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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第10章:真実の愛
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裏切り者の尻軽女たち

⋇変態描写あり





「さて、それじゃあお前らの話を聞いてやろう。今の僕はお前らの愉快な姿を見られて気分が良いから、大概の事は笑って許せるからね」


 しばらくして花壇と芝生の修復が終わったから、満を持して僕は三人娘の話を聞いてやることにした。とはいえ屋敷には上げたくないから、この場でさっさと済ませよう。

 本当は聞いてやるつもりは無かったけど、メイドに締められて泣きながら園芸をしてるコイツらの姿があまりにも滑稽で面白かったからね。Sランク冒険者様が庭弄りを強制されてるとか笑うしかない。


「偉そうに! 何様のつもりよ!」

「おい、私のご主人様に何か言ったか?」

「あ、いえ……何でもないです……」


 僕の態度に瞬間沸騰する悪魔っ子だけど、ベルが睨みを利かせれば途端に大人しくなる。強い者には下手に出る、小者の典型みたいな反応してんな? だったら僕もコイツをボコボコにすれば大人しくなるんだろうか?


「それよりご主人様よ。ここで話をするというのなら立ち話もなんだ。私が椅子を持って来よう」

「あ、よろしく。さすがはベル。メイドの鏡だね」

「待った~!! ここが私のお役立ちのチャンスだ~!!」


 気が利くベルを褒めた所、唐突にトゥーラがそんな叫びを上げて割り込んできた。そして僕の目の前で膝を付いて両手を地面に付ける――おい、お前。まさか……。


「さあ、主~! 私が椅子になるから、存分に腰かけるといい~!」

「お前、本当にさぁ……」


 気が利くメイドに対抗して、自らの身体を椅子にするクソ犬にさすがの僕もドン引きだ。何ならベルもちょっと引いてるし、三人娘もかなり引いてる。仮にも冒険者ギルドの元ギルドマスターが、Sランク冒険者たちの目の前で肉椅子になるとかどういうプレイよ? 恥とかそういう感情は無いわけ?


「……まあいいや。じゃあ座る」

「座るの!?」


 何か言うのも面倒だし矯正もできなさそうだから、僕は諦めてその肉椅子に腰かけた。悪魔っ子が鋭いツッコミを入れて来たけど気にしない。コイツみたいな異常者と付き合うには海のように広い心を持っていないと駄目なんだよ。


「あふん。あ~、この重さ~……主にのしかかられて種付けされているようで、なかなかに興奮するね~……?」

「うむ、椅子は必要ないようだな。医者は必要そうだが……」


 僕がトゥーラの背中に腰を下ろすと、恍惚としたヤバい呟きが下から聞こえた。これにはさしもの有能メイドたるベルも、ゴミを見るような目をトゥーラに向けてる。たぶん医者でも匙を投げるかな、これは……。


「……で、お前らは僕に何の用なの? そもそもお前らは何者?」


 肉椅子のせいでいまいち格好付かないけど、足を組んでできるだけ偉そうな姿勢を取って三人娘に問いを投げかけた。

 と言ってもまあ、もう正体は知ってるんだけどね。たぶん僕への用事も想像通りだろうし。


「私達はお前と同じ冒険者です。Sランクパーティの<ネバー・アゲイン>。こう見えて何十年もSランクで活動してるベテランです」

「つまり見かけによらずババア」

「誰がババアよ!? まだ四十代よ! あんた先輩に対しての敬いの気持ちってもんが無いわけ!?」


 ウサギ娘の発言に対して端的に事実を述べると、途端に悪魔っ子が瞬間湯沸かし。コイツいちいち過剰に反応すんな? もしかして今生理?

 それはともかく、冒険者ギルドにいた時に解析(アナライズ)で調べたら、悪魔っ子は四十七歳だったはず……四十後半っていうのが嫌だから四十代って申告してるのか。千年は生きる悪魔の癖に浅ましいなぁ?


「敬いを求めるならまずそれに値する人間性を見せてくれませんかねぇ? ストーカーで喧嘩っ早くて人の屋敷の敷地内へ不法侵入して暴力沙汰を起こした挙句、メイド一人に締められた情けないSランクパーティさん?」

「く……ううぅっ……!」

「返す言葉もねーです……」


 容赦なく事実と現実を指摘してやると、悪魔っ子は真っ赤になって悔しそうに打ち震え、ウサギ娘はがっくりと肩を落とす。

 一応僕は初対面の人間にはある程度の敬意と丁寧さを以て接するよ? でも初見で僕の顔を侮辱してきたようなクッソ失礼な奴らに払う敬意なんて微塵も無いしねぇ。この自己犠牲系主人公フェイスが分からないような愚物に敬語を使うべきとも思えないし……。


「もうっ、あなたたちは静かにしていなさい? ここは私が話すから」


 反論できずにいる二人を見かねたのか、ここで比較的身綺麗な狐っ子が前に出た。

 冒険者ギルドでの反応から察するにコイツは多少なりとも温厚な方っぽいし、もしかするとトゥーラとやりあったりはしなかったのかな? だとしたらクソ二匹みたいにボロボロになってないのも納得だ。


「まずは謝罪をするわね。うちの二人が迷惑をかけてごめんなさい。そして私がそれを止められなかったことも謝るわ。本当にごめんなさい……」


 そしてぺこりと頭を下げてくる。巫女服っぽいのを着込んでるけど嫌らしく着崩した感じのやつだから、そこそこ豊かな胸の谷間がばっちり見えてちょっとドキっとしました。おう、その谷間に免じて許してやんよ。


