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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第9章:忙しない日々
227/527

共生体

⋇残酷描写あり

⋇ミニス虐あり







「さて、今夜最後のスライムは――これだ!」


 そうしてミニスがメソメソしてる間に、僕は今日最後の生物改造を終えた。これはなかなかの自信作で、とっても面白いスライムに仕上がったよ。その誇らしさのままスライムを両手で掲げて披露すると、全員の目がギョッとしたように見開かれた。


「真っ黒だー!?」

「おいおい、いきなり何だってそんな色にしてんだよ」

「これはまた、随分思い切った色合いだね……」

「う~ん、実に禍々しいスライムだ~……」


 そう、今度のスライムは体色が真っ黒。真っ黒過ぎて身体の中にあるはずの核も見えないレベル。さっきまでのそこそこ綺麗な体色とは違って、ある種不気味な姿だよね。こんな色でぷよぷよ蠢いてるんだから、驚かれるのも無理はない。


「ふん……どうせまた碌なスライムじゃないんでしょ……」


 でも若干一名だけ驚いてないっていうか、不貞腐れてる奴がいた。もちろんそれはミニスだ。もう僕が変な生物しか造らないし自然環境を破壊するとしか思ってないみたいで、グレたみたいにそっぽ向いて毒づいてる。

 これはだいぶご機嫌を損ねちゃった感じかなぁ。ウサミミまでそっぽ向いてるし……ここは物で釣ってご機嫌を直して貰うしかないですね? ちょうどいい感じの物が僕の両手の中にあるし。


「そんな君にこのユニオン・スライムをプレゼントぉーっ!」

「うわ、ちょっ――がぼっ!?」

「きゃーっ!? ミニスちゃんの口の中にスライムが入ったー!?」


 僕が手の中の真っ黒スライム――ユニオン・スライムを投げてミニスにぶち当てると、スライムはミニスの身体を駆け上がってその愛らしいお口の中へと入り込んだ。真っ黒いぶよぶよした生物がミニスの口にもぞもぞと侵入して、更にその奥へと流れ込んでいく光景はかなり刺激が強かったみたいで、リアが悲鳴を上げて椅子から転げ落ちる。

 うん。確かに苛めで昆虫を食べさせられてたっぽいリアには刺激が強かったな。配慮が足りなかったかもしれない。正直すまんかった。


「んぐっ……!? ごぼっ、おおぉぉ……!」

「あまり気持ちの良い光景ではないね……」

「ハハハ、スゲェ愉快な光景だぜ?」

「スライム姦……なるほど、主はそういうのもお好みか~……」


 とはいえ他の奴らはあまり気にした様子はなかった。スライムが食道を流れ落ちていくのを転げ回って涙ボロボロ零しながら堪えてるミニスの姿に、レーンがちょっと眉を顰めてるくらいか。キラはゲラゲラ笑ってるし、トゥーラは真面目な顔で僕の性癖を勘違いしてるしね。僕はスライム姦より触手姦の方が好きです。


「う……! ゲホッ、ゴホッ……!」

「大丈夫ー、ミニスちゃん? お腹の中でスライム暴れない……?」


 しばらくしてユニオン・スライムは完全にミニスの中に侵入し終えた。胃の中にかなりの質量が流れ込んできて苦しかったのか、ミニスは腹を押さえて咳き込んでる。そんなミニスを珍しく心配した様子のリアが印象的だ。やっぱりちょっと思う所のある光景だったみたいだね。


「はぁ……はぁ……!」


 しばらくしてミニスは荒く呼吸を乱しながらも、ゆっくり立ち上がった。そうして僕に向けて敵意に満ち溢れた鋭い睨みを向けると――


「――何すんのよこのクソ野郎がああぁぁぁぁぁっ!!」


 迫真の叫びと共に床を蹴って、僕に回し蹴りを叩き込もうとしてきた。

 うん。そこまではいつもの事だね? 僕が防御魔法展開してるせいもあってか、しょっちゅう暴力に訴えてくるし。魔王城に侵入した時とか、ちょっと癖になるほど尻を蹴られまくったしね。ただ今回ばかりはいつもと違った。


