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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第11章:邪神降臨
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暴力はいいぞ

⋇何とか体調が戻りつつあるので間に合いました。






 結局四人全員が邪神の討伐に参加する事になったから、ギルマスはホクホク顔で本当の依頼内容やら何やらを説明してくれた。

 やっぱり邪神討伐メンバーは僕ら四人だけで、他に連れてく下級の冒険者はあくまでエクス・マキナと戦わせる露払いメンバーらしい。まあ両種族で交互に攻撃しないといけない分、四人じゃ多数に囲まれたらどうしようもないからね。多少弱くてもいないよりはマシか。

 何にせよ、作戦会議はつつがなく終了。邪神討伐メンバーの動きが分かってる、っていうか僕自身が邪神討伐メンバーに含まれてるから動きも丸わかりだ。例え妨害しなくても邪神の城に辿り着くまで結構な時間がかかるし、道中で対策を考えないとね。本当は僕が邪神なのに邪神討伐に参加して、邪神として妨害方法を模索しつつ邪神討伐を頑張らないといけないとか、マジ紛らわしいな?


「……まさか依頼は実は虚偽で、邪神の討伐を強制してくるとは思わなかったなぁ」

「ねー。ギルドがあんな騙し討ちをするなんて信じられないよ。君やあたしは拒否できないじゃんか」


 そんなこんなで夜。寝るために灯りを消した部屋の中で、それぞれの寝床に入りながら言葉を交わす。

 といってもセレスがベッドで僕は床だけどね。さすがに部屋を借りさせてもらってるのにベッドを使わせろって言うほど恥知らずじゃないし、恋人でもない女の子のベッドに潜り込もうとするほど頭はイカれてない。


「いや、僕はともかくセレスは断れたんじゃない? ランクの降格くらいはするかもだけど、邪神と戦うなんて危険な真似をするよりはマシだと思うんだ。本当に何で君は依頼受けたの?」

「えっ? いや、だって君を放っておけないよ。確かに君は強いけど、変に抜けてる所があるんだもん。ギルドでもギルマスをいきなりババア呼ばわりしそうになるし」

「だってあのババアが唐突にふざけた事言うから……」


 調査依頼って名目で集まった冒険者たちに、邪神を討伐しろとか抜かす。そりゃあ頭のおかしいババア呼ばわりも仕方なしだよ。ただの詐欺だもん。

 実際セレスに口を塞がれなかったら容赦なく嘘つき、ペテン師、泥棒、人間の屑って罵倒してた所だよ。え、それはお前だって? それ言われると反論できないのが困りものだなぁ。


「まあそれは否定しないけど、それでもババアなんて言っちゃ駄目だよ? こう、お年を召されて耄碌した、くらいにぼかすならともかく……」

「それ人によっちゃババア呼ばわりよりも傷つくと思うよ……?」


 意外とセレスも同じように思ってたみたいで、むしろ僕よりも酷い例文を口に出してきた。完全に喧嘩売って挑発する感じのそれだよね、お年を召されて耄碌したって……やっぱりセレスも結構腹に据えかねてたんだろうか。


「……それで? 本当の所はどうして依頼を受けたの?」


 布団の中でもそもそ寝返りを打ち、ベッドのセレスの方を見ながら尋ねる。向こうもちょうど僕の方を見てたみたいで、薄闇の中でばっちり目が合ったよ。まさか僕が布団入った瞬間からずっとこっちを見てたわけじゃないよね……?


