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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第10章:真実の愛
244/527

建築基準法ガン無視

⋇残酷描写あり





「キャー! 思いっきり飛ぶの楽しー!」


 オカンに見送られた僕らは、ひとまず消失(バニッシュ)で姿を消した後に天高く飛び上がり、そのまま目的の方向へ空を駆けてた。

 最初は空気抵抗が凄くてちょっと悲惨な事になったけど、そこも魔法で対策をしたら実に快適な空の旅になったよ。隣でリアも満面の笑みで翼を羽ばたかせ、超高速で飛行しながら曲芸染みたロールをしてる。


「こらこら、ちゃんと前を見て飛ぼうな? ちょうど目の前に鳥が――」

「ぼふぅ!?」

「あー、言わんこっちゃない……」


 そんな変態挙動をしてたリアは前方不注意だったせいで、正面から迫ってきた鳥さんと接触事故を引き起こした。どうにも衝撃で目を回したのか、そのまま地上に向けて墜落してく。仕方ないから僕が近寄って抱きとめてやったよ。

 え、鳥さんはどうなったって? そりゃあ君、亜音速で飛んでる物体に正面からぶち当たったらどうなるかなんて説明するまでも無いよなぁ? 合掌。


「あうぅ……ぶつかっちゃったぁ……」

「前を見ないからだぞ。これに懲りたらちゃんと前を見て飛ぼうな」

「はーい……」


 回復したリアをぺいっと放って、再び二人で目的の方向目掛けて飛んでいく。目的地は大体五千キロメートル先にあるから、亜音速でもちょっと時間がかかるんだよねぇ。かといってマッハ超えるとわりとすぐに到着しちゃってつまらないから、これくらいの速度がちょうどいい感じだ。魔法で空気抵抗を大幅に軽減させたおかげで、風を切る感覚が実に心地良い。

 ちなみに亜音速で飛んでるのに肉声で会話出来てるのも魔法のおかげだよ! 魔法さまさまだね!

 

「……それにしても、ご主人様はどうやって飛んでるのー? 翼も無いのに飛んでるよねー?」

「僕の世界じゃ、翼の無い人間が空を飛ぶなんて創作の中じゃ珍しくもなんともないからね。魔法のイメージには事欠かないんだよ」

「へー。ご主人様の世界は凄いんだねー?」


 僕がその問いに答えると、リアは興味深そうに言いながら僕の上下左右をぐるりと回る様に回転をかける。さてはさっきのバードストライクでも全然反省してないな?

 それはともかく、僕の魔法による強化と自前の翼で空を飛んでるリアと違って、僕は翼も無いのに飛行してる。気になるのも無理は無いよね。でも僕の世界じゃ創作物の中で空を飛ぶとかありふれてるし、飛行のイメージは容易だったよ。スー●ーマンとかアイア●マンとかウルト●マンとか……あれ、何かヒーローばっかりだな?


「……それでリアたちはどこに向かってるのー? 下の方には海しか見えないよー?」

「別の大陸。僕の調べによると、こっち方向にしばらく飛べば大陸が見えてくるはずなんだよ」

「大陸ぅ……そこにもサキュバスいるかなー?」

「いやー、どうかなー? 僕が睨んだ所じゃ知的生命体はいないと思うよ? たぶん魔物と獣しかいないんじゃないかな?」


 確証はないけど、結構その確率は高いと思ってる。だって女神様は別の大陸について一度も話題に出したことは無いし、そもそもこの世界の人間共はほとんど常に戦争中だ。そんな状況下で別の大陸を目指すとは到底思えない。そんな余裕があるならもっと軍備に力を注ぐでしょ。

 ただ魔獣族が生みだされる前、人間と天使しかいなかった頃ならちょっと話は違ってくる。確か女神様が聖人族と争わせて数を減らすために獣人を生み出したのは、聖人族が増え過ぎた事によって発生した食糧難と飢饉のためだ。あのポンコツ女神様なら、聖人族が飢饉への対策として豊かな新天地を目指す前に口減らしを実行しちゃった可能性も大いにあり得る。まあ幾ら何でもそこまでポンコツではないと信じたいけど……。


「えー? そんなつまらない所行ってどうするのー?」

「それは――っと、見えてきた。その話は地上についてからね。ひとまずあそこに見える砂浜に降りようか」

「はーい」


 話の続きは大地に降り立ってからする事にして、僕らは少しずつ見えてきた新天地を目指して空を駆けて行った。






「着地!」


 直前で減速をかけてから、僕は膝がイカれるスーパーヒーロー着地を華麗に決めた。着地場所が柔らかい砂浜だからか、思ったよりは衝撃も少なかったよ。これが硬い岩盤の上なら膝ぶっ壊れただろうけど。


