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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第9章:忙しない日々
240/527

ルナティック・フォーム

⋇前半リア視点、後半クルス視点

⋇残酷描写あり






 三つの戒律を重ねて、ついに実現したリアの理想の姿! 全身に力が溢れてくる! 今なら六人のサキュバスくらい、一歩も動かずにボロボロの雑巾みたいに出来そう!


「いっくよー! プリティ・ウイーング!」


 まずはどれくらい痛がってくれるか見たかったから、リアは翼を広げてサキュバスたちに羽根を撃ち出した。見た目はカラスみたいな黒くて綺麗な羽根だけど、この羽根は刺すためにもの凄く鋭く尖ってる。そんな羽根を五十枚くらい撃ち出したから、特に狙いを付けなくても何人かには絶対当たってくれるよね?


「危なっ……!」

「きゃあああぁあぁぁぁっ!!」

「いっ――ギャアアアァアァアァァ!?」


 三人くらいには避けられたけど、思った通り残りの三人には何枚もリアの羽根が突き刺さった。そして羽根が身体に突き刺さっただけなのに、信じられないくらいに痛そうな悲鳴を上げて転げまわってる。

 その悲鳴と無様な姿が凄く心地良くて、リアの胸がすっとするの……ああ、もっとあの悲鳴を聞きたいな! もっとあんな情けない姿を見たいな!


「アハハッ! 気を付けてねー? リアの羽根が刺さる度に、感じる痛さが二倍になるんだよー? 二枚刺されば四倍! 三枚刺されば八倍!」

「ギャアアアァアァァアアァァ!!」


 だからリアはもっと羽根を撃ち出して、まだ一枚も刺さってない無事なサキュバスたちを転げ回ってるサキュバス諸共狙った。

 でも最初に避けられただけあって、残りの三人はなかなか戦いに慣れてるみたい。二人は動いて全部躱したし、もう一人は魔法で地面から土の壁を作ってリアの羽根を防いじゃった。ざんねん。


「冗談じゃないわ! 悪いけどあの子殺すわよ! あんな風に激痛にのた打ち回るなんてごめんよ!」

「ま、待ちなさい! 傷つけては……!」

「土の波よ、全てを飲み込め! デブリ・フロウ!」


 土の壁を作ったサキュバスが、今度は土を波みたいに操ってリアに叩きつけるようにして放ってきた。リアを飲み込もうとする土の大波が迫ってきたけど、リアは全然怖くなんて無かった。だって、こんなの今のリアには効かないもん。


「――アハッ! やっぱりお姉さんたちも酷いサキュバスなんだね? リアみたいな小さい子を殺そうとするなんて。ありがとう! これで心置きなく痛めつけられるよ!」

「き、効いてない!? そんな馬鹿な……!」


 土の大波はリアにぶつかったけど、ただそれだけ。ほんのちょっとだけ押されたような感覚があっただけで、全然痛くも痒くも無かった。でも当然だよね! 特別な存在のリアが少し厳しい戒律を三つも重ねた呪法を使ってるんだから、有象無象のサキュバスが適うわけないもん!


「お返しだよー? ヘイト・フレイム!」


 今度はこっちの番だから、リアは右の手首で燃え上がる黒い炎を鞭みたいな形にして握りしめた。そして土の壁から顔を覗かせて呆然としてるサキュバス目掛けて、思いっきり振り被る。

 ただの鞭なら届かない距離だけど、この炎はリアの燃え上がる憎しみそのもの。憎しみが全部消えない限り、幾らでも燃やせるし自由に伸ばせる。だからリアの憎悪の鞭はうにょーんと伸びて、土の壁を回りこんでサキュバスの身体にグルグル巻きついたよ。


「ぎゃああぁああぁぁっ!? あづっ、あづい!! 熱い熱い熱い熱い!!」


 もちろんこの鞭は炎だから、身体に巻き付いたら熱くて堪らないと思う。鞭で捕まえたサキュバスを目の前まで引きずってくると、涙とか鼻水とか垂らしながら熱い熱いって悲鳴を上げてたよ。戒律の関係で火傷はしてないけど、綺麗な顔が色んな液体でぐしゃぐしゃで台無し。アハハ、本当に無様で面白い!


