ウサギ娘の帰還
⋇性的描写あり
「たっだいまー!」
「おかえりー。今日はどうだった?」
空がオレンジ色に染まってきた頃、ようやくロリっ子二人が帰ってきた。魔法で門が開いた事を予め確認してた僕は、せっかくだから玄関の外でお出迎えしてあげたよ。朝から夕方まで遊び歩いてたはずだってのに、リアの笑顔はつやっつやでパワフルだったね。これが若さってやつか……。
「楽しかったよー! ミニスちゃんといっぱい遊んでお買い物もしたの!」
「そっか。良かったねー? ミニスはどう? 楽しかった?」
「あ……う、うん……楽しかった……」
ご機嫌なリアに反して、ミニスはまーだ何かしおらしい。ていうかさっきまで妹に向けるような甘い顔してたの見てたからな? 僕の顔を見た途端にこの反応だよ。何だその乙女みたいな赤ら顔は。お前そんなキャラじゃないだろ? ゴミを見るような目で僕の尻に蹴りを叩き込んでくるキャラだったはずだろ?
「……実は僕、今日はサキュバスを十体捕獲して地下牢に閉じ込めてきたんだ。本当はもうちょっと数がいたんだけど、殺意が抑えられなくて何人かバラバラにして殺しちゃったんだよね」
ちょっとミニスに軽蔑と侮蔑に満ちた目を向けられたくなったから、今日働いた悪事を暴露してみる。まあ実際にはバラバラにはしてないけどね? 確かに三人くらい殺したけど、魔法で水の中に沈めて溺死させたり、電気で感電死させたりしただけだからちゃんと人の形は保ってるよ?
「えっ、本当!? 地下牢にサキュバスがいるの!? わー、見てこようっと!」
「……そう」
かなりエグイ事を言ったはずなのに、リアは嬉しそうに顔を輝かせて屋敷の中に入って行った。肝心のミニスは本当に聞いてんのか良く分かんないくらい淡白な反応してるし……クソッ、この程度は慣れたものだったか!?
「あとねぇ、バラバラにしたサキュバスがまだ暖かったから、ちょっと性処理に使ってみたんだ。なかなか気持ち良くていっぱい出たよ。死体も結構良いもんだね?」
なにくそとばかり胸糞発言を続ける僕。バラバラ死体を性処理に使ったとかいう狂気の沙汰の発言だぜ。でも僕は死体愛好家とかじゃないから、もちろんそんな事してないぞ? まあバールならやったかもしれんが……。
「……そう。良かったわね」
なのにまたしても淡白な反応。それでいて未だしおらしいまま。この野郎、本当に話聞いてるのか!? 仕方ない、こうなったら最後の手段だ……!
「はい。ここにミニスの日記帳があります。今からこれを大声で音読します」
「……え」
「五月十二日。晴れ――今日は!! レキに赤ちゃんはどこから来るのって聞かれた!!」
「あ、ああ、ああぁあああぁぁぁっ!! 返せ馬鹿ああぁぁぁぁぁっ!!」
ちょっとミニスの机から拝借してきた日記を大声で音読すると、ミニスはさっきまでのしおらしい様子が嘘みたいに叫びながら飛び掛かってきた。もちろん僕はそれをさっと躱して、庭を走りながら音読を続ける。
まるで鬼のような憤怒の形相で追っかけてくるのがちょっと怖いね? 何にせよこれでいつものミニスが戻って来た! おかえり!