「いいよいいよ。馬鹿が二人もいると大変でしょ? そこは僕も良く分かるから」

「クゥ~ン! 主~、もっと強く叩いてくれ~……!」

「そ、そう……」


 肉椅子のケツをバシバシ叩きながらそう返すと、狐っ子はちょっと困惑した感じに頷いた。まあ椅子にされてケツを叩かれてるってのに、甘い喘ぎを零してる変態を目の当たりにしたら無理も無い。本当に何で僕の周りにはこういう度し難い変態とか狂人ばっかり集まるかなぁ……。


「えっと、それで……そう、あなたへの用事よね。実は私達、昔この屋敷に住んでいたのよ。あなたもこの屋敷に住んでいるなら、前の持ち主の事は知っているんじゃない?」

「うん、知ってる。イカれた男に騙されてた女三人――それが君らなんだよね?」


 実際はミニスに教えられるまで全然思い出せなかったけど、さも知ってる風を装って答えた。僕としてはイカれた男に騙されてた女三人っていうより、尻軽のビッチ三人に裏切られた可哀そうな男って感じなんだけど……。


「ええ、その通りよ。私の名前はクラリエット。そっちの悪魔の子がヴェロニカで、兎獣人の子がリリアナ。私たち三人、頭のイカれたクズ野郎に騙された哀れで滑稽な女たちよ」

「……男なんて、もう信用できないわ。どんなに優しい奴でも腹の中じゃ汚い事を考えてんのよ」

「です。もう二度と騙されたりはしないです」


 狐っ子が自嘲気味に暗い目をしながら口にして、悪魔っ子が僕を睨みながら続き、ウサギ娘が何故か自らの左手に目をやりながら締める。 

 何で僕に対して異様に辺りがキツイんだって思ったけど、もしかして僕に限らず男にはみんなあんな感じなのかな? そんなんでSランクの冒険者としてやっていけんの? 何かちょっと心配になってきたね……。


「なるほどね。それで? 哀れな女たちは僕にどういったご用件が?」

「ずっと前から決めていたのよ。もしこの屋敷を買うような人がいたら、その人がまともな人間かをみんなで確かめようって。だって地下に牢屋と拷問部屋があるのよ? しかも拉致監禁に殺人・拷問未遂の事件があった屋敷なのよ? そんな屋敷を買う人間、怪しいに決まってるじゃない」

「尤もだ。反論の余地が一切ないね?」

「あっさり認めんのね!?」

「清々しいです」


 これには言い返す余地が微塵も無かったから、僕は素直に頷いた。途端に悪魔っ子――ヴェロニカが鋭いツッコミを入れ、ウサギ娘――リリアナがいっそ感心した様子を見せる。

 だってこれに関してはイカれてる僕目線で見ても反論の余地が一切無いもん。『地下に牢屋と拷問部屋があります! 牢屋に同族ぶち込んでました! 拷問部屋で女の子を磨り潰して壊す直前でした!』。そんな曰くがあるってのに、ちょっと安いからってこの屋敷を買うまともな人間はいないわ。


「それからこれは私たちの偏見や横暴の類だとは思うけれど、この屋敷を購入したのが男性で、その仲間に多くの女性がいるって事を考えると、どうにも不安になってくるのよ。騙されていないかとか、彼の本性を知っているか、とかね?」


 などと狐っ子――クラリエットは僕が腰かけてる肉椅子にチラリと視線を向けながら続けた。まあ、これを見たら心配になるのも無理は無いか。残念ながら死の一歩手前にまで追い込んでも治らなかったどころか、むしろそのせいでこうなってしまった節があるからコイツはどうしようもないんだわ。


「なるほど。つまり君らが僕にお願いしたいのは――」

「――屋敷の中、特に地下牢を見せて貰う事。そして、あなたの仲間たちとおしゃべりさせて貰う事、かしら? 疚しいことが無いのなら……許可して貰えるわよね?」


 僕の言葉に被せる形で、クラリエットは悪戯な笑みを浮かべて尋ねてきた。でもこれはどっちかって言うと脅しだよね? 言外に『断ったら疚しい事があると見なす』って言ってる風に聞こえるし。まあ僕には疚しい事しかないんだけどな!


「……ちなみに断った場合はどうなるの?」

「特にどうもならないわ。ただ……冒険者になって日も浅い上にいきなりAランクっていう怪しさ抜群の冒険者と、数十年間Sランクパーティとして活躍して国に貢献してきた私達、信用やコネはどっちが上かしらねぇ?」


 そうして殴りたくなる感じの表情をしたまま、クラリエットは続けてきた。

 なるほど。断ったら信用やコネを駆使して潰すって言ってるわけか。確かにケツの下のクソ犬のせいで、多少怪しい経歴になってしまった事は否めない。何か卑怯な手を使ったんだろって因縁つけられた事も一度や二度じゃないしね? 因縁つけてきた奴らは丁重に分からせたけどさ。

 そして表向きには向こうの方が信用もコネもある。これは断れないですね。とはいえこういうガサ入れには備えてるから、屋敷の中を見られるのは別に良い。ただコイツに手玉に取られてるみたいな展開は面白くないなぁ? 何だその勝ち誇ったようなツラは? 尻軽の女狐がよぉ……。





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