「そんなに熱がって大丈夫ー? 熱くなるのはこれからだよー?」

「ぎ、い……が、あぁ……い……!!」

「アハハハハッ! うわー、おもらしした! 汚いんだー?」


 もっと面白くするために羽根を十枚くらい撃ち出して身体に刺してあげると、そのサキュバスは白目を剥いておもらししちゃった。凄い情けない姿で面白いけど、痛くしすぎちゃったせいか逆に悲鳴が聞こえなくなっちゃった。何か変な声が零れてるだけでつまんないの。このサキュバスはもういらないや。


「クッ――ウインド・エッジ!」


 リアがヘイト・フレイムの鞭から白目を剥いたサキュバスを解放して地面に転がすと、右に躱してたサキュバスが魔法で攻撃してきた。たぶん風で作った斬撃を飛ばす感じの魔法かな? 砂埃がリアの方に一直線に走ってきて、地面に所々斬られたみたいな傷が入ってる。

 今までのリアなら、まともに当たったら身体中傷だらけになっちゃうような魔法だと思う。


「――アハッ、効かないよ! リアの縛りは重いもん!」


 でも今のリアにとっては、ただのそよ風みたいだった。肌に切り傷もつかないし、髪の毛先も斬れたりはしない。だってどんなに凄い魔法でも、それがサキュバスの放った魔法なら今のリアには通用しないもん。


「次はおねーさんの番! リアと一緒に遊ぼ!」

「ギャッ……!?」


 魔法を使ってきたサキュバスに対して、羽根を百本くらい撃ち出す。それは全部躱されちゃったけど、その後に放ったヘイト・フレイムの鞭の一撃を当てられたから問題無し。左脚の太腿に当たったからそこはもう動かないよ? だからもう一度プリティ・ウィングで羽根だらけにしてあげようと思ったんだけど――


「魔法が効かないっていうなら、物理で殴るしか無いわね! スピード・ブースト!」


 後ろからそんな声が聞こえて来て、それと一緒に強い魔力を感じた。何をしてるのかなってリアが後ろを振り返ったら、今正にリアを殴り飛ばそうとしてるサキュバスの姿が目の前にあったよ。たった一瞬でこんなに近づかれちゃった!?


「くらいなさ――いっ!?」


 でも、リアは焦ったりなんかしないよ? だってリアに近付くサキュバスは自動的に、この可愛い尻尾が退治してくれるもん。今だってリアの尻尾が勝手に動いて、鋭く尖った先っぽでサキュバスの足をちくりと刺してた。


「あ……く、ぅ……!?」


 戒律のせいもあって血も出てないけど、それだけでリアを殴ろうとしてたサキュバスは身体を揺らして地面に倒れた。何とか起き上がろうと頑張ってるけど、まるでお酒に酔ったみたいにフラフラして身体を起こす事も出来てない。

 だからリアはそんなサキュバスの身体に右手を伸ばして、全身をヘイト・フレイムの炎で包んで焼いてあげた。


「ギャアアアァアアァアァァアアッ!!」

「ごめんねー? 言い忘れてたけど、リアに近寄るとこの尻尾で刺されちゃうんだよ? そしてこの尻尾で刺されると、へいこー感覚が狂っちゃうの。今自分が立ってるか倒れてるかも分からないでしょー?」


 尻尾でちょっと刺されただけで倒れちゃったのはそういう理由。リアの尻尾に刺されると、感覚が狂ってどっちが上でどっちが下かも分からなくなっちゃうんだ。突然空中に放り投げられたみたいな感じになるって言えば良いのかな? 

 近づいてくるサキュバスをどうにか無力化できる感じの力が無いか悩んでたら、こんな力を提案してくれたカルナちゃんには感謝してもしきれないね!


「な、何よこれ、何なのよ……!? 何なのよ、アイツ!?」

「やだ、助けて……! 私、あんな目にあいたくない……!」


 まだ羽根が何本か刺さっただけで蹲ってたサキュバスたちが、そんな風に泣き言を言いながらリアに怖がるような目を向けてくる。

 ああ、良いなぁ……サキュバスたちが、リアの事をあんなに怖がってくれてる! もっともっと怖がらせて、もっともっと痛めつけたい……! そして、今のリアにはその力がある! 


