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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第10章:真実の愛
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感動の再会

⋇残酷描写あり

⋇暴力描写あり




 


「――よし、全員起きろー。強制起床(モーニング・コール)

「くあっ……!?」

「っ!?」

「あっ……!?」


 場所は変わって僕の屋敷の地下一階。狩りを終えた僕は獲物をここの地下牢にぶち込んで、意識を失ってる三人を魔法で無理やりに目覚めさせた。諸事情で無傷で捕らえたウサギ娘はともかく、悪魔っ子と女狐はそのままだと死にかねないから一回身体を治癒してあげたよ。

 ちなみに格好はそのままなので、女狐は薄くてエロいネグリジェ姿だし、悪魔っ子はバスローブ一枚を羽織っただけの全裸姿だ。フリル満載の可愛らしいネグリジェ姿のウサギ娘がとってもまともに見えるね?

 あとこの地下牢には僕と三人娘以外は誰もいない。正確には他にもサキュバスが十人近くいるけど、うるさいから今は眠らせてる。この三人娘とお話するのに横から『何でもするから出して!』とか『許して!』とか言ってきそうなんだもん。今は一人で愉悦に浸りたいから仲間たちも連れて来てはいないわけ。


「ここ、は……?」

「ここは僕の屋敷の地下牢。お前たちは捕まって監禁されてる。魔法も武装術も使えないから自力で逃げる事はできない。オッケー?」


 ぼうっとした顔で身体を起こした三人娘に、鉄格子越しにそう状況説明をする。

 三人娘は一瞬驚いたような顔をしたけど、コイツらの屋敷での出来事を思い出したんだろうね。すぐに無力感溢れる諦観の表情を浮かべてたよ。


「……ヴェラ、ごめんなさい。私たちが間違っていたわ。やっぱりコイツはあなたの言う通り、とんでもないゲス野郎だったわ」

「そうです。ヴェラは間違っていませんでした。目が曇っていたのは私たちの方です」

「……良いのよ、二人とも。二人を納得させられる証拠を出せなかったあたしも悪かったもの」


 そして三人娘は自分たちの傷を舐め合うように慰めあう。この様子だと三人の結束や信頼は相当な固さなんだろうねぇ。だからこそ、これをぶち壊した時の爽快感は最高だろうなぁ……ヤバい、今から興奮してきた。落ち着け落ち着け、まだ早い。


「……今すぐあたしたちを解放しなさい。あたしの仲間たちを傷つけた事は癪だけど、そうしたら全部水に流してあげるわ」


 ひとしきり慰め合った後、悪魔っ子が代表して前に出てきた。鉄格子越しに怒りと殺意に煮えくり返った瞳で睨んできながら、解放すれば水に流すとか抜かしてやるよ。その後ろに立つウサギ娘も女狐も視線は似たり寄ったりだ。絶対水に流すわけないでしょ、これ。


「そう言われて解放する展開とか見た事無いんだよなぁ。何よりそんな憎々し気にこっちを睨んでるのに水に流すとも思えないんですが?」

「解放しなかったらどうなるか分かってるわけ? あたしたちはあんたの事を調査するって、色々なとこに伝えてんのよ? それなのにあたしたちの姿が消えたら、自分が怪しいって宣伝してるようなもんじゃない」

「です。それに言葉以外にも様々な方法で痕跡を残しています。何をどうしても全ての痕跡を抹消する事は無理です」

「理解できたのなら、早く私たちを解放する事ね。今なら特別に許してあげなくもないわ?」


 三人娘は実に得意げな顔、っていうかこっちを見下すような顔でそれぞれ余裕たっぷりにのたまう。

 確かに僕が普通の人間だったら、ビビり散らして失禁しながら許しを乞いつつ牢屋から出してあげたかもしれない。しかし残念ながら僕は普通の人間じゃない。母親のお腹の中に頭のネジを数本置き忘れてきたし、女神様から無限の魔力を授かった現人神だ。クッソ生意気な三人娘の脅しに屈するような雑魚じゃないさ。


