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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第1章:異世界召喚
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衝撃の真実

「……夜風が気持ちいいね。芯から汚れた私の身体が、綺麗に洗い流されていくような清涼感を覚えるよ」


 証拠隠滅を図った後、僕らは王城に続く坂道の途中で寄り添って街並みを眺めてた。

 僕としてはどうでも良かったんだけど、レーンが街並みを眺めたいって言いだしたから仕方ない。一応今夜はデートだから女の子の要望には可能な限り答えないとね?

 基本的に城に近づくにつれて上り坂だったり高いところにあったりするから、途中の道でも街をしっかり見下ろせる。今気づいたけどこの街もよくある外壁に囲われた街だね。まあ魔物もいるし、何より三千年以上戦争してる世界だ。むしろ何も対策してない方がおかしいか。


「この街並みを初めて目にした時、君は何を考えていたんだい? どうせ君のことだ。ただ美しさに感動していたというわけではないんだろう?」

「あ、バレた? 実は美しいから壊したいなあって思ってたよ。この街並みを完膚なきまでに粉砕して焼け野原にしたら楽しそうだなあ、ってね」

「とんでもなく物騒なことを考えていた事実に戦慄するべきか、それとも君が女性の魅力以外の魅力を理解できたことに驚愕を示すべきか、なかなか判断に困る答えだね……」


 隣を見ればレーンは眉を寄せて、酷く複雑そうな表情をしてる。傍目には微かな違いだけど僕には段々表情が分かってきたぞ。


「それで、これからの予定はどうなるのかな。わざわざ私やハニエルを契約で縛り、先ほどの彼女たちと殺しあいまで体験しておいた用心深い君のことだ。今後の予定もある程度は考えているんだろう?」

「まあね。とりあえず帰ってお風呂かな。返り血は魔法で綺麗にしたけど、気分的にお風呂に入りたいよ。あ、背中流してくれると嬉しいな。代わりに僕がお前の身体を洗ってあげるよ?」


 女の子とのお風呂でのイチャイチャは健全な男子の夢だよね。洗い洗われお互いにぶくぶく泡に塗れながら、上気した肌を擦り合わせる……うーん、エロい。


「君は私と誠実な関係を結びたいという割には、かなり濃厚な性的触れ合いを求めてくるね……私が聞いたのは今夜のことではなく、旅の予定だよ。勇者様」

「あ、何だ。そっちか」


 レーンのジト目に暖かい気持ちを覚えながら、僕は旅の予定を思い描く。

 色々と面倒そうだけど、やっぱり魔獣族の国も見回った方が良いと思う。すでに聖人族の国がクソなのは分かり切ってることだし、次は向こうの国がどの程度クソなのか確かめておかなきゃね。

 万一向こうがそれほどクソじゃなかったら、多少は虐殺を手加減してやった方が女神様からの印象も良さそうだし。


「そうだね。とりあえず最短距離で魔獣族の国との国境まで行きたいな。正直勇者らしく振舞うのは苦痛だから、さっさとこの役目から解放されたいし。国境付近で僕の死を偽装した後、今度は魔獣族の国をゆっくり見て回るっていうのが今のところの予定かな?」

「なるほど、自分の目でこの世界を見て確かめるのは良い事だ。最短距離で国境まで行くなら、最低でも二つの街を通ることになるね。君の事だからどうせその間に奴隷を買うんだろう?」

「そうだよ。よく分かってるじゃないか」


 奴隷の存在する異世界なら奴隷を買うのは当たり前だ。

 一応現状でも僕に奴隷は二人いるけど、一人は誠実な関係を結ぶために手は出せないし、もう一人はどう転ぶかが未知数な奴だ。どっちも気軽に手を出すと後々後悔しそうだから、それ専用の奴隷がいると役立つからね。どうせこの国にもそういう奴隷いるんでしょ? 知ってるぞ?


「まあ、何でもいいさ。君はこの世界に邪悪の権化として君臨する器があるからね。不安要素があるとすれば、君は勢いあまって聖人族も魔獣族も滅亡させかねないことかな」

「そんなことするわけないだろ。僕は女神様のためにこの世界を平和にしなきゃいけないんだから。滅亡の一歩手前くらいに加減するよ」

「それは果たして加減なのかい……? いや、この世界に満ちた敵対種族への敵意は根が深い。そこまでしなければお互いに手を取り合う、などという夢物語に等しい理想の世界を実現することはできないか……」


 困惑したかと思えば、納得したような呟きと深いため息が聞こえてくる。

 最初は聖人族のお手本みたいな魔獣族死すべし精神に満ちてたらしいレーンだけど、平和を望むようになってからは色々と辛いものがあったんだろうね。三千年間徹底して敵を傷つけようとしなかったハニエルほどじゃないけど、わりと苦労してそうだ。


「そうでもないんじゃない? だって相手が敵対種族だって気付かなければ敵意も湧かないみたいだし。実際キラは魔獣族だけど、あの筋肉ダルマに敵意向けられてなかったでしょ?」

「……彼女、魔獣族なのかい? 何故こんな場所にいるんだ。正体がバレたら処刑程度では済まないよ? 挙句に勇者の旅に同行? わけが分からないよ?」

「お前に分からないなら僕に分かるわけないじゃん。まあ隠してるみたいだし、しばらくは知らないふりしてあげようよ」


 やっぱり知らなかったみたいで目を丸くしてるレーン。

 僕としてもキラが敵国のど真ん中にいる理由は気になるけど、別に無理して聞き出すほどじゃないかな。僕の最優先目標は世界の平和だし、それを邪魔するでもない限りは犯罪者だろうが何だろうが放置だよ。

