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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第10章:真実の愛
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一緒におでかけ




「ただいまー。今帰ったよー」

「たっだいまー!」


 午後五時ごろ、オカンがうるさいから僕はお城の内装創りを切り上げて転移(テレポート)で屋敷に帰還した。

 とりあえず魔法で色々頑張った結果、何とか城を沈下させずに保持する事に成功したよ。部分的に重力を弄ったり重さを軽減したりと努力はしたんだけど、最終的に全てが面倒になったから一帯の地面を破壊不能にして固定する事で事無きを得ました。かなりの力技を使ったのは否めない……。


「お、お帰りなさいませ……ご主人、様……リア、様……」


 そしてエントランスで僕らを迎えてくれたのは、フリフリのメイド服に身を包んだ哀れなインビジブル・マジシャンことミラ。ベルが選んだらしいクッソ短いミニスカートの裾を下に引っ張りながら、顔を真っ赤に染めて出迎えの言葉を口にしてる。いいねぇ、エッチだねぇ……!


「声が小さい! もっとハキハキ喋らないか!」

「ひっ……! すみ、すみません……!」


 そしてそんな哀れなミラを、メイド長に昇進したベル(キラの姿)が容赦なく叱責する。元々気が弱い性質っぽいのにガンガン責められてるせいで、もう泣きそうになってるよ。見てて段々痛々しくなってくるな……。


「やれやれ、新人教育というのは大変なものだな……」

「お疲れー、ベル。もしかしてミラは使えない感じ?」

「そうだな。ミスは多いし卑屈な態度がかなり目立つ。とはいえ教えた事自体は一度でしっかりと覚えるし、見目麗しく声も綺麗だ。おどおどせずに明るく振舞えば輝けるというのに、勿体ない……」

「お前、ボロクソに貶すわりには褒める所しっかり褒めるよね……」


 呆れ果てた様に口にしてるけど、評価は普通に最高だった。やっぱり自分の素の姿がクソなのを他ならぬ自分自身が認めてるから、他人の容姿や長所は掛け値なしに褒めるんだろうか。ミラもわりと褒められて満更でもなさそう。


「それにしても、角や翼の有り無しで優劣を付けるとは、私が眠っている間に真にくだらない評価基準が出来たものだ。何故差別するのか全く理解できんな? こんなにも見目麗しいというのに……」

「ふえぇ……!」

「何だこのナチュラルに女を口説くムーブ……」


 うっとりとした表情で頬を撫でてくるベルに、ミラは滅茶苦茶タジタジだ。ベルの今の姿が目付きの鋭いキラって事も相まって、イケメンに迫られてる感じなんだろうか。飴と鞭を使い分けてるなぁ、コイツ……。


「……それはそれとして、新人メイド一人追加で仕事の手は足りてる?」

「そうだな、何分初めてな新人教育も平行しつつ働いているからな。私が不眠不休で働けば問題無く足りるだろう」

「それは足りないって言うんだよ、馬鹿が。まさか今までも不眠不休で回してきたんじゃないだろうな?」

「………………」


 僕がそう尋ねると、ベルはふいっと視線をあらぬ方向に逸らした。これはマジで不眠不休でやってんな? メイドを休みなく働かせる鬼畜だって周囲に思われちゃうから、そういうのやめてって言ったでしょ?

 しかし突然新入りを連れてきて教育よろしくって押し付けたこっちにも非があるし、あんまり強くは言えないのが苦しい所だ。


「そういう事なら、また何人かメイドを雇わないと駄目かなぁ。でもなぁ、うちは色々と特殊だからなぁ……」


 少なくとも僕の屋敷のメイドの仕事は、広告出したり求人出したりして雇う感じのやつじゃない。ここで働くって事は僕らの異常性を受け入れ、なおかつ僕らの目的を受け入れるくらいの度量が無いと務まらない。メイドとして屋敷に骨を埋めるくらいの覚悟が無いと、一般人をここで働かせるなんてできないんだよなぁ。


「じゃあ捕まえてるサキュバス働かせよ! お仕事で失敗したら鞭でしばいて焼きごて押すの!」

「闇のあるメイドプレイかな? 確かに昼はメイドとして働かせ、夜は慰み者ってある意味ロマンのあるプレイだけどさぁ……」


 リアが笑顔でとんでもねぇ事言ってくるけど、さすがにそれはどうかと思った。そこまでやったら捕まえてるサキュバスたちの心がすぐにへし折れそう。ただでさえ毎夜のようにリアが拷問してるから精神的に参ってるっぽいのに。

 あと聞くところによると、トゥーラもこっそりサキュバスたちを拷問してるらしいんだよね。僕に対しては従順なマゾ奴隷だったから忘れてたけど、そういえばアイツもドSでしたね……。


「……まあ、ちょっとメイドを増やせないか考えてみるよ。だからしばらくは二人で頑張って?」

「うむ、了解だ」

「は、はい……! 頑張りますから、し、失望だけは、しないでください……!」


 素直に頷くベルと、一生懸命笑顔を作って頷くミラ。僕に失望されたら死ぬより酷い目に合うって思ってるからか、頑張って役立つメイドになろうとしてるっぽい。悪いけどあまりにも必死過ぎて笑う。






「うーん……お城作り、メイドの勧誘、兵器の開発、表向きのお仕事。マジでやる事いっぱいあるなぁ……」


 お城の内装創りを初めて数日。城が広すぎて時間がかかって仕方ないから、今日は息抜きに別の作業をしてた。何をしてるのかと言うと、自室で机に向かってスケッチブックにお絵描きだ。あ、エロい絵を描いてるわけじゃないよ? 本当だよ? 


