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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第8章:夢のマイホーム
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マイホーム案内1

⋇ここからしばらくマイホームの案内が続きます







「さあ、到着! ここが僕らのマイホームだぞ!」


 魔王のお城で大量殺戮兵器を見つけたり、名状しがたい悍ましい姿と声を持つ化け物を懐柔したりした数日後。ようやく掃除や家具の運び入れも終わったから、僕は仲間たちにマイホームを見せびらかす事にした。

 貴族街っていうか、高級住宅地みたいなデカい屋敷ばかりが立ち並ぶその一角に、僕が購入した土地と物件はある。さすがにゾンビと頭のおかしな仕掛けがたくさん出そうな洋館ほどじゃないけど、なかなか古めかしい面構えで雰囲気があるね。


「わああぁぁぁっ……!」

「おおぉぉぉ~っ!」


 まだ正門の鉄柵の間から屋敷を遠景に眺めてるだけなのに、感極まってるのが約二名。リアとトゥーラは鉄柵を掴んで瞳を輝かせて見入ってるよ。純真な反応してるなぁ?


「デケェなぁ。どっかの田舎の犬小屋の何十倍あんだろうなぁ?」

「そうね。家すら無いあんたには犬小屋すら大きいしね」

「あ?」

「は?」


 そして猫とウサギは平常運転。故郷を馬鹿にされたミニスと、故郷を追放された家無しの野良猫と揶揄されたキラが睨み合う。取っ組み合いが始まればミニスが一方的にやられるだけなのに、良く喧嘩売れるよなぁ……。


「はいはい、そこは喧嘩しない。あ、ちなみに門はここに手をかざすと開くようになってるからね。放っといても閉まるけど、閉める時はこっち」

「わーっ、すごーい!」

「ハハハ、開閉スイッチで遊んじゃいけないぞー?」


 門の開閉スイッチを連打して開け閉めしまくるリアに対して、やんわりと注意する。まあスイッチがあったら押したくなるのは分かるよ。僕も押してみたいスイッチはあるしね。自爆スイッチとか、ミサイル発射のスイッチとか。


「――わぶっ、ぐええぇっ!?」

「わー!? ミニスちゃんが挟まれたー!」

「はい、門が閉まってる所に人を突き飛ばさないでください。開閉装置の故障の原因になります」


 そうこうしてると、ガラガラと左右に開閉を繰り返す鉄柵の門の間にミニスが身体を挟まれた。キラに突き飛ばされて意図的に挟まれたっていうのが見なくても分かるね。

 もちろんミニスは解放されるなり即座にキラに蹴りかかって行ったよ。まだ正門で敷地に入ってすらいないのに、早速喧嘩をおっぱじめてる……。






 兎と猫の一方的な喧嘩が終わるまで数分。早速正門が血で汚れたけど、まあ特に気にせず案内を続けることにした。どうせこの屋敷はもっと血生臭い逸話があるし、正門にかかった血なんてオシャレみたいなもんでしょ?


「はい、次は庭ね。見ての通り花壇はあるけど肝心の植物は埋めてないから、ガーデニングしたい人は好きに使って良いよ。まあそんな物好きはいないだろうけどね……」

「じゃあ何で花壇なんて作ってんのよ……」

「いや、これに関しては備え付けだったし……」


 さっきボコボコにされてた割には、極めて冷静にツッコミを入れてくるミニス。もうキラとのアレはスキンシップみたいなものなのかな?

 ともかく正門から玄関までは大体二百メートルくらいは距離があるかな? 僕らが歩いてる玄関までの道はしっかり舗装されてて、それ以外の場所は芝生と何も植えられてない花壇でとても広々としてるよ。さすがに裸の花壇とかあんまり見栄えも良くないし、誰もガーデニングをしないのなら適当に何か埋めておくべきかもしれないな……あ、花とか植物の話ね? 死体を埋めたりはしないよ? 埋めたりせずとも空間収納っていう最高の破棄場があるし……。


「ご主人様、ご主人様! アレ! アレがリアがお願いしたのだよね!?」


 どんなお花を植えるか考えてると、リアが興奮した様子でグイグイと僕の服を引っ張ってくる。その輝く瞳の先にあるのは、屋敷の近くにある庭。そこに幾つか設置された、公園にありそうな遊具の数々。ブランコとかシーソーとか、ジャングルジムとか滑り台とか、とにかく色々だね。

 これがリアが希望した設備……っていうか、玩具の類かな? 何か公園にある遊具が欲しいって言ってたから、お金にモノを言わせて設置して貰ったんだ。牢屋と拷問部屋に比べれば微笑ましい要求で涙が出てくるよ……。


「そうだよ。意外と普通のお願いでびっくりだったよ。何なら今ちょっと遊んでみたら?」

「わーい、遊ぶー! トゥーちゃん押してー!」

「ハハハ、しょうがないな~? とりゃ~っ!」

「きゃーっ!」


 ブランコに乗ったリアの背をトゥーラが力強く押して、リアが嬉しそうな悲鳴を上げる。

 何だろう。凄い微笑ましい光景のはずなのに違和感が凄い……僕がおかしいんだろうか?