「わーっ!?」

「んなっ……!?」

「おお~っ!?」

「ふむ……」


 ミニスが勢いよく床を蹴った途端、凄まじい衝撃波が巻き起こって何もかもが吹き飛んだ。椅子もテーブルも実験道具も、そしてもちろんリアたちもね。みんな普通に空中で体勢整えて壁を蹴って床に降りたし、リアは翼を使って急制動をかけて壁に叩きつけられるのを防いでた。

 え、スライムくんたち? そりゃあもちろん壁に叩きつけられて椅子やら何やらがぶち当たって、一匹残らず死んじゃったよ。本当に弱いなぁ、スライムくん……。


「……え? な、何、この衝撃……私がやったの……?」


 自身の踏み込みでとんでもない破壊が巻き起こった事に驚いて、ミニスは蹴りに繋げる事無く僕の隣に着地して目を丸くしてた。

 確かにコイツの脚力は馬鹿みたいに凄いけど、ここまでの衝撃と破壊を撒き散らすほどじゃない。本人のスペックから考えて明らかに異常なレベルだ。つまり、実験は成功って事だね。


「……踏み込みだけで甚大な衝撃を生み出すほどの身体能力強化。ユニオン・スライムとの共生は成功だね」

「きょ、共生……?」

「さっきお前に投げ渡したスライムは、言うなれば寄生虫みたいなもんだよ。生物と細胞レベルで融合して、宿主の身体を強化してくれるんだ。それと融合によって宿主の細胞にもスライムの要素が出てくるから、その気になればスライムシールドとかスライムソードとか作れるよ。硬度も思いのままに弄れるし」

「え、何それ超怖い……」


 僕の言葉を聞いて、ミニスは途端に顔を青くする。

 そう、さっきのミニスの馬鹿げた踏み込みは、ユニオン・スライムによる身体能力強化の賜物だ。あのスライムは生物に寄生して、宿主に素晴らしい力を授けてくれるように改造したとっても面白い生物なんだよ。分かりやすく言うとシン●オートとかプラー●みたいなもん。参考にしたのはシ●ビオートの方だけどね。


「大丈夫大丈夫。寄生虫って言っても宿主に悪さは一切しないし、するような自我も無いよ。宿主の身体能力や反射神経を大体三十倍に引き上げて、なおかつ高度な再生能力も授けてくれる良い子だぞ。ただ宿主はスライムの分の栄養も取らないといけないから、ご飯の量がちょっと増えるかな?」


 一見するともの凄く有用なスライムに思えるけど、正直僕にとってはちょっと面白いだけのゴミだね。

 だって別にわざわざスライムに寄生能力や宿主を強化する能力を授けなくたって、直接魔法で強化すれば事足りるもん。造っといてなんだけど、完全にお遊びのための玩具だよ。あとはヴェ●ムごっこするためのコスプレ道具になるくらいかな……。


「……つまり、今の私は普段の三十倍は強いって事?」


 この説明でミニスも自分の力が跳ね上がってる事を理解したみたいで、僕にそれを聞きながら自分の手をグーパーして力を確かめてる。

 ただの人間なら三十倍してもそこそこだけど、コイツはロリとはいえ獣人だからなぁ。脚力はそれこそイカれてるだろうし、たぶん握力だけでも相当なモノになってるはず。


「まあそういう事。もちろん過剰な身体能力で自滅しないようにも工夫してあるから、スペックをフルに活用できるよ。まあそもそも僕ならそういう魔法をかければ済む話なんだけどね……」

「ふぅん、そう……なるほどね……」


 僕の答えに、ミニスは静かに納得を示す。それが嵐の前の静けさのように感じられる辺り、僕の危機意識はしっかり仕事してますね。どうせその力で僕をぶん殴るなり蹴り飛ばすなりするつもりなんだろ? よーし、来い! 受け止めてやるぞ! 


「……はあっ!!」

「ぴゃーっ!?」


 案の定、ミニスはニヤリと笑った後、バカげた踏み込みで衝撃波撒き散らしながら殴り掛かった。僕じゃなくて、キラにね? そっちかぁ。危機意識くん誤反応してるよ?

 他の奴らは慣れた感じでその場に踏みとどまってたけど、リアはまたしても吹っ飛ばされてたよ。壁に激突しそうになってたから僕が引っ掴んで止めてやった。


「……テメェ、死にてぇのか?」


 顔面を打ち抜かれそうになったのをすんでの所で躱したキラが、濃密な殺意を垂れ流しながら呟く。両腕振るって鉤爪を装着して、完全に戦闘態勢だ。

 そんなヤバい奴を前にして、ミニスはあろうことか不気味に笑ってた。一応言っておくとユニオン・スライムには宿主の精神を侵食したりする効果は無いよ。無いよね……?