「アハハハハハハハッ!!」

「い、嫌あああぁあぁぁぁぁっ!!」

「やめてえええぇぇぇぇぇっ!!」


 だからリアはまだ意識があったその二人に、とりあえず三本ずつ羽根を撃ち出した。あんまりいきなり何十本も刺しちゃうとすぐに気絶しちゃうから、少しずつ痛めつけてあげないとね?






「何やアレ、強すぎんだろ……」


 眼下で繰り広げられる常軌を逸した蹂躙劇に、さしもの僕も開いた口が塞がらなかった。

 リアが突然禍々しく物々しい姿に変貌したのは、まあ百歩譲って良いとしよう。ベースがロリサキュバスなままだし、一般的にもそこまで難しい変身じゃないだろうからね。

 問題なのはその後だ。堕天使みたいになった翼から羽根を撃ち出すわ、手首の揺らめく黒を鞭みたいにして使うわ、やりたい放題してるじゃないか。しかも羽根が刺さると痛覚が倍増するらしいし、炎に炙られるとその部分が麻痺して動かなくなるとかいう凶悪な効果を持たせてる。挙句尻尾は自動迎撃で、刺さると対象の平衡感覚を喪失させる恐ろしい効果を持ってるし。

 いちいち強力で、しかもどっかで見覚えがあったりする感じの効果や見た目だ。リアの事だから参考にしたのは間違いないし、わりと強そうな呪法を覚えそうだとは思ってたけど、まさかここまで凶悪極まる呪法を編み出すとは夢にも思わなかったね……。


「ああなる事を君は見越していたんじゃないのかい? だからこそわざわざミラを捕獲して教師の真似事までさせたんだろう?」

「いや、買い被り過ぎだよ。ちょっとは力が付けられたら良いなー程度に思ってただけだし、ミラを捕獲したのは向こうから僕の所に来てくれたからだしね」

「じ、人生で……一番の過ちでした……」


 レーンの過大評価に首を振って返すと、隣でミラ先生が過去を悔やんでた。

 橋の上でメスガキが襲ってきた時、コイツは僕を心配して警告してくれたんだけど、アレがあったからこそ僕に捕獲されたわけだからね。あれがなかったらたぶん捕まらず幸せな人生を過ごせてたんじゃなかろうか。


「……一見無敵に見えるが、アレは非常に重い縛りによって成り立っているものだ。正直な所、実用性は皆無だよ」

「縛り? 縛りって何?」

「うむ。魔法はイメージ――」

「三行」


 すげぇ初歩の初歩から入る雰囲気がしたから、即座に言葉をバッサリと切る。放っといたらマシンガンみたいにベラベラと長ったらしく喋るのが目に見えてるからね。コイツ要約して話せるのにわざわざお喋りするから。


「………………意図的にマイナスのイメージを創り出す事で、プラスのイメージと魔法そのものを強化する術の事だ。私はこれを戒律と呼んでいる」

「なるほど。代償とか使用条件とかを設定する事で、より強力にしてるわけか」


 しばしの沈黙の後、やっぱりレーンは完結に纏めて教えてくれた。出来るじゃないか、全く。

 しかし戒律ねぇ。僕の中で戒律って言ったら、『常に飛び続けて着地をしない』とか『攻撃を回避しない』とか、そういう類のクソ重い縛りばっかりの作品が浮かんでくるんだけどなぁ……まさかリアもそういうイカれた戒律を自分に課してるんじゃないだろうな……?


「で、その縛りの内容は?」

「………………」

「あー、機嫌を損ねちゃったかぁ……」


 どうやら話をぶった切られた事がお気に召さなかったみたいで、レーンは無言でぷいっとそっぽを向いちゃった。

 仕方ない、蹂躙が終わったらリア本人に聞こう。ミラ先生は過去の過ちを思い出したせいか隣でガン泣きしてるし。





 ⋇最初にも言ってましたがリアの戒律、もとい縛りは三つあります。予想できる人はしてみような!


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― 新着の感想 ―
[一言] 一つはこの変身中の攻撃では 生物の死を迎えることはないとかかな。 復讐を続けれるというメリットでもあるから そこまで強い縛りじゃないか?
感想一覧
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