表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第11章:邪神降臨
296/527

まさかの見学





「……それは蛮族の発想です。僕たちは言語を持つ知的生物ですよ。そんな脳筋な解決方法など推奨できるわけが――」

『なるほど。その手があったか』

「ですよね! 僕も良いアイデアだと思います!」


 暴力至上主義な僕の発言に軽蔑の眼差しを向けてきたラッセルだけど、カレイドが納得した瞬間に意見を翻して賛同した。おう、蛮族の発想とかいう言葉は忘れたか?


「手の平クルクルしてんなぁ……」

「仕方ないよ。ラッセルはカレイドに憧れてるみたいだし」


 あまりの意見の変わりようにびっくりしちゃう僕に対して、セレスがさりげなくそんな裏事情を教えてくれる。

 なるほど。ショタ犬獣人のラッセルくんは高身長全身鎧のカレイドに憧れてるのか。確かにカレイドは見た感じ凄く男らしいもんね。性格も見た目に反してわりと温厚だし。ただ実際は――いや、これはネタバレになるから黙っておこう。ともかく線の細いショタが高身長で男らしい人に憧れるのは仕方ない。


『おい、お前たち。俺たちと一つ取引をしないか?』

「ああ? 取引ぃ?」


 なんて事を考えてたら、カレイドは鎧をガシャリと言わせて蛮族共の方に一歩踏み出した。進んでやってくれるリーダーシップもある男らしさは良いねぇ。僕も楽できるから嬉しいよ。


『お前たちと俺たちとで戦い、俺達が勝てば依頼の間は素直に従って貰おう。お前たちが勝った場合は――何でも構わん。望みを叶えてやろう』

「ああっ? 何でも構わねぇって? 随分太っ腹じゃねぇか」

「俺らが勝ったらそこの嬢ちゃんを俺らの奴隷にする、って条件でも良いって事かぁ?」


 カレイドの宣言に対し、そんな羨まけしからん言葉がクズ共から飛び出す。そこの嬢ちゃんとはもちろんセレスの事だ。

 ていうかコイツら本当に品性下劣だな? 本当に冒険者? 実は野盗とかじゃない? いや、何でも望みを叶えて貰えるなら僕だって似たような条件口にするか。野郎ならそんなもんか。


『……だ、そうだが?』


 そこでカレイドはこちらを、正確にはセレスの方を見やる。

 まあ商品にされるのはセレスだし、一応同意を求めないとね。何よりセレスは今、想い人がいるもんね!


「……良いんじゃない? あんな奴らに負ける気はしないし」


 意外と強気にも、セレスは条件に同意した。とはいえ表情はちょっと険しかったね。全身舐め回されるような視線で見られれば当然か。

 でもセレスは単身でAランク行ってるし、有象無象が相手じゃあ負けることはまず無いだろう。闘技大会では予選落ちだったけど、それは同じブロックにいた奴が悪かった(インビジブル・マジシャン)。


「チッ、舐めやがって。俺たちが勝ったらたっぷり思い知らせてやらねぇとなぁ?」

「ヘヘヘ、今から楽しみだぜ。たまには同族の女をいたぶるのも面白そうだよなぁ?」


 そういうわけで、猿山のボスを決めるための戦いが今ここに決まった。

 というかあのクズ共、当然のように勝てるみたいな反応してるなぁ。相手の強さを推し量る目も危機意識もガバガバな奴らじゃあ、連れて行ってもやっぱ死ぬだけだな。まあコイツらが死んでも僕は全然胸も痛まないし、死ぬなら死ぬでそれでいいや。冒険者なんてやってるんだし自己責任だよ。






 戦いの条件をしばらく煮詰めた後、僕らはクズ共を全員引き連れて街の外に出た。さすがに五十人近くで大乱闘するならギルドの中じゃ狭すぎるしね。

 これでクズ共は周囲に散らばって囲んで攻撃する事ができるし、僕は遠慮なく超広範囲魔法をぶっぱできるしウィンウィンってやつだ。セレスたちはどういう状況が得意なのかは分からんけど、自信はあるようだし有象無象に囲まれようと大丈夫なはず。


