二代目魔法講師
⋇少し前に出たキャラが再登場の回
⋇初代魔法講師はレーンの事
「さて、今日はリアの魔法の講師を作るか」
朝食を食べ終わってしばらく自室でゴロゴロしながら読書してた僕は、リラックスタイムを終えてベッドからもぞもぞと外に出た。色々やる事が多くても働きづめじゃ逆に効率とか落ちるからね。適度に休みながらやるのが一番だよ。
というわけで英気を養った僕は、とりあえずリアの魔法の講師を作る事にした。作るっていうか、仕込むって言った方が正しいかもしれないけどね。
「さあ、出てこい――って、頭から行った……痛そう……」
だから空間収納に保管してたとある人物の死体を取り出すと、上下逆さまの状態で出てきて床に落ちる。そのせいで『グキッ!!』っていうめっちゃ痛そうな音が聞こえたよ。まあ首の骨が折れてても死んでるから苦情は出ないか。そもそも死因が首の骨を折られた事だったし。
とりあえず折れ曲がった首は放置して、早速魔法で一方的な契約を結んだ。こうしてこうして、これで良し。それから蘇生した時、命令を出す前に逃げられたりしないように結界を張っておいて……はい、絶対に逆らえない奴隷の出来上がり!
「よし、準備完了! さあ甦れ、完全蘇生!」
前準備を終えた所で、遂に蘇生と再生の魔法を行使する。
この魔法のせいで僕にとっての命の価値が滅茶苦茶安いんだよなぁ。まあだからって使用を封印したりはしないが。
「――っ、あぁあぁっ……!?」
死体は徐々に血色を取り戻して行ったかと思えば、突如として叫び声を上げながら身体を起こした。その勢いで目深に被ってたフードが外れて青っぽい長髪が露わになり、ローブの下のデカい膨らみがぷるんと揺れる。実に目の毒だ……。
「はぁ……はぁ……あ、あれ……? ここ、は……?」
「やあ、ミラ。大丈夫? 記憶ははっきりしてる?」
ちょっと頭がぼうっとした感じのそいつ――ミラに優しく笑いかける。
みんなミラのこと覚えてる? ほら、闘技大会で僕と戦った不可視化する巨乳悪魔魔術師だよ。しかもニカケどころか小さな角が片方しかないっていう、悪魔の中じゃ最底辺も良いとこな奴。コイツの使う魔法がかなり特殊みたいだから、リアの魔法の講師にするために今まで保管してたんだ。
「ひっ!?」
「……うん。はっきりしてるみたいだね」
どうやら死の瞬間の事もしっかり覚えてたみたいで、僕を見る水色の瞳は恐怖に揺れた。そして顔を引きつらせたかと思えば、そのまま宙に溶けるように姿を消した。まあ僕が首の骨をへし折って殺したからね。ビビッて逃げようとするのも仕方ない。
「命令だ。逃げるな、姿を現せ」
「……っ!?」
もちろん、逃がしはしないけどね? 僕が命令を口にすると、窓の前に身体を凍り付かせたミラの姿が現れた。
扉からじゃなくて窓を割って逃げる気だったか。瞬時の判断にしてはなかなか賢いね? 全く知らない建物の中を通って逃げるより、お外が見える窓をぶち破って逃げた方が確かに早いし確実だ。とはいえどっちの逃走ルートを選択しようが、この部屋には結界張ってるから逃げられないんですけどね?
「悪いけど、君はもう僕の玩具だよ? 君が死んでる間に一方的に契約を結ばせて貰ったからね。諦めて大人しく言う事聞いてくれると嬉しいな? いちいち命令するのも面倒だからさ」
「ふぁ、ファイア――」
「命令だ。僕への攻撃を禁止する」
「あっ……!」
逃走できないと悟るや、意外にも応戦を選択して魔法を使おうとするミラ。もちろん先んじて命令する事で、魔法は発動できなくなりました。
ちなみに死んでる時に結んだ一方的な契約では、僕を殺す気で放つ攻撃は禁止ってなってるんだ。つまりさっきミラが魔法を放てそうだったのは、あくまでも殺す気は無かったからだね。あるいは自分の攻撃じゃ僕を殺す事は出来ないって思ってたか。
「そ……んな……」
何をしても逃げられないって悟ったみたいで、ミラは絶望の面持ちでその場に崩れ落ちた。良いねぇ? 僕、女の子の絶望顔がだーい好き! アヘ顔嫌い!
「自分の立場を理解してくれたみたいで何よりだよ。理解できないなら少し痛い目を見せようと思ってたからね」
「ひいっ……!? あ、あなたは……何者、なんですか……?」
「説明が面倒だから教えない。とにかく大人しく従ってくれるよね? 用が済んだら解放してあげるよ」
「……分かり、ました……あなたに、従います……」
自分に出来る事は無いって判断したみたいで、ミラは大人しく従属宣言をしてくれた。
ちなみに用が済んだら解放するとは言ったけど、別に奴隷から解放するとは言ってないんだよなぁ。まあもちろん解放はしてあげるよ? 無意味な生という束縛からな!
