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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第11章:邪神降臨
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今後の方針

「――というわけで、近々僕は邪神のお城周辺の調査に出向く事になりました」


 セレスが冒険者ギルドからの処遇を伝えに来てくれた日の夜。僕は仲間たちをリビングに集めてその報告をした。

 ちなみに位置関係は僕がソファーに腰掛けてて、リアが僕の膝の上。トゥーラが隣で、キラが僕を背後から見下ろす形でソファーの後ろに立ってる。まあリアは良いとして、リビング広いんだからお前らもうちょっと離れろよ……。


「自分で建てた城の調査に、自分で行くの……?」

「うん、馬鹿みたいだよね。でも『アレは僕のお城です』なんて言う訳にもいかないしさぁ……」


 僕の報告に困惑気味にツッコミを入れるのは、皆ご存じ鋼メンタルウサギ娘のミニス。なお、コイツはちょっと離れた所にあるもう一つのソファーに一人で腰かけてる。犬猫と違って、コイツは逆に距離を感じますねぇ……。


「つまり、主としばらく離れ離れになってしまうのかな~……?」

「えーっ!? しばらくご主人様と会えなくなっちゃうのー!?」


 寂しそうな声を出すのは隣のトゥーラと膝の上のリア。特にリアはショックを受けたような顔で僕の方を振り返ってきたよ。その動きでデカい角の側面が胸板をゴリっと擦って痛いったらない。


「半分正解で半分間違い。しばらく留守にはするけど、隙を見てちょくちょく戻ってきたりはしようかなって思ってるよ。まあ隙があればね?」


 見ず知らずのクズ共と長旅なんて絶対息が詰まりそうだし、リフレッシュのためにもちょくちょく抜け出す予定だ。

 とはいえ僕には邪神としての活動もあるから、優先度はこっちの方が高くなる。そして正体とかを悟られないようにしなきゃいけないから、必然的にリフレッシュの時間は優先度が最も低くなる。ちょっとでも休息の時間が取れれば良いんだけどなぁ……。


「その間あたしらは何してりゃ良いんだ? 好きに過ごしてて良いのか?」

「うーん、そうだねぇ……」


 背後から僕の頬と瞼を撫でてくるキラの手を叩き落しつつ、少し考える。

 たぶん仲間の一人や二人くらいなら連れてっても文句は言われないと思う。セレスから貰った依頼書には特に一人で受けろとか書いてなかったしね。でも連れて行くべきかと聞かれると少し迷う。

 僕の女たちはみんな我が強くて、腹に一物隠し持ってるようなヤベー奴らだ。個人的にはそういう所が好きなんだけど、あんまり長い間一緒にいるとたまに疲れてくるんだよね? だからどうせ長旅になるなら、ここらでちょっと一人の時間を確保するのも良いかもしれない。


「……よし、せっかくだしこのタイミングを利用しよう。ミニスは里帰りだ」

「えっ、里帰りして良いの? いや、一時的にでも帰れるっていうのは凄く嬉しいんだけど……」


 というわけで方針を決定した僕は、都合が良さそうな理由を即興で捻り出した。まさかまさかの一事帰郷が許されたせいで、ミニスは目を丸くして驚いてる。

 本当はコイツくらいなら連れて行っても良いんだけど、それはそれで犬猫がうるさそうだしね。仕方ないから一人寂しく依頼に向かうとするよ。


「どうせ僕はしばらく留守にするんだし、お前がここにいてもいなくてもあんまり変わらないからね。それに邪神が降臨してエクス・マキナが攻めて来たんだし、お前の両親も妹もお前の事を心配してるでしょ。顔見せてやれば安心するんじゃない?」

「……言われてみれば確かにそうね。私はマッチポンプだって分かってるし、レキたちは安全だって事も分かってるからそこまで心配はしてないけど、レキたちからすれば不安で堪らないわよね」

「でしょ? あとは、そうだね……呪いは解けたって伝えといて。この設定いい加減面倒になってきたし」

「あんた自分で考えておいて、それ……」


 ミニスの両親に伝えた愛娘を蝕む呪い設定だけど、正直もう面倒になってきたからやめる事にした。元々ミニスを意地でも僕の手元に置くために捻り出した設定なわけだし、真の仲間に加入した今となっては完璧に不要な設定なんだよね。ちょくちょく両親に『娘の呪いはどうなりましたか?』って電話で聞かれてるし、いい加減煩わしいなって。


「ていうか、呪い解けたなら私もうあんたについていく理由なくない? このまま村で暮らせって言われそうなんだけど?」

「だから呪いを解いてくれた恩返しに力になりたいとか色々言って、合法的に僕の元に戻ってくるんだよ。愛娘の呪いを解くのに躍起になって、その結果冒険者ギルドからの緊急招集に応えられず重い処分を受けた――って伝えれば、ちゃんと恩を返して来いって言いそうだしね、お前の両親」

「……確かに言いそう。特にお母さん」


 僕の予想は間違ってないみたいで、ミニスは苦々しい顔で頷く。

 実際お養母さんは妙にミニスかレキを僕に娶らせようとするからなぁ。あの人は意外と腹黒そうだし、たぶん僕の女になれば色々な意味で安心だと思ってるんじゃないだろうか。

 え、お養父さん? お養父さんは……うん。特にコメントは無いな? 強いて言えば娘離れした方が良くない?


