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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第12章:呪われた旅路
313/527

冒険者ギルドの目的

⋇性的描写あり

⋇胸糞描写あり





 その日の夜。野営の準備を終えて夕食もセレスと一緒に食べた僕は、満を持してカレイドの元に向かう事にした。クズばっかりの場所で女の子一人テントに残すのはちょっと不安だけど、まあセレスは強いし大丈夫でしょ。

 それに万一セレスがクズ共に襲われたなら、それはそれで興奮するシチュエーションだから問題無し。僕は純愛も凌辱も拷問もイケます!


「さて、それじゃあちょっとカレイドのとこ行ってくるよ。留守番よろしくね?」

「うん。いってらっしゃい、あなた!」


 食事による腹の重さが少しマシになった頃、カレイドの所に行こうと腰を上げた途端にそんな若妻みたいな言葉がかけられる。本当グイグイ来ますね、コイツ。これで告白自体はまだしてないってマジ?


「………………」

「………………」


 驚きと感心と呆れがない混ぜになった状態でじっと見下ろしてると、さすがに恥ずかしかったのかセレスの顔がドンドンと真っ赤に染まってく。まあ今のは恋人どころか一足飛びに夫婦になってたもんね。ちょっと段階飛ばし過ぎだぞ。


「……な、何か言ってよぉ! 無言でいられると恥ずかしいよぉ……!」

「恥ずかしがるくらいなら最初からやらないで欲しいんだけどなぁ。あまりにもびっくりして心臓止まるかと思ったわ。でも――とても興奮しました」

「こっ――!?」


 さすがに驚かされっぱなしは癪だし、ここらでちょっと反撃してみる事にした。とはいえ『興奮した』の一言だけで目を見開いてあわあわしてるし、やっぱり恋する乙女は攻撃力だけが妙に高いみたいだね。

 でも手加減はしない! だから僕は座ったままのセレスに半ば押し倒すような形で覆い被さると、お互いの吐息を感じられる超至近距離からその青い瞳を見つめた。顎を指先でクイっと持ち上げてやりながらね?


「何なら僕も同じような事しようか? 例えば――いってきますのキスとか?」

「き、キス……!」


 そして、セレスの唇にふっと息を吹きかけながらそんな台詞を口にする。

 正直自分でもシュールストレミング並みに臭くてキザな事やってる自覚はあるけど、セレスの性格や好感度を考えるにこれくらいやっても大丈夫だっていう自信があったんだ。じゃなきゃこんな臭すぎる真似するわけないだろ。そもそも僕のツラはこういうのが似合うのとは方向性が違うもんね。自己犠牲系の優男顔だし。


「……っ!」


 ただ、効果は思った以上に絶大だったみたい。セレスは何やら覚悟を決めたみたいに瞳を閉じて、真っ赤な顔でぷるぷる震えてたよ。しかも自分から顔を上向けて僅かに唇を突き出すキス待ちの状態でね。

 どうしようかな、これ。冗談とか言えない空気になっちゃったぞ……。


「……睡眠(スリープ)

「ふあっ……!」


 やむなく強制的に眠らせる事でセレスルートをキャンセル。今ちょっと忙しいから女に手を出してる暇も無いんだわ。すまんね?

 そんなわけで僕はセレスを寝袋の中に突っ込んで何も無かった事にしました。妙に幸せそうな顔で眠ってるのがちょっと気になるけど、もしかしたらさっきの一幕を夢の中で続けてるのかもしれない。それくらいならまあ良いか。


「……さて。気を取り直して、カレイドのとこに行こう」


 面倒事を終えた僕は、満を持してカレイドの所へと向かった。

 僕とセレスのテントはサークル状のキャンプ地の端で、カレイドとラッセルのテントはその逆側の端。つまり最短距離で向かうにはキャンプ地の中央、クズ共のテントの間を通らないといけない。しっかり力と格の違いを見せつけたから、幾ら頭の悪いクズ共でも僕を襲ってくることは無いんだけど――