「よろしい。それじゃあ早速君の仕事を説明するよ。大事な事だけど何度も説明するのは面倒だから一回しか言わないよ? よーく聞いてね?」
「は、はい……」
「君の仕事は、僕の仲間の一人に魔法を教える事だよ。君が使う透明になる魔法って、ちょっと普通とは違うんでしょ?」
「は、はい……でも、この魔法を教えても、私と同じ域で扱えるわけじゃ……」
「いや、透明化を覚えさせたいわけじゃないんだよ。復讐のための力を付けさせてあげたいんだ。だからこう、原理とか要領の良いやり方とか集中の仕方とか、とにかく上手いやり方を教えてあげて欲しいんだ」
レーン曰く、コイツの使う不可視化の魔法は通常とは異なる類の魔法。強烈な渇望や意思の類を利用して精度や規模、威力その他を向上させてるらしいんだけど、レーンにもそれ以上の詳しい事は分からないみたいだからね。やっぱり使える当人が教えるのが一番理に適ってると思う。
ミニスも一回だけ使ってたけど、ミラとミニスのやつが同じやり方で実現してるかどうかは意見が分かれるところだし。やっぱり技術として確立してるコイツに聞くのが一番だ。
「復讐……それなら、ある程度はご期待に沿えるかもしれませんが……本人の意思と、復讐を望む渇望次第です……」
「じゃあ大丈夫そうだね。憎悪と殺意の深さはこの世界でも五指に入りそうな感じの奴だから」
「ひえっ……!」
お前の生徒になる奴は憎悪と殺意の塊って遠回しに伝えると、ミラは一段と恐怖に顔を引きつらせる。ていうかコイツさっきからずっと顔が青いなぁ……そんな怯えてて大丈夫? その内倒れるんじゃない?
何にせよ魔法の講師は準備できたから、僕はビクビクしてるミラを引き連れて部屋を出た。ここがどこかとか、僕は何者だとか色々知りたそうな顔してるけど、何も尋ねて来ないのは好印象だね。
「おーい、リアー。魔法の先生を連れてきたよー?」
そうしてリアのお部屋の前まで来て、扉をノックする。しかし数秒待っても返事が無かった。もう一度声をかけてノックするけど、結果は同じ。いないのか? もしかしてお出かけしたのかな?
「おーい、ベルー! ちょっときてー!」
「――どうした、ご主人様よ。何か用か?」
「ひいっ……!?」
虚空に向けて困った時のメイド呼びをすると、凄まじい速さでどこからともなくベル(キラの姿)が現れた。突然現れたただ者じゃな無さそうなメイドの姿に、ミラが腰を抜かして尻もちをつく。
「リアがどこにいるか知らない? お部屋にいなかったからさ」
「リアなら朝食を終えたのち、ミニスと一緒に街に出かけたぞ。今日は夕方まで外で遊んでくるそうだ」
「そっか。朝ごはんの後すぐに出かけちゃったのか。ちょっと遅かったかな?」
たぶん僕がゴロゴロしながら読書してる間に行っちゃったんだろうなぁ。少しタイミングが悪かったか。
「……ところで、その女は誰だ?」
「ひいいぃぃっ……!」
なんて間の悪さに思いを巡らせてると、ベルが急にクッソ冷えた声でミラにゴミを見るような目を向けた。明らかに見た目に似合わない域の冷たさに、ミラはガタガタと震えて涙をポロポロ零してるよ。
何だってこんな刺々しい反応してるのかと思ったけど、考えてみればベルは聖人族も魔獣族も纏めて滅んでしまえって思ってる奴だ。大恩のある僕とその仲間たちには友好的に接してるだけで、それ以外の奴に対してはこんなもんなのかもしれないね。
「あ、これ? リアの魔法の先生になってもらう予定の子だよ。でもリアが遊びに行っちゃったからなぁ……帰ってくるまでどうしようか?」
「ふむ……つまり客人なのか? お茶を出してもてなすべきか?」
「いや、客じゃないよ。魔法の先生にするために契約で縛って蘇生させた、奴隷みたいなものだから」
「なるほど……客人で無いというのなら、必要になるまで私が使っても良いか?」
「つ、使う……!?」
ベルの唐突な使用宣言に、ぷるぷる震えてたミラが更に顔を青くする。
まあ明らかにただ者じゃないメイドが常軌を逸した域の憎悪をぶつけてきて、自分を使うとか言い出したんだからね。一体何に使われるのか気が気じゃないでしょ。正直僕も気になるけど、特に愛着も何も無いミラがどうなろうと知ったこっちゃない。
「良いよ。じゃあお前にもコイツへの命令権を渡しておくよ。命令だ、コイツ――ベルフェゴールの命令にも従え」
「う……は、はい……!」
すっごい恐怖に引き攣った顔で、ミラは僕の命令通りに頷く。
これでベルに何を求められようが、何を強制されようがミラは決して逆らえない。果たしてどんな風に使われるのかな?
