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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第12章:呪われた旅路

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ラッセルくんの色恋



 翌朝、僕が目覚める事でセレスと交代での警戒はひとまず終わりを迎えた。目が覚めた時、目の前にセレスが横になって僕の顔をじっと眺めてたから凄い怖かったよ。いや、その表情自体はとっても幸せそうで柔らかかったよ? でも一体いつから僕の寝顔を眺めてたんですかね? ていうか野郎の寝顔を眺めてそんなに楽しい? トゥーラも良くやるけどさ……。

 とりあえず意外と愛が重そうなセレスと朝食を共にしたり、何やかんやして出発の準備を整えました。テントはそのまま空間収納の放り込むだけだからかなり楽だね。


「おはようございます、クルスさん。セレスさん」

「おはよー、ラッセルくん! カレイド!」


 そんなこんなで、馬車の所でラッセルたちと合流。残念ながらカレイドはいつもの無骨な全身鎧姿で、露出は一ミリも増えてない。そしてラッセルくんは特に性癖が破壊された様子も無いし、カレイドは自分が女だって事を明かしてもいない様子。ケッ、チキン野郎が……いや、女だったか。


「おはよう、二人とも。昨晩はよく眠れた?」

「いえ、実を言うとあまり眠れていませんね。昨晩からあなたたちと同じように、僕とカレイドさんも交代で仮眠を取っていますので、少々睡眠時間が足りない気がします」

「まあそれは仕方ない。でも馬車で移動中にも眠れるんだし、問題無いでしょ。だよね、カレイド?」

『……ああ』


 僕が声をかけると、ワンテンポ遅れて短い頷きが返ってくる。睡眠不足で調子悪いのかな? あるいは昨日の僕の挑発がまだ効いてるんだろうか。この腰抜けぇ!


「……ところでクルスさん、昨晩カレイドさんと一体何を話したんですか? 昨晩から何やら様子が少しおかしいのですが?」

「何故僕のせいだと決めつける? もしかしたらお前が寝てる時に変な寝言口走ったりして呆れてるのかもしれないぞ?」

「なっ!? た、確かに僕は少し寝相は悪いですが、変な寝言なんて口にしません! 馬鹿にするのも大概にしてください!」


 誤魔化すためにラッセルが悪いと擦り付けると、途端に犬耳を尖らせて顔を真っ赤にして反論してくる。ラッセルくん、意外と寝相悪いのね……。


「というか、カレイドさんの様子が変わったのは昨晩睡眠をとる前からです! 絶対にあなたの仕業でしょう!」

「おっと、バレたか。でも僕は変な話なんてしてないよ。ただちょっと本人的には思う所があったんだろうね」

『………………』


 チラリと視線を向けると、無言で睨みを向けてくるカレイド。フルフェイスの兜だから顔も目も一切見えないけど、下の素顔を知ってるからどんな表情してるかは何となく分かるよね。変な事を言うなよ、って僕の事睨んでるのが手に取るように分かるぜ。


「……一体どのような話をしたんですか?」

「言えないなぁ? カレイドのプライベートに関わる事だもん。どうしても知りたいなら本人に聞きなよ。それとも君は憧れの人の個人的な事を他人から聞き出すのがお好み?」


 下手な事を言うと怒られそうだし、普通に本人から聞き出せって返した。ラッセルくんはちょっと悔しそうな顔をしてたけど、根が真面目だから他人から秘密を聞き出すのは咎めたんだろうね。ちらっとカレイドの方を見て、納得したように頷いてたよ。


「……分かりました。何とかカレイドさんから聞き出してみます」

「頑張れー。ちなみに聞き出す時は小首を傾げて上目遣いにお願いすると効果的かもしれないぞ」

「何を言っているんですか、あなたは?」


 せっかく効果的な方法を教えてあげたのに、ラッセルくんは微塵も理解できないって感じの表情を向けてくる。

 まあラッセルはカレイドの鎧の中身が男らしい男だと思ってるから、そんな頼み方が効果的とは欠片も思ってないだろうなぁ。本当はショタが好きそうなサキュバスだからかなり効果的なのに……。


「や、やっぱり、そういう事なの……? うわぁ……!」


 なお、カレイドがそっち系の趣味の男だと勘違いしていらっしゃるセレスさんは、僕の発言に顔を赤らめてたよ。妙に瞳を期待に輝かせながらね。コイツ、腐ってやがる……。






『………………』

「………………」

「………………」

「すー……すー……」


 そして、馬車での移動の時間。荷台の中には僕の膝を枕にしてるセレスの可愛らしい寝息と、馬車の走る音だけが聞こえてた。そして僕の向かいにはじっとこちらを睨むカレイドとラッセルの姿。

 何だこの果てしなくいたたまれない状況は。馬車と寝息の二つの音色が無かったら居心地の悪さに耐えられず叫び出してた所だよ。何でこんなお通夜みたいな空気になってんのかな?


