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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第7章:獣魔最強決定戦
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閑話:冒険者のお仕事

⋇閑話。時期は大会開始の二日前

⋇読まなくても支障はありません

⋇暴力描写あり

⋇残酷描写あり






「さて、闘技大会まで残り二日。せっかくだから、今日は皆で冒険者のお仕事をしてみたいと思いまーす」

「わーっ! パチパチパチ!」

「おお~! 主の初めてのお仕事というわけだね~!」


 僕の発表に、無意味に拍手と歓声を上げてくれるリアとトゥーラ。

 時は闘技大会の開催二日前。街の方もかなり大会ムード一色で、バルーンで宣伝してたり大会に乗じた出店とかが賑わってる今日この頃。ふと思い立って、冒険者のお仕事をしてみることにした。だってせっかく異世界ファンタジーお約束の冒険者になったのに、肝心の仕事をしてないんだもん。どっかの無理やり仲間になってきたクソ犬のせいでよぉ?

 まあ冒険者のお仕事をするにしても一人じゃ寂しいから、こうして宿の部屋に仲間たちを集めた上で発表したんだ。ちなみに強制招集なので拒否権は無い。


「別に楽しくはねぇぞ? それでもやんのか?」

「私は大会に向けて特訓してたいんだけど……」


 渋ってて強制招集が必要だった二人、キラとミニスが嫌そうな顔をする。

 コイツらは特訓とか修行に精を出してて、無理やり引っ張ってこないと駄目そうだったんだ。どいつもコイツもストイックだなぁ? もっと気楽に生きよう?


「やるの。せっかく冒険者になったんだから、少しはお仕事するのが礼儀だと思うしね。それにずっと特訓してたら効率や集中力が落ちるよ? 適度に休憩するのが一番なんだからね。というわけで、皆で冒険者ギルドに行くぞー!」

「おーっ!!」

「お~っ!!」


 渋った二人とは違って、リアとトゥーラは元気いっぱいに掛け声を上げてくれた。

 うんうん。やっぱりこの二人は従順だし素直だから本当に助かるよ。これでまともだったら言う事ないんですがねぇ……?


「それでご主人様、どんなお仕事をする予定なの?」

「んー、そうだね。とりあえず依頼を実際に見てみないと決められないかな。ただあんまり時間かかったり面倒くさかったりするのは論外だね」

「ふむふむ。となると、護衛や採集の依頼は無しということだね~。だとすると、魔物の討伐依頼が一番かな~?」

「まあその辺が妥当かな? とりあえずギルドに行って、色々依頼を見てみようか」


 そんなわけで、反対意見は捻じ伏せて皆で冒険者のお仕事をする事にした。まずはこの街の冒険者ギルドに行ってみよう。

 よーし、前の街の冒険者ギルドじゃお約束がいまいち上手く達成できなかったし、今回こそは荒くれ者に絡まれる展開を期待しよう! それに絡んできた奴をうっかり殺しちゃっても、こっちにはギルマスがいるからな! 大概の事は揉み消せるはずだ!






「――はーい、お邪魔しまーす」


 善は急げという事で、僕らは早速冒険者ギルドに向かった。

 え? お前は善じゃない? ハハハ、善や悪なんて見方によって変わる曖昧なものなんだよなぁ。極論悪と断じてくる者を全て排除すれば、僕は間違いなく善なんだよ。そもそも世界平和のために邁進するこの僕ほど善に相応しい存在ってある?


「ようこそ! 冒険者ギルド、アロガン――ええっ!?」


 冒険者ギルドに足を踏み入れた瞬間、営業スマイルを浮かべてた受付嬢が驚愕に顔を歪めたのが見て取れた。

 まあそれも仕方ないか。今回も今回で、荒くれ者に絡まれるために色々やってるからね。


「あぁ?」

「何だ、アイツ……喧嘩売ってんのか?」


 その甲斐もあってか、併設されてたバーで酒を飲んでた荒くれ者たちが不快そうな声を上げた。

 ていうかここにもバーがあるのか。皆そんなにお酒好きなの? お酒よりも女の子と遊んでた方が楽し――あっ、そうか。そういう子がいないからバーでお酒飲んでるのか。申し訳ない。


「あのさ、これちょっとやりすぎじゃない……? ていうか、あんた絶対周りに喧嘩売ってるわよね?」

「んー、何の事かな? 僕はただ、仲間たちと仲良く一緒にギルドに入っただけだよ?」


 荒くれ者たちに負けず劣らず不快気なミニスの声が、僕の腕の中(・・・)から上がる。

 そう、今ミニスは僕の腕の中にいるんだ。具体的にはお姫様抱っこしてる。それと僕の右腕にはキラがべったりくっついてきてるし、左腕にはトゥーラがべったり。そして背中にはおぶさるようにリアが抱き着いてきてる。

 要するに両手に花どころか、花に四方を囲まれてる状態だ。可愛らしい女の子四人にべったりくっつかれた優男が、見せつけるように堂々とギルドに入ってきた。そりゃあ受付嬢も営業スマイルを忘れて苦い顔をするし、女の子にモテない荒くれ者共もキレるってもんだね。作戦大成功!