『――では、条件の確認だ。俺たちが勝った場合、お前たちは明日から始まる依頼の最中、俺たちの命令を素直に聞き、忠実に行動してもらう。逆にお前たちが勝利した場合、こちらのセレスとラッセルは未来永劫お前たち全員の奴隷となる。お互いに相手を無力化するだけに留め、殺しはしない。これで問題無いな?』

「ないでーす!」

「さっさと始めようぜー!」

「タコ殴りにしてからその場で犯してやるよ! ギャハハハ!」

「ラッセルくんを私のペットにしてあげるー!」

「……ここは世紀末かな?」


 冬の訪れを感じさせる冷たい風が吹きすさぶ草原の中、カレイドが改めて戦いのルールと敗者に科される命令を口にする。そしてそれに応えるのはクズ共の聞くに堪えない笑い声。思わず変な事を口走る程度には民度が最底辺で辟易したよ。これ世紀末の方がなんぼかマシかもしれんな?

 あ、ちなみに敗北した場合ラッセルまで奴隷化するのは、主にクズ共の中に混じってるビッチ共の要望だね。獣人を動物扱いは本来NGのはずなんだけど、民度最底辺だから平然とペットにしようとしてる奴らがいるよ……。


「まあいいや。やるならさっさと済ませよう。下劣品性が移りそう」


 とはいえ僕がいる以上は勝ちは揺るがないから、不安なんて微塵も無い。というか面倒だからさっさと終わらせたい。

 そんなわけで、無益な戦いを始めるために一歩前へと踏み出したんだけど――


「あっ、ちょっと待ってクルスくん。君は見学だよ」

「え? 何で?」

 

 何故かセレスが僕の歩みを遮り、あまつさえ見学を強制してきた。これにはちょっとびっくりだ。

 それにどうやら他二人も同意見みたいで、僕を置いて前に歩み出る。何だよ、僕だけ仲間外れ? 苛めか? 


「僕たちは闘技大会に参加していましたし、観戦もしていましたからあなたの実力はある程度把握しています。しかしあなたの方は僕たちの実力を把握していないでしょう。ちょうど良い機会なので、僕たちの実力をお見せしてさしあげます」

『そういう事だ。ここは俺たちだけで済ませる』


 なるほど、そういう事か。三人は闘技大会で活躍した僕の戦いぶりや実力は把握してるけど、逆に僕は三人の実力も戦いぶりも知らない。だからこの機会にそれを見せてくれるって事か。確かに一方的に知られてるだけってのは不公平だし、仲間の実力が分からないっていうのも協力して依頼をこなすにはちょっと不安があるからね。苛めじゃなくて良かった。


「えー? 馬鹿にするわけじゃないけど、三人で大丈夫? しかも殺しはNGなんだよね?」

「大丈夫だよ。じゃなきゃあんな条件にするわけないもん。あたしも予選落ちとはいえAランク冒険者なんだから、信じて見てて?」


 負ければこんなクズ共の奴隷に成り下がるとかいう生き地獄コース一直線なのに、そんなおぞましい結末を全く不安に思ってない感じの笑顔を浮かべるセレス。やっぱり相手が悪かっただけで腕に覚えはあるみたいだね。

 こんなに綺麗な笑顔を見せられると、逆に敗北して奴隷確定になった絶望顔を見たくなっちゃうんだけど……それだと出発できなくなりそうだからやめておこう。


「……まあ、そういう事なら仕方ないか。じゃあ僕はあっちに座って見てるから。三人とも頑張ってね?」

「うん、頑張る!」

「ええ、僕の力を見せて差し上げます」

『お前より強い、とまでは言わないが失望はさせない。安心して見ていてくれ』


 やる気十分の表情で答える三人(一人ツラが見えないけど)に一つ頷いて、僕は見学のために距離を取る事にした。あまり近すぎても巻き込まれそうだし、五十メートルは距離を取ろう。ちょうどいい感じの岩があるし、あれに座ってじっくり戦いを見学しよう。