「あの、ちょっとこの空気止めよ? もっと楽しく賑やかに過ごさない?」

『誰のせいでこんな空気になっていると思っている?』

「その通りです。しかも張本人は女性を侍らせて鼻の下を伸ばしているので殊更に憎らしいですね」


 などと僕が控えめに言うと、二人して機嫌悪そうな答えを返してくる。特にラッセルは僕の膝の上でおねむになってるセレスを見て、何やら嫉妬とも取れる言葉を口にしたね。

 ちなみにセレスは気付いたら僕の肩に寄りかかって眠ってたから、そのまま膝枕してあげただけだよ。昨晩は仮眠と警戒の交代で時間を過ごしてたから、少し睡眠時間が足りなかったんでしょうね。


「お? 何だ、羨ましいのかな?」

「そ、そんな事あるはずがないでしょう! 僕は女性に興味なんてありません!」

「なるほど、つまりホモなの?」

「違います! 言葉の綾です! 僕は強くなるために、色恋に現を抜かす暇は無いという事です!」


 ちょっとからかってみると、途端に顔を真っ赤にして怒りだすラッセル。うーん、青少年のお手本みたいな反応で面白いなぁ。ホモ扱いされただけでこんな反応するとは、真面目で取っつきにくいせいで下ネタ話に耐性が無いんだろうか。からかい甲斐があるなぁ!


『……だが、お前も年頃の男だろう? 本当に興味は無いのか?』

「なっ!? か、カレイドさんまで何を言うんですか!?」


 おや、これは更に面白い。僕が弄り倒そうと思った直後に、カレイドが話題を深めて来たぞ。

 このタイミングでこれを聞くって事は、やっぱりカレイドはラッセルが好みなんだろうか。どうやらおねショタ展開が現実味を帯びてきましたね……。


「良いじゃん別に。ぶっちゃけちゃえよ。ほら、唯一の女の子のセレスは今眠ってるしさ? 男だけの本音トークしようぜ?」


 なので僕は当然のように悪ノリする。本当はそこの全身鎧の中身が美女だって事は知ってるけど、そんな事はおくびにも出さないぞ。今だけは言っちゃったら面白くないしな!


『俺としては、年頃の男が色恋に興味が全く無いというのも不健全だと思うぞ。お前が女性に興味が無いと言うのは、その……さすがに少し、不安になる……』


 などと妙に言い淀むカレイドさん(サキュバス)。そりゃあ男の妄想の塊みたいな姿してるし、その辺不安になるのは仕方ないよね。これでラッセルくんが興味ないって言ったら脈無しだし。

 とはいえラッセル君がいくらクソ真面目な奴だろうと、立派な男の子。それに性欲の強いイメージがある獣人だ。だから恐らくは硬派を気取ってるだけで、興味がないなどという事はありえない。


「そ、それは……その……興味が無い事は、無いです……」

「フォーウ! ぶっちゃけたな!」


 カレイドの後押しが効いたらしく、ラッセルくんは恥ずかしそうに顔を赤らめながらぽつりと答えた。残念ながらショタの恥じらい顔は僕にはノーダメだったけど、そっち系のお姉さん方にはめっちゃ効きそうだね。兜のせいでカレイドの反応が見えないのが惜しい所。


「まあ、僕も一応は男ですから……ですが僕の見た目は男らしく無い上、付き合いづらい性格をしています。例え僕が女性を好きになったとしても、その女性からすれば僕は論外でしょう」

『そんな事は無い。確かにお前は小柄で力強さとは無縁の姿をしているが、その心はそこらの男とは比較にならないほど熱く激しく燃え盛っている。貪欲に強さを追い求めるその姿勢、それが男らしさでなくて何だと言うんだ。もっと自信を持て』

「あ……ありがとうございます、カレイドさん。そんな事を言われたのは初めてです……」


 そして自嘲気味に呟くラッセルに対し、とても親身になって慰めるカレイド。これにはラッセルくんも嬉しそうにはにかんでるよ。その人男じゃなくて女だよ、って言ってやりてぇ……! 性癖を粉々に粉砕してやりてぇ……!


「さすがはカレイド。男らしい答えだねぇ? きっと男女関係もたっぷり経験してきたんだろうなぁ?」


 とはいえそんな事はしないって約束したから、こういう風にからかうくらいしかできない。だからせめて尊敬をたっぷりこめた瞳をカレイドに向けたよ。実際はサキュバスなのに処女って時点で経験はお察しだけどね。


『あ、ああ、その通りだ。当然だろう?』

「そういえばカレイドさんの浮ついた話を聞いた事がありませんね。やはりカレイドさんにも恋人はいるんですか? それともすでに結婚しているんでしょうか?」

『あ、いや、それはだな……』


 本当は女だって事を言えず、また実に男らしい男だと思われてるせいで否定もできず、カレイドはたじろぎながらラッセルの追及を何とか誤魔化そうとしてたよ。

 いやぁ、見てると愉快だなぁこの二人! おねショタも良いけど、いっそずっとこのままでも良いんじゃない?





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