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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第11章:邪神降臨

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閑話:クルスVS真の仲間たち4

⋇残酷描写あり

⋇暴力描写あり

⋇引き続きミニスちゃんの身体を強奪中






「闇よ、我が意に従え!」

「うおっと!?」


 周囲を闇に包まれたこの空間で、まず最初に襲ってきたのは闇そのものだった。具体的には凝縮した闇が鋭い先端で僕を貫こうとしてくるんだ。しかも一本じゃなくて五、六本くらいが同時に。周囲に浮かべた火球の明るさと、凝縮した事で強まった黒さでかろうじてその輪郭が捉えられて、僕は迫る鋭い闇を何とか躱す。

 でもここは四方八方三百六十度闇の広がる世界。躱した先に新たな闇が鎌首をもたげて突っ込んでくるし、何なら足場そのものが襲い掛かってくる。一歩も立ち止まる事すら許されない怒涛の如き攻めだ。


「これはまた……文字通り掌の中にいるようなもんじゃないか」

「夜を統べる吸血鬼たる我にとって、闇とは正に己の身体の一部のようなもの。その表現は何ら間違ってはいない」


 闇の中のどこかからバールの声が響いてくる。姿を視認できないのはまずいし、かといって暗視状態にすると闇による攻撃が認識できない。だから僕は妥協案として片方の視界だけ暗視できる状態にした。もちろん僕自身が浮かべてる火球の灯りは反応しないように設定してね。これで遠くの方に立つバールの姿が視認できるようになったぞ。

 反面襲い来る闇に対する距離感がちょいおかしくなったけど、まあこれは仕方ない。元々黒一色で厚みも分かりにくいしそんな変わらん。


「――故に闇で以て貴様を攻め立てながら、新たな攻撃を繰り出すことも容易い!」


 なんて声と共に、バールが血液入りの瓶を二本取り出したのが見えた。さては闇で攻撃しつつ血の鞭でも攻撃してくる気だな? 

 予想通り瓶の中から血が噴き出し、まるで大蛇か竜のようにうねりながら僕に向かって伸びてきた。もちろん複数に枝分かれして何本にも増殖しながらね。細かい所までは見えないけど、どうせ闘技大会の時と同じく高速で対流してる切れ味抜群のアレなのは考えるまでも無い。だったら前と同じく感電させて――


「――って、あれっ!? 握ってねぇ!?」


 と思ったらバールは血に触れずにそれを操ってた。それなのに操作精度は闘技大会の時とは比較にならないレベルだ。襲い来る血液の触手は直角に曲がったりフェイントかけたりしてくるし、リアルだけど気持ち悪い動きで正直変な生き物を相手にしてる気分だ。


「この血は他ならぬ我自身の血だ。手で触れずとも操るのは容易い。以前と同じ轍は踏まんぞ」


 どうやらバールも対策はちゃんとしてたらしい。さすがにちょっと舐めすぎだったか。

 いや、あるいは闘技大会の時に向こうがこっちを舐めてて、自分の血液を使わなかっただけか……?


「……何にせよ、これは確かにキラたちがいたら巻き込むから邪魔だな――っと!」


 四方八方から襲い来る闇の爪と、異様な軌道で襲い来る血の触手の数々を、飛んだり跳ねたりしながら何とか躱してく。身体能力の強化を加えたミニスボディはありえんくらい軽やかに動けるし元々小柄だから、何とか躱す事はできてる。いまいち自分で動かせないウサミミがちょっと掠りそうでヤバいけど。

 でも正直これはかなり辛い。高く飛んで空中で三回転捻りを加えた後、着地と共にバク転を強要され、更に宙を蹴って地面に逆立ちして跳ねるみたい動きを強いられるんだもんよ。これ以上身体能力や反射神経を強化したりするのも悔しいし、かといってこれ以上攻撃が増えたらそろそろ躱しきれない。


「血液か……ならこれだ! 磁力掌握マグネティック・コントロール!」

「むっ!? 馬鹿な、何故動かない!?」


 闇はちょっとどうしようもないから、ひとまず血液の鞭を魔法で止めにかかった。途端に鞭はぴたりと止まり、バールの命令を聞かなくなる。

 僕が使ったのは磁力操作の魔法。血液に含まれる赤血球、その中に含まれるヘモグロビンを構成する鉄に働きかけたってわけだ。気分はマ●ニートー。

 まあ実際に磁力でヘモグロビンをどうこうするのはたぶん馬鹿げた域の磁力が必要かもだし、最早それだけで相手を殺せそうな気がしなくも無いけど、この世界の魔法と僕の無限魔力ならゴリ押しできるから問題無しだ。不可能だと思ってなけりゃ何でもできる!