「んー、そうだね……半分くらいは報酬とランクが目的かな。せっかく頑張って一人でAランクまで上げたのに、ここで降格なんて絶対嫌だよ。もちろん命とどっちかを選べっていうなら諦めるけどさ……」

「じゃあ、もう半分のせいで依頼を受けた感じ?」

「そうだね。そういう事になるかなぁ……」


 そこを突っ込むと、セレスは薄闇の中でも分かるくらいに頬を染めて視線を露骨に彷徨わせた。

 あー、この反応。恋する乙女のそれだ。てことはもう半分の理由はやっぱ僕か……そんな理由で死地に赴くとか、この子意外と恋愛で破滅するタイプでは? いや、片想いの相手が僕な時点で今更かな。


「……たぶん君も気付いてるだろうけど、あたしは君に伝えたい事があるんだ。でも今のままだと、君の恋人たちがちょっと怖くて勇気が出ない。だから勇気を出すために、邪神の討伐に参加しようと思ったんだ。邪神を倒せればきっと勇気が出せるし、君の恋人たちも文句は言えない。そうでしょ?」


 もうほとんど告白みたいな台詞ぶちかましてきたけど、本人的には告白じゃないらしい。告白の覚悟を決めるために邪神討伐に挑む気みたいだね。告白の相手の正体が実は邪神だって事を考えるとちょっと笑えてくる。


「……ナンノコトカワカラナイナー」

「嘘つき。全部分かってる癖に」


 すっとぼけてみるも、そこはやっぱり見抜かれてるらしい。僕の惚けた様子すら愛しいって感じの慈愛に溢れた表情で『嘘つき』とか言ってくる。その表情でその言葉はちょっと股間によろしくないからやめてください。この部屋の中じゃ契約効いてるから理性が吹っ飛んでも襲えないんだわ。


「そういうわけで、あたしも邪神の討伐に行くよ。一緒に力を合わせて、邪神を倒そう! 記念すべき初めての共同作業、頑張ろうね!」


 何にせよセレスにとっては死地に赴く理由に足るものみたいで、やる気十分って感じの張り切った表情で同意を求めてきたよ。

 しかし本当に愛に生きる女だなぁ? 僕に断られる可能性とか考えてないんだろうか。いや、僕もわりと思わせぶりな反応見せてるし、少なくとも好意的に見られてるって事は察してるんだろうな。世界の危機だってのに幸せそうで羨ましいよ。真実を知った時にこの顔が絶望と悲しみに歪むのが実に楽しみだね?


「共同作業は二度目だし、他にも高ランクの人が二人いるし、下位の冒険者たちが何十人もいるし、奴隷たちもいるからいまいちロマンチックな共同作業にはならないと思うけど、ここはあえて黙っておこう」

「出してる出してる! 口に出してるよ!」


 とはいえ今できる弄りは信頼や恋愛感情を壊さない程度の軽いものだ。だから僕はロマンチックになんて絶対ならないって事を口に出して、セレスに大いにショックを与えた。あんま効いてないような気がするけどね。恋する乙女は強いんだわ……。






「さて、今日は出発の前日。そして下位の冒険者たちとの顔合わせなんだけど……」


 翌日、僕たち高ランク冒険者四人(僕は降格してるけど)は冒険者ギルドのだだっ広い会議室に集まった。理由は露払いのために連れて行く低ランク冒険者たちとの顔合わせ、及び作戦会議。人数が人数だから低ランク冒険者たちへの指示とかその辺りは僕らでやれってギルマスが言ってたんだ。依頼詐欺に加えて職務怠慢とかありえないよね、あのババア。

 まあ僕としてはこの世界のクズ共にはあまり期待はしてないから、もう一度頭のイカれたババア呼ばわりしそうになっただけで済んだよ。正確にはセレスがまたしても口を塞いで来たから実際に口には出なかっただけか。

 そんなわけで、僕らの前には五十人近い冒険者たちが会議室の所々で寛いでる光景があったんだけど――


「おい見ろよ! あの連中が俺たちを率いてくれる高ランクの冒険者様たちだぜ!」

「ガキに女に優男に鎧……おいおい、随分頼りねぇなぁ?」

「つーかあの子、なかなか良い女じゃん。俺の恋人にしちゃおうかな?」

「バーカ。アレは俺の女だっつーの。テメェはあのガキでも掘ってろ」

「やだもー! 下ネタはんたーい!」


 凄い。民度が最底辺。あまりにも下劣で品性の欠片も無いような連中しかいない。僕らを小馬鹿にしてる奴ら、セレスに嫌らしい目を向けてる男たち、どう見ても売女としか思えないビッチたち、そんな奴らしかいない。これもう意図的にそういう奴らを集めたんじゃないかって思えるくらいだよ。


