二度目の邂逅
⋇性的描写あり
⋇残酷描写あり
「――はっ!?」
ふと気が付くと、僕は果ての見えない大草原に倒れてた。空はどこまでも青く澄み渡っていて、心地の良い日差しが降り注いでくる。頬を撫でる風が涼しくて気持ち良いし、空気も実に美味い。ここで日光浴でもしてお昼寝したくなる気分だ。
でも問題が一つある。僕は何故こんな場所にいるんだろう? 確か僕は女神様にとっても初々しくて愛らしい神々の黄昏をされて、神槍をこれでもかと虐められて――
「……そっか。女神様のお口でのご奉仕があまりにも素晴らしすぎて、昇天してしまったのか……」
そこまで思い出して、僕は自分の置かれた状況を理解した。きっとあまりにも気持ち良くて愉悦が過ぎたせいで、僕はそのままぽっくり逝っちゃったんだと思う。この無限に広がる草原と青空が天国の光景だと考えれば辻褄はあうしね。
しかしそうなると不思議だ。僕って天国行けたんだ? てっきり大焦熱地獄とか無間地獄に放り込まれるものだと思ってたよ。
「――フハハハハ! いやぁ、良いものを見せて貰ったのう? まさかあやつが自らお主の一物を咥え舐るとは。まるで娼婦のような姿にわらわも最高に昂ったわ。ククッ」
「え、女神様――いや違う!? 誰!?」
突然聞こえた愛らしい声に振り向くと、そこに立っていたのは女神様――じゃなかった。見た目は同じなんだけど、僕の女神様はこんな悍ましい気配を垂れ流さないし、そもそも邪悪な笑みを浮かべない。まるで見知らぬ誰かが女神様の皮を被ってるみたいだ……あれ? 何かデジャヴを感じる……?
「ククッ。わらわの事を忘れるとは薄情じゃのう? これは思い出させてやらんといかんな?」
「――あぐっ!?」
一瞬頭の片隅が疼いたと感じたのも束の間、邪悪に笑った偽女神様は気付けば僕の側頭部を指で貫いてた。転移とか高速移動とかそういうレベルじゃない。気付いたらすでに刺されてた。マジで何なのコイツ!?
「あっ、あっ、あっ――!」
そしてグチュグチュと僕の頭の中を掻きまわしてくるぅ! やめろぉ、変な声出ちゃうだろぉ! って、うん!? 何だ、さっき感じたデジャヴがより鮮明に――!?
「――あっ、思い出した思い出した! ミーシャだ、ミーシャ――あっ、あっ! ちょっ、思い出したから頭弄るのやめろぉ!」
「ククっ、わらわの事を忘れた罰じゃ」
全て思い出した――ていうか記憶を戻された僕の側頭部から、偽女神様ことミーシャの指が引き抜かれる。
そうだよ、コイツはミーシャだよ。僕の愛する女神ナーちゃん様の振りをして、僕に接触してきた創生の女神様の一柱だ。そしてナーちゃんに対する捻じ曲がった邪悪な愛情を抱いてるヤベー奴。初めて会った時、別れ際に記憶を奪ってきたから今の今まで分からんかったわ。
「忘れたっていうかお前が記憶を奪ったんだろうが。酷い事しやがる……脳みそちょっと零れたぞ?」
「なぁに。元々狂った貴様の脳なぞ、多少減っても変わらんじゃろ。むしろ悪いものが抜け出てまともになるかもしれんな?」
「やめてぇ、僕の脳みそ舐めないでぇ……」
女神様と同じ顔で、女神様がしない邪悪で妖艶な微笑みを浮かべ、か細い指に付いた僕の血と脳の欠片をペロリと舐めるミーシャ。猟奇的かつ倒錯的な光景に頭がおかしくなりそうなんだけど、その舌の動きで女神様にされたコトを思い出して興奮しちゃう……!
「……それで今回は何の用? ていうかこれで会うのまだ二回目だけどさ。そもそもここの光景は何?」
「ここはわらわが創り出した、お主との逢瀬のためだけの空間じゃ。カスのような信力しか持たないあやつは純白の世界に小物を一つでも出せばもう限界じゃが、わらわほどの女神ともなれば好きに弄れる。何ならお主の望み通りの光景にしてやるぞ?」
「本当? じゃあ女風呂とかいける? もちろん美少女たちが入浴中の状態のやつ」
「何じゃ、わらわでは不満か? しょうがないのう?」
などとわざとらしい焼きもち顔をしつつ、ミーシャは指をパチンと鳴らした。途端に宇宙の全生命が半分に減らされる――なんて事は無く、大草原と青空という開放感溢れる大自然の光景が、一瞬にして熱気と湿気と女体溢れる室内温泉の光景に変わった。
「おおっ、マジで女風呂じゃないか! しかもすっげぇ美少女揃い!」
てっきり場所だけ女風呂で女の子は無し! なんて仕打ちもあり得ると思ったのに、まさかの美少女揃いだったよ。それも全員かなりレベルが高い。雪のように白く滑らかな美しい肌の子がいると思えば、健康的に肌が焼けた褐色の子もいる。大人っぽい子から可愛らしい幼女まで、貧乳も爆乳も大いに取り揃えられてる。ただ、比率としては貧乳がかなり少ない感じだ。何か差異的なものを感じるなぁ……。
それはともかく、そんな最高の美少女たちがまるで僕など目に入らないみたいに温泉を楽しんでるんだから堪んないね。わがままボディを泡立ててる金髪巨乳のお姉さんも、まな板みたいな胸を大胆に曝け出して湯船を背泳ぎするロリっ子も、全てが素晴らしくて最高だ。ミーシャ様万歳!