「ぼわぁ!?」


 そんな僕の隣に、減速が間に合わなかったのか高速で砂地に突っ込むリア。大量の砂が撒き上がって砂埃で視界が埋め尽くされたと思ったら、それが晴れた時には頭から砂地に突っ込んでる情けないロリサキュバスの姿がそこにあった。


「何で頭から突っ込んでるんだ、お前は。自前の翼があるんだからもうちょっと頑張れ。砂浜じゃなかったら頭グシャっと言ってたぞ」

「うぅー……ごめんなさーい……」


 片足を掴んで砂浜から引っこ抜いてやると、逆さ吊りになった状態で謝ってくるリア。一応は翼のある飛行種族なんだから、もうちょい上手く飛ぼうよ……。


「しかし、随分綺麗な砂浜だなぁ? ゴミの類は一切無し。これはやっぱり人がいなさそうだね」


 ポイっとリアを砂浜に下ろして、周囲を見渡す。

 砂浜は南国のビーチみたいに信じられないくらいに綺麗だった。ゴミが無いのはもちろんの事、流木の類までほとんど見当たらない。宝石をちりばめた様に輝く白い砂浜があまりにも眩しいくらいだ。ここに仲間たちを連れて来て水着回をやるのも良いんじゃない?


「……うん。少なくともこの大陸には知的生命体の反応は無いね。好都合だ」


 情報量の多さで頭が爆発しないように慎重に魔法で調べてみると、少なくとも僕が降り立ったこの新天地には人間の反応は一切無かった。これで女神様が信じられないほどのポンコツだって事が証明されてしまったね。まあ僕にとってはいない方が好都合だから助かるよ。魔物や動物はわんさかいるみたいだけど。


「それでここで何するのー? あっ、もしかして……ここをプライベートビーチにして、リアたちの裸を……!?」

「本当に変な知識植え付けられたねぇ、君……」


 勝手に顔を赤くして勝手に自分の身体を抱くようにして後退るリアを、僕はちょっと呆れながら見る。プライベートビーチで素っ裸とかなかなか高尚なプレイを教えられてますね。

 確かに僕は女の子の裸は大好きだけど、裸なら何でも良いってわけじゃないんだよ。一番重要なのは恥じらいだ。素っ裸で全く恥じらわず堂々としてたら、どんなにナイスバディだろうと全然エロくない。逆にどんなまな板で幼児体型であろうと可愛らしく恥ずかしがっていればそれだけでもう超絶にエロい。だから裸なのが当然かつ自然みたいなそういうのはあんまり好きじゃないね。


「ここに来たのは邪神の居城を創るためだよ。物が物だからちょっとそこら辺じゃ作れないし、かなり時間がかかりそうだし、人の目に映らないこの大陸で少しずつ作って行こうって思ったんだ」


 僕がわざわざ新天地まで来たのはこれが理由だ。必要になった時に一瞬で創り上げるってのもかなり難しそうだから、予め創っておいた方が良いって判断したんだ。あまりにもデカくなりそうだからこういう所でもないと作れないし。


「きょじょー……お城?」

「そう、お城。あんな大層な挨拶をしておいて野ざらしで佇んでる邪神とか格好つかないでしょ。だから邪神って言う立場に相応しいお城を用意しないといけないんだよ。でもこの砂浜だとさすがに狭いし、地盤もちょっと不安かな……」


 幾ら何でも水をたっぷりと含んでるであろう砂浜の上に城を立てるとか、自殺行為みたいなもんだ。相応の知識と技術があれば問題無いのかもしれないけど、生憎僕は建築関係の知識はほぼゼロ。だからここは大人しく大陸の奥の方に行って、しっかりとした地盤を見つけるのが先決かな?


「見て見てご主人様ー! 邪神のお城ー!」


 などと考えてたら、リアが楽しそうな声でそう口にしてきた。見れば僕の足元に砂で小さな山を作って、それを城と言い張って満面の笑みを浮かべてる。

 わーい、邪神のお城だー。嬉しいなー?


「……ていっ」

「あーっ!? せっかく作ったお城なのにー!?」


 もちろん僕はそれに容赦なく足を振り下ろし、完膚なきまでに踏みにじった。せめてもっと高い山を作らんかい!







