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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第11章:邪神降臨
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新大陸




 やあ、みんな! 僕はみんな大好きクルスだよ!

 え? 今何してるって? そうだね……カッコいい邪神の姿に変身して、大陸全体が見下ろせるほどの高空に浮遊して、右手から黒い球体状に集束させた魔力を放ちつつ、下のクズ共がちゃんと僕の姿を見られるように空をスクリーンにして僕の姿を投影してる真っ最中だよ。忙しすぎだって? うん、僕もそう思う。

 でも仕方ないんだ。幾ら僕の灰色の脳細胞が勇者召喚への対処と聖人族殲滅魔法への対処と、邪神降臨を同時に行うという素晴らしい名案を形にしたとはいえ、邪神の姿を下のクズ共が見てないなら効果はイマイチだ。それに魔力を叩きつけて恐怖と危機感を煽らないと駄目だし、結果的にクソ忙しくなったわけ。

 ちなみに無限の魔力の持ち主たる僕が魔力そのものを放つことに関しては、細心の注意を払って練習を重ねてるから問題無し。具体的にはこの星の反対側でレーンと一緒に切磋琢磨しました。最初ちょっとやり過ぎて魔力の余波でレーンが即死したりしたけど、まあ転生する前に蘇生させたから問題無し。もっと制御しろってしこたま怒られたがな!

 

『――だが、運が良かったな? どうやら私の力の大部分は封印の中に置き去りとなってしまったようだ。今の私では、一撃で星を消滅させる力を振るう事は出来ないだろう』


 細心の注意と調整を重ねた上で魔力を放った後、僕は唐突に右の掌に形成してた魔力球を握り潰し霧散させた。その上で『今私は弱体化してますよー。倒すなら今の内ですよー』と遠回しに眼下のクズ共に伝える。

 本当はこんな汚い世界は消滅させた方が良さそうだけど、それやっちゃうと女神様が怒るからね。それに女神様を手に入れる事ができなくなっちゃうし、頑張って脅威を演出しつつもギリギリ何とかなりそうな強さに抑えなきゃいけないんだわ。


『故に世界を滅ぼす力を得るためにも、しばしの休息を取らねばならない。そのためには我が居城、そして我が支配する地が必要だな』


 そう口にした僕は、一旦眼下のクズ共に届けてた思念を打ち切った。

 いやー、緊張した。何せ強制的に全ての人間に演説聞かせたようなものだからね。出来る限り邪神っぽく振舞ったけど、それでもかなりビクビクしてたよ。


「さあ、本番だ。大丈夫、僕なら出来る。模型で何度もやったんだし」


 とはいえ今は心を休ませてる暇なんて無い。下手をすると地上から攻撃魔法を叩き込まれたり、飛べる奴が突っ込んでくる事だってあり得る。だから混乱の極みにある今の内に全て終わらせないといけないんだよ。


「――地殻変動クラスタル・ムーブメント


 だから僕は緊張を抱えたまま、模型で何度も練習した魔法を即座に発動させた。

 瞬間、眼下のダンベルみたいな形の大陸から高空の僕の所までもの凄い地鳴りが聞こえてくる。僕にさえめっちゃ凄い地鳴りが聞こえるんだから、実際あの大陸にいる奴らはたぶん立ってられないくらいの大地震を経験してるんだと思う。まあすぐ終わるから我慢して貰おう。


「まずは国境の森を沈める、っと」


 国境の森をなぞるように右手を動かすと、それに従って本当に国境の森がその陸地ごと崩壊して海に沈んでく。

 そう、これが地殻変動クラスタル・ムーブメントの魔法。自由自在に大陸の形を弄る素敵な魔法だ。今のままだといまいちやりにくいから、少し大陸の形を変える必要があってね。

 え? 国境の森にいた魔獣族はどうなったのかって? そりゃ大地の崩壊に巻き込まれて死んだに決まってるじゃん。そのくらいの犠牲は取るに足らない些末なものだよ。コラテラル・ダメージってやつ。


「次は二つの大陸をドッキング!」


 持ち手が消滅して二つの鉄球みたいになった大陸を、今度は無理やりにくっつける。聖人族の国境の砦と、魔獣族の国境の砦をキスさせる感じにね。

 デカい大陸を二つ無理やりに動かした弊害で大津波とか大地震とか発生してるっぽいけど、きっとこれもコラテラル・ダメージ。そもそもこの星の知的生命体はこの大陸にしか存在しないし、遠くの大陸が津波に襲われようと問題はないでしょ? 地震に関しては耐震設計をしてない建物が悪いって事で。