「……なあ、これ何だ?」


 そんなキラの声に顔を向けると、デフォルメされた動物に乗る感じの遊具がグヨグヨ揺れてるのが目に入る。


「さぁ……正直僕もそれは正式名称一切分からないんだよ。ただ僕の知ってる公園では結構見かけるから創っといた」

「……じゃあこれは何よ?」


 今度はミニスが聞いてくるからそっちを向くと、そこには地面に半分だけ埋まったデカいタイヤ。当然これも僕が設置したものなんだけど……。


「さぁ……こっちで言う馬車の車輪に当たるタイヤってものなのは分かるんだけど、何で地面に半分埋まってるのかは分かんないんだよね……」


 あのグヨグヨ揺れる奴も地面に埋まったタイヤも何となく設置したけど、正式名称は良く分からない。タイヤに至っては遊び方も良く分からない。何故タイヤ? 何故地面に埋める? 一種の謎だよね、これ……。


「――ご主人様、ありがとー! リアは大満足だよ!」


 しばらく遊具で遊んで満足したのか、リアが興奮冷めやらぬ顔で僕にお礼を口にした。

 素直で本当に可愛いねぇ? というか実年齢はニ十歳のはずなのに遊具で遊んで大興奮とか、やっぱり肉体だけじゃなく精神も成長してないって事なんだろうなぁ。あるいはまともな子供時代を過ごせなかった分を今取り戻そうとしてるのか……。


「それは良かった。この遊具はお前のためのだから、いつでも好きなように好きなだけ遊んでいいよ。他に何か欲しい遊具がある時は言ってくれれば、少し時間をかけて設置するし」

「わーい! ご主人様、だーい好き!」

「ヌッ!」


 ぎゅっと抱き着いてくるリアの純真さに、思わず変な声が零れる。まあ本当に純真かと聞かれるとアレなんだけど、この可愛らしさの前では些細な問題だよね?


「私も主が大好きだ~!」

「あ、そっすか」

「酷い~! 何故私の時だけそんな淡白なんだい~!?」

「そんなの当たり前なんだよなぁ……って、分かったからサイレント頭突きをするのは止めろぉ!」


 ぎゅっと抱き着いてきて喚くトゥーラと、無言で抱き着いてきて頭突きをかましてくるキラをどうにかこうにか引き剥がす。本当にコイツらはよぉ……。


「さて、気を取り直して……ここが玄関だよ。鍵は上下に二ヵ所。あ、もう皆に渡しておくね。無くした時は……まあ、言ってくれればまた作るし。そこまで気にしなくて良いよ」


 そう言って、全員に玄関の鍵を渡しておく。

 鍵を失くしたって、魔法で創れば良いだけの話だしね。問題なんて何も無い。失くした鍵が泥棒に使われたりしたら――むしろ望むところだね。その時は不法侵入と窃盗未遂って事で、僕の魔法の実験台になって貰おう。


「……なあ、アレなんだ?」

「ん? アレ?」


 などと僕が侵入者に対して使う魔法を頭の中でリストアップしてると、キラが軒下の外に置いてあるモノを指差した。

 そこにあるのは可愛いワンちゃんが入ってそうな大きめの犬小屋。でも中にはワンちゃんはいないし、今のところ飼う予定も無い。だってそもそもあの犬小屋、ワンちゃん用じゃないし。


「ああ、忘れてた。アレはトゥーラがセルフ放置プレイをする時に必要な犬小屋だから、特に気にしないで良いよ?」


 そう、この犬小屋はトゥーラ用の犬小屋。ちゃんと入り口の上に『とるとぅーら』ってネームプレートも貼り付けてある。それに設置場所は軒下じゃないから屋根が無い。トゥーラの身体の大きさを考えても頭はどうしても犬小屋の外に出るから、雨風凌ぐことはできそうにないね。犬獣人が見たらブチ切れそう……。


「えぇ……さすがにそれはちょっと酷すぎない?」

「いや、これ僕が趣味で作ったわけじゃなくてトゥーラの希望だよ?」

「そうだよ~? これで主が忙しくて構ってくれない時は、ここにいれば自給自足ができるというわけだよ~。フフフ~」

「えぇ……」


 引き気味だったミニスがトゥーラの言葉に完全にドン引きする。

 そう、何を隠そうこの犬小屋はトゥーラの希望なんだ。セルフ放置プレイを楽しめるようにとか何とか。僕としてはこんなもんとこんな変態を玄関に置くのは嫌だったんだけど、本人がどうしてもって言うからさ……。


「……はい。ド変態は放っといて中に入るよー」

「ああっ、早速放置プレイの始まりかい~!? さすがは主~!」


 ちょっと付き合ってられないから、放っておいてさっさと屋敷の中に入る。

 いちいち鍵を使って二ヵ所も開けるのは面倒だから、魔法でささっと解錠。ていうかこの開け方は結構誰でもできそうだな。鍵よりも警備システムを充実させた方が無難かな? 僕の仲間以外の人物が玄関の鍵を開けたら、強酸性の液体をぶっかける植物を花壇に植えるとか良さそう。


