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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第9章:忙しない日々
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戒律

⋇ちょっと時系列が戻ります

⋇リア視点、だけどそれにしては非常に珍しいマイルドな話






 リアが欲しかったのは、復讐のための力。だからどんな魔法が覚えたかったかって聞かれたら、できるだけサキュバスを苦しめて殺せる魔法って答えたと思う。それさえ叶えば、どんな魔法だって構わなかった。

 でもリリスちゃんと会ったり、ご主人様に愛して貰ったり色々あったせいかな? リアが覚えたかった魔法はちょっとだけ変わったんだ。もちろんサキュバスを苦しめて殺すっていう目的だけは変わらないけど、もっとリア自身も成長できるような魔法が欲しかったの。


「――出来た! これがリアの理想の姿だよ!」


 だからリアはなりたい自分の姿をノートに描いて、ミラ先生に見せた。

 理想の姿を描いたのは、復讐を果たすための力だけじゃあイメージし辛いから。復讐のための力を手に入れた自分の姿の方が、思い描きやすかったからかなー。もちろんリアがこうなりたいからっていうのもあるけどー。


「ど、どれどれ……ひえっ……!」

「随分と禍々しい姿だね……」


 良く描けた自信はあったのに、ミラ先生は怖がってるし、カルナちゃんも何だか嫌そうな顔してる。うーん、へたっぴな絵だったかなー?


「……この刺さりそうな翼はどうなっているんだい?」

「これはね、天使の翼みたいになってるんだよ! それで一枚一枚の羽根が硬く鋭く尖ってて、自由に撃ち出す事ができるの! この羽で傷つけられると、痛いのがもっと痛くなるんだよ!」


 カルナちゃんが絵の中の翼の部分を指差して聞いてきたから、リアは自信満々に答えた。

 ハニちゃんみたいな綺麗な翼が欲しい気持ちと、ご主人様が前に女の子にお仕置きしたっていう拷問を合わせたらこうなったんだ。リアのコウモリみたいなおっきな翼に、ナイフみたいに鋭いカラスの羽根がいっぱい生えた感じの翼。見た目は黒っぽい天使の翼かな? でもこの羽根はリアの自由に動かせて、この羽根が刺さった人は痛覚が増してもっと痛くなる。これなら幾らでもサキュバスを苦しめる事ができるもん!


「もっと痛くなる……痛覚が増大する、という事かな?」

「うん、そうだよ! 傷つければ傷つけただけ、どんどん痛みを強く感じるようになるの! だってサキュバスを出来るだけ苦しめたいもん!」

「ひいっ……!」


 リアが力いっぱい答えると、ミラ先生はどうしてかその場で転んじゃった。

 うーん、何だかずっとビクビクしてるし、怖がりなドジっ子なのかな? リリスちゃんも女の子にはそういう属性があるって言ってたし。


「ふむ……この両手首にある黒い物体は何だい?」

「これはね、黒い炎! 自由に操れる炎で、この炎に焼かれた部分は動かせなくなるんだよ! だからまずはこの炎で動きを止めて、そこに羽をいっぱい打ち込んで痛めつけるの!」

「ひいぃっ……!」


 やっぱり怖がりみたいで、ミラ先生はぷるぷる震えてる。

 この黒い炎はご主人様から貰った手錠や首輪の思い出と、ご主人様が良く使う人を麻痺させる魔法を参考にしてるんだ。それから一度リリスちゃんが鞭の扱い方を見せてくれたから、この炎を操る時はそれも参考にして使うんだよ。この黒い炎の鞭でサキュバスを滅多打ちにしたら、とっても楽しいだろうなぁ……!


「自由に操れる炎と、射出できる羽を何百と形成する。その上、炎には焼かれた相手を麻痺させる効果と、羽には傷を負わせた対象の痛覚を増大させるという効果も付与する……幾ら呪法でもこれは厳しいんじゃないかい?」

「あ、あの、その……確かに、これはちょっと……厳しい、かもです」

「えー!? でもリア、こうなりたいの! これがリアの理想の姿なんだよ!?」


 リアが思い描く理想の姿が実現できないって言われて、とってもショックだった。

 リアはこうなりたいのに、どうしてなれないの? 強い感情があればできるんじゃなかったの? リアは復讐を果たすために、この姿になりたいのに……。


「理想の姿……君は、他のサキュバスのように女性らしく成長したいのではなかったのかい?」


 凄くがっかりしてると、カルナちゃんがそれを聞いてきた。でもそれも当たり前だよね。だってリア、前は立派なサキュバスに成長したいって言ってたもん。それなのにノートに描いた理想の姿は、今のリアのままだから変に思われたんだと思う。


「……確かに、前はそう思ってたよ? でも、ご主人様やリリスちゃんのおかげで、そんな必要ないって分かったんだ。サキュバス全員のお母さんみたいなリリスちゃんが、リアと同じ子供の姿をしてるし、ご主人様は子供の姿をしてるリアの事を認めて、愛してくれてるんだもん。だから分かったの。リアが変なんじゃないの。リアは特別なの! 特別なリアは、アイツらみたいになる必要なんかないの!」