「アハハハハハ! いやー、自分たちの方が立場が上だって思い込んでて本当におかしい! 草生える!」

「な、何がおかしいのよ!?」


 そんな事も分からず僕を脅してくるコイツらがあまりにも滑稽で、僕は笑いを抑えられなかった。少しの間人目もはばからずにお腹抱えて笑ったよ。どうせこの場には三人娘と僕以外は誰もいないし別に良いよね? いや、昏睡してるサキュバスたちがいたか。あと拷問部屋の方に一人待機してる。まあアイツは別に良いか。


「お前らの心をへし折るためにあえて教えてあげるけど、別にその辺は問題ないよ。お前らを殺した後に一方的に契約魔術を使って操り人形にした後、蘇生させてお前ら自身の手で痕跡を抹消して貰えば良いだけの話だし」

「は? そんなこと、できるわけないじゃない」

「できるんだよなぁ。僕はちょっとばかり特殊な身の上で、無限の魔力を持ってるからね。実際お前らは僕の魔法のせいで一切魔法が使えず、コテンパンにやられたでしょ?」

「………………」


 小馬鹿にするような顔をしてた三人娘だけど、今地下牢にぶち込まれてる情けない様を指摘してやると苦渋の滲む表情で押し黙ってた。僕は悪魔っ子と遊んでたから他二名がどんな風に狩られたかは知らないけど、この様子を見るに碌に抵抗らしい抵抗もできずコテンパンにされたのは確実かな?


「ただ、論より証拠とも言うからね。僕の力が本物だって事を証明してあげよう――空気弾(エア・バレット)

「えっ……」


 でも優しい僕は改めて力を見せつけてあげる事にした。そのために目の前の悪魔っ子に指先を向けて、魔法で圧縮空気の弾丸を飛ばしてその頭を容赦なくぶち抜いた。

 その背後にいた女狐とウサギ娘に飛び散った血や脳みそが盛大に降りかかると共に、小さく困惑の声を上げた悪魔っ子が後ろ向きに崩れ落ちる。一瞬の事だったから何が起きたのか理解できないまま死んじゃった感じかな? 女狐もウサギ娘も呆然としてるし。


「……ヴェラ!? そ、そんなっ!?」

「こ、殺した、殺した……! 人殺しです、とんでもないクソ野郎です……! よくもヴェラを……!」


 数秒ほど間を置いて現実を理解した女狐たちが、悪魔っ子の暖かい死体を抱き上げながら僕を罵倒してくる。罵倒する前に顔にかかった血とか脳みそとか拭きなよ。ばっちぃよ?


「まあまあ落ち着いて? 確かにそいつは脳みそ撒き散らして死んだけど、僕の手にかかればあっという間に蘇るんだよ――完全蘇生トランセンデンス・デス


 力を見せてあげるために、僕は蘇生の魔法を悪魔っ子に行使する。基本的にこの世界の魔法は万能とはいえ、死者を蘇らせるのは不可能だって認識みたいだからね。これで信じてくれるでしょ。


「――っ、ああっ!?」

「嘘っ!? まさか、本当に……!?」

「ありえないです……! まさか、こんな事ができる奴がいるなんて……!」


 頭の風穴が塞がった悪魔っ子が唐突に目を覚まし声を上げた事で、女狐もウサギ娘も驚愕に目を丸くしてる。

 でもゆっくりと身体を起こそうとする悪魔っ子の姿に、驚愕よりも生き返った喜びが勝ったのかな? 二人の表情が少しずつ涙ぐんだ笑顔になりかけてたよ。おいおい、心をへし折るためにやってるんだからそんな顔されちゃ困るよ。


「おっと、これじゃあ悪魔っ子には証拠を見せた事にはならないか。じゃあ次は女狐の番だ」

「ひっ!? や、やめ――っ!!」

空気弾(エア・バレット)

「っあ……!」


 指を向けると途端に怯えて顔を青くする女狐に対して、躊躇なく魔法を使ってその頭を撃ち抜く。さっきと同じく血やら脳みそやらを後頭部から弾けさせて、女狐はそのまま後ろのめりに倒れた。うーん、スカっとする。


「クララっ!? このクソ野郎、よくもっ!!」

「酷いです……あんまりです……どうしてこんな事ができるんですか……!」


 無駄だって分かってるはずなのに、悪魔っ子は鉄格子越しに僕に掴みかかろうとしてくる。反面ウサギ娘は咽び泣く様に顔を覆ってブツブツ言ってたよ。ちゃんと蘇らせてあげるから大人しくしてて欲しいなぁ?


