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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第11章:邪神降臨

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念願のお約束?

⋇暴力描写あり


 翌日。有難いことに寝床を提供して貰えた僕は、スッキリ爽快な気分で目を覚ますことが出来た――わけはなく、ちょっと悶々とした気分で目を覚ました。

 まあ予想通りというか何と言うか、昨晩からセレスが地味に誘惑染みた事してきたのが堪えたんだよ。具体的には男の僕が寝泊まりするってのに、身体のラインが見えそうな感じのうっすいネグリジェに着替えてたんだよ。その癖恥ずかしがって顔を赤くしてるしで、もの凄い純情な反応してやがるしよぉ……。

 そういう生娘そのものな反応しつつも、こっちが手を出すように誘ってるからマジで大変だったわ。同じくらい純な乙女みたいな反応してくれるミニスを抱いてなかったらヤバかったな……。


「――よし! それじゃあ冒険者ギルドに行こっか、クルスくん!」

「はいはい、了解。作戦会議にレッツゴーだ」

「ハイは一回! 二回も言わない!」

「ハァイッ!!」


 そんなわけで特に何事も無く夜を乗り切り、二人で冒険者ギルドに向かう。昨日は作戦会議的なものがあるから明日もう一度来いって言われたからね。

 何で出発二日前なのにそんな大事な事してないの? って思ったけど、これたぶん僕が来なかったから出来なかった類のやつだわ。ちょっと責任を感じるね? 


「……しかし、この街の空気は相変わらずピリピリしてるなぁ?」


 セレスと一緒に街を歩く中、この肌が泡立つような空気に思わず周囲を見回しながら呟く。

 どうやら昨日だけそういう空気だったわけじゃなくて、この街はいつもこういう雰囲気らしい。二日に一回はエクス・マキナが襲ってくるし、街の半分は敵種族の街なんだからこんな冷戦状態みたいな空気も当然か。


「仕方ないよ。二日に一回はあのエクス・マキナとかいう魔物が大群で襲ってくるし、それに対抗するために聖人族と争うわけにもいかないし。もしここで聖人族と戦争なんて始めたら、例え戦いに勝っても残った方はエクス・マキナに襲われておしまいだからね」

「でもどちらも残ってれば、エクス・マキナの狙いは二分されて余裕ができる。だからお互いに歩み寄れる最大のラインが相互不干渉って事か。厳しいなぁ……」


 あくまでもお互いに停戦してるだけであって、協力はしてない。うーん、協力体制とは程遠いなぁ? エクス・マキナを倒すのに使ってるのは敵種族の奴隷、そして奴隷の肉体から作った<隷器>だし。

 目の前の脅威も無視して争い合うよりはマシとはいえ、もうちょっとくらい歩み寄って欲しいなぁ。初襲撃の時はぽつぽつ協力してる奴らもいたじゃないか……。


「……前から思ってたけど、クルスくんってもしかして聖人族の事そこまで嫌いじゃないの?」

「え? 何で?」


 世界平和の難しさにうんうん唸ってると、唐突にセレスが不思議そうな顔で尋ねてきた。

 そりゃあ僕は魔獣族じゃないから別に嫌いでも無いし、かといって好きでもない。でもそれを素直に口に出来る訳も無いから返答に困るな、これ。


「だってほら、向こうの宿屋に泊まらせて貰えるよう交渉してたし、今も協力関係を結ぶべきって思ってるみたいな事言ったし」

「うーん……」

「大丈夫、誰にも言わないよ? 何なら君みたいに契約結んでも良いよ?」


 さて、どう返答すべきか。セレスの顔には別段嫌悪とか悪だくみとかそういう感情は浮かんでないし、素直に敵意は無いって伝えても問題は無さそうだ。というかむしろ好奇心からかワクワクしてるようにも見える。

 もしや僕の秘密を知って、それを共有できる事に喜びを見出してるんじゃなかろうか。さすがは恋する乙女だ。何にせよ自分から契約を提案するくらいなら信じても良いよね。一般的に。僕自身は実際に契約しないと信じられないけど。


