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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第11章:邪神降臨
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緊急招集

⋇残酷描写あり



「皆さん、この緊急事態に良く集まってくださいました。その協調性にまずは感謝を捧げます」


 ペコリと頭を下げるのは、別段これといって特徴のない獣人の女性。そこらを普通に歩いていそうなモブ市民と見紛う感じの人だね。

 しかしこの人はここ魔獣族の首都にある冒険者ギルド、その本部のギルドマスターっていうんだから驚きだ。こんな特徴のないモブ顔がねぇ……。

 あ、そうそう。こんな人がいる事で分かる通り、ここは冒険者ギルドの本部だ。僕はいつも支部を利用してるんだけど、今回はこっちに召集されたんだよ。一人だと寂しいからついでにミニスを連れてきました。

 ちなみに本部は支部の軽く数倍はデカいし、今いる会議室的な場所もクッソ広いんだけど、ここに集った冒険者たちはそんなに多くない。精々五十人くらいって所。

 まあ今は街の中にも外にもエクス・マキナがわんさかいるからね。アイツらと応戦せずギルドからの招集を受け取り、なおかつ大人しく呼び出しに応じたのが五十人ってだけ。協調性に感謝っていうのはそういう事だと思う。


「皆さんをお呼びしたのは情報共有のため、そして作戦指示を出すためです。現在、我が国は邪神と名乗る存在が呼び出したエクス・マキナと呼ばれた魔物によって襲撃を受けています。これは首都だけではなく全ての街、そしてあらゆる村々で同時に発生しています」

「そんな広範囲で起きてるのか!?」

「たぶん聖人族のクソ共の国でも似たような事になってるはずだぜ。良い気味だって笑い飛ばしてぇところだが、ちょっとこっちの状況も悪いな……」


 ギルマスの言葉に、大体半数の冒険者たちがざわつく。

 とはいえ残り半数は予想できてたみたいで、渋い顔をしたり呻いてたりはしてたけど特に驚いた様子はなかった。まあちゃんと分け隔てなく苦しめますよー、って邪神の時にこれでもかと強調してたしね。頭が空っぽかよっぽど混乱でもしてない限り簡単に予想できると思う。


「いえ、そこまで悪くはありません。それというのもあのエクス・マキナ共ですが、簡単に処理できる事が分かったからです。ついてはこちらの書類をご覧ください」


 士気が下がった冒険者たちを鼓舞するように力強く断言しながら、ギルマスは部下に書類を配らせ始めた。もちろん僕は品行方正な高ランク冒険者だから、スルーせずにちゃんと僕にも配ってくれたよ。

 どれどれ……ふむ、なるほど。どうやらエクス・マキナの情報を記載してるみたいだ。耐性の内容はもちろんの事、人型、獣型、結晶型のそれぞれの行動パターンまで網羅してる。この短い時間でそこまで解析したってわけか。意外とやるじゃない?


「――うわー、そういう事だったんだ! あたしここに来る時全然攻撃効かないから放ってこっちに来ちゃったよー!」


 なんて結構可愛らしい声が聞こえたからそっちを見ると、前の方にいた悪魔の女の子が頭を抱えてる後ろ姿が目に入った。後ろ姿だから精々髪が緑色でポニーテールって事しか分からないけど、意識しなくても見えちゃうものがあるなぁ……具体的には高貴な悪魔を表す角、翼、尻尾の三点セットだ。ニカケの僕としては関わり合いになりたくない存在ですね……。


「倒し方さえ分かれば、さして強い魔物ではありません。申し訳ありませんが皆さんには街中を駆け巡り、これを知らずに戦っている方々への情報共有をお願い致します。ギルドが飼っている奴隷を貸し出しますので、これを配って回るのもお願い致します」

「よしきた! 任せろ!」

「了解だぜ!」


 どうやらギルマスは無駄な話はしない主義みたいで、やるべきことだけをササッと口にしてた。

 まあ今はわりと緊急事態だからね。とはいえエクス・マキナの倒し方や行動パターンが分かったせいか、冒険者たちの雰囲気も若干緩くなってる。もっと真剣に、命がかかった極限状況みたいな空気を醸し出して欲しいなぁ……。