 

「以前のミニスの真似だ! くらえ、距離消失ディスタンス・イレイズ!」


 邪魔な血液の鞭を退かした後、僕は足元で炸裂した闇を跳んで躱すと、以前にミニスが繰り出した距離を無視して蹴りをぶち当てる武装術を放った。厳密には距離を無視する事が本質であって、内容は蹴りでも拳でも何でもいい。

 ミニスは恨みつらみを燃やして一発しか放てなかったけど、無限の魔力を持つ僕にとっては再現の容易い技だ。これでバールを蹴り抜く!


「――んっ!? 何だこれ!? デコイ!?」


 宙で回し蹴りを放ちバールの身体にぶち当てたまでは良かったものの、どうやら分身や囮の類だったらしい。軽い蹴りの感触が足に伝わると共に、遠くの方に立ってたバールの姿が宙に溶けるように消え去った。


「闇で形作った分身だ。このダーク・ワールドの中ならば、何体でも生み出すことができる。どれが本物か分かるまい!」


 着地した僕の暗視状態の視界に、バールの姿がどんどんと増えてく。ざっと見た所百以上はいる感じだな。どの分身からも低めとはいえ熱が発されてる。なら一番体温が高いのが本体――って思ったけど、ぱっと見全部一緒でした。そういや相手は吸血鬼じゃんよ。体温低そう……。

 

「甘い! こういうシーンは映画で見たぞ! 破り方も分かってる! 魂体探索(ソウル・サーチ)!」


 とはいえ対処法は分かってる。どれだけ高精度な分身を創ろうと、バールは魂という概念を知らない。だから本体以外はただの人形。魂がこめられてる奴が本体だ。

 だから僕はストレ●ジVSサ●スの戦いを参考にして、魂を索敵する魔法を創り上げ発動した。ソナーの如く探知範囲を周囲に広げ、魂を持つ本体を炙り出す――って、うん!? これは……!?


「汚物は消毒だ! 炎の槍(フレイム・ランス)!」


 異常に気が付いた僕は、咄嗟に炎の槍を上空に形成して真下に叩き落した。バールの本体の真上――じゃなくて、馬鹿でかいクレーターの真上に。

 そこにあるのはバールによって同士討ちで殺された、哀れな犬猫の身体。別に可哀そうになったから火葬してやろうと考えたとか、ゾンビ化してたから消毒しようとしたとかじゃない。そもそも死んでたら観客席に転移させられて、そこで再生と蘇生が行われる。つまりはクレーターの底に身体がある事そのものがおかしい。おまけに魂体探索(ソウル・サーチ)に反応があったんだ。クレーターの中心に、魂の反応が二つ。つまりあの二匹は――


『チッ、バレたか!』

「あつ~い! 尻尾が焦げる~っ!」


 炎の槍が爆発した瞬間、クレーターの中からヴェ●ム装甲を纏ったキラと、尻尾の先端をちょっと焦がしたトゥーラが飛び出てきた。

 どうやら予想通り、二人して死んだふりをしてたらしい。邪魔になるからバールが排除したんだと思ったけど、どうやら見せかけのものだったみたいだね。伏兵として忍ばせてたか。


「死んだふりで僕の隙を窺ってたか! 随分とこすっからい策を考えるもんだね!」

「ハッハ~! 策がそれだけだと思ったら――」

『――大間違いだぜっ!』

「速っ――ぐうっ!?」


 襲い来る闇の爪を踊る様に躱してた僕だけど、犬猫が唐突に今での数倍以上速く突っ込んできたから余裕が一気に崩れた。トゥーラの拳は何とか捌いて流し込まれた衝撃もかろうじて相殺できたが、代わりにキラのぶっとい鉤爪で左腕を二の腕辺りから斬り飛ばされた。

 何だ、何で突然あんなに速くなった!? まさか今まで速度を抑えてたのか!?


『次は首を落としてやるぜ!』

「主の生き血を啜らせろぉ~っ!」


 腕を再生する余裕も与えられず、その異常に増した速度で前後から連撃を叩き込まれる。というか速度だけじゃなくて重さも桁違いだ。これは明らかに抑えてたとかいう次元じゃない。僕の牽制や回避への反応速度も数段増してるし、そもそもこの暗黒の中で確実に僕の動きを視認してる。絶対に何らかの強化魔法を使ったに違いない。

 そして特筆すべきなのは、バールが操る闇がコイツらだけを素通りして僕に襲い掛かってきてる事。まるでこの犬猫は空気か何かのように判定されてるのか、するりとすり抜けて僕にだけ殺傷能力をぶつけてくる。どういう事だ、これは!?