「まあ、分かったわ。私としても里帰りできるってのは有難いし。どれくらい向こうで過ごして良いの?」

「そうだねぇ。移動の時間とか諸々考えて、ド田舎で一週間くらいは過ごしてきなよ。あ、リアとキラはコイツについて行ってね?」

「あぁ!? 何であんなクソみてぇなド田舎に行かなきゃなんねぇんだよ!」


 ここで今まで僕の目蓋と頬を後ろから撫でてたキラが声を荒げ、僕の頭を上向かせるようにして自分の方を向かせる。上下逆になった視界にはもの凄く嫌そうで不機嫌なキラの顔が写り込んでる。こういうの首が折れるからやめてください。


「魔物やエクス・マキナが蔓延る中、コイツ一人で里帰りさせるとか監督責任を問われるでしょ。だから護衛とかその他諸々を兼ねてお前らにも行ってもらうんだよ。悪いけどよろしくね?」

「チッ……」

「分かったー! またレキちゃんと一緒に遊べるんだね!」


 すっげぇ嫌そうな顔で舌打ちするけど拒否はしないキラと、僕の膝の上で素直に頷き諸手を挙げるリア。

 よしよし、これでミニスと一緒に二人も田舎に行かざるを得ないな? キラは監督者としては明らかに不向きだけど、まあその辺はミニスに頑張って貰おう。里帰りできるんだしそれくらいはね? 

 あ、リアには何も期待してないです。だって監督が無理なのは明白だし、道中で魔物と遭遇してもアホな戒律のせいで戦力にならないし……。


「私はどうすれば良いんだい~? 留守番をしていろと言うのなら大人しく従うが~……」


 そしてここで、余ったトゥーラが不安げに尋ねてくる。

 本当はコイツの方が監督者に向いてるから田舎に行かせようかと思ったんだよ? しかし残念ながらコイツには一応役割がある。でもなぁ、言ったら凄い増長しそうなんだよなぁ。でも言わないといけないよなぁ……。


「……お前はとりあえずここで留守番だ。幾らベルたちがいるって言っても、真の仲間が誰もいない状態で屋敷を空けるっていうのはちょっと心配だからね。留守はお前に任せた。これは僕からの信頼って受け取って貰って差し支えないよ」

「あ~、そういう事なら仕方ないな~? むふふ~、私は主に信頼されている~♪」

「わー、楽しそう! リアも踊るー!」


 拠点の留守を任せるっていう、ある意味で最も重要な仕事。それを割り振られたトゥーラは予想通りに上機嫌で最高に増長してるみたいで、ソファーから弾かれるように立ち上がりMPが吸い取られそうな変な踊りをし始めた。ついでにリアもその隣に立って、倣うように謎のダンスを繰り広げる。

 リアはともかく、トゥーラは渾身のドヤ顔をしてるのも腹立つし、無駄に足取りが軽やかなのも腹立つ。やっぱコイツも田舎に行ってもらおうかな……。


「ケッ、単純な奴だぜ。見え透いたお世辞で舞い上がってやがる」


 そしてキラは留守を任されたのがトゥーラだっていう事が面白くないみたいで、背後で機嫌悪そうに毒づいてる。でもねぇ、お前に留守任せるよりは信頼できそうだから……。


「おやおや~? 信頼で負けているキラは悔しいのかな~? 私の方が君よりも主に信頼されているんだよ~、子猫ちゃ~ん。ウヘヘヘ~♪」

「……殺す」

「はい、はい。まだ話は終わってないからせめて最後まで聞いて?」


 怪しいダンスを披露しつつドヤ顔で煽るトゥーラにブチ切れそうになって、濃厚な殺意を放つキラ。別にやり合っても良いけど話はまだ終わってないんだわ。


「トゥーラ、お前は確かに留守番だけど、もしかしたら人手が必要になって呼ぶかもしれない。だからそれに応えられるよう、なるべく自由な時間を用意しておいて欲しいんだ。かなり退屈になるかもしれないけど、そこは我慢して耐えてね?」

「りょうか~い。放置プレイは嫌いじゃないから大丈夫だよ~? 主の信頼を一身に受けるこの私に不可能な事など何も無~い! 子猫ちゃんには無理かもしれないがね~?」

「……死ね!」


 最後の煽りで堪忍袋の緒が切れたらしく、キラはソファーを飛び越えてトゥーラに襲い掛かる。さすがにリビングで暴れられても嫌だし、かといって庭だと芝生が荒らされてベルが怒りそうだから、二人纏めて地下闘技場に転移させてやったよ。

 うーん……これ留守の方も里帰りの方も果てしなく不安だな?



⋇諸事情あって前話のごく一部を修正しました。気になる方は探してみてね? 一部といっても単語一つしか修正してません。答え合わせは次話のあとがきで。

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