだ。火を起こすどころかお前の故郷を焼け野原にすることだってできるぞ!」

「凄い! ご主人様凄い! でもアイツらは私がたっぷり苦しめてから殺すの。だから絶対そんなことしないでね」

「あ、はい」


 おっと、輝いてた瞳が一瞬で淀んだ泥濘の如き色合いに……やっぱ復讐は自分の手で遂げなきゃダメみたいですね。僕だって復讐するなら自分の手でやりたいし。横からかっさらたりしないよう、肝に銘じておこうっと。


「じゃあお互いの理解も深め合ったことだし、そろそろ次の行動に移ろうか? そろそろ良い感じに夜も更けてきたしね」

「やだもー! ご主人様ったら、エッチなんだからー?」

「はいはい、処女で無知なメスガキはとりあえずこれに着替えて来ような。ずっとバスタオル姿だと僕の品性が疑われるし」


 クソ生意気で挑発的な笑いを浮かべるリアに対して、僕は異空間から取り出した幼女用の衣服と装飾品を押し付ける。

 え、何でそんなの持ってるのかって? そりゃあコイツの看病をハニエルに任せてる間、ショッピングに行って色々買ってきたからだよ。せっかく僕だけの美幼女なんだから、僕の性癖に来る――じゃなくて、可愛い格好させてあげたいでしょ? 

 しかし幼女の下着やら衣服やらを抱えて会計に行ったせいで、凄い不審な目を向けられたなぁ。僕の顔が勇者らしくなかったら通報されてたな、うん。


「そこは風邪を引くからって心配するところじゃない? あとご主人様に存在が疑われるほどの品性があるとは思えないよ?」

「お前、仮にもご主人様の人間性を貶めて良いと思ってんの……?」


 おかしいな。奴隷ってもっとこう、主人の一挙一動に怯えながら従順に従うものじゃないの? レーンも僕の奴隷みたいなものなのに、それはもう僕の人間性を乏しめることに躊躇いが無いし。

 まあ本心を裏に隠してご機嫌取りをされるよりはマシか。真の仲間なんだし、これくらいは大目に見てやろう。真の仲間じゃない奴隷に対しては一切容赦しないけどね?



真の仲間たち

 ・輪廻転生する話長めな魔術師

 ・ロリサキュバスの復讐鬼 ←NEW!

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