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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第9章:忙しない日々
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遺伝子組み換え



「さて、ここが実験室だ。ちょっと準備するから座って待っててね?」


 しばらく歩いて辿り着いた実験室は、小学校の理科室と大学の研究室を混ぜて二で割ったみたいな感じの作りだ。実験器具とかを置いた広いテーブルが幾つかあって、他にも魔法で創り出したガスバーナーとか遠心分離機とかも設置してある。雰囲気づくりのために設置しただけだからぶっちゃけ使わないだろうけどね! 使ってんのは冷蔵庫くらいだよ!

 そんな裏事情はさておき、とりあえず僕は実験の準備を始めた。空間収納からスライムの核を取り出して、これに蘇生と再生の魔法を施して元のスライムに戻してく。スライムは自我が無いから蘇生した後でも契約魔法はできるしね。


「ほう……これは顕微鏡かな? ここまで倍率の高い顕微鏡を見るのは初めてだね。これなら微生物も容易に観察できそうだ」

「これは何だい~? お~っ!? もの凄い速さで回転した~!?」

「何だこりゃ。ゼリーか? 随分平べったいな」


 ロリコンビ二人は大人しく椅子に座って待ってるのに、他の奴らは好奇心のままに生きてるっぽい。レーンはスライドに何か挟んで勝手に顕微鏡で観察してるし、トゥーラは遠心分離機を起動してるし、キラに至っては冷蔵庫開けて寒天培地のシャーレを取り出して眺めてる。

 ちょっと大人しくできないの? いやまあ、犬猫に対してそれは酷な話か。レーンに関しては……うん。あれも仕方ないかな。


「……あんたの女って変なのばっかりよね。類は友を呼ぶっていうアレ?」

「SM変態ワンコや猟奇殺人鬼と類友扱いはやめて? さすがに僕だって傷つくよ?」


 テーブルにぶよぶよ蠢くスライムを並べてると、ミニスがそんな酷い罵倒をしてきた。確かに僕は屑でゴミで下種だけど、アイツらよりはなんぼかマシでしょ? マシだよね? マシって言って?


「えー? リアもご主人様の女だけど、リアはそんなに変じゃないよね? ミニスちゃん?」

「変……ではないけど、何て言うかちょっと、アレよね……?」


 僕を容赦なく罵倒した癖に、リアに対しては口を濁すミニス。この対応の差、酷いよね? 差別じゃない?


「正直に狂ってるって言えよ。妹に似てるからって言葉を濁すな――あっ!? おいそこの殺人鬼! それはゼリーじゃない! 寒天培地を食うな!」


 細菌を繁殖させるためのお家である寒天培地を食ってる奴がいたから、スライムをぶん投げて止める。もちろんあっさりと躱されて、スライムは冷蔵庫にぶつかって文字通り弾け散った。スライムが死んだ! この人でなし!

 ああ、もう。まるで幼稚園の先生の気分だなぁ……? 頼むからみんな席に着いて大人しく待っててくれよぉ……。






「……よし、準備完了。それじゃあ実験を始めるぞー」


 しばらくしてアホ共も好奇心が満たされたみたいで、僕の前にあるテーブルに集ってくれた。テーブルの上にはスライムが盛りだくさんで、何匹かは落ちて床を這い回ってる。

 冷静に考えれば今ここまで用意する必要なかったな。数匹くらいで良かったかもしれない……。


「それで? そのスライムを使ってどんな実験をするんだい?」

「僕が前から従順な兵士を作ろうとしてたのはみんなも知ってると思う。でも少し前からコストパフォーマンスが悪いって感じてたんだよね。いちいち死体を手に入れて一方的に契約を結んで、記憶を弄ったりなんなりしてさ。それに女の子の死体は大抵ネクロフィリアの吸血鬼行きだし、僕の手元に残るのは男の死体なんだよね。正直男の死体を従順な兵士に改造しても楽しくないなって……」