「それから魔力量に自信のある方、または治癒魔法に造詣の深い方はいらっしゃいませんか?」

「あ、僕はそこそこどっちも自信あります」

「あっ、あたしも魔力には自信あるよー!」


 ウゲッ。そっちの方が楽そうだと思って僕が手を挙げたら、さっきの悪魔少女も手を挙げやがった。関わり合いになりたくないと思った瞬間にこれか。運が悪いなぁ、チクショウ。

 しかし今更無かったことにしようにも、ギルマスの目はしっかり僕と悪魔少女を捉えてた。こっち見んな、目玉抉ってキラにプレゼントするぞ。


「ではあなた方には別のお願いがありますので、ギルドの加工場へご移動願います。詳細はそちらでサブマスがお話致します」

「分かりました――行くぞ、ミニス。あの悪魔少女と拘わらないように素早く」

「無理じゃない? 何かこっち見てるわよ?」


 ギルマスの言葉に従ってすぐさま会議室を出ようとしたんだけど、悲しいかなさっきの悪魔少女がバッチリ僕に視線を向けてついて来ようとしてるんだわ。行き先は同じはずだから仕方ないっちゃ仕方ないが、これは絡まれる流れかもしれないな? 僕は別段角は隠してないから、ニカケなのは一目瞭然だし。

 よーし、絡んできたらボコボコにして角をへし折ってやろう。三つ揃ってるから偉い? 知らんんわ、そんな謎風習。力こそ全て……!






「あたし、セレステルって言うんだ! よろしくね!」


 角をへし折る気満々で会議室を出た僕に追いついてきたかと思えば、ちょっと目をそらしたくなるくらいに眩しい笑顔で自己紹介をしてきた悪魔少女――セレステル。

 さっきはモブくらいにしか見てなかったからいまいち分かんなかったけど、こうして相対するとかなりの美少女だな? 緑色の長い髪はもっと細かく言えばライムグリーンって感じで、それをポニーテールに結ったり前髪にヘアピン付けたりしてるし、かなりのオシャレさんなのが見て取れる。青い瞳もパッチリしてて綺麗だし、鮮やかな緑の髪に映えて実に印象的だ。しかもミニスカで太腿の半ばまでソックスを身に着けてるから、絶対領域も確保。色んな意味で眩しい子だね?

 しかし、うーん……見事に僕への侮蔑とかそういう感情が一切無い。何か毒気を抜かれた気分だ。ショボい角だけの僕の姿が目に入ってないんだろうか?


「はい、よろしくお願いします。僕はクルスです。それでこっちはミニスって言います」

「よろしく、お願いします……?」


 別段気分を害される事はされてないから、ひとまず丁寧に挨拶を返す。ミニスにも挨拶をさせたんだけど、何故かコイツは微妙に困惑気味だ。どうやら僕と同じく、ニカケの悪魔に友好的なのがいまいち納得できないご様子。あるいは僕が丁寧な返事をした事に対してかもしれないが。


「あはは、君ちょっと固いなぁ? 同じAランク同士なんだし、敬語なんて使わず仲良くやろうよ?」

「あれ? 何故僕がAランクだと知ってるんですか?」

「そりゃあ闘技大会であんな大々的に紹介されたんだから知ってるよ。君はフード被ってて顔が分かりにくかったけど、その子と一緒にいるって事は君がそうなんだよね? 名前も同じだし」


 どうやら闘技大会を観戦してたから僕の事を知ってたらしい。よくよく考えてみれば僕は確かに地味な魔術師のローブ着てフード被ってたけど、ミニスは特に顔を隠したりはしてなかったもんね。そしてどっかのクソ犬のせいで僕の女の一人って認識されちゃったし、ミニスの傍にいるのが僕だって事は少し考えれば予想できるか。


「いやぁ、それにしてもエキシビジョンマッチは熱かったなぁ! 魔法全振りかと思ってた君が、まさか剣を手にして接近戦をするなんてびっくりしたよ! しかも研鑽を感じる滑らかで鋭い太刀筋の数々! バール様に膝までつかせちゃうし、もう本当に凄かったよあの試合!」

「ありがとう……ございます……?」

「直球で褒められると弱いのね、あんた……」

 

 邪気も含みも一切無しに、もの凄く興奮した様子で目を輝かせて僕を褒めてくるセレステル。何か凄く意外な反応に思わず首を傾げちゃったよ。ミニスがボソリと突っ込んだように、直球で褒められると何か妙にムズムズする……。