「どの口でほざいてんのよ、コイツ……もう釣れたんだから良いでしょ? 降ろしてくれない?」

「しょうがないなぁ。ほら、お前らも離れて離れて」

「はーい!」


 三人組の荒くれ者共がこっちにズンズンと歩いてきてるのが見えるから、もう挑発行為は必要ない。そんなわけで不機嫌なミニスを降ろしつつ促すと、素直な返事をしつつ背中からリアも降りた。


「え~? まだくっついていたいんだが~……」

「………………」


 ただ両腕の犬猫だけは離れてくれなかった。むしろ更にぎゅっと抱き着いてくるし、スリスリしてくるしで完全にフリーダムだよ。近付いてくる荒くれ者共が額に青筋を浮かべていらっしゃる……。


「よぉ、兄ちゃん。随分とかわい子ちゃんを連れてるじゃねぇか。俺たちにも分けてくれよ?」

「うわっ、かわい子ちゃんだって。ふっる。石器時代かな?」

「あぁ!? 何だと、テメェ!?」


 一番に話しかけてきた獣人の男をどうやって煽ろうか考えてたら、もの凄い古い言葉が聞こえて反射的に変な事を口走ってた。

 ただ相手の沸点が相当に低かったのか、この発言だけでもうキレちゃったみたい。僕の胸倉を掴み上げてきたよ。僕に抱き着いてるキラとトゥーラごとね。まあ曲がりなりにも獣人だけあって、力だけは無駄にあるみたい。


「あ、すみません。あなたが化石みたいな言葉を使うからつい反射的に……」

「こ、この野郎っ! 俺が古臭い人間だってか! ふざけやがって!」


 ちゃんと謝罪したのに気に入らなかったのか、獣人の男は空いてる方の手で拳を握りしめ、それを僕の顔面目掛けて叩き込んできた。いきなり手を出すとか荒っぽいなぁ?

 さて、目撃者はいっぱいいるから先に手を出してきたのは向こうだって証明できるな。無駄に食らってやる理由も無いし、遠慮なく正当防衛させてもらおう。

 そんなわけで、僕は顔面に叩き込まれた拳から伝わってくる衝撃を衝撃支配インパクト・コントロールで完全制御、おまけに倍増させて男の拳に返してやった。胸倉掴み上げられて足が地面に着いてないから床に流せないし、しょうがないよね?


「――ギャアアアァアアァァァァアァァッ!?」


 その結果、男の腕は拳から二の腕に至るまでが内側から弾け飛んだ。男は汚い悲鳴を上げながら、周囲に血と肉片を飛び散らせて悲鳴を上げる。


「うああぁっ!? 何だこりゃあ!?」

「うえっ、きったねぇ! 口に入ったぞチクショウ!」


 もちろん僕はそんな汚い物を浴びるのは嫌だから、ちゃんと弾ける方向は調整しておいたよ。まあそのせいで男と一緒に寄ってきた荒くれ者仲間たちが大半を浴びることになってたけど、これも自業自得ってやつだ。


「うあー……アレは痛いわよ……」

「ハハハ、自業自得だね~」


 似たような目にあったことがあるミニスが、裂けてグチャグチャになった右腕を押さえて悶絶してる男に同情染みた呟きを零す。

 でもコイツの場合、もっと痛い目を見た事があるからなぁ。痛覚十倍で腕を爆散させても根性で耐えてたし。それに比べてただ腕が爆散しただけなのに床で悶絶してるこの男、弱すぎん?


「お、おいおい、何だよ今の。何やったか分かったか?」

「いえ、全然……明らかに無防備に受けてたわよね……」


 他の傍観してた冒険者たちは一連の出来事が理解できなかったみたいで、ざわざわと呟きを交わしてる。なお、誰一人として倒れた男は気にしてない模様。もしかしていつも問題行動を起こす感じの奴だったりしたのかな?


「やれやれ、謝ったのにいきなり殴りかかって来るなんて暴力的だなぁ? そんなことするからきっとバチが当たったんだね。大丈夫?」

「………………」


 とりあえず倒れてる男にうっすらとした優しさを投げかけてみせるけど、言葉は返ってこなかった。おいおい、せっかく人が優しさに溢れた対応をしてやったっていうのに、何だよその態度は。こうなったらもう片方の腕もいっとく?

 ていうか……あれ? 何かビクビクしてるな。これ、もしかして……。


「……あ、気絶してる。腕が弾けた痛みに耐えられなかったみたいだね」

「え? あ、本当だ。厳つい見た目してるのに、私より痛みに弱いのね……」


 足でひっくり返してみると、男は泡を吹いて白目を剥いて失神してた。そりゃあ言葉が返ってくるわけもないか。

 なお、ミニスはそんな情けない冒険者の男の姿に失望にも似た呟きを零してたよ。ていうかクソザコ冒険者のメンタルと、守るべき家族がいる女の子のメンタルの強さを比べるのが間違ってるぞ。そもそも出産っていう拷問紛いの苦痛を耐えなきゃいけない女の子と、そういうのが無い野郎じゃどっちが痛みに強いかなんて考えるまでも無いし。


「――おい、さっきの悲鳴は何だ!? 何かあったのか!?」


 とりあえず通行の邪魔になりそうだから失神した男を横に蹴飛ばしてると、二階から新たな獣人の野郎が現れた。

 あ、ちなみに倒れた野郎と一緒に寄ってきた二人はさっさと退散してたよ。トイレで返り血でも落としてるんじゃない? 変な病気を持ってる可能性もありそうだし。


「なっ……!? こ、これは……!?」


 その獣人――耳から見て犬獣人かな? ともかくそいつはギルド内の惨状を見て顔色を変えた。まあ入り口から室内にかけて血飛沫と肉片で汚れてるし、片腕がぐしゃぐしゃになった野郎がぶっ倒れて泡吹いてビクビクしてるし、そんな反応も仕方ないよね。


「ぎ、ギルマス! 助けてください! 何か、何か変な人たちがー!」


 絶句して凍り付く犬獣人の男に対して、カウンターの向こうに隠れてた受付嬢が助けを求める。コイツがギルマスなのか。ていうか何かこの状況、見覚えあるような気がしますね……。

 しかし、ちょっと異世界でのお約束と冒険者のお仕事をしに来ただけなのに、また面倒な事態になりそうだなぁ。これはまたギルマスをボコる展開になったりする……?





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