 そう、僕が従順な兵士作りから方針転換したのは、面倒で興味が無くなったっていう点が大きい。

 だってわざわざ死体を掘り起こして綺麗にして契約を結んで記憶を弄らないといけないし、死体愛好家の吸血鬼が真の仲間に入ったから、死んでる女の子は主にそっちに流してやりたいし。そうなると必然、僕は野郎を弄って兵士にするしかない。こんなんモチベーション無くなっても仕方ないでしょ? 女の子の尊厳を破壊して従順な人形兵士にするから愉快なのであって、野郎に同じ事しても楽しくないんだわ。これならまだ魔物弄ってた方がマシだよ。


「もうツッコミどころしか無くて頭痛くなってきた……」

「ミニスちゃん大丈夫? ゼリー食べる?」

「それスライム……」


 ツッコミの限界を超えたのか、ミニスが頭を抱えてテーブルに突っ伏す。隣のリアがゼリーと称してスライムを差し出したけど、それにツッコミを入れる余力はあるみたいだ。

 ちなみにもう一人のツッコミ役は魔法関連の話なせいか完全に食いついてきてて、ツッコミの役目を放棄してる。頑張って、ミニス! 今この場にはツッコミ役はお前しかいないぞ!


「そこで、このスライムだ! スライムなら雑魚魔物だからその辺にいっぱいいるし、自我が存在しない下等生物だから契約して命令を下すだけで忠実になる。それに野郎の死体と見つめ合って作業するよりはまだマシだから、スライムを兵士の素体にしようって考えたんだ」

「なるほど。理に適っているね。スライムなら数が必要になっても問題は無い。生きた人間ほど扱いが面倒では無いし、実験体としても素体としても優秀だ」

「そうだね~。それにスライムの討伐は常設依頼として常にギルドで依頼を出しているし、主が表向きの生活を送る中で冒険者の仕事をこなすならちょうど良いんじゃないかな~? あ~、でも討伐証明の部位が核だから、少しはギルドに提出しないといけないのがネックだね~……」


 真面目な表情で頷くレーンと、バカ犬だけど何だかんだで賢い方のトゥーラ。

 うーん、ギルドに提出かぁ……スライムの核を模倣した物体を魔法で創って提出すれば良いんじゃないかな? 何に使うのかは知らないけど、僕みたいに蘇生させて利用するってわけでも無いだろうし。ただまかり間違ってバレると厄介だしなぁ。それについては後で考えるか。


「まあそういうわけで、キラとトゥーラにはスライムをたくさん狩ってきて貰ったんだよ。ただ僕も生物を細胞レベルで弄るのは初めてになるから、少し遊びの実験をしてから本格的に実験に移ろうって考えてるんだ。あんまり興味無さそうな奴もいるし、今日はその遊びの実験をするよ」

「遊びってなーに? どんな事するのー?」


 スライムを抱っこしながら、興味津々に聞いてくるリア。

 そうだねぇ、まずはどうしようかな……一口にスライムって言っても、コイツらクソザコ魔物なんだよなぁ。リアがスライムを抱っこしてても何にもエロい展開が起こらないように、自発的な攻撃行動とかは一切しない。

 捕食行動に関してはゆっくりと自分の体の中に取り込んでから、時間をかけて消化していく感じなんだよね。だから表面に触れてても何にも起こらないわけ。お、そうだ。じゃあその辺改造してみるか。


「……まずはこうだな。生物改造バイオロジカル・モディフィケーション


 良い改造を思いついた僕は、手近なスライムの一体に魔法を行使した。

 ただこの魔法も記憶を弄る魔法と同じで、ちょっと時間がかかるタイプだね。発動してからどういう風に改造するか指定して実行するタイプだから。まあそういうわけで、アレをこうして、コレをこういう風にして、それからソレもあんな風に……。


