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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第2章:勇者と奴隷と殺人鬼
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奴隷との邂逅


「勇者様、勇者様! あの子が意識を取り戻しましたよ!」


 晩御飯を食べ終えてからハニエルの部屋に向かうと、部屋の前でそれはもう嬉しそうな笑顔のハニエルが出迎えてくれた。

 一人の奴隷の命を助けられたことがよっぽど嬉しいんだろうね? ここであの荷物落とした奴隷が死んだってこと伝えたら、この笑顔は一体どんな風に曇るんだろう。すっごい気になるけどフォローが面倒だから今はやめとこう。


「それはさっき聞いたよ。で、どんな感じ?」

「とっても元気ですよ。正直な所、あんな魔法をかけるなんて勇者様の正気を疑いましたけど、結果的にはそれが功を奏したみたいです。それはもう、見た目もびっくりするくらいに様変わりしましたから」


 ニコニコ笑顔で翼をパタパタはためかせてる辺り、相当な変わりようなんだと思う。そりゃ栄養失調で死にかけてるような状態の所に、溢れるほどに栄養を注いでやったんだからね。別人みたいになってても僕は驚かないよ。


「へぇ、それは楽しみだ。さて、それじゃあ自己紹介のために猫を被るとするかな。今後の上下関係を教え込むためにも第一印象が肝心だしね」

「思い返してみると、勇者様は自己紹介の時に何枚も猫を被っていましたよね。正直なところ、ここまで見た目と中身が一致しない人は初めてです……」


 ハニエルの呟きは聞かなかったことにして、とりあえず三枚くらい優しい勇者としての皮を被る。

 今の僕は笑顔が素敵で誰にでも優しそうな素晴らしい勇者様。さて、それじゃあ元気になったロリサキュバスとご対面だ!


「やあ、初めまして! 僕の名前はクル――」

「やだ、もーっ! こんな冴えない顔した真面目くんっぽい子がリアのご主人様ー? どうせリアにエッチな命令しても、直前で恥ずかしくなって何もできないんでしょ? これだから童貞くんは。ぷー、クスクス!」

「……は?」


 扉を開けてとびきりの笑顔で挨拶をしたら、自己紹介を遮られた上にそんな挑発的な台詞がかけられた。

 これにはさすがに僕も目を丸くしちゃったよ。かけられた言葉の内容もそうだけど、何よりその発言の主の見た目が信じられなかったね。

 だってボロボロになってた肌は見るからにすべすべもちもちになってて、幼女特有の柔らかさが存分に感じられそうな堪らない魅力を放ってるし、髪の毛もふんわりふわふわで可愛らしいピンク色になってる。

 死んだ魚みたいに濁ってて色が分からなかった目も、今や同じくピンク色。おまけにこっちも幼女らしいくりくりお目目で愛らしいよ。抉り出して枕元に飾っておきたいくらいだね。

 確かにハニエルは見た目が様変わりしたって言ってたし、僕自身も結構変わっただろうなって思ってたよ? でも何だよこの変わりよう。ボロ雑巾がシルクのハンカチになったみたいな変わりようじゃん。最早別物だろ。そりゃ確かに別人みたいになってても驚かないって思ったけど限度があるわ。

 その上クッソ生意気で挑発的な発言を、嘲るような笑顔で並び立ててくるんだからもう我慢できないね。まともな服が無かったせいかバスタオルを身体に巻いた状態だし。

 

「メスガキ系ロリサキュバスだと? ふざけやがって、分からせてやる……!」

「きゃあっ!? いきなりズボン脱ごうとするとか何考えてんの!? もうやだっ、サイテー!」


 使命感に燃える僕がベルトを外してズボンを下ろそうとすると、一瞬で顔を真っ赤にしたロリサキュバス――リアが両手で顔を覆って、更に蝙蝠みたいなデカい翼で覆い隠す。

 メスガキ系純情ロリサキュバスとか何なのお前? 誘ってんの?


「いきなり何をするつもりなんですか勇者様! というか沸点が低すぎです! ただの子供の悪口じゃないですか!」

「いや、僕は怒ってはいないよ? ただ使命感に燃えてるだけだから。生意気なメスガキには自分の立場ってものを分からせてやらないといけない、っていうね」

「前から思っていましたけど、勇者様って見た目に反して相当歪んでますね!?」


 歪んでるかなぁ? メスガキをしつけたくなるのは健康な男の子なら皆抱く欲求だと思うけど。まあ女に男のロマンは分からないし仕方ないか。逆もまた然りだが。


「まあ冗談はさておき、元気になったようで何よりだよ。見た目も綺麗になってまぁ……これなら大銀貨一枚の元は取れそうだね」

「はあっ!? リアが大銀貨一枚とか信じられない! 値段付けた人絶対頭おかしいよ!?」

「いや、適正だったと思うよ? だってお前ボロ雑巾みたいになってたし、今にも死にそうなくらいに弱ってたしね」


 正直今この状態のままだったなら大金貨十枚は固いと思う。貴重なロリサキュバスっていう点を差し引いても、処女だし凄い値打ちものだよ。

 しかもサキュバスの癖に性教育を受けてないまっさらも良いとこな生娘だし、幼女を愛する男性諸君は喉から手が出るほど欲しがると思う。


「ふぅん? それじゃあ、あんたがリアを助けてくれたんだぁ? そこの頭お花畑の天使が言ってたことは本当だったんだねー?」

「お、お花畑……?」


 何だか隣からショックを受けたような声が聞こえてくる。

 確かに理想論ばかり口にする輩は頭がお花畑って言われても不思議じゃないな。さては青臭い理想をリアに語ったな?