「もの凄い困ったけど! レキに嘘を吐くのは嫌だから! もう少し大きくなったら教えてあげるって言っておいた! それっていつなのって怒らせちゃったけど! まさかあの子に女の子の――」
「うらああああぁぁあぁぁっ!!」
「ぐはあっ!! そう、この鋭いツッコミだ! これがなきゃミニスじゃない!」
さすがに常時三倍程度の身体能力強化じゃウサギ娘からは逃げられず、気迫のこもった飛び蹴りを背中に食らって庭をぶっ飛ぶ事になった。うんうん、この情け容赦の無い全力のツッコミが心地いい……地面を顔で抉る事になったけど、まあ良しとしよう。
「はあっ……はあっ……! 何なのよ、あんた! 本当は少しは良い奴なんじゃないかと思ってたのが馬鹿みたい! 人の日記盗んで内容を叫ぶとかやっぱ屑ね!」
「ハハハ、僕は根っからの屑だよ。そもそもお前を優しく抱いたのだって、そういう風に勘違いさせて遊ぶためだしね。何か思った以上にアレだったからやめてネタ晴らししたけどさ」
「本っ当に、こんなクソ野郎をほんの少しでも良い奴だって思ったのが馬鹿みたい……! 馬鹿……私の馬鹿ぁ……!」
顔の土を払ってミニスの方を見れば、取り返した日記を片手に地面をガンガン叩いて嘆いてた。どうにも本当に僕の中に良心の欠片くらいはあるんじゃないかって勘違いしちゃってたみたいだね。というかウサギ娘なんだしそこは地団駄踏むべきじゃない?
「まあ良い奴かもって思ってくれたなら、僕も頑張った甲斐があるってもんだよ。本当に大変だったんだよ? いちいちお前の身体を気遣ったり、愛を囁いたりするの」
「思い出させんなクソ野郎!」
「おぅふ! あー、これこれ!」
取り返したはずの日記帳をぶん投げて僕の額に命中させたミニス。いつもの罵倒と乱暴が戻ってきたね! というか心なしかいつもより激しい気もする!
「ああぁぁ……! コイツはクソ野郎、コイツはクソ野郎、コイツはクソ野郎……! もう絶対間違えないわよ……!」
そして顔を両手で覆って、自分に言い聞かせるみたいに僕を罵倒しまくってる。そこまで自己暗示染みた真似をしないと駄目なくらい、僕の愛のとりこになったって解釈でよろしいのかな? やっぱり真っ当な愛情を受けて育った女の子には愛情が効くんだね。
「あー、良かった。いつものミニスが戻ってきてくれた。そうだよ。やっぱりミニスはこういう感じじゃないと駄目だ。しおらしいミニスも悪くはないけど、長く続くのは勘弁だ」
「……あんたがそこまで嫌がるなら、常にしおらしくするのもアリかもしれないわね」
「やめて? マジ勘弁」
ボソリと呟かれたミニスの恐ろしい提案に、僕は心の底から拒絶を示した。
たまにならまだしも、常時しおらしいままとか嫌だよ? そんなのミニスじゃないでしょ。僕が好きなミニスはメンタルが超合金で出来てて、どんな逆境にあっても精神がへし折れず反抗心を忘れない素晴らしい子なんだよ? 常時しおらしくなるんならもういらないよ。
「ふん。だったら私の扱い、もう少しマシにする事ね。あんたみたいな精神異常者のド屑でも、演技をすれば優しく人を愛する事はできるんだから」
「むぅ。何か弱みを握られた気分だ……」
そうして恥じらいつつも勝ち誇ったような顔を向けてくるミニスに、僕はやり込められた気分になった。
というかまともな愛し方ってアレであってたんだ。ひたすらに愛を囁いてお姫様みたいに丁寧に優しく扱ってやっただけなのにねぇ? コイツ案外お姫様願望があるんだろうか……。
「よし、じゃあ今夜は激しくやるからな?」
「ちょっ……こ、今夜も、やるの……?」
「やる。分からせる」
僕が断固として分からせる事を宣言すると、ミニスは耳まで顔を赤くして後退った。心なしかウサミミも折りたたみ気味だ。だって勝ち誇る女の子は分からせるしかないもんなぁ?
「……昨日みたいに、優しくしてくれるなら……まあ……」
そのまま悔しそうに睨みつけてくるかと思いきや、意外にもミニスは控えめに頷いた。おいおい、普通に満更でもなさそうな反応じゃん? そんなにお姫様扱いのエッチは気持ち良かったですかぁ?
