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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第8章:夢のマイホーム
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リアとのデート2


「ふんふんふーん♪」


 溢れ出る狂気が完全に鳴りを潜めた後。いつもの純真無垢さが戻ってきたリアは、僕と手をつないだ状態で鼻歌交じりに歩いてた。

 今は特に変な事も口走って無いからか、『大好きなお兄ちゃんとお出かけ中でご機嫌な妹』みたいに思われてる感じで、道行く人からは暖かい目を向けられてるよ。これで僕のツラがヤバかったりすると、途端に犯罪者を見るような目でこっちを見てくるんだろうけどね?


「それでおにーちゃん、今日はどこに連れて行ってくれるの? デートは男の人がリードしてくれるんだよね?」

「チッ、面倒な知識を教え込まれてんな……」


 恋愛感情云々は教えてない癖に、デートは男がリードするものって教えてるリリスに軽い殺意を抱くね。まともなデートをするのは僕だって初めてだっていうのに、そんな僕にリードしろってか。無茶を言うなぁ、全く……。

 でもまあ、リアにリードさせるよりはマシか。屋敷の庭に設置した遊具で元気いっぱい遊ぶ奴にリードさせたらどうなるか分からん。


「仕方ない、じゃあ僕がリードしてあげよう。ひとまず混み始める前にランチでも食べに行こうじゃないか。何が食べたい?」

「ケーキ! ケーキが食べたい!」

「僕、ランチって言ったよね? いや、まあ別に良いんだけどさぁ……」


 嬉しそうにはしゃぐリアに駄目出しすることもできず、やむなく僕らは近くのカフェへと向かった。

 とりあえず心の中で突っ込んでおこう。昼飯にケーキってマジ? 食生活終わってない?  






 適当なカフェへ辿り着いた僕は、とりあえず店内の様子を観察した。

 ふむふむ。開放感のあるオープンカフェだね。外の席には日差しを遮るためのパラソル的なものも刺さってるし、川沿いにあるせいか思ったよりも涼しい感じだ。パッと見た感じ清潔感もあるし、なかなか良い場所じゃないか。


「――いらっしゃいませー。何名様でしょうかー?」

「あ、二名です」

「二名様ですね。空いているお席へどうぞー」

「ありがとうございます。よし、どこに座る?」

「えっとねー……あっ、あそこなんて良いかも! 川の傍で涼しそうだよ!」

「はいはい、はしゃぎすぎて川に落ちないようにね?」


 やっぱりデートしてるせいなのか、リアはどうにもテンションが高い。今も僕の手を握った状態でピョンピョン飛び跳ねてるし、まるで落ち着きの無い子供みたいだ。これははしゃぎすぎて川に落ちる可能性もありそうだね。まあコイツは翼があるから川にドパーンと行ったりはしないと思うけど……。


「さ、お席にどうぞ。お姫様?」

「ありがとう、おにーちゃん! あ、そうだ。デートの相手が椅子を引いてくれたら十ポイントあげて良いって、リリスちゃん言ってたよ」

「まさかのポイント制? 僕はふざけて椅子引いただけなんだけどなぁ……」


 おふざけで椅子を引いてあげたら、何故か十ポイント貰ってしまった。こんなんで点数貰えるとかチョロすぎない?

 何はともあれ、二人で席についてメニューを見る――ていうか何でリアは隣に来てるんですかね? 円形のテーブルで対面になるはずだったのに、僕が座ったらわざわざ立って椅子を寄せてきたよ。椅子を引いてあげた意味はどこに行った?


「ケーキ、ケーキ……うーん、みんな美味しそうで悩むなー……」


 などと疑問に思ってると、リアはメニューを見て難しい顔をしてた。横から覗き込めば、色んな種類の色とりどりなケーキが美味しそうに主張してる。これは悩むのも致し方無しかな。


「僕の分もお前が決めて良いよ。それで分け合えば両方食べられるでしょ?」

「あっ、そっか! おにーちゃん賢い! 五十ポイントあげちゃうよ!」

「人の事言えないけど採点ガバガバすぎない? もう百ポイントまで半分切ったよ?」


 別に僕は昼飯にケーキをガッツリ食う趣味も無いし、ここはリアを優先してあげる事にした。そうしたら五十ポイントも貰っちゃったよ。カフェ入って注文するまでに六十点行くってマジ? これ百点満点?


「すいませーん! 注文おねがいしまーす!」


 しばらく悩んだ末、リアは元気よく手を挙げて店員さんを呼んだ。たぶん店員さんを呼ぶ時はテーブルにあるハンドベルを使うんだと思うんだけどなぁ……。


「――お待たせいたしました。ご注文をどうぞ」

「えっと……このチョコレートケーキと、イチゴのケーキをください!」


 ずびっとメニューを指差しながら注文するリア。見た目ただの幼女だからか、店員さんの顔が僅かに綻んだ。この子見た目ほど純真無垢じゃないって伝えてあげたいなぁ。


「かしこまりました。チョコレートとストロベリーのショートケーキをおひとつずつですね?」

「ううん、一ホールずつ!」

「え……」

「まさかのワンホール丸々」


 ただリアが笑顔で口にした訂正に、店員さんの顔が驚愕に固まった。まあ僕もちょっと驚いたけどね。確かにリアはかなり食う方だよ? でもまさかケーキを二ホールも食うとは思わないだろ。そんな体積がそのロリボディのどこに入るんだよ。甘い物は別腹って言っても限度があるでしょ。