「ふふっ……この力があれば、あんたに今までのお返しをしてやれるわ。よくも散々ボコボコにしたり、目を抉ったりしてくれたわね、クソ猫。今日こそ目にもの見せてやるわ」

「他人に貰った力でイキってんじゃねぇよ、クソウサギが。面白れぇ、相手になってやるぜ。クルス、あたしらを闘技場に飛ばせ」

「血の気が多いなぁ、君ら……転移(テレポート)


 今までの仕返しをしたいっぽいミニスと、生意気なクソウサギに現実を思い知らせたいキラ。放っとくとこの場でやり合いかねないから、やむなく二人を地下闘技場に飛ばした。

 しかしミニスの奴、力を得た途端にする事が復讐かぁ……大いなる力には大いなる責任が伴うっていう言葉知らないの? そういう力は僕みたいに高潔かつ崇高な目的のために使わないといけないんだよ?


「……まあそういうわけで、アレがユニオン・スライムだよ。何か質問は?」

「きゅー……」


 魔法で実験室の惨状を即座に元通りにしながら、残った三人にそう尋ねる。

 でも実際には二人かな? だってリアは吹き飛ばされた時の衝撃で目を回してダウンしてるっぽいし。とりあえず邪魔だからテーブルに寝せておこう。


「はいは~い! あのスライムの体色が黒色なのは、何か理由があるのか~い?」

「ぶっちゃけると、無い。ただ僕の知ってる映画――創作物にああいう色のスライムに似た共生生物がいたから、それにあやかってるだけだよ」

「まあそんな所だろうと思ったよ……しかし実用的かどうかは別として、面白い発想だね。魔法で対象を強化するのではなく、対象を強化する力を持った生物を寄生させるとは。これは色々と応用ができそうな気もするね」

「そうだね~。例えば宿主の攻撃性を増加させ、更に人肉への欲求を付与させる事が出来れば~……ふふふ、面白い事になりそうだね~?」

「何かヤベー事考えてるな? ていうかそういうのはウィルスとして存在するから別に良いかなぁ。死体がゾンビになって復活して人間を襲って、噛まれたり引っかかれたりした人間もゾンビになるやつ」

「君の世界は随分と物騒だね……」


 僕の答えにレーンがちょっと引く。

 でも考えてみれば、魔法を使えばそういうウィルスも作れるんだよなぁ? どうしよう、作ってみようかな? でも扱いを間違えてウィルスを流出させちゃう展開しか思い浮かばないわ。危なそうだからやめておこうかな。さすがの女神様も全人類をゾンビにしちゃったらガチギレしそうだし……。


「ご主人様ー……リアもああいうのを口から入れないといけないのー……? リア、ああいう気持ち悪いの食べさせられるの、もうやだよー……」


 などという声に下を向くと、テーブルの上に寝かせたリアが青い顔で切実な呟きを零してた。果たして顔が青いのはさっきの衝撃のせいか、それとも故郷でのトラウマのせいか、何にせよ僕の配慮がちょっと足らなかったのは確かだね。


「別にそんな事しないって。さっきも言ったけど、そもそもアレを寄生させて出来る事は普通に魔法で出来るからね。リアにああいう力をつけさせるなら、普通に魔法を使うよ。でもお前に身に着けさせる力はああいうのじゃないから安心しなよ。ただ力を得るにはリア自身の努力も必要だから、そこは忘れないようにね?」

「……うん」


 やっぱりちょっと気分が悪いみたいで、リアは少し元気なさげに頷いた。さすがに口から入って寄生する形にしたのは悪乗りが過ぎたね。反省。

 しかし闘技場でやりあってるだろうあの二人は今どんなもんかなぁ。今日の実験はこれで終わりの予定だったけど、まだユニオン・スライムの処理が済んで無いし、最後にみんなで闘技場の様子を見に行こうっと。

 

 

次回、ミニスVSキラ! 普段ならタコ殴りにされて終わりだけど、果たして今回はどうなる……!?

ちなみに作者はマーベ●映画も大好きです。

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