「……よし、完成! この世界初の遺伝子組み換えスライムだぞ!」


 大体一分くらいで改造が終わって、僕は生まれかわったスライムを両手で天に掲げて見せた。ちなみに遺伝子まで変わってるかどうかは分からん。


「ふむ……見た目は色が変わっただけだね」

「そうだね~。透き通るような綺麗な黄色だ~」

「美味しそー!」

「だからこれスライムよ? 食べちゃ駄目だからね?」


 仲間たちの反応から分かる通り、見た目にあんまり変化は無い。精々透き通った青色の身体が黄色の身体になってるくらい。単なる色違いのスライムって言われても納得するレベルだ。


「で、どの辺が変わったんだ?」

「そうだね。えーっと……あ、お前が齧った寒天培地ちょうだい」

「あ? これか?」


 手頃な物が無かったから、ちょっと欠けた月みたいになった寒天培地のシャーレをキラから受け取る。冷蔵庫を勝手に漁って勝手に中の物を食う奴でも、食いかけを戻したりはしなかったみたいだ。そもそもこれ食べ物じゃないけど。


「じゃあ一瞬だから良く見ててね?」


 改造したスライムを床に放った僕は、みんなに良く見えるようにシャーレを掲げる。そしてスライムに向けて、アンダースローで軽くシャーレを投擲。放られたシャーレは緩やかな曲線を描いて、スライムの黄色い身体に触れ――


「きゃーっ!?」

「ひえっ……!?」


 ――『ジュッ!』と音を立てて、一瞬で塵も残さず溶けた。よし、改造成功!


「おいおい、一瞬で溶けやがったぞ……」

「高熱……いや、強酸かな? まさかスライムの身体の酸性を強引に引き上げたのかい?」

「うん、その通りだよ。何でも一瞬で溶かす強酸性の身体を持つスライム。名付けてアシッド・スライムって所かな?」


 レーンが見抜いた通り、今回施した改造は酸性の強化。体内に取り込んだものを完全に溶かすのに数時間はかかる所を、表面に触れただけで一瞬で溶解するレベルにまで引き上げてみた。色々防御魔法をかけてる僕は素手で触れても大丈夫だけど、一般人なら触れようとしたら溶岩に手を突っ込むよりも酷いことになるね。

 ちなみに体色を黄色にしたのは特に意味はない。強いて言えば見た目で判別が付きやすいようにかな。何にせよアシッド・スライムの完成だ! もうクソ雑魚魔物なんて言わせないぞ!


「遊びでそんな恐ろしい生物を創り出すとは、生命への冒涜も甚だしい所だね……」

「興味津々な目してる癖に良く言うよ。魔術狂いがよぉ……」


 僕を詰るような発言をするレーンだけど、その怖いくらいに真剣な目はアシッド・スライムに釘付けだ。同じ穴のムジナだってはっきり分かんだね。


「あ~っ!? 指が溶けたぁ~!」

「だから強酸で何でも溶かすって言っただろうが。何で指を突っ込むんだよ、このクソ犬がよぉ?」


 レーンと通じ合ってる事実に喜びを感じてると、アシッド・スライムに指を突っ込んで溶かしてるアホに水を差された。魔法で創った恒星に指を突っ込んだ時といい、何でコイツは嬉々として危険に突っ込んでいくかなぁ……?



少し前に日本語でできるAIイラスト作成アプリを見つけたので、現在このお話のキャラを出力できるか挑戦中。わりと良い感じなので、その内活動報告にでも載せます。AIイラストというだけで忌避感を持つ方もいるはずなので、本文中とかには載せません。でも小説のキャラのイメージを固めるには最良なんだ……。

ちなみに出力すると大体指が六本あったり、複雑骨折してたりします。あとリアを出力しようとすると、側頭部に角じゃなくて翼が生えてたりするのでだいぶ苦戦してます。いや、頭に翼っていうのも悪くは無いんだけどさ……

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