表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第7章:獣魔最強決定戦
172/527

祝賀会

⋇暴力描写あり




「はい、それでは僕の決勝進出を祝って――かんぱーい!」

「かんぱーい!」

「かんぱ~い!」


 アロガンザにあるお高い飲食店の個室で、僕らはみんなで祝杯を上げた。乾杯の声に応えてくれたのはリアとトゥーラだけだったけど、一応ミニスもキラも無言でグラスを掲げてくれたよ。ちなみにグラスの中身が酒なのはトゥーラだけだったりする。

 無事に僕の決勝進出が決まったことを祝って、今は軽くパーティを開いてるところ。わざわざ個室を使ってるのは、ちょっと嫉妬に塗れた薄汚い野郎共の絡みがウザかったから。もう行く先々で因縁つけられて襲われたんだ。その度に撃退してキラやトゥーラと熱烈な口付けをして見せて煽るのも段々飽きてきたから、こうして人目を避ける方向にシフトしたわけ。全く、何でここまで嫌われてんだろうね?


「ふうっ……これで三位以内に入れたから、この冒険者プレートは仮のモノじゃなくなったって認識で良いのかな?」

「その通り~! これで主は正真正銘のAランク冒険者だ~!」

「本当はCランクでいいって何度も言ったのになぁ。このクソ犬がよぉ?」

「ワゥ~ン!」


 足で何度か蹴りつけるものの、やっぱりトゥーラは嬉しそうに身を捩るだけで効果は無い。

 リング上で僕の性関係を暴露したお仕置きに床で食べさせてるんだけど、こっちも全然応えて無いな。さすがはお高い飲食店の個室だけあって、床も綺麗なもんだし。

 あとさすがに料理を床に落として食わせるのは、後にキスしたりする僕の方がダメージデカそうだからやめといた。普通に一人だけ床に座って食ってるみたいな状態だよ。まあトゥーラは何故かスプーンやフォークを一切使わず、自主的に犬食いしてるんだが?


「……それで、この後どうすんのよ? もう三位以内に入ったんだから、試合を続ける意味は無いわよね?」

「次の街に行くのー? それともしばらくこの街で悪い事するのー?」


 もぐもぐとお肉メインのご馳走を食べながら、幼女コンビが尋ねてくる。

 今更だけどコイツら結構食うんだよなぁ。ミニスの方は獣人だから身体能力が高くて、その分カロリーの消費も多いって考えられるとはいえ……リアの方は何なんですかね? 食っても成長しないしなぁ、コイツ……。


「あ、話してなかったっけ? 実は優勝を狙うことにしたんだよ。だからまだ街からは離れないよ?」

「あ? どういうことだよ? お前順位には興味ねぇって感じだったじゃねぇか。どういう風の吹きまわしだ?」


 僕の答えに、幼女コンビだけじゃなくキラも驚いたような反応をする。

 まあそれも仕方ないか。順位なんて興味ないですー、Aランク冒険者になるために三位以内に入りたいだけですー、っていうムーブをしてたのに、ここにきていきなり優勝を目指すってのは心底ブレてるからね。


「うん、順位に興味が無いのは変わってないよ? ただ、優勝した後に起こる出来事に興味があるんだよね」


 ニヤリと笑いつつ、僕は答える。

 実は少し前にトゥーラから本戦の事を根掘り葉掘り聞いた結果、興味深い情報を得られたんだ。優勝者にはとあるイベントが用意されてる、って。もちろんそのイベントの内容もね。

 少し悩んだけどどうせ三位でも目立つことに変わりは無いし、それならイベント目当てに優勝しちゃうのも悪くないかなって。


「優勝した後ー? 何かあるのー?」

「まあネタバレになるから詳しくは話さないけど、例年通りならたぶんあるよ。特に大会で目立った奴が優勝した場合は絶対にね。でしょ?」

「そうだね~。主は色んな意味で目立ちすぎたから、間違いなくあるだろうね~。その時のお楽しみにするために、皆には教えないがね~?」

「うー……何だろ、気になるなー?」

「何か碌な事じゃなさそうね……」


 トゥーラと揃って意味深な答えを返すと、リアは好奇心を刺激されてる感じにうずうずしてた。反面ミニスは渋い顔してるのが印象的だね。お前も子供らしくリアみたいに好奇心出しなよぉ?


「まあその時に分かるなら別に良いか。そこまで興味もねぇしな。けど優勝を目指すってことは、当然次の相手に勝たなきゃいけねぇよな? 相手がどんな奴か分かってんのか?」

「ハハハ、もちろん――トゥーラ!」


 キラの言葉に頷いた僕は、トゥーラに説明を求めた。

 だって僕自身は次の対戦相手の事、何にも分かんないからね! 調べてもいないから名前も性別も種族も一切分からん! 夜の部の優勝者だからたぶんヴァンパイアじゃないかって予想はつくけど、言ってしまえばそれだけだし。

 

「決勝戦の相手の名前はブライベル~。性別は男で、種族はヴァンパイアさ~。獲物は長剣や徒手を使う所が見られるね~。ただ魔法もかなり得意なようだ~。近接、魔法、共に高水準で纏まった隙の無い相手だよ~」

「――だってさ」

「自分で調べたりはしないわけ、あんた……?」


 トゥーラが調べた情報をさも自分で口にしたように自信満々に締めると、ミニスがその髪の色よりも白い目で見てくる。

 まあトゥーラは僕の奴隷だから、その働きや何やらが全部僕に還元されるのは当然だよね。もちろん失敗とかはトゥーラ自身の責任です。悪徳上司みたいに美味しい所だけ持っていこうな!


