VSメスガキ小悪魔
⋇性的描写あり
『――さあ! 獣魔最強決定戦もいよいよ大詰めです! ここまで血沸き肉躍るバトルはもちろんのこと、ドン引きするような変態行為も数多くありましたが、概ね盛り上がった素晴らしい試合の数々でした!』
司会サキュバスの声に、観客たちが弾けるような歓声を上げて答える。
時はついにメスガキとの決戦の日。今日、僕はあのクソ生意気で人を見下すメスガキをようやく分からせるんだ。いやぁ、昨日の夜は楽しみで眠れなかった――なんて事は無いな。トゥーラとしっぽりした後は普通に心地良く眠ったし。いやぁ、犬人をバックでヤるのは最高でしたね!
『そんな試合を私たちに見せてくれた罪深い――ではなく、サービス精神旺盛なお二人が、ついに雌雄を決します! というわけで、まずはこの方の入場だー! 微笑みの変態魔術師、クルス選手ー!』
「やーやー、どうもー?」
何か二つ名が酷く失礼に修飾されてる気がしたけど、試合でやったことを考えると否定はできないね。だから僕は特に気にせず、観客たちに手を振りながらリングへと上がったよ。
準決勝まで上がったんだし、少しは僕にもファンがついてくれてるだろうなぁ? だからちょっと期待して観客たちの声に耳を傾けてみると――
「死ねええぇぇぇぇぇぇえぇぇ!!」
「くたばれ! くたばれ! くたばれ!」
「変態! 変態! 変態!」
うん、期待した僕が馬鹿だったわ。ゴミを投げてくるようなマナー最底辺の奴こそいなくなったけど、親の仇みたいに罵声を浴びせられてる。酷いなぁ、僕だって傷つくんだぞ? 流れ弾を装って観客席を魔法で吹っ飛ばしてやろうか?
この民度の悪さにはリング中央にいた司会サキュバスも苦笑いしてるよ。本当に何でこんなに嫌われてるんだろね?
『いやー、凄まじいバッシングですねー。ですがそれも分かる気はします。何故なら彼は本戦第二回戦でミラ選手の武器をペロペロと舐めていましたからね。私も実況歴は長いので色々と変なものは見てきましたが、あそこまでインパクトのある光景を見たのは久しぶりですねー。一体何を思ってあんなことをしたんですかー?』
「いや、ああでもしないとあのミラって子を引きずり出せそうになかったからね。だから決して疚しい気持ちであの子の持ち物を舐めたわけじゃないよ。どっちかというと僕は舐めるより舐めてもらいたいし?」
『おーっと、さすがはクルス選手! なかなかドギツイ事を口走りました! ですが透明化するミラ選手を引きずり出すのに効果的だったのは事実でしょう! ところで、あの後自分ごとミラ選手を岩の中に閉じ込めていましたが、あの中で変態的な行為を働いたりはしていませんよね?』
種族的な性質もあるのか、妙に突っ込んだことを聞いてくる司会サキュバス。
この野郎、さては僕が何にもしてないとは露ほども思ってないな?
「ハハハ、そんなことをしたら犯罪じゃないか。だから僕はそんなことしてないよ。まあちょっとあの中は真っ暗で狭かったから、多少変な所に触っちゃったかもしれないけどね?」
「くたばれええぇぇぇぇぇっ!!」
正直に答えると、またしても熱のこもった罵声が飛んでくる。
何だよ、あの巨乳を暗闇で弄んだのがそんなに羨ましいのか? あぁん? とっても柔らかかったぞ?
『さて、そんな変態行為が目立ったクルス選手ですが、その実力は確かです! こちらの調べによると、何とつい先日Aランク冒険者になったとか! しかも登録と同時にAランクです! いやぁ、どのような経緯でそうなったのかが大いに気になりますねぇ!』
「ぜってー賄賂渡しただろー!!」
「ふざけやがって、犯罪者めー!!」
「違~う!! それは私が敬愛する主へと自主的に捧げた貢物だ~!!」
何だろう、更に罵声が増えた気がする。これもう優勝したとしても絶対罵声塗れになりそうだね?
あと言い訳しておくと僕は賄賂も何も出してない。というかこの場合むしろ僕は被害者なんだよなぁ。Cランクで良いから冒険者プレート寄越せって何度も言ったのに、あのクソ犬断固として高ランクにしようしたんだもん……。
『……はい! それではもう一人の選手のご紹介に移りましょう! 皆大好きメスガキ小悪魔、ルア選手!!』
罵声の嵐で司会サキュバスもいたたまれなくなったのか、早々に切り上げてメスガキの紹介に移った。
まあメスガキも人の事小馬鹿にしてるし、僕ほどじゃないかもだけど罵声は飛ぶでしょ。じゃなきゃ不公平だよ。
「ハーイ、こんにちはー!」
対面の入場ゲートから翼を羽ばたかせて颯爽と飛び出し、僕の目の前に着地を決めるメスガキことルア。サービス精神は旺盛みたいで、ポーズを決めて観客たちに愛想を振りまいてたよ。
しかし愛想振りまくなら着地の時にミニスカート押さえないでパンツ見せろよ。何のためにミニスカート履いてるんだよ? おぉん?
「いええぇえぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」
「頑張れーっ! ルアーっ!!」
「そんな変態に負けるなー!!」
「え、何この差は……」
そんな風にパンツが見えなかったことに残念がってると、ありえないくらい好意的な声援の数々がルアに飛んでく。
うっそだろ、お前ら。クッソ生意気なメスガキの魅力に堕とされちゃったの? ここは普通メスガキを分からせる方を応援するもんでしょ? もしかして観客の男たちはマゾばっかりなの?
『クルス選手とは打って変わって、大きな声援の数々が送られます! やっぱり観客の皆さんも小さな女の子を応援したいんでしょうね! 戦い方に少々問題がある気もしますが、まあこの可愛さの前では些細な問題でしょう!』
しかしさっきから司会サキュバスが何か気になることを言ってるな。僕と同じでサービス精神旺盛だとか、戦い方に問題があるだとか。
もしかしてコイツも僕みたいな戦い方をしてるの? 他人の武器を奪い取って丹念に舌を這わせて舐めたりして? ふーん、エッチじゃん。
『ではルア選手、この試合への意気込みをお聞かせください!』
「えっ、意気込みー? うーん、そんなのないかなぁ。だって相手がこんな冴えない童貞のニカケのおにーさんじゃ……ねぇ?」
『おおっと痛烈ー!? 言ってはいけないレベルの罵倒が二つも同時に飛び出したー! これは少々問題があるのではないでしょうかー!?』
ルアは僕の事を頭のてっぺんからつま先までジロジロと眺めた後、小馬鹿にするような笑みを浮かべて小さく嘆息する。
なんだぁ、テメェ? 喧嘩売ってんのか? そんな悪い事言うクッソ生意気なメスガキは楽には殺さないゾ?
とはいえ、僕はもう童貞じゃないからキレ散らかすほどの罵倒じゃないな。もし童貞だったなら有無を言わさず組み敷いてヒィヒィ言わせてただろう。リングの上で大観衆に見守られながらでも、やってやれないことはないし。
「ハハッ、口だけは達者だねぇ? きっと舌が回るからお口でのご奉仕も上手いんだろうなぁ? 今までどれくらいしゃぶってきたの? そんなまな板じゃ挟むこともできないし、散々しゃぶってきたんでしょ?」
『おーっと!? クルス選手も負けじとヤバ気な挑発をかますー! あんな罵倒を受けては仕方ない気もしますが、これが彼の素のような気がするのは何故でしょうかー!?』
信じられない罵倒を受けた僕は、外面の良い笑顔の仮面を毟り取って遠慮なく挑発し返す。これには司会サキュバスも若干引き気味になりつつ実況を続ける。
まあ微笑みの魔術師とか名付けられた男がいきなり酷薄な笑みを浮かべて、ドのつく下ネタを並べ立てて挑発を始めたんだから仕方ないね。逆にルアの方はさも愉快だって言いた気にニヤリと笑ってるけど。
「アハッ、そういうおにーさんは口が減らないね? でも許してあげる。だって今の内にたくさん言っておかないと、負け犬の遠吠えになっちゃうからね。ワンワン!」
「おっ、犬の鳴き真似上手だね。いつもワンコプレイでペロペロ舐めてるから段々板についてきたのかな?」
「アハハハッ、おにーさん本当に面白ーい!」
「ハハハ、君ほどじゃないよー?」
表面上は仲良く、しかし裏ではバチバチに敵意をぶつけ合いながら挑発の応酬を重ねる。
いやぁ、早く試合始まらないかな? とっととこのクソ生意気なメスガキの心をへし折って屈服させたい……向こうもたぶん似たようなこと考えてるだろうし。
『うわぁ、すっごいピリピリしてる……そ、それでは、そろそろ試合を始めます! お二人とも、準備はよろしいですね!?』
「当然」
「もっちろん」
司会サキュバスに尋ねられ、僕とルアはお互いの獲物を取り出して構える。
僕は自分用にリサイズした金色の杖<ウロボロス>(レーン命名)。ルアはピンクとかいうドギツイ色をした二本の短剣。お互いに準備はバッチリだぞ。だからとっとと始めろや。
『それでは獣魔最強決定戦、準決勝第二試合――開始いぃぃぃぃぃぃっ!!』
そうしてリング外のお立ち台へと移動した司会サキュバスが、ついに試合の開始を宣言した。
さあ、お仕置きの時間だ! 生意気なメスガキをたっぷり分からせてやるぜ!