「……大丈夫? ちょっと堕ちてない?」
「べ、別に堕ちてなんか無いし! あんたみたいな屑に惚れたりするわけないでしょ!?」
僕が訪ねると、今度はちゃんとゴミを見るような目で睨みつけてくれた。まあ顔は真っ赤だったけどね。
しかしこの反応、やっぱり愛情と快楽には勝てなかったみたいだね。ミニスも普通の女の子だったんだなぁ……でも単なる村娘がどんな逆境にも苦痛にも耐え忍ぶ方がおかしいんだよね。何でそれらは耐えられるのに、屑でイカれた僕に真っ当に愛されると耐えられないの? 女の子って難しい生き物だなぁ……。
何はともあれ、ミニスがついに元に戻った。そんな嬉しさに胸を躍らせながら、僕はミニスに尻を蹴られつつ屋敷に入ったんだけど――
「――お、おかえりなさいませ、ご主人様……お嬢様……」
「先ほども言ったが声が小さい! もっと大きな声で、流暢に喋らないか! その綺麗な声が勿体ないぞ!?」
「お、おかえりなさいませ!」
エントランスにはメイド服に身を包んだミラの姿と、スパルタコーチングしてるようで微妙に褒めてるベルの姿がそこにあった。
そう、てっきりベルはミラをサンドバッグにするんだと思ってたんだけど、何故か気が付いたらメイド服を着せて新人教育してたんだよ。確かにこの広い屋敷にメイドがベル一人っていうのも大変そうだし味気ないから、気持ちは分からんでもないけどね。
ちなみにミラはベルのメイド服と違って、白い太ももが見えるミニスカメイド服を着用させられてる。ミラさんったら恥ずかしそうにスカートの裾を押さえちゃってまあ……良く分かってるじゃないか、ベル君?
「あ、はい、ただいま……いや、誰……?」
「あれ、何で知らないの? 闘技大会で試合見てたじゃん?」
反射的に返事をしつつも首を傾げるミニスに、こっちが首を傾げたくなった。何で分からないんだ。このデカい胸を見れば一発だろうが。
「いや、だって見た事無いし……」
「リアも見てたけど、こんな人知らないよー? 予選にいたのー?」
ミニスだけじゃなく、地下牢のサキュバスを見に行こうとしてたはずのリアまで首を傾げてる。
おかしいなぁ。本戦で僕とやりあった相手だし、試合をちゃんと見てたら分かるはずなんだけど……。
「……ああ。そういや試合じゃローブ着てたし、フード被ってたか、じゃあ分かるわけも無いな」
唐突にそれを思いだして、僕は一人納得した。そうだよ、今でこそミニスカ巨乳メイドの姿してるけど、元は野暮ったいローブで身体も頭も覆い隠した陰気な恰好してたじゃん。その上で不可視化の魔法を使うんだから気付けって言う方が無理か。
「……あっ! もしかしてあの消える人ー!?」
「そう、それ。コイツがリアの魔法の先生になる人だからね。挨拶しといて?」
「よろしく、先生! リアに魔法を教えてください! サキュバスたちに生まれてきた事を後悔するくらいの痛みと苦しみを味わわせたいの!」
「ひいっ……! よ、よろしく、おね、お願い、します……」
ようやく誰かを思い出したリアが、魔法の先生となるミラに闇を溢れさせつつ丁寧に挨拶をする。
可愛らしい幼女が突然濃密な闇を漂わせながら狂気の笑みで挨拶してきたせいか、ミラは腰を抜かしてその場に尻餅つきながら、青い顔で必死に笑顔を返してたよ。ミニスカ捲れてパンツ見えてるし。色気の無い無地の白か……ふむ……。
「魔法の先生はまあ分かるとして……何でメイドやってんの、この人……?」
ツッコミ役のミニスはそこが気になったみたいで、僕に対して怪訝そうな目を向けてきた。
そんな事言われてもメイドにしたのは僕じゃないんだよなぁ。でもこれはこれで悪くないな? 用が済んだらこの世から解放してやろうと思ってたけど、このままメイドとして働かせるのもアリなのでは?
いつものミニスが戻ってきました。やったね!