「嫌あああぁあぁあぁぁっ!!」

「ふうっ。やっぱ獣人のガキは締め付けも強くて最高だぜ……」

「おい、どけよ! 次は俺の番だぞ!」

「やだ、もうやめて……! いやだよぉ……!」


 代わりに何かこう、途轍もなく犯罪的な声とかが聞こえてきますね。詳細に描写するとヤバそうだからあえて詳しくは言わないけど、聖人族奴隷少女のガチの悲鳴とか、妖しげな水音とか、肉と肉がぶつかり合う音とか聞こえてくるよ。近くのテントの中からは小さな人影に大勢の大柄な人影が群がってる妙な影絵も見えるし。一体何をやってるんだろうなー。


「おら、脱げ! もっと嫌らしく腰を振って脱ぎやがれ!」

「ん……こうですか?」

「おぉ、いいぞ! ケツも振ってしっかり俺らを楽しませろよな!」

「もちろんです。それが私たちの存在理由ですから」


 そしてそんな阿鼻叫喚地獄の中にぽつぽつと紛れてる、さも幸せそうな声で男たちの要求に応える聖人族奴隷少女(高級)。生まれた時からそういう風に教育されてるせいで、どんな命令にも喜んで従ってるみたいだね。

 高級奴隷の割合が少ないのは元々連れてきた割合が少ない事、そして大半の高級奴隷には見張りを任せてるからってのが大きそうだね。クズ共が見張りの奴隷少女を連れて行かないのは、奴隷少女を安心して嬲るためには見張りが必要だって分かってくれてるんだろうか? そうだと嬉しいな。

 何にせよ僕は嬌声や悲鳴や怒声や罵声が聞こえる地獄のキャンプ地を悠々と歩き、カレイドたちのテントへと向かった。お空に輝くお月様がとっても綺麗だなー。地上の薄汚さとは文字通り天と地ほどの差があるね。


「お、ここかな。で、どっちがカレイドのテントだろうか」


 やがて辿り着いた先には、数メートルほど距離を開けて二つのテントがあった。大きめな黒いテントと、一回り小さめな黒いテント。いやまあ、あの二人の身体の大きさを考えればどっちがどっちかは丸分かりだね。ていうかテントの色までおそろいにするとか、随分憧れちゃってますねぇ?

 さて、問題はどうやって入るかだが……。


「――おや、クルスさんでしたか。わざわざこちらまで来るとは、何か用ですか?」


 入り方を考えてると、小さいテントの方からラッセルが出てきた。台詞から考えると誰かが来た事を察して出て来たらしい。そういえば犬獣人だし耳は良いのか。テントも近いし、カレイドとお話する時は防音の結界を張った方が良さそうだな。


「うん、実はカレイドにちょっと個人的な話があってね。ただ来たは良いけど、どんな風に話を切り出すべきかちょっと迷ってるんだ」

「そうですか……」


 内容はともかく用事自体は隠す事も無いし、正直に答える。

 ただラッセルは何やら思う所があったのか、カレイドのテントをチラリと見て少し思案してるような顔をしてたね。


「……クルスさん。急ぎの用事で無いのなら、少し僕とお話しませんか? 実はちょっとお話したい事――というより、相談したい事があるんです」


 そして数瞬の後、真面目そうな表情でそう提案してきた。表情からして絶対面倒そうな話だぞ、これ。しかもカレイドの方を確認してから提案してきた辺り、信頼し憧れてるカレイドには話せないようなヤバい内容の。


「うん。面倒だから嫌だ」

「ありがとうございます。何も無い所ですが上がってください」

「嫌って言ったろ! は・な・せ!」


 ばっさり断ったのに意外と図太いのか、あるいは完全にスルーしたのか、ラッセルは僕の服を引っ張って無理やりテントに引きずり込み始めたよ。キャー、助けてー!