「まあ、そこまで言うなら教えても良いかな。確かに僕は嫌いじゃないよ。僕の故郷はド田舎も良い所だから奴隷もいなかったし、洗脳みたいな教育もされなかったしね」

「やっぱりそうなんだ。珍しいね、クルスくんみたいに聖人族嫌いじゃない人」

「そういう君はどうなの? 聖人族は嫌い?」

「うーん……そりゃあ嫌いって言えば嫌いかな……」


 セレスはちょっと表情を曇らせながら答える。

 ちなみにこんな天真爛漫で可愛らしい恋する乙女のセレスでも、聖人族に対しての敵意は【大】の憎悪だったりする。夢が壊れそうな真実を教えちゃってごめんね? でもこの世界の奴らなんて大概こんなもんだし、むしろ僕が聖人族は嫌いじゃないって発言をしても僕に対する好意や態度が変化しない辺り、セレスはかなりマシな方だよ。


「でも、そうだね……正直、そんな事も言ってられない状況になると思うな。だって邪神が力を取り戻す前からこんな状況なんだよ? もし邪神が力を取り戻したら、聖人族と魔獣族で争ってる場合なんかじゃないよ。下手をすると本当に世界が滅ぼされちゃうかもしれないんだから」


 実際マシだと分かる発言を口にするセレス。それも明確な脅威として認識してるみたいで、酷く真剣な表情だ。

 この世界の奴らが全員こんな感じだったらもうちょっと楽そうなんだけどなぁ。大概はゴミムシだからなぁ……。


「うん、僕もそう思う。だから和平とまでは言わないから、せめて国全体の方針として一時休戦くらいまでは行って欲しいかな。まあここは治外法権の独立国みたいな状態だから、国の命令を無視してる節もあるけどさ」

「一時休戦かぁ。奴隷の手足を切り落としたり、皮を剥いで武器を作ってる状況じゃ無理だよねー……」

「だねぇ……」


 協力は駄目そうな現状に対し、セレスと揃って遠い目をする僕。同胞が馬車馬以下の扱いをされてる状況で一時休戦とかできるわけないよねぇ。最近は聖人族も魔獣族も、<隷器>製造のためにどんどん奴隷に地獄を見せてるし……。

 一応その辺りへの対策も考えてはいるけど、まだ実行には早いかな。矢継ぎ早に計画を進めたらうっかりどっちかの種族が滅んじゃうかもだし、ある程度の時間と余裕は与えないとね。少なくとも邪神の城周辺調査が終わるまでは今のままだ。


「あ、そうだ。クルスくん聖人族嫌いじゃないなら、何で聖人族の奴隷いないの? 闘技場で見た時は魔獣族の女の子たちしか連れてなかったよね? それともあの場にはいなかっただけ?」


 なんて慈悲深い事を考えてたら、唐突にそんな事を聞かれた。

 試合観てたんだから当然といえば当然だけど、そのシーンも見てたんですね。その上でよく僕に憧れを抱いて、好意まで寄せてんな? 心広すぎん?


「いや、奴隷はいないよ。ただ確かに欲しいと思った事はあるし、何なら奴隷市場見に行ったりもしたよ?」

「じゃあ何で? もしかして好みの奴隷がいなかったとか?」

「いや……かなり嫉妬深い奴が身内に何人かいてね……」

「あー……」


 言葉少なにそれだけ答えると、セレスは苦々しい顔で頷いてくれた。まあ予め僕は尻に敷かれ気味だって伝えてるしね。

 でもそんな納得の反応されるとちょっと困るなぁ。変な言い訳考える必要が無いのは助かるけど、まるで僕が本当に尻に敷かれてるみたいじゃないか。ねぇ?






 さて、所変わって冒険者ギルド。

 邪神の城周辺調査に赴く奴らなのか、冒険者自体はぽつぽつと姿が見えるね。大体全員バーで飲んだくれてるけど。依頼貼ってある掲示板前はガラガラだぜ。

 はい、突然ですがここでクイズ。優男が可愛らしい美少女を連れて冒険者ギルドに入ったらどうなるでしょうか? 


