非処女……?
⋇ちょっとした性的描写あり。
「――よし、無事契約完了! これでレーンは奴隷二号だぜ!」
レーンが書いた契約条項はよくできていて、特に問題も見当たらなかった。だからその場ですぐに契約を交わしたよ。こうして無事にレーンは僕の奴隷、もとい真の仲間になってくれたわけだ。不安要素が無くなってだいぶすっきりした。
簡単に契約条項をまとめると、主である僕が絶対的な強制力を持ってるのは当然で、従う側のレーンに利は一切ない感じ。ただ主への攻撃に関しての部分がちょっと気になったかな? 殺意や敵意を持って攻撃することは禁止ってなってたから、そういう感情が無ければ僕に攻撃できるってことなんだよね。
さすがにここは修正させようかと思ったよ? でも冷静に考えた結果、このままの方が都合が良いって結論に至ったんだ。
だって考えてもみなよ? 害意の無い無意識の攻撃とかを縛っちゃったら、ベッドの上でくんずほぐれつする時とかにも結構支障出るよ? ぎゅっとしがみ付いてきて背中に爪を立てられるっていうそそる展開も駄目になるし、キスして噛み痕を残してくるっていうゾクゾク来ることもしてくれなくなるんだよ? それを考えたら絶対このままにした方がいいでしょ。僕、情熱的な女の子は大好きだし。
「一号との契約はその内更新するべきだと思うよ。あんな大雑把な契約でよくもまあ縛った気になれたものだね」
「やかましい。パンツ見せろ、命令だ」
「契約して最初の命令がよりにもよってそんなこととはね。まあ予想はしていたが……」
契約魔術が成功したことは感覚で分かったけど、やっぱりちゃんと試しておかないといけないよね? だから僕は命令を出してレーンが従うかしっかり試してみた。
やっぱり問題なく縛れてるみたいで、レーンはとても嫌そうな顔をしつつローブの裾をたくし上げていった。うーん、顔を出した白い太ももが艶めかしく、露わになった紫のショーツが悩ましい……。
「ああ、どうやら当代の私の純潔はここまでのようだね……今までの私も清い身体だったんだが、いよいよ傷物にされてしまうのか……」
「清い? 嘘つけ。二百三十七人も経験した癖に」
何か頬を染めて生娘っぽい反応をしてるけど、僕は知ってるぞ。今まで繰り返した人生の中で二百三十七人の男を食ってきたじゃないか。
ん? いや、待てよ? 経験人数としか調べてないから、もしかしたら相手が女性の可能性も? というかレーンが毎回女性である可能性も薄いのでは……? いや、やめよう。考えるのは怖すぎる。
「二百三十七人……? ああ、そうか。それがあったね。しかし私の年齢を把握していることも然ることながら、君は何故正確に数字を把握しているんだい? 私としても正確には覚えていないんだが」
「魔法でちょちょいと情報を覗いてるからね。種族に対する敵意もばっちり分かるぞ」
「さり気なく高度な真似をしているね。他者に直接干渉する魔法は最も魔力消費が大きくなるというのに、そこまで詳細な他者の情報を確認できるとは。下手をすると他者の寿命までも確認できるのでは……?」
酷く真面目な顔で魔法の考察を始めるレーン。
忘れてるかもしれないけど君、ローブたくし上げてパンツ丸出しの状態だからね? というか本当、随分際どいの履いてんな……。
「そんなことより何で二百人以上も経験してるのか、詳しく説明しろ。命令だ」
「まあよくある若気の至りだよ。あれは確か二代目の頃だったかな? 転生の魔術に成功した私は死を超越したと驕り、無謀にも戦争で敵陣に切り込んでいったのさ。自分は死んでも新たな生を受けるのだから、恐れるものなど何もない。死よりも辛いものがこの世にあるのだと考えもせず、ただ喜びと昂る気持ちを抱きながらね」
「これは好みの展開になりそうですね。続けなさい」
「案の定敵陣の真っただ中で魔力が底を付き、そのまま捕らえられてしまったのさ。そこからは契約魔術を受け入れるまで手酷い拷問を受け、苦痛に屈して契約を受け入れた後は囚われた部隊の慰み者。死因が何だったのかはいまいち分からないが、死ぬまで犯されていたのだから衰弱死ではないかな?」
「何でそんな他人事みたいに話せるの? というかよくそんな目にあって世界平和とか目指せるね」
てっきり淫欲の限りでも尽くしたのかと思ってたけど、予想外にヘビーな話だった。
仮に僕がそんな目にあったら、未来永劫燃え上がり続ける強烈な復讐心を抱く自信があるよ。敵を根絶やしにしてもまだ足りないね。世界を破壊するくらいはしないと収まらないんじゃない?