 


「――それで? 話したい事とは何ぞや?」


 お菓子とお茶でもてなされた以上は話を聞くのが筋ってものだろうし、やむなく僕は面倒そうな話を聞くことにした。無理やり引きずり込まれても通すべき筋があるのかどうかは激しく疑問だけどね。まあラッセルは今は仲間だし、ここは信頼や友情を深めるためにも話を聞いておくのが得策でしょうよ。

 そんなわけで、僕らは小さなテントの中で向かい合って膝を付き合わせてる。といっても正座してるのはラッセルだけで、僕は普通にあぐらかいてるけどさ。

 ちなみにラッセルのテントの中はびっくりするくらい何も無かったよ。精々本が大量に置いてあるくらいか。あとはお手入れ中と思しき暗器の数々くらいかね。つまらん。


「そうですね……一言で言うなら、冒険者ギルドの目的、といった所でしょうか」

「冒険者ギルドの目的ぃ?」


 そしてラッセルは何やらキナ臭い話を始めた。

 ここで言う冒険者ギルドっていうのは、あの街の冒険者ギルドだけだろうか? それとも全部の街のあらゆる冒険者ギルド? こんな面倒な旅の最中に陰謀論に巻き込まないで欲しいなぁ……。


「クルスさん、幾ら何でもあんなゴロツキか野盗紛いの低ランク冒険者ばかりが集うのはおかしいと思いませんか? 平時の討伐依頼程度ならともかく、今回の依頼は国どころか世界の趨勢すら左右する重要な目的の依頼ですよ?」

「そりゃあおかしいとは思うよ。でもギルマスも頭おかしかったし、他にも頭のおかしいギルマスを知ってるし、まあそんな事もあるかなぁで片付けちゃったね」


 僕がこの世界で初めて利用した冒険者ギルドのギルマスがアレ(クソ犬)だったし、それと比べたらピグロの街のギルマスはまだまともにすら感じるよ。そもそも僕からすれば一般市民ですら頭がおかしく見えるしね。何せ僕が引くほどの惨い仕打ちを、敵種族とはいえ年端も行かない子供にするくらいだし。よく考えるとちょっと感覚が麻痺してる節があるな……。


「そうですか。実は少しあのゴロツキ共から話を聞いてみたのですが、どうやら彼らのほぼ全員が自分から依頼を受けたのではなく、ギルドから直接指名を受けたらしいのです」

「ギルドから依頼ぃ? あんな奴らを指名するとか、ギルドの人たち目が腐ってんのかな?」

「その可能性もありそうですが……僕はむしろ、先見の明がありそうだと思っています」

「先見の明ねぇ……」


 あんなクズ共を邪神討伐に送り込むのが賢い選択って事? 何か話がややこしくなってきたな。これなら陰謀論の方が楽しめるだけまだマシだったかもしれん。


「僕たちが邪神を討伐できなかった場合、邪神は更に力を取り戻し世界を襲う脅威は飛躍的に増大するでしょう。そうなった場合、最早魔獣族と聖人族が争っている場合ではありません。僕らのようなまともな思考ができる者たちは、一時的ならば休戦や共闘もやむなしと考え受け入れる事ができるでしょう。ですが、あのようなクズ共は違います。双方の種族が手を取り合う事を拒否し、妨害すらするかもしれません」

「……そういうことか。僕らはゴミ掃除に体良く利用されてるわけだ」


 理路整然と語ってくれたラッセルのおかげで、僕はようやく冒険者ギルドの真意を理解できた。

 どうやら皆クズばっかりと決めつけてた僕の目が曇ってただけで、一応未来や大局を見据える事ができた奴らが冒険者ギルドの上層部にはいたみたいだ。そういう奴らは聖人族との休戦や共闘が避けられないことを理解してて、その時絶対に邪魔になる同族の過激派冒険者をここで体良く処理しようと画策してるっぽいね。


「そうです。恐らく冒険者ギルドとしては、僕らが邪神を討伐できようとできなかろうとどちらでも構わないのでしょう。どちらであろうと、自分たちにとっては利益となるので」

「なるほどねぇ。確かに冒険者ギルドは先見の明があるね」


 僕らが邪神を討伐できれば、それはそれで歓迎すべき事態。逆に討伐に失敗して全滅しても、ゴミクズ冒険者たちを纏めて処理出来てプラスになる。かなりまともな人間性を持った高ランクの三人(僕を含めると四人)も犠牲になるけど、聖人族との休戦や共闘が叶えば安い犠牲だろうし。これは先見の明があると言わざるを得ないね。


