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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第7章:獣魔最強決定戦
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本戦開幕




『お待たせしました! 第二百八十五回、獣魔最強決定戦! 本戦出場者のご紹介です!』

「よっしゃああぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」

「待ってましたああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 二日後、すでに日が暮れて綺麗な星々が空に輝いてる頃。夜中だってことを忘れるくらいの熱気と喧騒がコロシアムに轟いた。

 予選が終わって、今日からついに本戦が始まる。今リング上には、僕を含めた本戦出場が決定した選手たちが勢揃いしてる。何かどいつもこいつも一癖も二癖もありそうな感じに見えるね。

 ちなみに僕の隣にはクッソ生意気で人を見下すメスガキ小悪魔もちゃんといるよ。どうやらしっかりと本戦出場できたみたい。良かった、これで試合で当たったら合法的に分からせることができるな? いやぁ、実に楽しみですねぇ?


『激しい戦いを勝ち抜き、本戦出場を決めたのは二十人の戦士たち! いやー、中途半端な数になりましたね! あと四人くらい少なければトーナメント表も綺麗になるんですけどね!』


 司会サキュバスの言葉に、観客席から大きな笑いが巻き起こる。まあ二十人じゃどうしても試合せずに進んじゃう奴が出てくるからねぇ。

 ていうか、やっぱり予選の回数よりも本戦出場者が少ないのね。確かに僕が見てた数少ない予選でも、タイムアップで本戦出場者が出なかった試合があったし。予選参加者の数が二千三百人くらいだったから、三、四回くらいはタイムアップで終わった予選があったっぽい。


『ですが、勝ち残った彼ら彼女らは間違いなく圧倒的な強者です! それでは一人ずつご紹介していきましょう! まず一人目は予選第一試合の勝者――大地を砕き、天を裂く圧倒的な力の持ち主! その筋肉の輝きを見せてくれ! 筋肉獣戦士、レングス!』

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 司会サキュバスが高らかに名前を叫ぶと、一人の獣人の男が前に出て雄たけびを上げる。

 その姿は正に筋肉の塊。獣人なせいか聖人族のマッチョよりも更にムキムキだよ。その癖可愛らしいケモミミがついてるせいで酷い冒涜的な絵面に見える。正直ちょっと吐きそう。


『レングス選手、本戦への意気込みをお聞かせください!』

「そうだな。多少は鍛えているようだが、どいつもこいつも筋肉が足りない。俺の筋肉で纏めて薙ぎ払い、筋肉の素晴らしさを身体に教え込んでやろう」

『ありがとうございました! 残念ながら本戦はバトルロイヤルではありませんが、頑張ってください!』


 頭まで筋肉みたいな事を言って、レングスとやらは観客からの拍手と歓声を受けながら元の場所に戻った。

 まあコイツは観客に好かれるタイプの戦いする奴だからね。小細工無しに圧倒的な力で全てを正面から粉砕する感じ、って言えば分かるでしょ? 闘技大会大好きな面々から見れば、そりゃあ王道って感じで人気だろうよ。そう考えると、たぶん僕の紹介はブーイングの嵐になるな……。


『続いて、第二試合――はタイムアップによって勝者が出なかったため、飛んで第三試合の勝者! 闇夜に忍び寄り、気付かれぬまま命を刈り取る! まるで彼女は透明人間! インビジブルマジシャン、ミラ!』

「あっ、あっ、ああぁぁぁ……! やめて、見ないで、目立たせないでぇ……!」


 そして第三試合の勝者が紹介されるわけだけど、何故かそいつは前に出るんじゃなくて逆に後ろに下がった。どうにも目立つのが苦手って感じっぽいね。格好もローブ姿でフードを目深に被って、正直どんな顔してるのかも良く分からんし。ただ可愛らしい声やローブの胸元を押し上げてる大質量から見て、間違いなく女の子だぜ。