「おいおい、どこ行くんだぁ? 仲間割れかぁ?」

「まさかたった三人で俺たちを相手にしようってんじゃねぇだろうなぁ? こっちは四十人以上いるんだぜ?」


 一人だけ離れてく僕を見て、クズ共がゲラゲラ笑いだす。ぶっちゃけ相手が四十人以上いるなら、四人が三人になったってあんまり変わらなくない? 元々数的にはめっちゃ不利だし。


『その通りだ。お前ら如き俺一人で十分だが、俺達の実力を見せつけなくてはならないからな。悪いが三人で相手をさせてもらうぞ』

「なっ……!?」


 今までわりと良識溢れてた感じのカレイドも、ここに至ってはクズ共を煽る。『一人でお前ら全員倒せるけど、僕に実力を見せないといけないから三人で苛めさせてもらうね?』って感じかな。まああまりにも品性が足りないし、さすがのカレイドも徹底的に無力感を味わわせたくなったんでしょ。


「ふざけやがって……そんなに高ランクが偉いってのかぁ!?」

「ぶっ殺してやる……!」


 カレイドの挑発にクズ共はほぼ全員殺気立ち、続々と獲物を手にして戦闘態勢に入る。

 でもその内の四割くらいは空間収納じゃなくて、普通に腰や背中に差した鞘とかから抜き放つ形だ。空間収納から獲物を取り出したのは六割だけ。これは四割の奴らが空間収納の魔力すらケチらないとやっていけないレベルの雑魚ってことかな。でも品性も民度も最底辺だし、空間収納の中から獲物を取り出した六割の中には見得張ってる奴らが結構な数いそう。やっぱ三人でも大丈夫そうかな?


「さーて、それじゃあちょっと本気で行こうかな。こんな奴らの奴隷になんかなりたくないし、気になる人が見てるんだからね」


 対してセレスはもちろん空間収納から獲物を取り出す。細身の長剣を構えて、さりげなくこっちに視線を向けてくるんだからかなり余裕そうだ。ソロでAランク行ってるんだし、魔力節約しなきゃいけない雑魚共じゃ逆立ちしても勝てないでしょ。


「僕はまだBランクだが、それでもお前たちのような者に負ける気は毛頭無い。蛮族共にも分かるよう、力で格の違いを示してやろう」


 魔術師のローブを翻してキメ顔を晒すのはラッセル。コイツは得意な武器が基本的に隠してる暗器なせいか、まだ獲物は取り出さない。その代わりにローブの前を開いてて、いつでも懐に手を忍ばせる事ができる状態になってる。わざわざそんな状態にするって事は、ローブの裏地とかに色々仕込んでるんだろうなぁ。

 というかもしかして、ラッセルも魔力量は案外低めなのかな? どっちかと言えば魔術師タイプだし、ただケチってるだけかもしれんが。


『俺はあまり手加減は得意ではない。手足の一、二本は覚悟しろ』


 などとシンプルに言い放ち、巨大な戦斧を空間収納から取り出すカレイド。そのままブンと一振りしてから構えたわけだが、質量のせいもあってそれだけで暴風染みた風圧が巻き起こってる。見るからにパワーファイターですね……。

 正直斧って勇者時代に見た使い手のせいであんまり良いイメージが無いんだけど、カレイドのは素直にカッコよくて好感が持てるよ。筋肉ダルマと違って露出も肉々しさもゼロの全身鎧で様になってるしね。


『クルス、合図を頼む』


 四十四人のクズ冒険者たちと、三人の高ランク冒険者たちが十メートルは距離を取って睨み合う中、カレイドが僕に戦闘開始の合図をお願いしてくる。マジで僕は見学なのね……ちょっと寂しい。


「はいはい、了解。それじゃあ――始めっ!!」


 何にせよ僕は高らかに声を上げ、バトル開始の宣言をした。

 まあセレスたちとは敵として戦う可能性が高いし、今の内に実力の一端をばっちり確認させてもらおう。こんなクズ共がセレスたちの実力を十分に引き出せるとは思えないけどね……。



ちょくちょく挟まるバトル回(雑魚四十四人 VS 高ランク三人)。結果の見えるつまらない戦いだなぁ……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