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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第12章:呪われた旅路
315/527

求める強さ

⋇性的描写あり






「ふん。さては僕を女と見れば誰でも犯すような猿にでも見てるな? 舐められたもんだぜ」


 数秒ほど考えた後、僕は肩を竦めてそう口にする。

 多少惜しい気もするけど、結局の所カレイドを抱くのは止めておいたよ。だって抱くデメリットがデカいからね。憧れの男の人が実はサキュバスの美女だった、ってだけでもラッセルくんの性癖が破壊されかねないのに、すでに他の男に処女を奪われてたとかラッセルくん脳が壊れちゃうよ。

 それにサキュバスとエッチなんかしたらリアが怖い。アイツ僕の女性関係にはもの凄い寛容なんだけど、自分以外のサキュバスに手を出そうとしたら闇を漂わせるんだわ。以前リアの前で冗談交じりに地下牢のサキュバスを犯そうとしたら、とんでもねぇ濁った瞳で見られて寒気が走ったよ。普段は従順で愛らしいんだけど、やっぱりサキュバス関連は地雷だね……。


「……そう口にする割には勃起していないか?」

「………………」


 冷静に指摘してくるカレイドに対し、無言であぐらから膝を立ててズボンの盛り上がりを隠す。

 身体的な反応くらい仕方ないだろ。こちとら旅が始まってからというもの女を抱けず、それなのにセレスが積極的にくっついてくるから色々溜まってるんだよ。そんな状態でこんな美味しいシチュエーションに遭遇したにも拘わらず、バッサリと断ったんだよ? 勃起くらいは許して欲しいね?


「別に身体を対価にしなくても秘密くらい黙っといてあげるよ。これでも僕は清廉潔白で品行方正な心優しい男なんだ」

「それならば俺としても喜ばしいのだが、お前は自己評価が天を突くほどに高いな」


 自己評価が疑わしいみたいで、金色の瞳をジトっと細めて睨んでくるカレイド。僕のズボンの盛り上がりを見た後に天を突くという表現を使うとは、なかなかシャレてますね。ハハッ。


「まあ冗談はさておき、秘密を守る事に嘘は無いよ。というか万一お前とヤったら、後でもの凄い怒りそうな奴がうちにいるからね……」

「フッ。お前ほどの男が、随分と尻に敷かれているようだな」


 これは本当の事だと思われたみたいで、カレイドはニヤリと笑い脱ぎ去ったタンクトップを着直す。

 しかしそんなに僕は尻に敷かれてるイメージあるかな? まあ夜は僕が組み敷いてるから、その反動的なもので普段はそう見えるんだろうか? あるいは僕が真の仲間には寛容だからか? 何だかんだであのクソ犬とかも受け入れてるしね。


「だが、何も支払わずに秘密を守って貰おうなどおこがましいだろう。身体がいらないというのなら、何か他に求める物は無いのか?」

「求める物ねぇ……おねショタ?」

「……何だそれは?」

「いや、ごめん。言い間違い。気にしないで」


 どうやらいかにサキュバスと言えどおねショタという概念は無いらしい。まあ呼び方が無いだけでショタを好む性癖は普通にあると思う。だからカレイドとラッセルくんをくっつけておねショタ展開になる可能性もゼロじゃないってわけだ。リアルなおねショタってどんな感じかちょっと気になるから、思わず口をついて欲望が出ちゃったよ。失敗失敗。


「そうだねぇ、じゃあ一つお願いを聞いて貰おう。今後寝る時はラッセルと同じテント内で寝てくれる?」


 気を取り直して本題――というか当初の目的に戻る。全身鎧で姿を隠してるって前提があるから難しいだろうけど、言うだけならタダだ。

 おねショタという概念を知らないカレイドは僕の発言にそっち系の考えを思い浮かべることなく、酷く真面目な顔してたよ。男前で美しい表情してますね……。


「……交代で警戒をしろというわけか。確かにこの旅は雲行きが怪しいからな」

「そういう事。でもさすがに厳しいかな? そんな全身鎧纏ってたら休めないだろうし」

「いや、そうでもない。元々この鎧は四六時中纏う事を想定して特注で造らせた物だ。内部の環境を可能な限り快適に保つ魔法陣も刻んである。さすがに何カ月も続くと厳しいが、この旅の間程度ならば問題無い」

「あ、そうなんだ。よく見れば内側は意外と柔らかそう……」


 カレイドが鎧の部品をひょいっと投げてくるから、受け取って色々と確かめてみる。確かに内側はスライムを思わせる透明なプニプニ素材になってて、感触も衝撃吸収力も抜群って感じだ。そしてプニプニの向こう、鎧本体の内側には魔法陣が幾つか刻まれてる。

 なるほど。これなら四六時中纏ってても問題無さそうだ。完全に鎧に引きこもる前提の装備ですね……。


「ともかく、お前の頼みは了解した。今晩からアイツと同じテントを使い、交代で休むとしよう」

「うん、お願いね。それと、これはできればで良いんだけど……ラッセルに秘密を明かしてあげて欲しいな?」


 たぶん拒否されるとは思うけど、僕はあえてそう口にした。おねショタ展開実現しろ! 性癖破壊されたラッセルくんの姿を見てみたい!