「感謝するぞ、ご主人様よ。さあ、こっちへ来い。存分に使ってやろうではないか。ククク……」
「だ、誰かぁ……助けてぇ……!」
ニヤリと怪しい笑みを浮かべたベルに首根っこ引っ掴まれて、そのままズルズルといずこかへと運ばれてくミラ。最後に消え入りそうな感じの切ない助けを呼ぶ声を零したのが印象的だね。まるで食肉処理場に運ばれてく家畜みたいだなぁ……。
「……さて、リアが帰ってくるまで僕はどうしようかな?」
ミラがドナドナされる光景を一瞥した僕は、即座に頭を切り替える。
リアは夕方まで帰ってこない。そして時間は有限で、僕はやるべき事がいっぱいある。それなら帰ってくるまでぼうっと待つなんてのはさすがに駄目だ。時間があまりにも勿体ない。
「……よし。サキュバスでも捕獲してくるか」
少し考えた僕は、ルスリアの街でサキュバスを捕獲してくる事に決めた。予め地下牢にサキュバスをぶち込んでおけば、気が向いた時に拷問したりできるしね。それにリアに魔法を覚えさせたらすぐに試させる事もできるし、一石二鳥ってやつだよ。
よーし、なるべくエロい身体で綺麗なサキュバスを捕まえて来るぞー。
「――これでよし。牢屋が五つしかないから、みんな相部屋でごめんね?」
お昼頃、僕はルスリアで捕まえてきたサキュバスたちを地下牢にぶち込み終えた。
地下牢は計六つで、その内の一つは階下への移動用の魔法を仕込んだ牢だから、使える牢屋は実質五つ。十人捕まえてきたからどうしても相部屋になっちゃうんだ。やっぱり地下牢をもっと増やすべきだろうか?
「何なの、あなた!? 私たちをこんな所に閉じ込めてどうするつもり!?」
「君たちには僕の実験動物になってもらうんだよ。たぶん凄い苦しくて痛くて辛いだろうけど、まあ心折れずに最後まで抗ってくれると嬉しいな?」
「い、イカれてる……!」
鉄格子越しに噛みついてきたサキュバスが、僕の答えを聞いて戦慄したように呟く。イカれてて悪かったねぇ? でもクソ犬とかバカ猫に比べたら僕はまともな方だと思うんだ。
「ね、ねえねえ? 私たちをここから出してくれない? 出してくれたら、みんなであなたを気持ち良くしてあげるわよ?」
などと誘惑してくるのも、もちろんサキュバス。エッチなネグリジェをはだけるようにして、なおかつ豊かなお胸を強調するようなセクシーポーズをとって実に魅力的な提案をしてくる。
まあこの牢屋の中じゃ魔法は使えないからね。こうして僕を誘惑して出して貰う事を考えるしかないわけだ。
「……ハッ」
「なっ……!? くっ、屈辱ぅ……!」
でも僕は今まで数えきれないほどの男に股を開いてきたビッチには興味が無いから、鼻で笑って無視してやったよ。幼児体型っていうかまんまロリだけど、僕には男性経験が僕しかない合法ロリサキュバスがいるしね。しかし歯を食い縛って屈辱に堪えてるとか、拉致監禁されてる割には随分余裕だなぁ?
「よし、被検体は確保。魔法の先生も確保。お昼食べたら次は何をしようかな?」
そんな事を考えながら、僕は地下からリビングに戻って食堂を目指す。リアが夕方あたりまで帰ってこないらしいから、それまではまた別の事を片付けようかな?
「おお、ご主人様よ。昼食はもうすぐ出来るぞ。席に着いて待っていてくれ」
「はいはい、了解」
食堂に着くと、良い感じの香ばしい匂いが僕をお出迎えしてくれた。キッチンから顔を出したベルが言う通り、もうすぐお昼ごはんが出来上がるみたいだね。
「……何だこの味付けは!? 貴様、塩と砂糖を間違えるとは何事だ!? 」
「ヒィッ……! ご、ごめんなさいっ……!」
と思ったけど、もうちょっと時間がかかりそうかな?
ていうか今の怯えまくった声、どう聞いてもミラの声じゃん。てっきりストレス発散に痛めつけられてるのかと思ったけど、メイドやらされてたのか……。
闘技大会でセクハラされた上に杖をパクられ、返して貰いに行ったらメスガキの拷問現場を目撃してしまい首の骨をへし折られて殺され、かと思えば奴隷にされた上で蘇生された挙句、何故かメイドをやらされる……何だコイツ……。