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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第12章:呪われた旅路

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少年の青春


「おはよう、クルスくん!」


 翌朝、僕は青空をバックにしたセレスの笑顔で目が覚めた。背景が青空なのも相まって、まるで太陽みたいな輝きで眩しいねぇ?

 セレスとカレイド――じゃなくて、カレンが自らの秘密を暴露したのは昨日の事。セレスの方はまあ問題なく皆に受け入れられたんだけど、カレンの方はちょっとラッセルくんが頭バグっちゃって、再起動した後もしばらく心ここにあらずって感じだったんだよね。何ならちゃんとカレンとカレイドが同一人物って事を理解してるかも怪しかったよ。

 とはいえそれは昨日の事。さすがに一度睡眠を挟めばラッセルも現実を理解できるようになったと思う。ちゃっちゃと受け入れておねショタ展開に突き進んで欲しいよね?


「うん。おはよう、セレス。君は朝から元気だね?」

「もちろん! だって自分を偽らないで迎えた素敵な朝だもん! 何だか凄く清々しい気分だよ!」


 身体を起こした僕の前でライムグリーンの髪をなびかせながら、くるくると回って見せるセレス。その頭には角も無く、お尻の所からも尻尾が無くなってる。悪魔の証明は背中にある小さめな翼しか無いから、何か微妙に違和感を覚える姿だ。

 まあそんな事よりミニスカートが翻って見える白い太ももと緑のパンツの方が気になるから、凄くどうでも良いけどね。朝からそんなもん見せつけるとか誘ってんのかな?


「そっかぁ。良かったね?」

「えへへ!」


 自己主張する下半身をさりげなく隠しつつそう声をかけると、セレスは嬉しそうに笑う。その笑顔もまーた魅力的で可愛らしくて、余計にちょっと動けなくなっちゃうよ。あー、何も考えずに押し倒して捻じ伏せて貪りてー。


「……まあ、あっちはセレスと違って何かどぎまぎしてる感じだけどね」

「あー……」


 下半身の惨状を悟られないためにも、セレスの意識を別方向に逸らす。具体的にはラッセルとカレンの方に視線を向ける事でね。これにはセレスも簡単に釣られて、納得って感じの声を出してたよ。実際昨晩の様子からして面白いくらいだもん。


「……おはよう、ラッセル。よく眠れたか?」


 視線の先では鎧を着てないカレンが何気ない様子でしゃがみ、ラッセルに朝の挨拶をしてる。

 もう自分の秘密をバラしたせいか鎧を纏うのはやめたっぽいんだけど、そのせいで完全に目の毒な姿になってるよ。ショートパンツから見えるムチムチの太腿やら、ヘソ出しタンクトップを押し上げる圧倒的な胸の膨らみ。それが寝起きのラッセル君の目の前に突然広がるわけだ。こんなの僕と同じくもう一ヵ所が目覚めちゃうよ。


「え、あ、はっ、はい! よく、眠れました! はい!」


 おっきしたかどうかはともかく、破壊力抜群なのは間違いなかったみたい。ラッセルくんは顔を真っ赤にして無駄に大きな声で返事をしてる。その目がチラチラと目の前のカレン――恐らくはその胸の谷間に注がれちゃってますねぇ? ムッツリめ!


「それなら良い。昨晩は俺のせいで混乱させてしまったようだからな。それが原因でお前が寝不足にでもならないかと不安だったんだ。お前の憧れを壊してしまったというのに、その上健康まで害してしまってはいよいよ申し訳が立たん」

「い、いえ、そんな事はありません! ですから頭を上げてください!」


 詫びるように、あるいは気落ちするように俯くカレンに対し、ラッセルは更に顔の赤みを深めてそう声をかける。

 あのアングルだとたぶん、胸の谷間がより深く見えちゃってるんだろうなぁ。普通にガン見すれば良いのに。もったいない。


「……そうか。そういう事なら俺も安心できる」

「こ、こちらこそですよ、カレイドさん。あ、いえ、カレン……さん?」


 視線に気付いてないのか反応が全く変わらないカレンと、胸の谷間の衝撃も相まって未だに名前で混乱してるラッセル。元々カレイドに強く憧れてた分、無意識じゃあなかなか同一人物だって事が理解できないんだろうなぁ。