「せっかくじゃし、わらわの知り合いの女神たちの姿を入浴客にしてやったぞ。触る事は可能じゃが、中身は空じゃからな。お主やわらわが期待するような反応は返してこんぞ?」
「それは残念。まあ感触は素晴らしいから文句は無いよ」
「何の躊躇いも無く揉んでおるのぉ? さすがじゃ」
などと感心したように声をかけてくるミーシャ。そしてちょうど目の前にいた赤髪で勝ち気そうな巨乳の子の胸を真正面から鷲掴みにして揉みしだく僕。
確かにミーシャの言う通り、中は空っぽ――要するに魂が入ってないっぽい。よくよく見れば目が死んでるし、女の子たちは機械的に特定の行動を繰り返してるだけみたいだ。実際僕が巨乳を揉んでも抓っても、赤髪の子は何ら反応を示さない。ちぇっ、つまらんな。えいっ、湯船に沈めて溺死させてやれ。
「それで用件の方は何? 僕の顔を見たくなったとかそんな感じ?」
「いや、お主の顔はいつも見ておるからな。いよいよ本格的に動き始めるお主を応援に来てやったというわけじゃ。嬉しかろう? がんばれ、がんばれ」
「そうなんだ、ありがとう――って、何故バスタオル姿!?」
ちょっと興奮する感じの応援に赤髪の子を湯船に沈めつつ振り向くと、そこには何故かバスタオル一枚のみを纏ったミーシャの姿――要するにナーちゃんがバスタオル一枚の姿がそこにあった。これにはちょっと度肝を抜かれたね。勝手に他人の姿であられもない姿を晒すとか人の心無いの? まったくこの野郎ありがとうございます眼福です。
「ここは温泉なのじゃから、それに相応しい姿格好になるのは当然の事じゃろう? ほれ、お主の姿も変えてやろう」
「きゃあ、エッチー!」
ケラケラ笑うミーシャがもう一度指パッチンすると、僕も腰にタオルを巻いただけの貧弱装甲にさせられた。ノリで女の子っぽい反応したらミーシャはお腹抱えてお下品に笑ってたよ。見た目は女神様そのものだから違和感がすっごい……。
何にせよお互いにひとしきりふざけて笑った後、僕とミーシャは揃って湯船に浸かった。人形たちが邪魔になりそうだから、蹴っ飛ばしたり沈めたりして排除してね。それでも何の反応もしないんだから本当につまらん。
「ふぅ……こうしてミーシャと一緒に温泉入ってると、さっきの一幕のせいでエッチの後に女神様とお風呂入ってるみたいに錯覚しちゃうな……」
「ククッ、アレは本当に素晴らしい光景じゃったのう? あやつがお主の一物を口いっぱいに頬張り、涙目で奉仕する姿……堪らなく愉快でそそる光景じゃったわ」
「覗いてたのかぁ。やっぱりエッチだなぁ……」
僕と向かい合うようにして湯に浸かってるミーシャは、実に嫌らしい笑い方をしつつ舌なめずり。どうやら女神様が僕の神槍に神々の黄昏してるシーンをバッチリ覗いてたっぽい。この覗き魔がよぉ……。
というか話変わるけど、今のミーシャはちゃんと作法を守って湯に浸かってるから、もうバスタオルは身に着けてないんだよなぁ。つまり僕の真正面にいるのは全裸のナーちゃんと言って差し支えない。ヤバい、興奮してきた。お湯がちょい色付きで身体が鎖骨の辺りから下が見えないのが余計に悩ましい……。
「……うん? 何じゃ、わらわの肌が気になるか?」
そんな風に息を呑んだ僕に気が付いたのか、ミーシャは面白がるようなニヤニヤ笑いを浮かべた。そしてこっちに背中を向けて湯船から立ち上がって、真っ白なお肌を見せつけてくる。やっべぇ、たっぷり舐め回してからやすりをかけて血塗れにしたいくらい真っ白で穢れなきお肌だぁ……。
「……気になるっちゃ気になるけど、それよりも一つ大事な話があるんだ。このタイミングでミーシャが会いに来てくれたなら、切り出すのは今しか無いだろうし。僕のお願い、聞いてくれる?」
「ふむ? よかろう。愉快な光景の礼じゃ。言ってみよ」
どうやら真面目な話だと理解してくれたみたいで、ミーシャは見返り美人みたいな格好で誘惑するのをやめて再び湯船に浸かってくれた。そして尊大な態度で続きを促してくるんだけど……見た目が女神様だからいちいち違和感が凄い。そしてエロい。