「……悪いがそれは無理な相談だ。アイツは鎧の中身が筋骨隆々の逞しく強い男だと思っているんだ。中身がこんな奴だという事を知られてしまえば、幻滅させてしまう」

「いやぁ、たぶん大丈夫じゃない? まあラッセルくんの中で何かが壊れるだろうけど……」

「お前も知っているだろうが、ラッセルはこんな俺に憧れを抱いてくれている。ならば虚構とはいえその憧れの姿を壊すわけにはいかない。アイツにはまだまだ伸びしろがある。俺の秘密を知れば強くなるための原動力である憧れが消え去り、その才能が無駄になってしまう」

「あ、知ってたのね。ラッセルが自分に憧れてるって事……」


 いや、あれだけ分かりやすく懐いてたら誰だって分かるか。特に犬獣人は忠誠心とかその手の感情が強い傾向にあるらしいし、多少鈍くたって気付くか。


「まあ、そういう事なら仕方ないか。無骨な鎧の中に隠れないと生きられない臆病者だし、自分から秘密を明かすなんてできるわけないか」

「……何が言いたい」


 だが、どうしてもおねショタ展開に誘導したい! だから僕は挑発する事にしました。明らかに侮辱されたせいか、カレイドは瞳を剣呑に細めて睨みつけてきたよ。顔が良いせいで絵になってて、いまいち迫力は無かったけどね。


「だってそうでしょ? 果てなき強さを求めてる癖に、自分の本当の姿を知られるのを怖がってるんだもん。これを臆病と言わずに何というのさ?」

「違う! 俺は臆病などではない!」


 僕の発言に立ち上がり、怒声を飛ばしてくるカレイド。

 本人は違うって言ってるけど、こんな反応してる時点でたぶん間違っちゃいないんだよなぁ。無意識の奥で恐れてるのは事実だと思われる。


「いいや、臆病だよ。だって本当に強い奴なら、周りに馬鹿にされようが嘲笑われようが関係ないはずだよ。確固たる信念と目的があれば、周囲からの評価なんて気にならないはずだしね。人の目や反応を気にしてる時点で、君が怯えてるのは明白じゃん?」

「……っ!」


 だからもっと深い所を突いてやると、カレイドは怒りに口を開きかけ――そのまま何も言えずに凍り付いた。思い当たる節はあったみたいで、徐々に表情が驚愕と困惑に変化してく。

 そもそも昔話を聞いた感じだと、カレイドの憧れは精神的な強さの方に比重が置かれてるように感じた。どれだけボロボロになろうと、決して諦めずに立ち向かうその姿に憧れたって言ってたしね。

 でもカレイドが目指してるのはSランクの冒険者とかいう、他者からの評価な上にメンタル全く関係ない物理的な強さ。この時点で矛盾出まくりだし、人の目を気にしてるのは明らかだよ。


「まあ、君が一生全身鎧の中に引きこもっていようと別に構わないけどね。それは個人の自由だし。ただ人の目を気にして縮こまってる間は、例えSランクの冒険者になれても真の強さを得たとは言えないって事だけは覚えといてよ」


 目指してる物があまりにもあやふやで矛盾しててもやもやするから、スッキリするためにそう助言してあげた。

 これでカレイドが鎧をやめるなら、中身とのギャップに狼狽えるラッセル君が見られて楽しい事になるから、是非とも殻を破って欲しいね。ラッセル君どんな反応するか本当に楽しみだわ。

 やめずに鎧に引きこもったままなら、まあ……その程度の奴だったって事だね。


「とにかく秘密は守ってあげるよ。それじゃあ僕は自分のテントに戻るね」


 何にせよ交代での仮眠と警戒はしてくれるみたいだし、今のところそれ以上は望むべきじゃないかな。鎧やってる期間も一年や二年じゃないだろうし、コイツの中じゃ即座に決められるほど軽いものじゃないでしょ。


「俺は……俺は……」


 カレイドは何かショックを受けたような顔で呆然としてたけど、かけるべき言葉はさっき口にしたから持ち合わせてない。だからさっさとテントを出て、内緒話をするために展開してた遮音の結界を解除して自分のテントに戻ったよ。

 とりあえず明日の様子がどうなるかだね。とはいえあの様子だと長い事うじうじ悩んでそうかな?


「えへへ……駄目だよぉ、クルスくん……そんなとこ、触っちゃぁ……」


 ちなみにテントに戻ると、カレイドと同じく自分を偽ってる女の子が幸せそうな顔で寝言を零してたよ。まあセレスの場合は女である事は隠してないし、そこを考えるとカレイドよりはマシかな……? 






性癖をぶっ壊されるか、脳を破壊されるかの二択しかないラッセル君。

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