「何百年も前のことだからね、実を言うとほとんど覚えていないのさ。転生した頃は立ち直るのに何代かかかった記憶もあるし、立ち直った後はより敵意と憎悪を燃やした記憶もあるが……最早他人の日記を読んでいるような感覚しかないよ。それもかなり朧げだね」
「はーん……」
そんな目にあった癖に平気な顔で語る理由はそれか。まあ最低でも三百年以上は昔の事だろうし、詳しく覚えてないのも無理ないか。人間の脳ってそこまで昔の事覚えてられないだろうし、今のレーンは擦り切れたみたいに感情希薄だから説得力があるね。
「それはさておき、つまり今の僕は過去に死ぬまで犯された経歴を持つ真の仲間に対して、同じようなことをしようとしている正真正銘のクズってこと?」
「率直に言ってその通りだね。自分で気付けたのはいいことだと思うよ」
「ふーむ……」
曝け出されてるレーンの紫の紐パンを間近で眺めつつ、僕は考える。
正直僕が屑なのは分かってるから、別にそこに抵抗は無い。何ならこの場でレーンを犯して欲望の限りを尽くしても、罪悪感なんて微塵も抱かない自信がある。むしろ爽快な気分になること請け合いだね。
ただしレーンは真の仲間。まともに恋愛関係を築けるかもしれない貴重な相手だ。そんな相手を一時の欲望に任せて犯してしまうのは凄く勿体ないと思う。犯す壊すはその辺の女の子でできるんだから、やっぱりレーンに求めるべきは誠実な関係だよね。
「……いいや、命令撤回。もうローブ下ろしていいよ」
「い、いいのかい? 私の純潔を奪うつもりだったんだろう?」
僕の命令が心底意外だったのか、レーンは驚いた眼で尋ねてくる。感情薄いって言ってたけど、どう見ても段々と豊かになってきてるよね。僕のおかげかな?
「もちろんいつかは奪うよ? でもそれはいつだってできるからね。何よりレーンはもう真の仲間だから、どっちかっていうと普通に愛し合う間柄になりたいかなーって。犯す壊すはその辺の女の子取っ捕まえてできるけど、純愛は難しいでしょ?」
「確かに。ならば私の純潔はしばらく安泰だということかな?」
「まあね。僕としては純愛も無理やりもどっちも欲しいから、ここでレーンの好感度ガタ落ち間違いなしの行動をするのはちょっと躊躇われるかな。お前とは普通に恋人になって合意の上でしっぽりして、そこらの行き摺りの女の子は無理やりに犯して壊したいっていうのが僕の本心だよ」
別にレーンの事を慮ってやめたわけじゃない。あれもしたいしこれもしたい、あれも欲しいしこれも欲しいっていう、性欲とはまた別の欲望に従った感じだ。べ、別にレーンのためじゃないんだからねっ!
「外道の極みで強欲の権化のようなおぞましい台詞を口にしていて少々ドン引きだが、君の気持ちは理解したよ。君がこの世界の平和のために尽力してくれるのなら、私の献身的な愛とやらを捧げようじゃないか。正直なところ、愛という感情はさっぱり理解できないがね」
「うーん、それは楽しみ……でもその前に色々と考えなきゃいけないこと、しなきゃいけないことがあるからしばらく純愛はお預けかな」
「純愛は、ね……いや、君の好きにしたらいいさ。私はとやかくは言わないよ」
おっと、寛大な発言だ。これは正妻の余裕かな?
もしかしたらレーンと行き摺りの女の子との三人での酒池肉林、合意と無理やりの両方を同時に楽しめる可能性が微粒子レベルで存在する……?
「あっ、そうだ。ついでにこれも答えて貰おうかな。契約魔術って一方的に破棄したり、解除したりすることってできる? これ命令だから正直に教えてね?」
これは大事なことだから命令して質問する。
契約で行動や発言を縛ったとしても、その契約自体を無かったことにされたら意味が無いからね。それが可能かどうか、そして可能なら対策するためにもその方法を聞いておかないといけないでしょ?
「結論から言うと、可能だ。しかし同時に非常に難しいと言わざるを得ない。何故かというと、それは契約魔術が複数人かつ合意の上で行なわれる特殊な魔術だという点に起因する。この魔法を発動する際、消費される魔力は施術者のものだけだが――」
「話が長い。分かりやすく簡潔に噛み砕いて」
「……契約魔術は施術者と被術者、双方の魔力量を足し合わせ参照する特殊な魔術だ。双方の魔力量の合計を越える魔力を持つ者なら、力ずくで解除することが可能だ」
「なるほど。ちなみにレーンは魔力って多い方?」
「ああ。何度も転生を繰り返し鍛え上げてきた私の魔力量は、すでに大天使様を凌駕しているからね。誰もいない、とまで驕る気はないが、私に並ぶ魔力量を持つ者はそうそういないだろう」
「わー、すごいなー」
疑似的な無限の魔力を持ってる僕がここにいるがな!