「だから普通にタメ口で良いってば――あっ、ていうかあたしは同じAランクでも予選落ちだったし、むしろあたしが敬語使わないといけないかも……?」


 ここでふと気づいたように、セレステルは難しい顔で唸り出す。表情がコロコロ変わるなぁ? 見てて退屈しないけど、いまいち狂気を感じないから物足りない。僕のヒロインとしてはどうにも役者不足だけど、一般的には十分ヒロイン張れそうな気がしなくも無い。


「……まあ敬語は意外と疲れるし、そういう事なら普通に喋らせてもらおうかな。ちなみに予選何試合目だった?」

「十二試合目だよ。いやぁ、まさか手も足も出ずに負けるとは思わなかったなぁ……」

「ほう、十二試合目……」


 感心したような声を出してみたけど、ぶっちゃけどの試合か分からん。十二試合目ってどんなんだったっけ? そもそも僕自身が何試合目だったっけなぁ……?


「……うちのメイド」

「あー、アレが相手かぁ。アレじゃあ負けるのも仕方ないわ。姿が見えないだけじゃなくて、マジで気配も音も魔力も感じられないもん」


 ボソッとミニスが助け舟を出してくれたから、何とか思いだす事ができた。そっか、予選でミラと当たったのか。そりゃあ何もできずに負けるわな? 僕だってわりと苦労したもん。ちなみにAランクの冒険者に勝利したミラさんなんだけど、実はBランクの冒険者らしいよ。まさかの下剋上だね。

 ただ普通にAランクに昇格する場合、パーティでの合同依頼云々を受ける必要があるらしいから、単純にミラはそれが無理だからランクを上げられなかっただけなんだろうな。クッソビビりな蚤の心臓の持ち主で、まともに生きてられるのか不安になるくらいの子だから、見知らぬ人たちとパーティ組んで冒険とか出発前に卒倒してもおかしくないし。


「あの人も本当に凄かったよねー。あたしも君みたいに何とかして引きずり出せば良かったかなぁ……?」

「あんまり変な事すると僕みたいにブーイング食らうんじゃない? 優勝した時も罵倒の嵐でびっくりしたよ」

「あはははっ! 確かにアレはびっくりした! 完全に悪役扱いだったよね! あはははっ!」


 優勝者が盛大なブーイングを受ける光景がよほどツボに嵌ったみたいで、セレステルはお腹を抱えて笑い始めた。でも不思議と不快感を覚えない。まああんな反応されるのも仕方ないくらいに観客を煽り散らかしたからなぁ……。


「あれ結構傷ついたんだよなぁ――っと、ついたね。ここが加工場か」


 なんて面白おかしい会話をしながら歩いてると、『加工場』って記された重厚な扉の前に辿り着いた。

 何でも加工場っていうのは、冒険者が持ち込んだ魔物の死体を解体する場所らしい。動物型の魔物だけでも、毛皮や肉、爪とか使えるものはいっぱいあるからね。自分で魔物を解体できない冒険者はここでやってもらうんだ。もちろん僕も面倒なので必要な時は任せてます。


「さて、僕らにはどんなお仕事が回されるのかなぁ?」


 そう呟きながら、加工場への重厚な扉を開ける僕。

 ギルマスは治癒魔法に造詣が深い人、魔力量に自信がある人って尋ねてたし、やっぱり怪我人の治療か何かを求められるんだと思う。でもそれなら何で加工場なんだろうね? 救護室じゃ無いの?


「――ぎゃああぁあああぁぁあぁぁっ!!」


 なんて考えてたら、加工場で僕らを真っ先に迎えてくれたのは苦痛に塗れた悲鳴だった。そして腕を切り落とされ床で藻掻き叫んでる聖人族奴隷のスプラッタな姿。これはまた、随分予想外な光景だなぁ……。



 新キャラ登場からのスプラッタな光景で締め。今のところセレステルの最終的な扱いはまだ未定だったりする。

 あとさりげなくミラの個人情報(Bランク冒険者)が明かされました。実力的にはSランクでも上澄みの方ですが、致命的にパーティプレイに向いてないので昇格試験が突破できません。悲しい。

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