「ひえぇっ……!」


 そう、リアは変でも出来損ないでもない。最初のサキュバスと同じ姿をした、特別なサキュバス。他の有象無象のサキュバスとは違う、特別な存在なの。だからリアはアイツらみたいになる必要なんかない。このちっちゃな姿こそが、サキュバスとして正しい姿だから。


「だから、これがリアの理想の姿なんだよ? ねぇ、リアはこの姿になれないの? どうして? どうしてなれないの?」

「ゆ、許して……!」


 認められなくてミラ先生に聞いてみたけど、怖がりなミラ先生は頭を抱えてぷるぷる震えながら泣き始めちゃった。まるでリアが泣かせちゃったみたいで気分悪いなー。この人ちょっと怖がり過ぎだよー。


「ふむ……ミラ、縛れば(・・・)どうだい?」


 今度はカルナちゃんに聞いてみようと思ったら、カルナちゃんは突然変な事を言いだした。縛るって何のことだろ? はっ!? まさか、緊縛プレイ……!?  


「え……縛る、って……そういう、事ですか……?」

「ああ。その様子だと知っているようだね。さすがは呪法の使い手というべきかな」

「えっと、その……内容によりますが、それなら……できる、かもしれません……」

「本当!? 縛ればいけるの!? 紐で!? ロープで!? 縛り方は!? 亀甲縛り!? 蟹縛り!?」

「何故縛り方がその二択なんだ。そうではなく、比喩的な意味だ」


 良く分からないけどリアの理想が叶うかもしれないから、リアは興奮しながらカルナちゃんに色々聞いたよ。でもリアの質問はどれも違ったみたい。ちょっと呆れたような目で見られた後、リアはカルナちゃんにひょいっと摘ままれて席に戻されちゃった。


「知っての通り、魔法とはイメージが重要だ。そしてプラスのイメージだけでなく、マイナスのイメージにも影響を受ける。それを逆手に取り、あえてマイナスのイメージを自ら刻み付ける事により、プラスのイメージがもたらす効果を引き上げる――それこそが縛りの正体だ。私はこれを戒律と呼んでいる」

「かい、りつー……?」


 カルナちゃんが詳しく説明してくれたけど、何だろう。何か難しそう。亀甲縛りとかの方が簡単そう。リリスちゃんに縛り方も習ったし……。


「例えば、そうだね……火や熱に関わる魔法しか使わないという縛りを課した人間がいたとしよう。その人間と、何の縛りも課していない普通の人間。その二人が火や熱に関わる魔法を行使した場合、どちらの方が魔法の威力や精度に優れていると思う?」

「うーん……縛ってる方かなー? それしか使えないんだから、その分強くなりそう……」

「そう。そういう事だ。人間誰しも何のリスクも無い力より、大きなリスクを背負う力の方がより強力で破壊的になると認識するものだ。戒律とは、それを意図的に実現するためのものなんだよ」

「へー……」


 なるほどー。もっと具体的に説明されて何となく分かった気がする。確かに何のリスクも無く使える力より、自分の命と引き換えに使える魔法とかの方が凄く強そう。つまりリア自身も何かリスクを作れば、理想の姿になれるのかな? どれくらいのリスクなら使えるようになるんだろう。手足の二、三本とかじゃダメかな?


「そ、それと……当人にとって、守るのが厳しい縛りであったり……どうしても縛りたくないものを縛ったりすると……効力は、増します……呪法でも、それは同じです……」


 リスクに悩んでると、ミラ先生が恐る恐る付け足してきた。守るのが厳しかったり、縛りたくない事を縛ったりすると強くなれるんだって。

 うーん、リアなら何を縛れば一番効果的なんだろう? 復讐をしないって縛ったらとっても強くなれるのかな? でもそれだけは絶対に譲れないし、リアが求めてるのは復讐のための力だから、これはやっぱり無しだよね。じゃあその次に譲れないものを縛るしかないのかな?


「……決めた! それじゃあリアが縛るのは――」


 そうしてリアが口にした縛りの内容に、カルナちゃんは目を丸くして驚いてた。そしてミラ先生はやっぱり怖がって震えてる。

 でも二人ともそれじゃあ戒律にはならないって言わなかったし、むしろ絶大な力を得られるって教えてくれたよ。だからリアは安心して他に思いついた縛りも大丈夫か聞いていったんだ。そしたらどうしてかカルナちゃんの顔まで青くなってたけど、問題は無いって言われたよ? これでリアは理想の姿になって、復讐を果たせるね! やったぁ!




 次回こそ蹂躙劇。

 ちなみに名称が「誓約」か「戒律」かで悩みましたが、どっちを選んでも「●●じゃん!」って言われそうなのであえて好きな方の元ネタを選びました。まあ元ネタの方の戒律は生き様とか信念に応じた縛りしかできないし、神による承認が必要ですけど……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大罪か廻戦か。 曇らせ系は捗るなぁ
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