「……クルスくん。あれってどういう状況なのかな?」

「うーん……ラッセルはまだちょっと理解が追い付いていないところあるけど、憧れの人が美人の女性だったせいで滅茶苦茶緊張してるみたいだね。カレイド――もといカレンは、普段と同じように接してるから余計にね」

「じれったいねぇ……」


 どうやらセレスも僕と同じ感想を抱いてる様子。そうだよね、じれったいよね。とっととくっついて欲しいよね、アレ……。


「あの二人、ちゃんとくっつくかな?」

「ラッセルの反応も悪くないし、これは結構期待できるんじゃない? もうちょっと時間はかかりそうだけど」

「へー、それは楽しみだねー?」


 僕の予測に対して、セレスはニヤニヤと楽しそうに笑う。

 実際、ラッセルはまだ混乱してるけど別に忌避感とかそういう類の感情は一切見せてない。むしろ顔を赤くしてチラチラ見てる辺り、ムッツリなのはさておき興味を持ってるのは明確だ。カレンの方は今までと反応がいまいち変わらないから良く分からないけど、サキュバスって種族を考えると色恋に疎いショタっ子くらいは簡単に堕とせるはずだ。是非とも頑張って欲しいね?


「というか、君の場合は人の色恋云々よりもまず自分の話じゃない? いや、僕が言うのも何だけどさ」

「うぅ……ごもっともです……」


 なお、絶賛恋する乙女のセレスに人の色恋を楽しんでる場合なのかと苦言を呈した所、痛い所を突かれたように表情を歪めてたよ。マジでその恋心を向けられてる僕が言う事じゃないけどさ。まあ女の子って他人の色恋に興味津々なもんだし、仕方の無い事なのかな?






「クルスさん、少しお話があるのですが……構いませんか?」


 皆で朝食を摂り、出発までのほんの僅かな休息の時間。ちょっとお花を摘みに(比喩表現)少し皆の元を離れた帰り、待ち構えてたラッセルが僕に話しかけてきた。タイミングを考えるに、どうやら僕が一人になる所を狙ってたみたいだ。まあ用を足してる最中の警戒のために奴隷を一人連れてってるから、厳密に言えば一人ではないんだが。


「内容による。どしたの?」

「実は……カレイ――ではなく、カレンさん、の事で、少々お話をしたいのです。その、一人で考えていても整理がつかないものですから……」

「おっ、恋バナか? いいよ、面白そうだし」

「ありがとうございます。人が悩んでいるのに面白がって最低ですね」


 礼を言いつつ罵倒するっていう器用な真似をしてくるラッセルを尻目に、手近な岩に腰掛けて話を聞く態勢を取る。

 このタイミングでカレイド――じゃなくてカレンについてのお話をしたいって事は、何かしらラッセルの中で折り合いをつけられない事でもあるんだろうか? 見た感じカレンを受け入れられないって感じでは無かったけどなぁ? あんなに胸の谷間をチラチラ見てた癖によぉ?


「で? 君は何を悩んでいるのかな、若人よ?」

「僕の方が何歳か年上なんですが……まあ、人生経験で負けている事は認めましょう。いちいちツッコミを入れていたら話が進みそうにないですし」


 あ、そういや向こうの方が年上で合法ショタでしたね。初対面が生意気なガキみたいにしか思えなかったから忘れてたわ。年上なら年上らしく振舞って、どうぞ。


「一応先に聞いておこうか。別に鎧の中身が女だったから失望したってわけじゃないんでしょ?」

「当然ですよ。カレイドさん――いえ、カレンさんの性別が違ったくらいで失せるような軟弱な憧れではありません。舐めないでください」


 まず一番大事な事を聞いておくと、いっそ怒りを感じるくらい真面目な答えが返ってくる。カレイドが実は褐色美女のサキュバスだったって事を知っても、その憧れに揺るぎはないらしい。随分とまあ一途なショタですねぇ?

 なんて思ってたのも束の間、ラッセルの睨むような表情が途端に恥じらいと困惑に崩れた。


「ただ、その……女性だっただけならまだしも、驚くほど美しい人だったので少し対応に困ってしまうんです。今までは男性だと思っていたので、以前と同じような接し方をしてしまうのは失礼に当たるのではないかと思いまして……」

「嘘をつけぇ? 本当はそれだけじゃないんだろぉ?」


 一瞬で思春期の男の子みたいな反応し始めたラッセルに対し、抑えられない愉悦に表情を歪ませながら問う。

 接し方に困るだけならあんなに胸の谷間をガン見しないよなぁ? 欲情してるってゲロっちまえよ。おぉん?