『ミラ選手、本戦への意気込みを――あっ、いませんね!? どうやら逃げられてしまったようです! ともかく彼女への拍手をお願いします!』


 そうして僕が一瞬目を離すと、件のミラちゃんは忽然と姿を消してた。

 走って逃げた、っていうならまだ可愛い方だよ。どうもミラちゃんは魔法で透明になれるみたいで、マジで見えないんだわ、これが。何が恐ろしいってそれが予選一試合ほぼ三十分フルに維持できてる所だね。無限の魔力を持つ僕からすればそこまで驚く事じゃないけど、一般目線からすると相当の化け物らしいよ。一体どれくらい魔力があるんだろうね?


『では続きまして、第四試合の勝者の紹介です! 血沸き肉踊る戦いが大好きな方々からは批判の声もあり! だがリング全体を魔法の範囲に収め、なおかつそれを連発できる彼の実力と魔力は本物だ! 微笑みの魔術師、クルス!』


 おっと、僕の番か。しかし『微笑みの魔術師』とは随分クッサイ二つ名を付けてくれるじゃないか。まあとりあえず、それっぽい人当たりの良い笑顔を浮かべておくか。


「あはは。どうもー?」

「ひっこめええぇぇぇぇ!!」

「卑怯者ぉぉぉぉぉっ!!」

「クソ野郎おおぉぉぉぉぉぉっ!!」

「あ~っ!! カッコいいよ~、主~っ!!」


 うわー……予想通り、僕が前に出た途端ブーイングの嵐。迫真の罵声まで浴びせられる始末だよ。これ観客に負け犬が混じってますね? あと好意的な叫びも聞こえた気がするけど、何か聞き覚えある声でしたね。


『ではクルス選手、本戦への意気込みをお聞かせください!』

「えーと……まあ、優勝できるように精一杯頑張るよ。こんな反則をする卑怯者に負けちゃった可哀そうな負け犬たちの分まで頑張るから、安心してワンワン遠吠えしててね?」

「死ねええぇぇぇえぇぇぇぇぇぇっ!!」

「くたばれええぇぇえぇぇぇぇぇっ!!」

「ワンワン!! ワゥ~ン!!」


 あそこまで罵声を浴びせてくる奴らに媚びる必要なんて感じないから、遠慮なく煽ってやった。

 そしたらまた一段と罵声の数と強さが増して、観客席からジュースのカップだの丸めた紙屑だの色々飛んできたよ。元はと言えば向こうが最初に始めた事なのにね? あと素直にワンワン言ってるマゾ犬がいますね……。


『やめてください! ゴミを投げないでください! あんまりマナーが悪いと警備に叩き出してもらいますよ!?』


 さすがにこの行動はマナーが悪すぎたみたいで、司会サキュバスからストップがかかる。

 まあ最強を決める戦いを繰り広げる神聖なリングの上にゴミを撒き散らすなんて、どう考えても冒涜だからね。ちなみに残念ながら退場覚悟でゴミを投げる奴らはいなかった。根性無しがぁ。


『えー、続きまして第五試合の勝者の紹介です! どんな男もイチコロの魅力! 可愛さ余って憎さ百倍! ラブリー小悪魔、ルア!』

「アハハッ! みーんな雑魚で、予選なんて楽勝だったよ!」


 そして、今度は僕の隣にいたメスガキ小悪魔ことルアが前に出た。予選で戦った人たちを小馬鹿にするような発言をしてるのに、何故か罵声は飛んでこなかったよ。これって贔屓じゃない?


『ルア選手、本戦への意気込みをお聞かせください!』

「今回こそ、私は優勝を目指すよ! 予選で負けちゃった雑魚雑魚なおにーさんたち、応援よろしくね?」

「ちくしょおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

「頑張れええぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 クッソ貧相な身体でポーズを取って、バリバリに煽るルア。

 これには観客席から悔しそうな声が幾つも上がった。でも不思議とルアに対する罵詈雑言は一切無かったし、何なら応援の叫びすらも上がってた。

 おかしいなぁ? 明らかに僕と同じかそれ以上の煽りをかましてるのに、どうして僕だけがゴミを投げられないといけないんだろう? やっぱりアレか? 見た目可愛い女の子だから許されるのか?


