三個目の世界
「えーっとぉ、それじゃあ自己紹介をやり直すねー。私はデュアリィ、ナーちゃんの親友の女神だよぉ」
女神様――あっ、僕のポンコツ女神様の事ね? ともかく女神様の涙が引いた後、改めて自己紹介が始まった。
女神様――あ、今度は完全完璧究極の女神様の方ね? 紛らわしいな、今回はポンコツ女神様の事はナーちゃんと呼ぼう。ともかく女神様のお名前はデュアリィって言うらしい。このようなお方がポンコツ女神様のナーちゃんの親友とか、包容力ありすぎん?
「初めまして、デュアリィ様。こんなにもお美しく、それでいてお綺麗な女神様が存在したとは驚きです。握手して頂いてもよろしいでしょうか?」
「いいよー。それから、ナーちゃんと話すみたいな喋り方で良いよー。私はナーちゃんの親友なんだから、同じ扱いをしてくれると嬉しいなぁ?」
「分かった。それじゃあよろしくね、デュアリィ様?」
「うん、よろしくぅ」
許可を出されたから、立ち上がって普通に握手をする。やだ、手の平もスベスベで凄い……これはマジモンの女神様ですわ。
「本当にわらわと扱いが全く違うな、お主……」
などとデュアリィ様と親交を深めてると、ナーちゃんが冷たい目で僕を睨みながら呟いた。
そんな事言われたって、ポンコツ女神様と完璧女神様じゃ扱いが違うのも当然じゃん? 文句を言うならせめて僕とミニス以外の信者を獲得してから言いなよ。
「……まあ、よい。クルスよ、言わずともお主なら察しておるじゃろうが、こやつはわらわと同じ創生の女神の一人じゃ。そしてわらわの親友でもある。あまり失礼な態度を取るでないぞ?」
「うん、分かった。親友うぇーい!」
「うぇーい!」
しっかり理解した僕は、デュアリィ様と両手でハイタッチした。たぶん応えてくれるだろうなって思ってやってみたら、ノリノリで応えてくれたよ。ポンコツ女神様の親友にしては滅茶苦茶ノリが良いねぇ?
ちなみにハイタッチの動きで胸元の大いなる実りがプルンと揺れてました。スケベだなぁ……。
「何も分かっておらんな、お主……デュアリィだからこそ、そんな接し方でも許しているという事を忘れてはならんぞ?」
「分かってるよ。僕だってさすがに人を選ぶしね。聖人族の国の王様とかには終始慇懃無礼に接してたでしょ?」
「慇懃無礼……やはりあくまでも表面上のものだったんじゃな……」
普通に僕は接し方も人も選ぶし、今回も何かイケそうな気がしたからやっただけだ。本来なら目上の人には丁寧に接するからね。もちろん心の中でメタクソにけなしながら。聖人族の国の王様とかが良い例。
「……それで一体何用じゃ、デュアリィ?」
「うん。ナーちゃんが選んだ人がどうしてるのかなーって思って、様子を見に来たんだぁ。この様子だと上手くいってるのかなー?」
「気が早いぞ。まだこやつは国を巡ってようやく拠点を創り、一カ所に落ち着いた所じゃ。本格的な活動は始めておらん」
「あー、そうなんだぁ。来るのがちょっと早かったかなー?」
ゆるふわな喋り方で、デュアリィ様は首を傾げる。いちいち行動があざといなぁ、このお方。ていうか、今の発言……。
「……もしかして、デュアリィ様はナーちゃんの計画を知ってる感じ?」
「お主、さりげなくわらわをその呼び方で……いや、紛らわしい故今は見逃してやろう……」
「うん、知ってるよー。だって私がナーちゃんと一緒に考えた計画だもん」
「おうっ、マジか……」
さすがにこれには僕も驚きを隠せなかった。だって完全完璧な女神様であるデュアリィ様が、世界を破滅に追いやる強大な敵を用意する事で世界平和を実現させよう、なんて計画を考えたって言ってるんだよ? ポンコツ女神様じゃ発想が出たとしても一人じゃ絶対実行に移せないだろうし、実質デュアリィ様主導の計画じゃん。
「驚きじゃろう? 一見ふわふわしていてわらわ以上に世界の管理ができそうに見えないが、こやつは優に百を超える世界を平和に管理しておるからな。世界一つで手いっぱいで、その世界すら平和にできないわらわとは違うんじゃよ。ハハ、ハハハ……」
「あー、泣かないでナーちゃん。よしよし。人には向き不向きがあるんだよぉ?」
燃え尽きたような表情をしたかと思えば、暗い瞳に涙を湛え始めたナーちゃん。そんな泣き虫をデュアリィ様は優しく抱きしめた。スゲェ、あのメロンみたいな胸にナーちゃんの顔がほとんど埋まってやがる……! 僕も埋めて欲しい……!