「いや、だって面倒くさいし。僕は結構忙しいしね。で、他に何か情報はある?」

「ん~、そうだね~……主はヴァンパイアについてどれだけ知っているのかな~?」

「色々知ってはいるけど、それは僕の世界での創作の知識だから、ぶっちゃけ当てになるかは分からん。とりあえず何も知らないってことでお願い」

「了解だ~。ではヴァンパイアについてだが、種族的にかなり強いよ~。獣人の身体能力が人間の三倍程度だとするなら、軽く十倍はあるんじゃないかい~?」

「すごーい!」

「十倍とかそんなにあんの? ゴリラじゃん」

「う……私の脚力でも負けそうね、それ……」


 十倍とかスゲェなぁ。獣人の三倍はあるってことだし、この世界のヴァンパイアってかなりの脳筋なのでは? これには獣人の中では走力ピカイチな兎獣人のミニスも及び腰だし。


「しかも種族特有の能力も幾つか持っていてね~。例えば腕を切り落としてもくっつければすぐに治るほどの治癒能力だとか、首を切り落としても死なない生命力だとか、身体を部分的に霧状にして攻撃を避けるだとか、とにかく反則臭い能力が色々とあるね~。ちなみにヴァンパイアは吸血すると、更に身体能力や魔力が跳ね上がるらしいよ~?」

「えぇ……とんだ化け物じゃない……」

「リアもサキュバスを吸血したら強くなれるかなー……?」

「はえー。そんなに強いんだ」


 さすがにこれには僕もちょっとびっくりだね。

 吸血すると、ただでさえ高い身体能力が魔力と共に上昇。再生能力と生命力も尋常でなく、肉体を霧状にする能力すらも所持。しかも言い方から察するにあくまで能力であって、魔法では無いというおまけ付き。

 これちょっと強すぎなんじゃない? 何の取り柄も無い聖人族の人間がクッソ可哀そう。女神様はちゃんとデバッグして実装した? バランス調整失敗してない?


「けど、致命的な弱点が多いんだぜ。上手くそれを突けばそこのガキ共でも殺せるくらいにな」

「その通り~! 種族的に恵まれた強さを持っている代わりなのか、吸血鬼はとにかくシャレにならない弱点が多くてね~。日光を浴びれば大火傷、銀に触れれば大火傷、ニンニクに触れれば大火傷~、しかもこれらで負った傷は碌に再生しないらしいよ~?」


 などとバグの改善を求めたくなってると、キラの補足にトゥーラが詳細を語った。

 なるほど。どうやらヴァンパイアらしい弱点はしっかりあるみたいだね。しかも日光だけじゃなく銀とニンニクも駄目とは。これはヴァンパイアの強さはバグというより、致命的な弱点を持つが故の強さなのかもしれないね。デイ・ウォーカーのブレ●ドさんでもない限り、日中は活動できないだろうし。


「日光が弱点って事は、お日様の下を歩けないってことよね? 何だか可哀そうね、それ……」

「ねー。日向ぼっこもできないとか可哀そー」


 その証拠にイカれた能力を持ってる相手に対して、幼女コンビは同情的だ。

 まあ別にお日様の下を歩けないってわけじゃないんじゃないかな。十歩も行かずに灰になるってだけで、きっと日向ぼっこもできると思うよ? 今度ヴァンパイア捕まえて一緒に日向ぼっこしようぜ!


「日光に銀にニンニクかぁ……弱点ってそれだけ? 十字架が苦手とか、炎とか流れる水が苦手とか、木の杭を心臓に打ち込まれた死ぬとかってないの?」


 僕の知るヴァンパイアはあの三つ以外にも、色々と弱点がある。知ってる範囲だと炎、流水、木の杭、あとは十字架かな。とはいえ木の杭を心臓に打ち込まれたらまともな生物なら普通死ぬから、これは除外しておこう。あー、でも首落としても死なないしなぁ……。


「ん~……他には聞いたことは無いな~。もしかしたら隠してるだけで、他にも弱点があるのかもしれないね~?」

「ふーん。ま、何にせよ致命的なのが三つも分かってれば十分かな。優勝は貰ったぜ」


 日光、銀、ニンニク。この三つが分かってればやりようは幾らでもある。何せ僕は無限の魔力を持つ女神様の使徒だからね。銀やニンニクを作り出すくらい訳ないよ。

 あー、でも日光はちょっと難しいかな? 月からの反射光を収束させて打ち出す形にするとかどうだろう? あるいはいっそのこと、太陽そのものを創り出すとか……いや、さすがにそれは世界が滅びかねないから駄目かな?


「あ~……残念ながら、試合では銀とニンニクを使うことは禁止されているんだよ~……」

「……マジ?」


 などと色々考えてたら、トゥーラが申し訳なさそうにふざけたルールを口にした。

 えー、何それ。獣人の三倍弱の身体能力を持ってて、生命力も再生力も尋常でなく高レベルなのに、弱点をつくのは禁止されてるってこと? しかも戦う舞台はヴァンパイアに配慮して夜なんででしょ? ちょっとヴァンパイアばっかり贔屓されてない?

 ただできるわけが無いと思ってるのか、それともまともに利用できる奴がいないからなのか、日光に関しては禁止されてないみたいだね。じゃあ太陽を創り出すのはアリってことだな! よーし、どうにもならなかったら恒星の輝きを見せてやるぜ! 制御するための金属のアーム四本が背中から生えてないけど制御できるだろ! 






⋇なお、生えてても制御できなかった模様

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