『ありがとうございました! では続きまして、第六試合の勝者の紹介です!』


 僕が納得できないものを感じつつもやもやした気持ちを抱えてるのを尻目に、本戦出場者の紹介が次々と進んでいった。僕だって顔だけは人当たり良いのになぁ……。






『――以上、二十名! 本戦参加者に皆さん盛大な拍手をお願いします!』


 そうして、ついに二十名の紹介が終わった。

 面白いことに、後半十名くらいは皆種族がヴァンパイアだったよ。たぶんアレは夜の部の予選で勝ち残った人たちなんだろうね。夜の部の予選の選手が全員ヴァンパイアだったのか、それともこの世界のヴァンパイアは夜になると滅茶苦茶強くなったりするのか、一体どっちなんだろうね?


『さあ、それでは気になるトーナメント表は――こうなりましたー!!』


 司会サキュバスが観客席の更に上に取り付けられてる巨大モニターを示す。そこに映ったのは下から上に向かう一般的なトーナメント表じゃなくて、左右から中心に向かうトーナメント表。たぶん日中に活動できないヴァンパイアが半数いるから、こんな形になったんだろうね。

 そして次々と選手の名前がトーナメント表に記載されてく。僕は昼の部の第一回戦だね。あのメスガキは――おっと、昼の部の一番反対側じゃないか。となると昼の部の決勝、大会全体の準決勝まで当たらないのか。これを残念と捉えるべきか、楽しみと捉えるべきか……。


『果たしてどの選手が勝ち残るのか。どのような戦いを見せてくれるのか……第二百八十五回、獣魔最強決定戦、本戦の開始です!!』


 司会サキュバスの宣言に、観客から大歓声が上がる。もちろん三百六十度ぐるっと観客がいるから、思わず耳を塞ぎたくなるほどの大音量だったよ。音波兵器か何か?


「――お・に・い・さ・ん♪」


 そんな中、妙に甘ったるい声を出しながら近づいてくるメスガキ小悪魔。ニッコリと笑ってるけど、どう見てもこっちを小馬鹿にしてるのが分かる。これ完全に喧嘩売ってるよなぁ? メスガキがぁ……。


「やあ、ルア。無事に本戦出場できたんだね。おめでとう」

「ありがとー。それにしても、おにーさんの名前クルスっていうんだね。あんまり興味なくて聞くの忘れちゃってたよ。アハハ」

「そっか。僕の方も名乗るの忘れちゃってたから、おあいこだね。正直名乗るまでも無いかなって思ってたし」

「そうなんだー。アハハ」

「そうだよー。ハハハ」


 二人でケラケラ笑いあう。うん、やっぱり言葉の端々からこっちを見下し蔑んでるのが手に取る様に分かるよ。というかあっちに隠す気が無いんだろうなって。そんなに角と尻尾と翼があるのが偉いのか? あぁん? 

 もちろん僕もクッソ気に入らない感情を隠してはいないから、向こうもこっちの感情には気付いてると思うよ。お互い理解した上でこんなやりとりしてるのは何でだろね?


「……準決勝で待ってるから、ちゃんと来てね? ニカケのおにーさん?」

「もちろん。その時はできれば胸を貸して欲しい――おっと、貸せるほどの胸は無いかぁ? ハハハ」

「アハ、アハハハ、おにーさんおもしろーい?」


 そんな風に僕はメスガキ小悪魔と表面上はにこやかに、だけど裏ではバチバチと敵意をぶつけあいながら、本戦の開会式を終えるのだった。

 準決勝では絶対分からせてやるからなぁ? 覚悟しろよ、メスガキがぁ……。





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