完全蘇生トランセンデンス・デス

「――いっ、あっ……!?」


 今度は女狐に蘇生の魔法を行使して蘇らせる。これだけやれば僕が人の生死すらつかさどる事ができる神の如き力を持つ存在だって事、分かってくれたかな?


「クララっ! 大丈夫!?」

「だ、大丈夫……そういうヴェラは、平気……?」

「う、うん。大丈夫よ、大丈夫!」


 自分こそさっき死んだばっかりなのに、悪魔っ子は女狐を元気づけるように手を握って語りかけてる。同じ男に穢され騙された者同士の美しい友情だなぁ? ウサギ娘はメソメソ泣いてて参加できてないけど。


「……さて、二人に身をもって体験して貰ったんだし、ここまできたら最後の一人にも体験してもらうべきかな?」

「ひっ……! い、嫌、です……!」


 僕が指を向けると、ウサギ娘は恐怖に瞳を揺らしながら後退る。目の前で仲間二人があっさりと頭を撃ち抜かれて殺された光景を見せられたんだから、恐怖は余計に強いだろうねぇ。今にも漏らしそうなくらいビビってて最高に愉快だよ。


「――と思ったけど、お前は特別だ。傷つけたりはしないから安心しなよ?」

「え……?」


 だけど僕は諸事情でウサギ娘を傷つけたくないから、指を下ろして優しく語りかけた。

 これにはウサギ娘だけでなく、女狐も悪魔っ子も目を丸くしてる。まあそんな反応も当然だよね。悪魔っ子ほどじゃないけど、ウサギ娘も僕に食ってかかってきた奴だし。表面上はともかく女狐が一番僕をイラつかせなかった奴だから、ウサギ娘だけが特別扱いされる理由が分からないんでしょ。


「だから代わりに、もっと分かりやすい形で僕の力を見せてやろう。というわけで――おーい、入ってきて良いよー?」


 その理由を教えるために、そして女狐と悪魔っ子の心をへし折るために、僕は拷問部屋の方へと声をかけた。一拍置いて拷問部屋に続く重厚な扉が重々しく開かれて、その中からとある人物がゆっくりとこっちに歩いてくる。

 牢屋の中にいる三人娘は恐る恐るって感じでその人物に視線を向けてたけど、最初は地下牢が薄暗いせいでどんな人物か良く見えなかったみたいだ。だからある程度こっちに近付いてきた所で、急激に三人娘の表情が絶望の極みに変わったからマジで笑えたよ。


「嘘……嘘よ……!」

「そんな……ありえないわ……!」

「嘘です……こんなの信じられません、悪夢です……!」


 三人娘は揃って現実を受け入れようとせず、近付いてくる人物に恐怖と絶望の目を向けてる。

 さっきまで結構強気だった癖にこの反応。いやぁ、やっぱ強気な女がへし折れる光景は堪らないですね。この芸術的な絶望顔を切り取って保存したいくらいには最高だ。でもそれやるとどっかの猟奇殺人猫の同類になっちゃうからやらない。


「残念、これは現実だよ。というわけで、紹介しよう。いや、お前らには紹介不要かな?」


 僕の隣へと歩いてきた人物を三人娘に紹介しようと思ったけど、実は紹介の必要は無かったりする。何故って? だって三人娘はこれが誰かを、それはもう嫌というほど知ってるからだよ。この僕に似て人の良さそうな顔をした、茶色の髪をした犬獣人の少年の事をね。


「……ヴィオ」

「――久しぶりだね、みんな? 元気そうで何よりだよ」


 三人娘の誰かがぽつりと犬獣人の名前を――処刑されて死んだはずの元恋人の犯罪者の名前を呟き、それに対してヴィオはとっても人の良さそうな笑みを浮かべた。




死によって別たれた元恋人たちの感動の再会シーンだぞ。泣けよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 死んだ(確定)恋人が目の前に生前と同じようにいるなんて 現在ならホラー、フィクションでもホラーだけど 魔法のあるファンタジーならホラーっぽさが薄れる不思議
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