「ちなみにねー、君が住んでた世界も私の管理してる世界の一つなんだよぉ?」
「ここで明かされる衝撃の事実。マジに僕にとっての女神様だった件」
などと不敬にもデュアリィ様のお胸をガン見してると、予想外の事実が飛んできた。
僕の世界もデュアリィ様の管轄だったかぁ……つまり、僕はデュアリィ様の子供ってわけだね。要するにあの立派なお胸に突撃して存分に甘える資格があるのでは? わりとデュアリィ様なら受け入れてくれそうな気がしないでもないし。
ただ同時にナーちゃんがブチ切れて本気で殴りかかって来そうな気もするから、今回は諦めよう。ロリ処女サキュバスだっていたんだし、爆乳幼女だって探せばいるでしょ、きっと。
「……あっ、そういえば最初にマニュアルがどうとか言ってたよね? アレって何の事?」
煩悩を振り払うためにも、デュアリィ様が最初に口にしてた事を尋ねてみた。
確かポンコツ女神様が世界を創る時、マニュアルを使ったとか何とか言ってたよね? もしかして『駄女神でも分かる! 世界の創り方!』とかいう本でもあったんだろうか。
「あー、アレー? 実はこの子、世界を創る時にいっつもどんな種族を創るかで迷ってるんだぁ。だから今回の世界を創る時は、私が創った事のある種族を纏めたマニュアル本をあげたのー」
「あー、だからナーちゃんにしては妙な特性を持たせると思った……」
大体予想と同じような答えが返ってきて、僕は深く納得した。
普通に考えればこんな甘ちゃんポンコツ女神様が、生きる上で足枷になりそうな特性や体質を我が子に授けるはずがないよね。ベル辺りは足枷どころか最早呪いとか宿業レベルだし。大方デュアリィ様から渡されたマニュアルをそっくりそのまま使用したんじゃなかろうか。やっぱポンコツだなぁ。
「……ていうか、今回の世界? もしかしてナーちゃん、幾つか世界を創って滅ぼしてた経験がおありなんです?」
「っ……!」
僕が何気なくそう尋ねると、デュアリィ様のメロンの間でナーちゃんがびくりと震える。その震えがメロンに伝わってぷるんと揺れて……めっちゃ美味しそう。むしゃぶりつきたい。せめてバストの数値を知りたいなぁ。隙を見て解析できないかな?
それはともかく、ナーちゃんのあの反応……あれは何度か滅ぼしてますね。間違いない。
「そうだよー。滅ぼしたのは二個かなぁ? 一個目の世界は世界規模の戦争で星ごと滅亡して、二個目は人口爆発と食糧危機による飢餓で滅亡だったかなぁ?」
「うーん、救いようが無いね……」
胸の谷間に顔を埋めて震えてるナーちゃんの頭を撫でながら、デュアリィ様が答えてくれた。
二回か。思ったよりは少ないかな? でも二個目の世界はともかく、一個目の世界の戦争で星ごと滅びたって一体何があったんですかね。核戦争か何か?
「ちなみに二個目の世界を創る時、ナーちゃんったら一個目の世界の反省を踏まえて、争いや殺人に走る感情を一切持たない人間を創り上げたんだぁ。そんなことしたらどうなるか、君なら分かるよねー?」
「永遠の停滞、かな。争う感情が無いって事は、競争心も一切無いって事だよね? それじゃあ色んな技術は発展しないだろうし、そんな状態でどんどん人が増えてったら滅亡もやむなしだ。殺人に走る感情も無いって事は、間引くっていう発想も出て来ないだろうし」
どうやらナーちゃんはポンコツでも、同じ轍を踏まないように反省する事はできるみたいだ。一個目の滅びた世界の失敗を踏まえて、二個目の世界を創り出したっぽい。
ただ人間の感情に手を加えたのは明らかな失敗だね。人間って言うのは元来争うように出来てるもんなんだよ。大なり小なり争いは必要不可欠なものなのに、それを排除しちゃったら世界は終わりだ。競争とか順位争いが無い世界で、誰が徒競走とか勉強頑張る?
「ほらー、私の言った通りでしょー? なのにナーちゃんったらお人形さんみたいにお行儀の良い人間を創っちゃうんだからぁ。クルスくんだってこれを理解してるんだよぉ?」
「うっ、ひっく……うええぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇんっ!!」
「あれー!? ナーちゃんまた泣いちゃったぁ!?」
「そりゃあ僕以下だって追い打ちかけられたら当然でしょうよ……」
一応自分の人間性はクソだって自覚してるし、それはナーちゃんも理解してるはず。なのに僕以下だって言われたようなもんだから、そりゃあナーちゃんだってガチ泣きするよ。確かにナーちゃんはポンコツでダメダメで空回りしがちな所のある駄女神だけど、本人は色々と世界のため人々のため頑張ってるんだからね。
まあそれはさておき、大泣きしてるナーちゃんをデュアリィ様があやしてる今がチャンスかな? よし、あのとんでもバストの数値をスリーサイズごと探ってやるぜ! 唸れ、解析!
スリーサイズ:乙女の秘密を探っちゃメッだよぉ?
えぇ……探れなかったばかりか、頭の中にそんなゆるふわな警告が走ったぞ……やはりポンコツ女神様とは違う、正真正銘完全無欠の女神様だな。強い。
唐突に捻じ込まれるポンコツ女神様のやらかしエピソード