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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第9章:忙しない日々
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縛りの内容


「ご主人様ー! リアの力、見てくれたー!?」


 しばらくして、元の姿に戻ったリアがいつものコウモリ染みたデカい翼を羽ばたかせて、観客席の僕の元へと満面の笑みで飛んできた。もちろんその可愛らしさに反して、眼下のコロシアムは阿鼻叫喚の地獄絵図だ。六人のサキュバスたちは何故か外傷こそ一切無いけど、みんな白目向いて泡吹いてビクビク痙攣してるし。


「うん、凄いね。予想の遥かに上を行ったっていうか、空間突き破って別次元に行ったっていうか……とにかく凄いね? これでもう復讐のための力はバッチリかな?」

「うん! これならきっとリリスちゃんだって叩きのめせるよ!」

「おおっと、魔将を倒せるとは大きく出たな……」


 胸の前で拳を握って力説するリアは自信満々だ。しかもサキュバスを自分の手で極限まで苦しめる事ができたからか、お肌がめっちゃツヤツヤしてる。これはまた拷問しながら気持ち良くなってた感じかな? 相変わらずイカれてんなぁ……。


「……でも、この力を手に入れるために、リアは色々縛っちゃったんだ。そのせいでご主人様の役に立てない事もあるけど、許してくれる……?」


 しかしここで唐突に申し訳なさそうな顔をして、機嫌を窺うような目を向けてくる。

 縛ったっていうのは、レーンが言ってた戒律の事かな? ていうか今の言い方、もしかして戒律って一つだけじゃない? もしかしてクソ重そうな戒律を幾つも自分に課してるの? ヤバすぎだろ。頭マ●サリオンかよ。


「もちろん、許す――って言いたいところだけど、まずは縛りの内容を教えてくれない?」

「えっとねー……縛りは全部で三つだよ? 一つ目はサキュバスにしか攻撃しない事でー、二つ目はルナティック・フォーム以外の魔法も武装術も使わない事でー……三つ目が殺さない事!」

「ふんふん。なるほどぉ……ちょっとタイム」

「タイムー?」


 首を傾げるリアをその場に置いて、レーンの肩をガシっと掴んで一緒にちょっと距離を取った。ちょっと二人きりで話したい事があったからね。だって僕の勘違いじゃなければリアの戒律マジでヤバいよ。


「……聞きそびれたんだけどさ、この縛りってもしかして生きてる間ずっと続いてるの?」

「期間を指定しないなら、ずっとだ。つまり君が考えている通りだよ。リアはこれから一生、サキュバス以外の生物に危害を加えることが出来ず、またサキュバスを含めたあらゆる生物を殺すことも出来ず、ルナティック・フォーム時に使用できるもの以外に魔法・武装術を一切使用できない」

「……縛り重すぎでは? 血を吸いに来た蚊も殺せないじゃん?」


 やっぱり予想通りのクソヤバ戒律だったみたいで、さすがの僕も開いた口が塞がらなかった。

 復讐を果たす力を得るために、魔法も武装術も完全に投げ捨てた上で、サキュバス以外の生物を傷つける事もできず、しかもどれだけ殺したくてもサキュバスを殺す事が出来ない。完全に復讐特化でそれ以外の事はどうでもいい、破滅願望全開の縛りじゃないか。よくこんな戒律自分に課したな?


「私もそう言ったんだが、リアが聞かなくてね……一応攻撃はそもそも物理的な負傷を負わせないようにする事で、誤ってサキュバスを殺す事態は避けられているんだが……」

「それにしたってこれは無いでしょ……ていうか、よくリアが不殺なんて縛りを自分に課したね?」

「臥薪嘗胆がもたらす苦悩や渇望が強ければ強いほど、縛りがもたらす恩恵はより強くなるからね……あれほどサキュバスを殺したいと渇望していたリアが不殺を課せば、その恩恵も莫大になるのは当然だ。まあ、それを教えたからと言って実際にそんな縛りを課すとは思わなかったが……」


 なるほど。あの復讐の権化みたいな圧倒的な力はそれが原因か。

 サキュバスを殺したくて殺したくて堪らないリアが自身に不殺を誓えば、それはもう莫大な見返りが約束されるも同然だ。だからってマジでそんな戒律を課す辺り、心底イカれてるよ。


「……ちなみに縛りを破ったらどうなるの?」

「あれは自分自身との魔術契約だからね。意図的に破ることは不可能だよ。意図せず破る事自体は可能だが、やはりとても難しいね」

「なるほどぉ……頭おかしいね?」

「君に言われたらおしまいじゃないかい?」


 何だとこの野郎。さすがの僕も復讐のために全てを投げ打つほど破滅的じゃないわ。というか魔法も武装術も一生使えなくなるとか絶対嫌だよ。

 あー、でも元々ろくに魔力もなかったリアだし、その辺の執着は薄いのかな?