「――そうか! お前ら、吸血鬼になってるな!?」


 そして僕は十秒ほど全力で防御と回避に専念して観察する事で、ようやくその結論に思い至った。

 この突然の身体能力の上昇、暗黒の中でも視覚が正常な事、同化しているように闇からの攻撃が透過する謎、そしてバールが放った血の矢を心臓に受けたという事実。それらの情報から導き出すと、たぶんコイツらは吸血鬼になってる。吸血鬼は獣人よりも身体能力が更に高いし、闇に生きる種族みたいなもの。だからこそ突然身体能力が急上昇した上に暗黒の中でも全てが見え、バールが操る闇は素通りするんだろう。

 実際僕の予想は間違ってなかったみたいで、遠くの方でバールがこくりと頷くのが視界の端で見て取れた。 


「ご名答だ。眷属化の魔法をかけた我が血液を体内に打ち込む事で、一時的にそいつらは吸血鬼と化した。吸血鬼と化せば身体能力は更に上昇し、この闇の中ではより磨きがかかる。最早先刻までのそいつらとは次元が違うぞ」

「その通り~! 途方も無い力が溢れて来る~!」

『別にテメェの種族に拘りはねぇし、吸血鬼化なんて大した問題じゃねぇな! 強くなれんなら何でも良いぜ!』


 闇が僕を串刺しにするように四方八方から襲いかかり、衝撃波を撒き散らしながらトゥーラの掌底が放たれ、大気を引き裂きながらキラの鉤爪が迫る。

 どれをとっても即死級の攻撃。そして僕は隻腕になってる上、慣れないミニスの小柄な身体。最早全てを躱す事などできない。せめてどれを躱し、どれだけ致命傷を避けるかを考えなくちゃいけない場面。

 だけど僕の頭にはそういう考えが一切無かった。何故かというと、バールの発言の一部に気を取られてたから。具体的には『我が血液を体内に打ち込む』って部分。


「……それって、寝取られ?」


 思わず状況も忘れて、そんな事をぽつりと呟く。

 いやでも仕方ないよね? 自分の女の体内に、他の男の体液が注がれたんだよ? それってつまり立派な寝取られでは? 自分の脳が破壊されていく音が聞こえる……!


「せりゃ~っ!!」

「これで終わりだっ!」

『死ねっ!!』


 そして場違いな事を考え、馬鹿でかい隙を晒した代償はあまりにも大きかった。ここぞとばかりにバールが魔法無効化の魔法を使いながら、闇で僕の全身を貫く。トゥーラの掌底が心臓に叩き込まれ、そこを起点に衝撃が爆散し内臓が破壊されてく。鋭くぶっとい鉤爪が容易く僕の首を刈り、頭部が宙をくるくると舞う。

 あー、やっちまったぜ。寝取られで脳破壊された隙を突かれて、間違いなく即死する攻撃を受けちゃったよ。まだ意識があって思考が出来るのは思考速度を加速してた事に加えて、マジに死に際だから爆速で思考が走ってるんだろうね。

 とはいえ、ものを考える事ができても打開策はちょっと思い浮かばないな。だってすでに僕の首は刎ねられてるし、トゥーラが叩き込んできた衝撃はきっちり脳みそにも広がりつつある。あまつさえキラの鉤爪とバールの操る闇が頭部も狙ってるし、ほんの一瞬後には頭も木っ端微塵になって切り刻まれるのがオチだ。さすがにこれじゃあ治癒とかは間に合わん。そもそも物理的なダメージよりも、寝取られによる脳破壊精神ダメージの方が重傷なんだよなぁ。こんなんじゃ肉体を再生しても死に体のままだ。

 ていうか、死に際で頭が物理的にも内部的にも超高速回転してるからふと思ったんだけど……こんな寝取られで破壊された脳って必要? そもそもこの頭、僕のじゃなくてミニスの頭じゃん?

 僕の頭じゃないのに僕としての自我や意識を保ってるのは、魂が僕のものだから。そして魂にも記憶やら何やらが刻み込まれてるから。じゃあぶっちゃけ脳みそ必要なくない?

 そうだよ、どうして肉体と言う枷に縛られる必要があるんだろう。僕は無限の魔力を授かった現人神だぞ。肉体なんて脆弱な器、最早牢獄に過ぎないじゃないか。こんな簡単な事に死の直前まで気が付かないとか、正しく肉体に囚われてるなぁ。

 この世界の魔法はイメージと魔力で何でも叶えられる素晴らしいものだ。だったら肉体から解き放たれる事だって訳ない。今こそ、僕は束縛から解放される!


「――魂体降臨アドベント・ソウルボディ


 頭部だけになった僕がその魔法の名前を口にした瞬間、哀れなミニスの頭部が闇で串刺しにされた挙句、キラによって細切れに切り刻まれた――





勝った! 第三部完!

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