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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第7章:獣魔最強決定戦
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ネクロフィリア




 悲報。貴重なまとも枠だと思ってた真祖の吸血鬼はネクロフィリアでした……。

 マジかよ。何でまたイロモノなの? どうしてもまともな人は仲間にならないわけ? これはもうミニスを手放すわけにはいかないな。類は友を呼ぶって言うなら、ミニスがまともな仲間を呼び寄せてくれるかもしれないし。

 そういえばネクロフィリアって一口に言っても、確か色々と種類があったよね。死体に興奮するとかだけじゃなく、他人が死ぬ光景に興奮するとか、死について考えると興奮するとか色々と――って、アレ? よく考えたら僕も可愛い女の子が死ぬ光景は最高に興奮するな? もしかして僕もネクロフィリア? バールは僕が引き寄せた類友なの?


「ま、まあ、趣味は人それぞれだよね? 僕は泣き叫ぶ女の子が好きだし、コイツは人を殺して目玉を抉り取るのが好きだし、コイツに至っては死ぬ寸前までいくハードなSMが大好きだし。死体が大好きでも別に良いと思うし、僕は軽蔑しないよ?」


 氷の棺に閉じ込められた女の子を愛でるバールに対し、とりあえずおおらかな答えを返しておく。

 ちょっと自分が類友だってことに気が付いてしまったから、軽蔑するわけにもいかないよね。そもそも僕だって死体ならいっぱい保管してるし、何を言っても高速回転するブーメランになる……。


「我が言うのも何だが、貴様らもなかなか狂った性癖をしているな……そしてそこの猫人、察するに貴様が以前巷を騒がせたチャーマーか?」

「やめろその名前。あたしはそれ嫌いだ」


 チャーマーとかいうクッサイ呼称で呼ばれたせいか、キラが一気に不機嫌になる。ブラインドネスとどっちがマシ?


「そうだよ。でも別にそれが分かったってどうもしないでしょ? 僕たちは仲間なんだし」

「当然だ。それに、むしろ貴様のおかげで我の愛しい者たちも増えたのだからな。むしろ貴様には感謝したいほどだ。礼を言う」

「コイツ、さては死体を自分のコレクションに横流ししてやがるな……」


 ネクロフィリアで死体の横流しも平然と行う異常者。本当に誰だよ、コイツをまともかもとか思ってた馬鹿は。僕だよ、チクショウ。僕の馬鹿。


「まあお前がネクロフィリアって事は分かったけどさ、僕に望むことって何? 僕にも女の子の死体を幾つか横流しして欲しいってこと?」

「うむ。だが貴様の好みから外れる女性で構わない。我はそこまで見目には拘らんからな」


 お、これは僕にとっても嬉しい頼みだ。何せ僕の好みから外れる女の子で良いって事は、上手く住み分けができるってことだからね。それに僕は生者が大好き、バールは死者が大好き。そういう点でも上手く住み分けがでてきる。

 アレ? もしかしてコイツほど相応しい男の仲間はいないのでは……?


「そしてもう一つ、貴様に頼みたいことがある」

「はいはい、何かなブラザー?」

「ブラザー……」


 沸いて出てきた親近感をそのまま口にすると、バールが若干微妙な顔をする。

 ただ別に不快って感じの表情じゃないね。どっちかというとくすぐったそうな表情だ。もしや兄弟が欲しかったのかな? 僕は妹が欲しいです。できれば義理の。


「……死体と化した女性は確かに美しい。だが、動かないのなら極論人形を愛でるのとそう変わらん。貴様の魔法で死体を死体のまま生き返らせ、互いに愛し合うことすらできる死体にすることはできないだろうか? 個性を排した冷めた口調で喋り、感情というものを徹底的に削ぎ落したような理想の女性を作れないか?」

「クッソ難しいこと言うね、お前。矛盾の極みだって分かってる?」


 気を取り直すように首を振ってからバールが語ったのは、矛盾の極みとも取れる傲慢極まる願いだった。さすがにこれには僕も苦い顔をするしかなかったよ。

 だって考えてもみてよ? 死体を生き返らせるんじゃなく、死体を死体のまま生き返らせろって言ってるんだよ? この時点でもう矛盾しまくってるよ。

 それと死体を死体のまま生き返らせるって条件で、ゾンビを想像しなかった人がどれくらいいると思う? 僕は脳みそ寄越せって呻くゾンビをしっかり想像しちゃったよ。だからたぶん、矛盾の先にある成功イメージをしっかり思い浮かべられないと、何をやっても腐ったゾンビになっちゃうと思う。本当にこの世界の魔法って便利なのか不便なのか分からんね?