それはともかく、勝手に契約が解除されたりする心配はなさそう。僕自身の魔力量がどんな風にカウントされるのかは分からないけど、レーンの魔力量がとんでもなく多いならそれだけで問題ないはずだし。
「さて、ではそろそろ教えてくれるかな。君は一体どのような力を女神様より授かったんだい? すでに君の奴隷と化した私になら、隠すことは何もないだろう?」
「そうだね。でもお前の事見てると何か反応が怖いんだよなぁ……」
もう隠すことは何も無い。でも道中での事を思い返すとちょっと話すのが躊躇われる。無限の魔力について聞いた時のレーンの反応、あれは正直マッドサイエンティストとかそっち系の反応だったし。
例え話でも人目をはばからずに突然笑い出したんだから、この二人きりの状況で実話だってことを教えたらどうなることやら……。
「何を怖がる必要があるんだい? 私が何をしようと、君は命令一つでそれを止めることができるじゃないか。そんな状況で怖がるなど、さすがに憶病と言われても否定はできないよ。もっとわかりやすく言えば腰抜けだね」
「何だとこの野郎。パンツ見せろ。命令だ」
腰抜けと罵倒されたらキレるのは古来よりのお約束だ。だけど僕とレーンは主と奴隷の関係。命令一つで仕返しができるから決してキレてはいないよ?
「ふっ。私の純潔は安泰だからね。多少の恥じらいは覚えるが、この程度は痛くもかゆくもないさ」
「むっ……」
ただうっすらと余裕の笑みを浮かべたレーンの姿にはちょっとイラっときた。またもローブをたくし上げて紫の紐パンを露出させられてるにも拘わらず、全く意に介してないよ。そりゃほんのり頬は赤いけどさ。
とりあえず調子に乗った奴隷には罰を与えないといけませんね?
「じゃあ命令だ。自分で弄って慰めろ」
「は? いや、ちょっと待て。さすがにそれは――んっ……!」
僕が命令すると、レーンは何故かパンツの上から下腹部を弄り始めた。空いた片方の手で胸元を弄りながら。一体何でそんなことしてるんだろなー?
「じゃあ話を戻そうか。僕が女神様から授かった力は幾つかあるけど、その内の一つは無限の魔力だよ」
「なっ!? む、無限の――うあっ! 魔力、だって――うぅっ!」
それはもう怖いくらいに目の色を変えるレーン。
だけどどうしてか突然変な声を上げて気持ちよさそうな顔をしてるね。きっと痒いところを掻いてるから気持ちいいんだろうなぁ。夏は蒸れるし掻きむしりたくなるのもよく分かるよ。今のこの世界の季節は分からんけど。
「そう。正確に言えば決して減らない魔力だね。どれだけ使っても尽きることが無いから、実質魔力は無限だよ。この力があれば僕らの目的を達成できるんじゃないかな?」
「そ、それが本当なら――ああっ! 素晴らしい、素晴らしいよ! ん、くっ……不可能なことなど、何も――やっ、あ……! しゃ、謝罪はするからいい加減止めてくれないか!?」
そうして快感と好奇心と恥じらいがミックスされた堪らない表情で懇願してくる。
正直めっちゃエロいからずっとこのままの方が良いんだけどなぁ。そういえばこれって、やめろって命令しないとずっとやってるのかな? それはそれで気になるし是非とも確かめたい気持ちがありますね。
でもまあ、レーンと僕は真の仲間だ。悪戯はこの辺にしといてあげよう。この調子だと話も進まなさそうだし。
「仕方ないなぁ、やめていいよ」
「はぁ……臆病と言ったのは謝罪しよう。すまなかった。君は根に持つタイプなようだ……」
ローブの乱れた胸元を正して、レーンは太ももを擦り合わせて佇まいを正す。どことなく息が荒くて伏し目がちなのも堪りませんね。
「まあエロかったから水に流してやろう。あっ、水に流すと言えばトイレどこ? 今ちょっと催したんでトイレ行きたいんだけど」
「廊下を出て左の突き当りだ。何を催したのかは聞かないことにするから、汚さず使用してしっかり手を洗ってくれ……」
そんなわけで僕はちょっと催したから、疲れた様子でソファーに座りこむレーンを置いてトイレに向かった。
えっ、トイレで何したかって? そりゃあ用を足したに決まってるでしょ。ごちそうさまでした。