「……ミーシャの力で、女神様の姿をあのまま固定する事ってできない?」
とはいえ大事な話だから、僕は興奮を脇に置いてそのお願いを口にした。
本格的に世界平和に向けて活動を始めるに当たって、最大かつどうしようもなかった問題が実はこれなんだよ。女神様のあの可憐なお姿は、信者の妄想によって形作られたものだ。ミニスが女神様を信仰し始めたら、突然成長してウサミミまで生えた事件は未だ記憶に新しい。
女神様の存在が忘れ去られてて、覚えてる奴らも総じて信仰どころか嫌ってる現状なら特に問題は無かったよ? でも人間って生き物は絶望的な状況に追い込まれると神様に縋るもんだから、間違いなく女神様に祈りを捧げる輩が出てくるんだよ。そうなると僕の愛らしい女神様のお姿がどこの馬の骨とも知れぬ奴の妄想に凌辱され、解釈違いな姿に変貌させられかねない。それだけは絶対に避けたかった。だからこのタイミングでミーシャが会いに来てくれたのは正に天の助けだね。
「ふむ……なるほど。お主が邪神として破滅をもたらす事で、神に縋る無知蒙昧な輩が現れ、それによってアレの姿が変貌してしまう事を危惧しておるわけか」
「その通り。僕の愛する女神様のお姿が有象無象に好き勝手弄られるのは我慢ならないんだよ。どうにかできない?」
理解がお早いミーシャに、僕はもう一度誠心誠意お願いする。
女神としてかなりの力を持っているらしいミーシャでもダメなら、残念ながら他に方法は無い。一応今の女神様の姿を古い石像とか古文書とかにして、それをあの世界の奴らに見つけさせる事で妄想を統一するって対策は考えてるよ? でも確実性に欠けるし、何より大天使や魔将すら姿を知らないのに文献とかに残ってるってのはおかしいからねぇ……。
だからここが最大にして最後のチャンス。顎に手を当てて考え込んでる感じのミーシャの答えを、僕は固唾をのんで見守った。
「……よかろう、わらわに任せよ。あやつに流れ込む信力には手を出せんが、姿をあのまま固定するくらいならば朝飯前じゃ。少し待っておれ」
「――っしゃあ!!」
どうやら可能だしやってくれるみたい。僕は思わず立ち上がって万歳しちゃったよ。下半身がこれでもかってくらいに曝け出されちゃったけど、ミーシャは今正に僕のお願いを実行してるみたいで虚空を見つめたまま無反応だ。
ありがとう、ミーシャ様! マジでありがとう! とりあえず気付かれない内に座っておきます。
「……よし、完了じゃ。これであやつは例え被造物全てから信仰を得ようと、お主の好みの姿のまま決して変わらぬ。一生成長性ゼロじゃな?」
しばらくして本当に女神様の姿を固定してくれたみたいで、ニヤリと笑いながらそう口にした。
うへぇ、本当に感謝してもしきれない……やりたい放題やれる世界に誘ってくれた女神様に次いで僕の大恩人だな。こんな大恩人をハメるのは少し心苦しいけど、好奇心は止められないから仕方ない。
「ありがとう! 本当にありがとう、デュアリィ様!」
「むふふー。良いんだよー、これくらい――あっ」
僕が笑顔でデュアリィ様に対してお礼を口にすると、ミーシャがデュアリィ様の口調で返事を返してきた。とっても柔らかい笑顔を浮かべてね。そして直後に小さく声を上げて、自分の口元を押さえる。
うん……やっぱ予想通りだったかぁ……。
「……ハメたなー?」
少しご機嫌斜めな感じな口調でそう言い放つミーシャは、いつのまにかロリ巨乳完璧女神デュアリィ様の姿に変身――いや、元に戻ってた。ついでに湯煙の楽園だった周囲の景色も、黒一色の圧迫感極まる恐ろしい世界に変貌してる。
うーん、これ藪蛇だったかなぁ? 気付かない振りをしてた方が良かっただろうか……。
速報:ミーシャの正体はデュアリィ様だった!
まあ驚くほどの事でも無いな。他に女神出て無いし……
⋇一部ルビが長すぎたせいか反映されなかったので修正しました