「ここがエントランス。本当はシャンデリアが付いてたけど、趣味じゃないから撤去させたよ。落ちて来た時の事考えると怖いしね」

「何でそう変な所で一般的な感性があるわけ……?」

「わー! 広ーい!」


 玄関を開けて中に入った僕らを最初に迎えたのは、二階へと続く広々とした階段が目立つエントランス。奥側、階段の両隣に扉が二つずつあって、更に左右の壁にも扉がそれぞれ二つずつ。

 掃除と最低限の家具運び入れが終わっただけだから、それ以外は剥き出しの床や調度品が一つも無い寂しいエントランスだ。絨毯くらいは敷いておくべきかな?


「左に行くと応接間とか客間、右に行くと食堂とか厨房があるよ。階段脇の奥に行くと洗面所とかお風呂とかの水場関係だね。二階は普通に僕らのお部屋とかだよ」


 中庭とかは無いけど、それでもかなり広めのお屋敷だ。二階のお部屋だけでも十部屋近くあるし、この広さは使用人を雇ったりするのを想定してるんだろうね。場合によってはもう少し増えるけど、ここに住む人数は二桁を越えたりはしないはずだし。


「ん~、実際に見てみると素晴らしい屋敷だね~。だが主~、これだけ広い屋敷なら使用人を雇う必要があるんじゃないかな~?」

「だよねぇ。実は僕もそれは思った。だからとりあえず一人だけ雇っておいたんだ。というわけで、皆で食堂に行こう。今ちょうどご飯を作ってくれてるから」

「さすが主~! 抜かりが無いね~?」


 でも賢い僕はすでに使用人は手配済み。まあたった一人しかいないから、必要なお仕事は一人に押し付けるつもりだけどな! 

 でも、そうだね。ブラック企業扱いされるのは心外だし、自分でできる事は自分でやろう。あとは使用人としてアロガンザで奴隷を買ってくるのも良いかもしれない。あそこの奴隷は調教の必要も無く従順だし。いやまあ、反抗的なメイドとかも大好きなんですがね?


「やった! ごはーん!」

「ちょうど腹減ってたからいいタイミングだな。マズかったら許さねぇけど」


 腹ペコの奴らを引き連れて、僕は食堂への扉を開ける。

 エントランスに負けず劣らず、食堂もかなり殺風景だ。窓から明るい日差しが差し込んでて清潔感はあるし、広々とした長いテーブルも設置済み。

 ただしそれだけ。テーブルの上にありそうな燭台とか果物詰め込んだ籠とかも無いし、部屋の隅に置いてそうな高そうな壺とかも無い。やっぱり必要最低限の家具とかだけじゃ足りなかったか。これは後で色々買い足さないといけないな。


「――おお、良い所に来たな! ちょうど今昼食が出来上がった所だぞ!」

「……あ?」

「んんー?」

「おや~?」

「………………」


 そんな風に頭を悩ませる僕を、キッチンから来たメイドが出迎える。でもそのメイドの姿に仲間たちは首を傾げてたよ。ミニスだけは最初から知ってたから無言でいるけど。

 でもそれも仕方ないね。だって現れたメイドは黒髪ウサミミの幼女姿で、ミニスの2Pキャラにしか見えないんだもん。


「というわけで紹介するね。こちら僕の屋敷のメイド兼、魔将のベルフェゴールことベルさんです」

「うむ、私こそが魔将ベルフェゴール・カイツールだ! よろしくな!」


 フリフリの可愛らしいメイド服を着た状態で偉そうに腕を組み、元気に挨拶をするベルフェゴールことベル。

 そう、せっかくだから魔将をメイドとして引き抜いちゃったんだ。対価はもちろん、ずっと可愛い姿と声でいられる事。僕はメイドが得られて嬉しいし、巨大魔法陣にこれ以上魔力を充填されなくて助かる。ベルはずっと可愛い声と姿のままでいられて幸せ。ウィンウィンの取引ってやつだね。

 まあ魔獣族は魔将の一人を引き抜かれた挙句、魔法陣に魔力を注いでくれた奴がいなくなるからダメージかなりデカいだろうけどね。でもそんなのは引き抜かれるような待遇なのが悪いから知らん。

 





⋇現状の魔将、大天使一覧


●大天使

 天然お花畑緑髪大天使ハニエル(廃人)

 クール系僕っ子ショタ大天使ラツィエル(記憶処理済み)

 朗らかエロお姉さんザドキエル

 ????(未登場)


●魔将

 根暗竜人貧乳魔将ルキフグス

 合法ロリサキュバス女王リリス

 死体愛好真祖吸血鬼バール(真の仲間)

 冒涜生物ベルフェゴール(メイドに引き抜き)


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