「無論、途方も無く矛盾した願いだという事は理解している。あくまでも可能ならばの話だ。無理にとは言わん」

「何を~!? 主に不可能など無いに決まって――あばばばっ!!」

「はいはい。信頼は嬉しいけど僕にだって不可能なことはあるからね。全知全能の神様でもあるまいし……」


 一歩踏み出し、バールにガンをつけるトゥーラを首輪の電撃で黙らせる。

 さすがに自分が無茶を言ってるって自覚はあるみたいで何よりだね。しかし、うーん……これはマジで難しいなぁ。下手に朧げなイメージでやろうとするとゾンビになっちゃうだろうし、こういう風に考えちゃってる時点でゾンビ化が確定しちゃうんだろうからなぁ……。

 ただ、歪んだ性癖が満たせない辛さは僕にも良く分かる。できれば何とかしてあげたいよね。今この場では無理だけど、少し本格的に考えてみるか。


「できるかどうか、しばらく考えてみるよ。代わりと言っちゃ何だけど、氷漬けにしなくてもずっと腐らないように腐敗を防ぐ魔法をかけてあげようか? それなら女の子たちをペロペロしたりもできるでしょ?」

「おお、本当か!? それは助かる。冷凍保存しておくにも限度があるからな。千人以上の死体があるのだが、問題ないか?」

「どんだけ死体を溜め込んでるんですかねぇ、この吸血鬼は。時間かかりそうだから今日は三十個までね」


 若干嬉しそうに氷漬けの死体を空間収納から取り出していくバールの姿に、僕は呆れながらも防腐の魔法を行使してやった。べ、別にコレクションの数で負けてて悔しいわけじゃないんだからね!

 あ、そうそう。キラは途中で話に飽きたのか、シャドーボクシング的な鍛錬を始めてたよ。トゥーラは電撃の余韻に床で悶えてたし、本当に自由だなぁ、コイツら……。






「ふうっ……夜風が気持ち良いなぁ……」


 死体のコレクションへの防腐処置、それから軽い雑談を終えてバールの城を出た僕は、深夜の街を当ても無く適当に散歩中。犬猫は宿屋に帰らせて、今回は一人で気ままに歩いてる。色々と考えたいことがあったからね。

 ただ『ちょっと散歩に行く』って言ったせいか、トゥーラがすっげぇ一緒に行きたがってメチャメチャ駄々こねたんだよね。深夜なのにうるさいから出力十倍の電撃で黙らせて、キラに運ばせてったよ。やっぱ犬は散歩好きなんですねぇ?


「生者のように振舞う死体。されど見た目も反応も死体のまま、か……ムッズ」


 ふと川にかかった石橋に辿り着いたから、欄干に肘をついて川面に映ったお月様を眺めながらため息を零す。

 僕がわざわざ眠気を堪えてお散歩してるのは、当然バールの要求が理由だ。死体を死体のまま生き返らせて、なおかつ生きている人間と同様の行動や受け答えが可能で、個性や性格といったものは徹底的に排除する。そんな矛盾の極みの要求なんだから、頭を悩ませるのも当然だよね?

 しかも動く死体というとどうしてもゾンビをイメージしちゃうから、生半可なイメージではどうしてもゾンビ化を避けられないだろうし……これは普通に無理なのでは?


「……でもなぁ、性癖が満たされないのは辛いよなぁ。できれば何とか実現してやりたいところなんだけど、下手すると腐ったゾンビになっちゃいそうだからなぁ……」


 捻じ曲がった性癖が満たされない辛さは良く分かる。そしてバールは性癖が捻じ曲がるくらいに女性関係にトラウマを持ってしまった可哀そうな男だ。だから捻じ曲がった性癖を持ちつつ、逆レイプ3Pされた過去を持つ僕としては、同じ境遇の仲間として慰めてやりたい。僕がこういうこと考えるのって滅茶苦茶珍しいんだよ?