「そして二つの大陸の上の方を引っぺがして、無理やりに結合!」


 横にした八の字、あるいは『∞』の形になった大陸を、今度は上の方を薄く引っぺがして真ん中で無理やりにくっつける。今度は歪な三つ葉のクローバーみたいな形になったなぁ……あるいは細い竿と玉……いや、何でもない。

 もちろん大陸を引き裂くに当たって、細心の注意は払ってるよ。具体的にはキラの故郷とリアの故郷が巻き込まれないように、そしてデカい街が巻き込まれないように。ミニスの故郷は国境にほど近いから大丈夫。それ以外はどうでも良いから、引き裂かれる大陸に巻き込まれて幾つか村とか街が滅びてるだろね。はいはい、コラテラルコラテラル。


「よし、完了! 何か大陸がそそり立った男のアレみたいな形になったけど気にしない!」


 最終的に大陸がちょっと卑猥な形になっちゃったけど、これはちょっとどうしようもない。今から変更するわけにも行かないし、この形で我慢して貰おう。

 それにまだやるべき事が残ってるから、苦情を受け付けてる暇はどこにもない。こっちだって頑張ってるんだから卑猥な形くらいで文句を言わないで欲しいね?


「そして亀頭――じゃない、奥の方の地形を固めて、別大陸に置いてある邪神の城を――召喚(サモン)!」


 若干細い竿の部分、その頂点に近い場所の地面を魔法で破壊不能にして、別大陸に置いてある邪神のお城をそこに呼び出す。基礎は存在しない、建築基準法ガン無視の不良物件だ。とはいえお城自体がクソ重いし破壊できないから、地震も風も問題無し。何よりさすがに基礎から作るほどの知識も無いしね。


「よし! 邪神の城のお引っ越しも完了!」


 これで大陸を弄るのも終了。ダンベル型の大陸は最終的に1つの葉がやけに細い三つ葉のクローバー型になり、それぞれの葉が聖人族領域、魔獣族領域、邪神領域っていう感じになった。

 もうこれで後には引き返せないし、国境に至っては目と鼻の先に敵種族がいるとかいう酷い状況だ。とはいえ即座に全面戦争が始まるって事は無いと思う。何せこれは意図的に創り上げた三竦みの状態だから、下手に一つの勢力に戦力を集中させると横がガラ空きになる。それは残った勢力に大きな隙を晒す事になるから、余程の馬鹿じゃなければ邪神を無視して敵種族と殺しあう、なんてことはしないと思うんだけど……みんな屑ばっかりだしやっぱりちょっと不安だなぁ?


『……ふむ。今の私の力ではこの程度が限界か。やはり早々に力を取り戻さなければな』


 邪神の力のデモンストレーション兼、状況を整えるための一幕を終えて、僕は再び思念を人々に届ける。『邪神の力は凄いよ! 大陸だって引き裂き意のままの形にするよ! 倒すなら弱体化してる今がチャンスだよ!』って念を押すためにね? ここまでお膳立てしないといけないとか、本当に手がかかるクズ共だよ……。


『故に、私には貴様らの負の感情が必要だ。怒り、嘆き、絶望し、我が力の糧となり死に絶えるがいい』


 ここで僕は大仰な仕草で両腕を広げ、また新たな魔法を行使する。

 邪神の力の源は人々の負の感情(という設定)。じゃあ負の感情を最も効率良く得る方法は何だろうか? そう、答えは虐殺だね!


『出でよ、我が下僕――エクス・マキナよ! ゴミ共を血祭りに上げるのだ!』


 そんなわけで、地殻変動とそれに伴う大地震にかなり衝撃と混乱を受けてるであろう眼下の大陸の至る所に、ここ三ヵ月間チマチマチマチマと創り出したエクス・マキナたちを召喚し盛大にバラ撒いた。

 もちろん予めどこにどの程度の数を召喚するのかもしっかり決めてあるから、抵抗もできずに滅びるとかは無いと思う。まあ地図にも載らないくらいの小さな村とかは滅びるかもだけどね。コラテラコラテラ。


『抗えるものなら抗ってみるがいい! ククク、ハハハ、ハーッハッハッハ!!』


 そうして僕は最後に三段笑いを決めると、青空に自分の姿を投影する魔法を打ち切り、思念伝達の魔法も打ち切り、転移の魔法で屋敷へと戻った。

 これで世界中に邪神の復活を宣伝できたし、脅威をバラ撒く事もできた。ひとまずの脅威は単一種族だけじゃ倒す事のできない生体兵器、エクス・マキナとの戦いだ。根っこから腐ってるクズ共がどんな対応をするのか楽しみだね! それにしても緊張したなぁ!




今なら弱ってるよ! 倒すなら今がチャンスだよ!(念押し)

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