「……ちなみにこの考え、他に誰かに話したの?」

「いいえ、誰にも話していません。もちろんカレイドさんにも」

「逆に何で話してないの? お前なら真っ先にカレイドに話しそうな気がするのに……」


 まあ誰が見ても分かる通り、ラッセルはカレイドをとても崇拝してる。そんなラッセルがこの事実を伝えず隠してるのはとっても不自然だ。あまつさえ僕にだけ話してるし。


「話さなくともカレイドさんなら気付いているかもしれませんから。それに、知らないなら知らないでいてくれた方が助かります」

「助かる……?」

「ええ。クルスさん、もしも僕たち全員が危機的状況に陥った場合は、低ランク冒険者たちを囮や捨て駒にする方向で行動しましょう。元々冒険者ギルドから切り捨てられた者たちです。僕たちが邪神を討伐できるよう、せめて最大限活用してさしあげましょう」

「なかなかエグイ事考えるなぁ……」


 覚悟完了した感じの決まった瞳で、実にとんでもない事を言い切るラッセル。

 なるほど、確かにこれは憧れのカレイドには話せないね。幾らギルドから邪魔者と認定されたクズ共でも、積極的に囮や捨て駒にする事を許容するような人間とは思えないし。ラッセルもそれが分かってるからこそ、あえて僕にだけ冒険者ギルドの目的とこの考えを話したんだろうなぁ。

 しかし真面目で誠実な顔してる癖に、容赦なく捨て駒や囮にする事を考え付くとは……初対面より好印象だぞ? 自分が弱い事を理解していて、強くなるためにあらゆる手段を講じて足掻いてるだけはあるね。


「……オッケー。僕だって命は惜しいし、セレスくらいは助けてあげたいからね。そういう状況になったらクズ共には僕らの盾となってもらおうか」


 特に反対する理由も無いし、ラッセルの案に賛成を示す。邪神的にはセレスたちは見逃す見逃さないに拘わらず、あのクズ共は皆殺しにするって決めてるからね。どう転んでも結果は変わらん。

 僕の答えにちょっと安心したのか、ラッセルは深い安堵のため息を零してたよ。まあ話の内容が内容だからねぇ……。


「そう言ってくれるとありがたいです。ただこの事は、くれぐれもカレイドさんたちには内密にしましょう」

「りょ」


 そうして二人だけの秘密を交わした所で、お話は終わり。ラッセルは暗器の手入れに戻り、僕はテントの外へと出た。

 いやー、それにしてもなかなか驚きの時間だったね。冒険者ギルドがとても強かだったり、真面目で潔癖なショタかと思ってたラッセルが予想外に汚れてたりと、それなりに面白くて有意義なお話だったよ。


「……さて。予想外に重い話になったが、今度こそカレイドとのお話だ」


 とりあえず気持ちを切り替えて、当初の目的を果たすためにカレイドのテントの前に立つ。突入する前に耳の良いラッセルには話を聞かれないよう、テントを中心に防音の結界を張っておく。もちろん中にいるカレイドが不審に思わないよう、外から内へ届く音は遮断しない。

 これで内緒話をする空間は構築完了。準備も完了だ。唯一の問題はどんな風に話を切り出すかだけど――もう面倒だからそれについてはアドリブで行こう。大丈夫、僕は出来る子だからそれくらい余裕さ!


「――やあ、カレイド。こんばんは。ちょっと良いかな?」


 というわけで、僕はカレイドのテントに気さくな挨拶をしながら入った。この後は世間話からプライベートな話に踏み込めばオッケー。コミュ力の高い僕には簡単さ。なんて思ってたんだけど――


「……おっと」


 テントの中には無骨な全身鎧の人物じゃなく、巨乳で褐色肌の銀髪美女がいて、これにはコミュ力の高い僕も凍り付いちゃったね。しかも濡れタオルで身体を拭いてる最中だったのか素っ裸だし。やべぇ、これどうしよう?

Q.何故低ランク冒険者たちがお手本みたいなクズばっかりだった?

A.そういう奴らを纏めて掃除するために選ばれたから


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