「うーん、難しい……こうなったらレーンに連絡して知恵を借りるか? いやでもさすがにもう寝てるだろうしなぁ……」


 一人では答えが出そうにないから、いっそのこと魔法大好きなレーン先生に知識を借りることを考える。でもすでに深夜二時を回ってるし、さすがに今から電話をかけるほど僕は非常識じゃない。

 とりあえず協力を求めるのは明日にして、今日はもう休もうかな? いや、どうせならちょっとだけ実験をしてからにするかな? 幸い実験に使える程度の死体なら僕も保管してるし、ダメもとで色々試してみる感じで――


「――あ、危ないっ!」

「んお?」


 などと考えてる最中、突然警告の声が僕に向かって飛んできた。

 反射的に背後を振り向くと、そこには今正に僕の首元へ迫る短剣の刃。まさかの闇討ち? まあ僕は別段驚かなかったけどね。むしろようやく手を出してきたかって感じだよ。

 今の僕は防御魔法展開済みとはいえ、まかり間違って防御を抜かれたら堪らない。とりあえず|摩擦抵抗消失《フリクション・レジスタンス・ディザピアーズ》で摩擦を消失させて、短剣の一撃をぬるりと流した。

 その結果に襲撃者は小さく舌打ちをすると、後ろに跳んで僕とは反対側の欄干の上に降り立った。お月様に照らされて、その姿がよく見えるよ。立派だったであろう根元から壊れた角、根元から腐り落ちたみたいに無くなった翼、根元から焼け落ちたみたいに消失した尻尾。そして薄い紫色の髪と瞳。そう、僕が分からせたメスガキだ。


「おやおやおや。誰かと思えばいつぞやのメスガキじゃないか。調子どうよ?」

「調子、ですって……!? あんたのせいで、何もかも滅茶苦茶よ! どこに行っても笑い者で、皆に馬鹿にされて……! 何もかも全部、あんたのせいよ!」


 とりあえず社交辞令で調子を尋ねると、瞳を殺意に鋭く細めながら憤怒に塗れた答えを返してきた。

 やっぱり今まで散々人を馬鹿にして楽しんでたツケが回って来たみたいだね。そりゃあ今は角も翼も尻尾も無い完全な出来損ないだもんね。馬鹿にされるのも当然だな。


「ふーん。それはお前が常々やってきたことだし、完全に自業自得なのでは? 因果応報ってやつだよ。オッホー」

「ふ、フフ……最後に、一回だけチャンスをあげる。私の大切なモノ――角と、翼と、尻尾を元に戻しなさい。そうしたら、命だけは助けてあげる」


 僕の挑発に眉をヒクヒク動かしながらも、メスガキことルアは比較的穏やかに交渉をしてきた。

 でもこれ絶対守る気ない交渉だよね。不意打ちで首を刎ねようとしてきた奴が命を助けてくれるわけないでしょ? それと交渉って言うのは同じ立場の者でしか為しえないものなんだよなぁ。僕に分からされてピーピー泣いてたメスガキが、僕と対等の立場に立てると思う?


「うん、お断り。一生その惨めな姿で生きてね?」


 だから僕は躊躇いなく交渉を蹴った。

 別に殺しても良いけど、できればあの何もかも欠けた惨めで滑稽な姿を晒して恥辱と屈辱に震えながら生きて欲しいんだ。死んだらでそこで終わりだからね。生き地獄って本当素晴らしい概念だと思うよ。


「……そう。じゃあ、交渉は決裂ね。惨めに惨たらしく殺してやる……!」


 特にショックを受けた様子も無く、殺意と憤怒に瞳を輝かせながら毒々しいピンクの短剣を構えるルア。これは相当殺意キマってますね。そんなに僕を殺したかったのかなぁ?

 何にせよ、向こうから襲ってくるならこっちが遠慮する必要はどこにもない。ましてここはコロシアムのリングで行われるお行儀の良い試合じゃなく、ルール無用のやりたい放題で勝った奴が正義の殺しあいだ。正直僕はこっちの方が好きだし、ちょっと楽しくなってきたね。


「ハハハ、やれるもんならやってみな。今度こそ魂の芯までお前を分からせてやるよ」


 リングの上ではできなかったけど、この場でなら苛烈で激烈な苦痛を存分に与えて痛めつけることが出来る。さてさて、どんな拷問で分からせてやろうかなぁ? 楽しみで迷っちゃうなぁ、ハハハ。 





⋇オラッ、喜べ野郎共! 二度目の分からせだ!


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