 でも聖人族に敵意無い魔獣族だし、できれば真の仲間に加えたいんだよなぁ……うーん……。


「それは構わないが……少々不安だね。もしかすると彼女は勇者を人知れず殺すための暗殺者かもしれないよ? 君は襲われても平気だろうし、私も死んでも転生できるから大局的にはあまり問題はないが……」

「たぶん違うと思うよ。だってアイツ聖人族に敵意無かったし」

「そ、そうなのかい? ますます謎だね。一体何の目的でこの街にいるんだ、彼女は……?」


 予想外の答えだったのか、レーンは難しい顔をして思考に没頭し始める。聖人族に敵意が少しでもあるなら暗殺者とかスパイとか色々考えられるけど、それが皆無だからわかんないんだよなぁ。

 挙句断れるはずの勇者の旅に、僕に興味があるからっていう謎の理由で同行するんだからもう考えるのが面倒になるよ。確かに僕なら勇者の旅に紛れて途中で裏切るとかしてみたいけど、そういう目的でもなさそうだしね。


「んー、それはともかくレーンが死ぬのはちょっと困るな。せっかく好みドンピシャの外見なのに」

「困る理由がたった一人の仲間だからではなく、性欲に直結しているところが君らしいね。何なら誠実な関係とやらをかなぐり捨てて、後悔しない内に私の処女を奪っておくかい?」

「それも素敵な提案だけど、やるべきことはこっちかな――絶対防御アブソリュート・プロテクション


 挑発的な微笑みを浮かべるレーンを一瞬分からせてやりたくなったけど、目指すのは誠実な関係だ。だから今はその気持ちを捻じ伏せて、レーンの身体に僕が自分自身に展開してる防御魔法をかけてあげた。

 これで少なくとも敵からの攻撃でレーンが死ぬことはないでしょ。今のところ唯一の真の仲間だし、勝手に死んだら許さんよ?


「ん? これは……?」

「僕が自分にかけてる結界の魔法だよ。自分以外の奴からの魔法と物理攻撃を無効化するやつ」

「ああ、昼間に言っていたアレか。まさか私にかけてくれるとは思わなかったよ……ところで、一つ聞いても良いかな? この魔法、武装術に関しての防御はどうなっているんだい?」

「えっ? いや、それも含むでしょ。だってそれも魔法の一種じゃ……いや、待てよ。そういえば僕が武装術を知ったのって、この魔法を自分にかけた後だったような……」


 この世界の魔法はイメージが重要。でも僕がこの防御魔法を自分にかけたのは、キラから教えてもらう前日の夜。要するにまだ武装術の存在を知らなかった時だ。

 厳密には武装術も魔法の一種とはいえ、何せ僕自身がほとんど別物だと思っちゃってる。もちろん僕のイメージが僕の魔法に影響を与えるのは当然のことだから、もしかすると――


「……パラライズ」

「はうっ……!?」


 あー!! マジに貫通した!! 

 というか検証したい気持ちは分かるけど、奴隷が主人に攻撃仕掛けるってどうよ!? そもそもその奴隷に契約条項決めさせたってのがまたおかしいね、うん!


「……どうやら魔法の後に武装術を知ったことが良くなかったようだね。異なる名前がついている以上、君が武装術を知る前に張った結界では認識の範囲外だったんだろう。下手をすると一部の魔法も範囲外になっていたかもしれない。よくもまあこんな状態で彼女たちと戦えたものだ。一撃も貰わずに勝てたのは運が良かったとしか言いようがないね」

「マジかぁ……」


 レーンに麻痺の概念を纏った人差し指で突かれてぶっ倒れてた僕は、自分で麻痺を治癒しながら起き上がる。

 確かに防御は念入りに考えておいたほうが良いと思ったし、対策をしていないものもあるって戦いの中で気付いたけど、まさか前提が穴だらけだとは思っても無かった。自分の時間操作と疑似的な無限魔力ってチートを貰っておいて、街から出ることなく死んだら女神様に合わせる顔が無いよ。さすがに僕にだって恥っていう感情はあるもん。


「はぁ。無限の魔力というこの世界の破壊すら容易な力を持っていると言うのに、これでは先が思いやられるね……そろそろ帰ろう。私が防御魔法の内容を考えるから、君が新たに張り直してくれ」

「はーい、ママ……」

「私は君のママではないし、誰かのママになったこともないよ。いずれ君の手でママにされる可能性は高そうだがね」


 何だかんだで面倒見がいい上に寛容なレーンママの後ろをとぼとぼ歩いて、帰路につく。

 もしかしたら強力な力を貰ったことで舞い上がって油断してたのかもしれないなぁ。確かにイキってる自覚はあったし。やっぱりしばらくは普通に一人の人間として旅をして、その中で魔法の技術や対応力を磨いていった方が良さそうだ。凄い面倒だろうけど必要だから仕方ない。

 明日からは勇者としての旅が始まるし、色々大変なこともありそうだ。でも女神様を僕の女にするために頑張るぞ! 女神様もママになるんだよ!!


いい感じの締めですが1章が終わるのは次です

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