「とはいえ、実際の所はそこまで取り返しのつかない事ではない。リアはもう後戻りできないと思っているようだが、あれはあくまでも自分が自分と結ぶ契約だ。故に膨大な魔力を持っていれば、他者が強引にその契約を破棄させる事もできる。君なら破棄してやれるのだから、取り返しのつかない縛りでは無いさ」

「そういやそうか。でも……その事を教えるのはリアのためにはならない感じかな?」

「そうだね。リア自身、もう二度と取り返しのつかない契約を結んでしまったと思っている。そしてその負のイメージが更に呪法を強化している。リアのためを思うならば、せめて復讐を果たすまでは教えないのが得策だろう」

「だねぇ……」


 リアのイカれた呪法と狂った戒律が化け物染みた強さを発揮してるのは、リア自身がもう二度と取り返しの付かない事をしたって思ってる所もあるからだね。ここで僕なら取り戻す事が出来るって伝えちゃうと、リアの中では取り返しの付かない事をしたっていう事実が消えちゃうから、戒律の恩恵が弱まっちゃうわけだ。

 少なくとも故郷のサキュバスたちに復讐を果たすまでは、その辺りの事は黙っておくか。自身の認識の問題だって言うなら、万が一知られても記憶を弄ればなんとかなるはず。


「――ご主人様! リア、凄いでしょ!?」

「よしよし、凄い凄い」

「えへへー……」


 待ってられなくなったのか唐突に飛びついてきたリアの頭を撫でて、いっぱい褒めてあげる。

 まあ実際凄かったのは確かだ。それに呪法を変身能力にしたにも拘わらず、ベースがロリサキュバスのままだった事は大いに評価すべきだよね。もしも大人の姿に成長とかしてたら失望した所だったよ。ロリはロリのままでいなきゃダメなんだ。


「……しかし、殺せないって事はあのサキュバスたちはもしかして全員生きてるのかな?」

「そうだよー。気絶してるだけで、みんな生きてるよー」


 眼下のコロシアムの方を見ると、やっぱり六人のサキュバスたちは白目を剥いてビクビクしてる。痛覚の倍加を何十何百と重ねられたってのに、一人もショックで死んだりはしてないみたいだ。リアの黒い炎で炙られても火傷とかは出来てないし、外傷を残さないだけじゃなくショック死を防ぐ感じの効果もあるのかもしれないね。えげつないなぁ……。


「じゃあどうする? 僕が代わりに殺しておく? それともサキュバス同士で殺し合いでもさせる?」

「ううん、また牢屋に入れておいて欲しいな? だってまだまだやり足りないもん。リア、もう殺せなくても痛めつける事はできるんだから」


 そうして僕が始末の提案をすると、リアは僕の胸の中でふるふると首を横に振った。そして邪悪極まる笑みを浮かべてそんな事を言うんだから堪らないね。殺意と憎悪はさっき燃やしたんじゃなかったのかな?


「そうっすか。じゃあミラ、あのサキュバスたちを牢屋に――いや、お前には難しいか。仕方ない、僕が戻してくるよ」

「ご、ごめんなさい……役立たずで、ごめんなさい……絶対、絶対お役に立ちますから、失望だけは、しないでくださいぃ……!」


 ミラはミラで役に立たなさそうだから、仕方なく自分で片付ける事にした。ぶっちゃけ終始こんな感じで怯えられると、いまいち嗜虐心をそそられないな。やっぱり玩具にして遊ぶなら反抗的な奴が一番なんだよなぁ。

 それはともかく、これでリアに復讐のための力を与える事も出来た。後はもう少し研鑽した後、故郷で復讐を果たすだけだね。石に噛り付いてでも生き延びてきた日々がもう少しで報われるぞ? 頑張れ頑張れ。





⋇当初は大人のお姉さん的な姿に変身する予定でしたが、ロリが大人に変身しちゃ駄目だろと思ったので書いてる内にそのままになりました。


以下、リアの戒律まとめ


1.サキュバスにしか攻撃しない(サキュバスにしか効果を及ぼさない)

2.不殺(殺せない)

3.ルナティック・フォーム以外の魔法・武装術を使わない


 これら全てひっくるめた結果、見返りとしてルナティック・フォームの実現、及びサキュバスからの魔法・武装術に対しては完全無敵、傷を負わせず苦痛のみを与える力、恐怖や痛みで死ぬ事を防ぐ力などを手に入れました。

 なお本人の認識の問題なので、微生物とかそういうものを理解していないリアは普通に食事ができます。理解してたら食事すら危うくなるので幼い子供で助かりました。



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