「こう、何というか……個性的な方々が多いね?」

「ちゃんと言い方を工夫したね? 偉いよ、クルスくん」


 あまりにも酷い光景に柔らかい表現を選んでしまった僕を、セレスがやんわりと褒めてくれる。でもそんなセレスも頬が引きつってるんだから、感じた事は僕と大差ないと思われる。むしろ自分が男たちの下卑た視線に晒されてるんだし、僕よりも感じた印象は酷いだろうね。


「……どいつもこいつも屑ばかりじゃないですか。何ですか、これは。こんな俗物共を引き連れて邪神の討伐に向かえと? 一体何の冗談ですか?」

『言葉が過ぎる……と言いたいところだが、今回ばかりは俺も同意見だ。あまりにも卑小な者共ばかりで見るに堪えん』


 とはいえラッセルとカレイドは言葉を濁す気も無いみたいで、ほぼ直球で感想を口にしてた。そうだよね、クズばっかりで見るに堪えないよね。しかも僕ら、こんな奴らを連れて邪神のお城に向かわないといけないんだよ。それ何て罰ゲーム?


「これを纏めるとか絶対無理でしょ? いない方が労力は少なくて済むんじゃない?」

「うーん……気持ちは分かるけど、ここから邪神の城までには大量のエクス・マキナがいるだろうし、やっぱり必要なんじゃないかなぁ……」


 少なくとも絶対に連れて行くとは断言しない程度には、セレスもコイツらを引き連れるには少々嫌悪感がある模様。まあ絶対道中で男たちが襲ってきそうだもんねぇ。そういう事しかねないくらいの目でセレス見てる奴らいるもんよ……。


「お嬢ちゃーん! 今晩俺と一緒に遊ぼうぜー! 可愛がってやるよー!」

「そこの鎧はツラを見せろよー! どうせ不細工なツラなんだろー? ギャハハハハ!」

「……やっぱいらないかも。うん」

『落ち着け。どんな屑共だろうと数は必要だ。エクス・マキナは一撃では倒せないのだからな』


 完全に手の平を返したセレスに比べ、カレイドはかなり大人というか心の広い対応だ。こんな一緒にいると知能が低下しそうなクズ共でもちゃんと連れて行く気らしい。


「ですが、こんな奴らを纏める事などできるのでしょうか? ほんの数人程度は大人しくしているようですが、大多数はおかしな薬でも常用しているような状態ですよ? 意思疎通が取れるかも怪しい所です」

『むぅ……』


 初対面の時の痛烈かつ流暢な皮肉の嵐が戻ってきたように、ラッセルはクズ共にゴミでも見るような目を向けながら口にする。少なくとも表面上はコイツが一番ああいうクズ共を嫌ってる感じがするね。まあショタ犬獣人で美少年だから、尻を狙われてる節もあるし仕方ない。

 何にせよクズ共には最低限こっちの指示を聞いてもらうようにしないといけないね。こんな奴ら連れて邪神討伐とか足引っ張られて破滅する未来しか見えない。でもこんなマジで言葉通じなさそうな奴ら、どうやって従えればいいものか……。


「……あ、良い事思いついた」

『ん? 何だ?』


 少し考えて、僕はとびきりの名案を思い付いた。向こうが躾のなってない野生動物みたいな存在なら、こっちもそれに応じた対処をしてやればいい。

 野生の世界では力こそが全て。要するにそれを見せつけてやればいいって事だ。


「一旦僕らで叩きのめして、どっちが上かを分からせてやれば良いんじゃない?」


 つまり、格の違いってものを分からせる事。やはり困った時に求められるのは暴力。暴力は大概の問題を解決する……!







 ちなみに集まった低ランク冒険者がクズばっかりなのにも一応理由があります。わりとどうでもいい事だけど。

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