「よーよー、嬢ちゃん。そんな冴えねぇ野郎なんかより俺たちと一緒に遊ぼうぜ?」

「そーそー、たっぷり可愛がって女にしてやるよ。ギャハハハ!」


 正解は『絡まれる』でした! いやー、ゲスい笑みを浮かべた酒臭い巨漢の獣人二人に絡まれちゃったよー。コッテコテの絡み方にちょっと感動に近い感情を抱いたね。これこそ異世界のお約束ってやつだよ。何だかんだで初めての冒険者ギルドではお約束に失敗したし……。


「さ、行こうかクルスくん。指定の時間に遅れちゃうよ。ここのギルマスってかなりの曲者らしいし、遅刻したら何を言われるか分かんないよ?」

「え? あ、うん」


 でもセレスは慣れてるみたいで、巨漢二人を完全にスルー。まるで何も目に入ってないみたいな感じで僕に笑いかけてくるんだから驚きだ。スルースキルが高すぎる。

 あるいは宿で本人が言ってた通り、こんな風に下品な声をかけられるのは日常茶飯事だから慣れたのかもしれない。ふむ、強い女はなかなか好きだよ? 真の仲間には出来ないが。


「おいおい、俺達を無視してどこに行こうってんだ? こっち来いよ――」


 横を通り抜けようとした僕たち、厳密にはセレスに対して巨漢の一人が手を伸ばす。明らかに腕を掴んで引き留めようとするコースだ。

 さて、これはどうすべき場面かな? 腕を叩き落してセレスの前に立ち、『僕の女に手を出すな』っていう場面かな? いや、でも僕の女じゃないしな。両想いって勘違いさせてややこしくなるかもだし。

 それに巨漢たちに酷い目に合わされて泣きじゃくるセレスの姿も見てみたい……見たくない?


「――ギ、ギャアアァアァアァッ!? お、俺の腕がああぁあぁぁっ!?」 


 なんて邪な事を考えてたら出遅れたみたいで、セレスが自分で対処してた。具体的には一瞬で空間収納から細身の長剣を取り出して、音も無く振り抜いて男の腕を手首から切り落とすっていう神業でね。正に神速の一撃だ。僕じゃなきゃ見逃しちゃうね? 


「触らないで、変態。次触ろうとしたら今度は肩を切り落とすよ」

「ひ、ひいっ……!?」


 そして手首から汚い血を撒き散らしながらその場に尻餅をつく巨漢を、ビックリするくらいに冷たい目付きで見下ろすセレス。

 僕には初対面から明るく天真爛漫な姿しか見せて来なかったし、そのあまりのギャップにちょっと怖くなったね。剣を男の鼻先に突きつけ、殺気を放ちながら見下ろすその姿はまるで別人だ。リアがいきなり闇を漂わせるような豹変具合だよ。


「……さ、行こうかクルスくん!」


 それなのに脅しを終えて獲物をしまった後、僕には明るく可愛い笑顔を向けてくるという……優越感を感じる前に怖くなってしまった僕を一体誰が責められようか。


「あ、はい。かしこまりました」

「あれ!? 何でそんなに遠いの!? そして何で敬語なの!?」


 そして思わず敬語で返事をした上、少し距離を取ってた僕に対して本気でショックを受けたような顔をするセレスさん。とても巨漢の手首を切り飛ばして脅した女の子には見えないよね。

 ちなみに敬語も距離を取ったのも自分の意思だよ。だって野郎の手首から撒き散らされる汚い血なんて浴びたくないもん。どんな病気持ってるか分かんないし。敬語は何かノリ。


「いえ、別に怖がってるとかじゃないですよ? ただその、少しばかり馴れ馴れしかったかなと思いまして……」

「何か妙な距離と壁を感じるー!? 何さー! 君だって色々似たような事してたじゃん! あたし色々知ってるからね!」


 他人行儀になった事がよっぽどショックだったのか、半泣きで距離を詰めて僕の両手をがっしり掴んでくるセレスさん。

 ちょっと『色々知ってる』の部分に反応しかけたけど、闘技大会での事を言ってるんだと分かって安心したよ。確かに似たような事してたのは否定できないな。メスガキ小悪魔を嬲り者にしたし、バールの再生能力の実験とかしちゃってたし。


「いやぁ、清廉潔白で品行方正な僕には覚えが無いですねぇ?」

「この大嘘つきー! 君はそんな人間じゃなーい!」


 とりあえずすっとぼけてみたら、容赦なく罵声を浴びせられた。

 ていうかそんな善良な人間じゃないって分かってる癖に、僕に憧れや好意を寄せてるのか……僕が言うのも何だけど、男の趣味が悪くない?



セレスは普通に殺る時は殺る強かな子です。クルスに対してのみ特別積極的で甘々なだけ。

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