「その……あんなに美しい女性は初めて見たので、どうしても緊張が抑えられないと言いますか……ですが、僕にとって憧れの人であるという事実に変わりはないので、正直なところ頭でも心でもどのよう接すれば良いかのか分からないんです……」

「まあしゃあない。ギャップが激し過ぎて風邪ひくレベルだしね」


 一応この場には男二人しかいない(奴隷は人として数えないものとする)からか、ラッセルは赤い顔で目を逸らしながらもわりと素直にゲロった。

 あんなに美しい女性は初めて見た、だってさ? 初々しくてニヤニヤが止められませんねぇ? なお、僕の隣にいる奴隷(女の子)は心底不愉快って顔を懸命に押し隠してる感じの仮面みたいな顔してる。人権も尊厳も終わってる奴隷からすれば、甘酸っぱい恋愛してる奴らなんて文字通り爆発しろとしか思えないだろうし仕方なし。


「僕と違って女性経験の豊富なあなたなら、こんな時どうすれば良いのか分かりませんか? お願いします。何か知恵を貸してください」


 とにもかくにも、ラッセルの相談とはここに帰結するらしい。憧れの男であるカレイドが実は人生で初めて見たレベルのとびきりの美女だったせいで、頭と心がバグって接し方が分からない。だから女性経験豊富な僕に教えて欲しいわけだ。

 でも知恵って言ってもなぁ……ぶっちゃけ本当はそんなに女性経験豊富なわけじゃないし。ていうか甘酸っぱい告白を経てラブラブな恋人になる、とか普通の男女関係は僕も一切経験ないぞ。初めてはクソ犬とバカ猫に逆レイプされて奪われたし。

 ヤベェ、経験に基づいたアドバイスなんて塵ほども無いな? しかし仲間、そして男として僕に頼ってきてるわけだし、ここはそれっぽい事を言って煙に巻くとしよう。


「……さっきから話を聞いてると、自分がどうしたいかばっかりで向こうの事を全然考えてないように聞こえるよ? 接し方って言ってもここは自分じゃなくて、カレンがどう接して欲しいかって話じゃない? そればっかりは幾ら経験豊富な僕でも分かんないよ」

「カレン、さんが、どう接して欲しいか……」


 どうやら上手くそれっぽい事を言って誤魔化せたみたいで、ラッセルはハッとしたような顔になた。それと同時に自分の行いを悔やむような顔にも。

 まあ真面目で誠実でムッツリなラッセルくんの事。今一番不安なのは憧れの人自身で、自分はあくまでも戸惑ってるだけっていうのが分かったんだろうね。ラッセル自身のカレンへの接し方が目に見えて混乱してるせいで、未だにカレンは秘密を打ち明ける事ができて良かったって感じの表情はしてないし。


「……言われてみれば、その通りですね。僕は自分がどう接するべきかのみを考えて、カレンさんが望む事を考えていませんでした……」


 頭も悪くないし、あとは勝手にそれっぽい結論を自分で出してくれそうだから楽だね。良かった、これで僕は女性経験豊富な頼れる男として認識されたままだ。実際は異常者経験しか豊富じゃないのを悟られてはいけないぞ?


「……分かりました。では、カレンさんに直接聞いてきます。あの人は自らの秘密を打ち明けるという途轍もない勇気を見せてくれたのですし、僕も勇気を見せなければいきませんからね。相談に乗ってくださってありがとうございます、クルスさん」

「うん、頑張れー」


 自分の中で結論も出したみたいで、ラッセルは最後にぺこりと頭を下げてからキャンプ地に戻って行った。きっとカレンの所に行って、直接どんな風に接して欲しいかを尋ねるんだろうね。青春だなぁ?

 それはそうと、普通の女性関係か……折を見て僕もそういう経験を積んだ方が良いんだろうか? こう、別人に扮して一般の女の子と友達から始まり肉体関係まで持っていく感じの経験を……いや、でもアレだな。万が一そんな事してるとバレたら、その女の子が犬か猫に闇討ちされそう……。





⋇やるかやらないかで言えば犬猫はやる

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