「その通り。だから大人しく僕に隷属してくれると嬉しいな? いやまあすでに契約はしてあるし、反抗的なのもそれはそれでそそるから別に良いんだけどね? 反抗的な場合は従順になるまでお前が地獄を見ることになるだけだし」

「……ねぇ、コイツ見た目に反して中身が腐ってない?」

「く、腐ってるとまでは言いませんけど、歪んでいるのは確かですね……」

「おい、聞こえてるぞ」


 二人で身を寄せ合って、ひそひそと僕の陰口を口にするハニエルとリア。

 二人は気付いてないだろうけど、今の二人の姿って何気に女神様が望んでる光景そのものなんだよね。本来殺し合ってるはずの敵種族同士が仲良さげにしてるし。いやまあこの二人は特殊な方だから参考にはならんか。


「……まあいっか。どうやってリアを元気にしてくれたのかは分かんないけど、助けてくれたのは事実なんだよね? じゃあお礼にあなたの性奴隷になってあげる。どんなにエッチなことでもしてあげるよ、ご主人様?」


 事情は死にかけてたリア自身が一番良く理解してるみたいで、ペロッと舌を出してやらしい笑いを浮かべながら僕への恭順を口にしてくれた。

 それは良いんだけど、結局どうして自分が助かったのかも、何で死にかけてたのかも全然分かってないな、これ。ついでに言えばエッチなことの詳細も良く分かってないでしょ。

 まあその辺は後日教えてやればいいか。身体に直接な!


「それは楽しみだ。それじゃあ早速僕の部屋でイイコトしよう!」


 とりあえず二人きりになりたいから、リアを小脇に抱えて僕の部屋へ戻ることにした。

 分かっちゃいたけどめっちゃ軽いね、コイツ。身体も小さいし、力強く抱きしめたら簡単に砕け散りそう。


「ゆ、勇者様!? まさかこんな小さな子とエッチなことをするつもりなんですか!?」

「ん、何? ハニエルも混ざる?」

「混ざりません! 駄目ですよ! こんな子供にそんな不埒な真似をするなんて!」


 何だ、混ざらないのか。残念。天使と悪魔を同時に貪る素敵な夜になりそうなのに。いやまあ今夜はそういうことしないけどね?


「リアは子供じゃないもん! こう見えても二十歳だもん!」

「そうそう、まごうことなき合法ロリだぞ。そういうわけで僕はコイツとしっぽりするから、また明日ね」

「バイバーイ!」


 僕の小脇に抱えられたまま、リアはハニエルに対して可愛らしく手を振る。

 あざといなぁ、ちくしょう。やっぱり真の仲間とか考えず、性奴隷を買うべきだったか……?


「もうっ、信じられません! 勇者様の変態! エッチ! スケベ!」


 顔を真っ赤にして翼をバタバタさせながら、僕への罵倒を零すハニエル。

 色々酷いこと言ってるけど止められないってことは理解してるみたいだね。物分かりが良くて何よりだよ、うん。







「それでー? ご主人様は、リアに一体どんなエッチなことをするつもりなのー?」


 僕の部屋のベッドの上で、リアは悩ましいポーズを取りながら誘うような色っぽい目を向けてくる。

 これが大人のお姉さんならエロ百パーってとこなんだけど、何分見た目が幼女だからただただ小生意気なメスガキにしか見えんわ。でもまあこれはこれで興奮する……。


「その手の話をする前に、まずは僕の質問に答えてもらうよ。ハニエルからは僕の事とかどこまで聞いた?」

「魔王を倒して世界に平和をもたらす勇者様だってとこまで聞いたけど? 何が平和よ、バッカみたい。笑っちゃうわね」


 どうも僕の表向きの事情は話してたみたいだね。勇者様の使命をバッカみたいって一笑されたよ。実際そこは僕も馬鹿みたいって思ってるがな!


「へぇ? 何が馬鹿みたい?」

「だって魔王を倒したって魔獣族が全滅するわけじゃないもん。本当に世界を平和にしたいなら、魔王を含めて魔獣族を一匹残らず皆殺しにするべきなのにね?」

「なるほどねぇ。そんな発想が出て来るってことは、同族嫌悪は伊達じゃないってことか」

「……どういう意味?」


 僕が意味深な台詞を口にすると、リアの雰囲気が変わる。小生意気なメスガキから、ある種の狂気を漂わせる危険な小娘に。目つきも挑発的なものから鋭く尖った刺さりそうな感じに。

 いいねぇ、僕好みの変化だよ。


「僕は魔法で人の詳細な情報を調べられるんだよ。奴隷市場でもそうやって奴隷を物色してたってわけ。そうじゃなきゃあんな小汚いボロ雑巾みたいだった奴買わないし。お前を買ったのは調べた情報にもの凄い興味を惹かれたからだよ――フェリア?」

「っ……!」


 まだ本人が口にしていなかった本名を口にすると、リアの表情が固まって黒い尻尾がピンと立つ。

 ただ名前は別にどうでも良い。こいつの興味深かった点はもっと他にある。



 名前:フェリア

 種族:魔獣族(サキュバス族)

 職業:奴隷

 聖人族への敵意:無し

 魔獣族への敵意:極大



 うん。やっぱり何度調べてももう一回調べ直したくなる情報だね。実際奴隷市場で調べた時は三回くらい調べ直したし。

 でも情報は何ら間違ってない。このロリサキュバスは聖人族に対しての敵意は欠片も持ってないけど、その代わりに何故か同族のはずの魔獣族に対してとんでもない殺意を抱いてる。これを面白く感じないで、一体何を面白いって見なせばいいのさ?


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