「ハハハハ! そらそら、逃げ惑え獣共! 早く逃げないと八つ裂きになるぞぉ!」


 未開の新大陸の森の中を、僕は四方八方に風の刃を撒き散らしながら歩く。

 お城を立てるに相応しい場所を探して歩いてるんだけど、何分人の手が入ってないから魔物も動物もわんさかいてね? だからこうして全てを切り裂きながら進んでるわけ。岩も大木も生物も問わず、全てが輪切りになって吹っ飛んでくから実に爽快で楽しい。環境破壊は気持ち良いゾイ!


「ご主人様、とっても楽しそう。ストレス溜まってたのー?」

「そりゃあねぇ。変な奴らはいっぱいいるし、やる事も多いし。こうして虐殺と自然破壊を楽しめるなんて最高のストレス発散だよ――死ねぇっ!!」

「わー……クマさんがバラバラ……」


 こっちに背を向けて全力で逃げてくデカいクマ(恐らく魔物)を見つけたから、百以上の風の刃を放って粉みじんに切り刻む。これにはさすがのリアも引いた感じの呟きを零してたよ。お前がサキュバスにやるみたいにひたすらに苦しめるんじゃなく、一瞬で殺してるんだからまだ僕の方が優しいと思うんですけど?


「――おっ、ここなんかちょうど良さそうだな?」


 しばらく二人で歩いてると、やがて開けた大地が僕らを迎えた。地面を蹴った感じそこそこ硬そうだし、お城を立てるには最適っぽいね。でもちょっと狭いからさっきと同じ要領で周りの樹々を切り刻んで吹っ飛ばそう。そして重力を操作して地面を出来る限り綺麗に平らにならして、っと。


「よし、こんなもんで良いかな? あとはこの設計図を見ながらイメージを明確にして……」


 場所の確保を終えた僕は、空間収納から取り出したスケッチブックを見ながらイメージを頭に焼き付けてく。予めお城の外観はしっかりと細部まで描いてあるから、これをじっくりと眺めてイメージすれば創り出すのも難しくはない。何よりこの世界に来て本物のお城を結構見たからね。


「――創造(クリエイト)!」

「わーっ!? でっかいお城が出来たー!?」


 たっぷり数分間眺めた後、僕はスケッチブックを閉じて魔法を行使した。途端に僕の目の前には巨大で禍々しくも荘厳な城が現れ、リアが驚きに目を丸くする。

 城の外観は白と黒の二色で構成された、この世界の現状を良く表した感じの分かりやすい作りだ。黒は光をほぼ反射しないくらいに深く、白は眩しいくらいに輝いてるから、正直かなり視界が混乱する感じだね。まあ邪神のお城だしこれくらいは見た目で勝負しないと駄目でしょ。

 えっ、建築基準法? うるせぇ! 邪神に人の理は通用しない!


「よしよし、第一段階は終了だな。それじゃあ次は第二段階。内装を創り上げていこう」


 ちゃんとお城を建てられた事に満足した僕は、早速お城の入り口目指して歩く。

 だってこのお城、外観だけで中身は空っぽなんだ。さすがに内側も同時に思い浮かべて創り出すのは無理だったから、まずは外観だけ創り出したんだよ。僕の頭はそこまで高性能じゃない。

 

「うーん……?」

「うん? どうしたの、リア?」


 僕が正門目指して歩き始めたのに、何故かリアはその場を動かず首を斜めに傾けて唸ってた。僕が話しかけてもその傾きは変わらず、というかより一層傾く。一体どうしたんだ、コイツ?


「……ご主人様ー。このお城、何だか斜めになってないー……?」

「斜め? まさか。地面もちゃんとならして――うわマジだ、傾いてる」


 リアの発言に改めて城の方を見てみると、確かにお城は目に見えるほどの角度で傾いてた。というか微妙に傾いたまま、徐々に沈んでいってる。たぶん地面が城の重量に耐えられなかったんだな。これくらい硬い地面ならイケると思ったけど、やはり基礎も無しにいきなりおっ建てるのは無理があったか……?


「ずぶずぶ沈んでいってるー……」

「建てた途端に沈む城とか、幸先も縁起も悪いな……」


 ずぶずぶと地面に沈んでいく城を、僕はリアと共に苦い顔で見送った。

 どうしよう、これ。さすがに基礎から創るのは果てしなく面倒だしそんな知識も無いから、魔法を駆使して何とか体裁を整えよう……このままじゃ邪神がマジで宿無しになっちゃう……。


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