「いや、ここはこうした方が良いかな? で、こんな風にして……」


 あんまり絵心が無いから何度も何度も消しては描いてを繰り返して、少しずつそれっぽく仕上げてく。描いてるのは邪神としての僕の姿。やっぱり絵があった方がイメージしやすいから、こうして地道に作ってるわけだよ。真の世界平和に導く救世主とは思えないくらいに地味な作業だぁ……。

 なんて思いながらも必要な事だから黙々とやってると――コンコン。部屋の扉がノックされた。おやおや、誰かな?


「はい、開いてるよー。どうぞー」

「――ねえ、今ちょっと良い?」


 目を向けて答えると、扉を開けて入ってきたのはミニスだった。珍しいなぁ、ミニスが自主的に僕の部屋を尋ねてくるなんて? 

 僕がまだ童貞だった頃はミニスには抱き枕役っていう立派な役目があったし、調教の成果か何も言わなくても寝る頃には部屋に来てくれたけど、初めてをどっかのクソ犬とクソ猫に奪われた辺りからは来なくなったんだよね。まあ抱き枕役は抱いた相手になるから必要なくなったって言い方が正しいか。

 そのせいでミニスが自主的に尋ねてくるなんてもの凄い珍しい。これは邪神のラフなんて描いてる場合じゃないな!


「良いよ。でもその前に、これどう思う?」


 ちょうど意見も聞きたかったから、今の今まで書き記してたスケッチブックを投げ渡す。わりと回転をかけて手裏剣みたいにぶん投げたのに、普通にバシッとキャッチされるんだから参るね?


「……何これ? 落書き?」

「邪神としての僕の姿のラフ画。どう思う?」

「……良いんじゃない? 禍々しくてぶん殴りたくなるし」

「じゃあ良い感じだね。この方向で進めようっと」


 禍々しいって言葉が出て来るなら問題無さそうだから、このままの感じでイメージを膨らませてくことにした。世界の敵として君臨して破滅の権化として虐殺するような存在だからね、親しみやすいとか言われたら駄目だよ。

 ちなみにミニスはスケッチブックを投げ返すことなく、ちゃんと目の前まで歩いてきて手渡しで返してくれたよ。ド田舎の村娘にしてはお行儀が大変よろしいですね? 母親の教育の賜物かな?


「それで? 夜の営み以外でわざわざ僕の部屋を訪ねてくるなんて、何か用事でもあるの?」

「今から冒険者ギルドに行って、レキたちへのお土産と仕送りを届けてもらう依頼を出すんだけど……良かったら一緒に行かない?」

「え、お前が僕を誘うの? 何かいつになく距離が近くない? どういう風の吹きまわし?」


 驚くべきことに、ミニスの口から出てきたのは一緒におでかけしよう的なお誘いだった。

 うっそだろ、お前? 場所と内容がちょっとアレなのはともかく、僕をお出かけに誘うとか正気か? 毎回滅茶苦茶に優しく愛してやってるせいで、ついに完璧に絆されて僕に惚れちゃったか?


「え? どういうって……あんたがいれば声をかけられたりする事も減るだろうから、風除けみたいに使うつもりだけど? 闘技大会でちょっとだけ目立ったせいか、結構話しかけられて困るのよね……」

「あ、何だ。そういう事か……」


 なんて思ってたら、僕の想像とは百八十度違って安心したよ。そりゃそうだ。多少絆されてもコイツが僕に惚れるなんてのはありえないよね。ただ何か、僕の扱いが前よりも雑になってる気がしなくも無いけど……。


「あと、あんたにはたっぷり辱められてるし、今更何か遠慮する必要なんて全く感じないわね。だからさっさと冒険者ギルド行くわよ、クソ野郎」

「あれー? 僕に拒否権は無いの? 僕、実は結構忙しいんだけど?」

「無いわよ、そんなもの。ほら、さっさと支度しなさい」


 こっちは気のせいじゃなかったみたいで、ミニスは偉そうに腕を組んでふんぞり返りながら、僕にお出かけの支度を促してくる。僕は邪神の見た目を試行錯誤しながら創り上げてる所だっていうのにお構いなしだ。

 何だこれ? ミニスの癖に態度がデカいぞ? 態度がデカいミニス、略してデカス! まあ胸は小さいけどな!


「おかしいなぁ? 初めて会った時はぷるぷる震えてた可愛らしい子ウサギ実験動物(モルモット)だったのに。人ってここまで図々しくなれるんだね……」

「あんたほど図々しくはないと思うんだけど? 馬鹿みたいな事言ってないで、さっさと支度しろ」

「いたーい!? 分かったからケツを蹴るな!」


 おまけに容赦なく尻を蹴って来るし、最早ぷるぷる震えてた奴隷の面影が微塵も無い。クソぅ、何だって僕の女はどいつもこいつも気が強かったり我が強いんだ。でもそういう女が好きだからまあいいや!



⋇活動報告にレーンとキラのAIイラストを載せました。興味のある方はそちらもどうぞ。AIイラストが苦手な方は注意

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