「………………」

「……ワンホールずつで。それから僕にはアップルティーと、このフルーツサンドをひとつお願いします」


 困惑しながら僕に視線を向けてきた店員さんに頷き、追加のオーダーをする。

 個人的にはもっと肉々しいものが食べたいけど、ここカフェだからね。さすがにそんなものは置いてないんだわ。あー、唐揚げとかステーキ食べたい。


「か、かしこまりました。それでは少々お待ちください……」


 リアの注文のせいでちょっと引き攣った笑みを浮かべながらも、店員さんは礼儀正しさを忘れずに店の方へと戻って行った。まあこんな幼女がケーキ二ホール食うって言ってるんだもんね。困惑するのも仕方ないよ。


「……足りなかったらまた注文してもいーい?」

「ああ、うん。いいよ。どうせ僕は少ししか食わないし……」


 しかも当人は二ホールでも物足りなさそうな顔して、そんな恐ろしい事を聞いてくる。

 凄いよね? たぶん僕なら一ホールの四分の一くらいでダウンすると思う。小食ってわけじゃなく、純粋に甘い物がそんなに好きじゃないんだよ。まあ女の子の肌とかの甘さは幾らでも味わえるんだが?


「しかしお前、見た目に反して本当によく食うよね。何か理由でもあるの?」

「理由? 特に無いよ? あ、故郷では全然美味しい物を食べられなかったから、その分今たくさん食べてるのかも?」

「……何かあんまり聞いちゃいけない気がするけど、具体的に何を食べてたの?」


 何か若干闇が零れたけど、どうしても気になるから聞いてみた。そしたらリアは記憶を思い出すように、可愛らしくうんうん唸り始めた。


「えっとねー、自分で食べたものだとー……やっぱり木の実が一番多かったかなー? あとは時々生のお魚とか生のお肉とか。冬はそこら辺のお花とか草とかキノコとか、それくらいかなー?」

「ああ、うん。はい……」


 そうしてリアが口にしたレパートリーは、故郷での凄惨な生活の一端が伺えるものだった。あまりにもアレだったから僕も頷く事しか出来なかったよ。

 生の魚とか肉とか、花とか草とかキノコとか、何で幼女が野生動物みたいな食生活してるわけ? しかもさっき『自分で食べたもの』って言ったよね? となると誰かに何かを食わせられた経験があるってわけで……いや、深く考えるのはやめよう。たぶん聞いたら僕にもダメージが来るぞ。大の虫嫌いの勘がそう言ってる。


「……ここお持ち帰りもできるみたいだし、持ち帰り用のケーキも選んで良いよ?」

「本当!? ありがとう、おにーちゃん! わーっ、何にしようかなー……!」


 とりあえず僕にできたのはリアの頭を撫でて、お持ち帰り用のケーキを選ばせる事くらいだった。リアは嬉しそうに無垢な笑みを零しながら、もう一回メニューに目を通し始める。もっとケーキを味わえる喜びからか、矢印みたいな尻尾もご機嫌に揺れてる。

 本当によくコイツはこの純真さを保ったまま狂気を身に着けたよなぁ。尊敬するよ、マジで……。


「――いただきまーす!」

「はい、どうぞ。好きなように食え。好きなだけ……」


 しばらくして注文の品が運ばれてくると、リアは瞳を輝かせて喜んだかと思えば、大きな声で元気よく食前の挨拶を口にした。最早僕にできるのは自由に食わせることだけだったよ。例えそれが幼女には明らかにデカすぎるケーキ二ホールでもね。もし残ったなら僕が頑張って食べよう……。


「んーっ!! 甘くて美味しいー!」

「こらこら、好きなように食えとは言ったけどもう少し上品に食べろよ。クリームが滅茶苦茶顔についてるぞ……」


 クッソ甘そうなケーキをもりもりと平らげてくリアにちょっと引き気味になりながらも、僕はその顔を汚すクリームを拭ってやろうとハンカチを取り出し――かけて、ふと思った。

 デートで椅子を引いたり、食べ物を分け合う程度で加点するガバガバポイント制を教え込んだリリスだ。たぶんデート中の他の行動も加点対象になるんだろうし、これはもしかしてポイントを稼ぐチャンスなのでは? いや、点を稼いだからって何があるわけでもないけどさ。


「んー? どうしたの、おにーちゃ――ひゃんっ!?」


 なので恐らく加点になるであろう行動、ハンカチを使わず舌でぺろりと舐めとるを実行した。何の警戒もしてなかったみたいで、頬を舐めたらリアは驚きに飛び上がってたよ。顔も一瞬で沸騰したみたいに真っ赤になっていらっしゃる。

 これは加点対象だったか? それとも、減点……?


「………………」

「……ぷ、プラス、五十点……」

「もう百点超えてんだよなぁ。採点がガバガバすぎる……」


 どうやら加点対象だったみたいで、僕の点数はカフェに行っただけで百点を突破した。百点取ったからって何がどうするってわけじゃないけど、そこはかとなく嬉しい自分がいる……これ最終的に何点になるか興味あるな? ちょっと頑張ってみるか?

 しかし幼女の頬っぺたを舐めたせいか、他のお客がひそひそ話をしながらこっちを見てる……あんまりやりすぎると衛兵呼ばれそうだから控えめにしよう……。






⋇相手がリアなので比較的デートっぽくなっています。相手がキラとかだったら絶対まともなデートにはなりません

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