ご褒美
⋇性的描写あり
予選第四試合を終えた僕は、そのまま観客席に戻って予選の見学をした――なんてことは無く、仲間たちを連れて宿屋に戻った。
だってこの予選、昼と夜に五試合ずつあるんだよ? それに今日も含めて三日も続くんだよ? そんなのずっと見てられるわけないでしょ。ただまあ、本戦出場者の戦い方とかを見ておいた方が良いってのは分かるよ? でもぶっちゃけ優勝したいと思ってるわけじゃないし、何より事前情報無しの方が戦いが楽しめそうだしね。
というわけで、早々にコロシアムを撤退。仲間たちも別に試合が見たいってわけじゃなかったから、誰一人文句も言わずついてきたよ。
「――というわけで、無事に予選を突破できました。だから予選が全試合終わるまで暇になったし、明日と明後日の夕方までは全員自由行動ってことで」
「はーい!」
「あいよ、了解」
そんなこんなで、宿屋の一室で今後の予定を報告した。リアは元気に頷き、キラもしっかり頷いてくれた。
「ハハッ、自由行動だろうが私はもちろん主についていく――あー、そういえばこの街の他の冒険者ギルドにも顔を出せと言われたんだったかな……まあいいか! 主についていくよ~!」
トゥーラも同様に頷いたかと思えば、まさかの職務放棄宣言。幾ら長期休暇中とはいえ、顔を出せって言われたなら普通行くんじゃない?
ちなみに『他の』って言った理由は、大会開催までに一回皆で冒険者ギルドに行ったから、そこは抜きにしてる感じだね。まあそこでもギルマスの仕事をしたかと言えば、首を横に振らざるを得ないんだけど……あれはむしろ営業妨害なんだよなぁ……。
「おい、お前腐ってもギルマスだろ。ちゃんと顔出しに行けよ」
「う~……仕方ない。主がそう言うなら明日行くよ~。どうせ主のランクをAにするためゴリ押しした仕返しに、面倒な業務を手伝わせるつもりなんだろうがね~」
「自業自得だね。朝から晩までキリキリ手伝ってこい」
「ちぇ~……主のいけず~……」
唇を尖らせ、睨むような目を向けてくるトゥーラ。
でもさっき言った通り、自業自得だから仕方ないね。僕は何度もCランクのプレート寄越せって言ったのに、僕にさえAランクをゴリ押ししてきたんだからね。闘技大会に出場することになったのもそのせいだし。
「……で、そこの兎娘は何を俯いてるの?」
それはさておき、今気になるのはミニスのこと。
コイツ試合終わってからずっと俯いてウサミミも畳んで小さくなってるんだよね。試合中は滅茶苦茶イケイケで、僕に対して『くたばれ』とかはっちゃけてたのにさ。一体どうしたんだろうね?
「いや、だって……試合にかこつけて、あんたのことぶん殴ったし……」
「……はあ。それが?」
「ミニスちゃんはね、ご主人様にお仕置きされるんだって思って怖がってるんだよ。顔を殴っちゃったから、きっと死ぬまで顔をボコボコに殴られるって、怯えながら言ってたもん」
などとリアがミニスの頭をナデナデしながら教えてくれた。
なるほど。冷静に考えてみればとんでもない罰を与えられても仕方ないことだよね。奴隷の癖に主人の顔を思いっきりぶん殴ったわけだし。僕がちょっと容赦ない感じなのはミニスも分かってるだろうし、これは怯えるのもやむなしかな。
「ハハッ、何言ってんだテメェ。死んでも殴るに決まってんだろ」
「ひっ……!」
僕が何か答える前に、キラが笑いながら恐ろしいことを言ってミニスを怖がらせる。
さすがの僕もそんなことしないぞ。死んでるのに殴っても反応が無いからつまらないじゃないか。どうせやるなら死ぬまで殴って、蘇生させてからまた死ぬまで殴るよ。
「こらこら、弱い者苛めはいけないよ~? ここはひとつ、代わりに私を殴るということで妥協してはくれないだろうか、ある――はうぅんっ!」
トゥーラが発情した感じのメス犬顔で寄ってきたから、鳩尾に抉りこむような一撃を叩き込んで黙らせる。これくらいの衝撃は簡単に逃がせるはずなのに、無防備に食らって床に崩れ落ちたよ。しかも幸せそうな顔してるから始末に負えないね。本当にマゾだな、このクソ犬……。
「そうだねぇ。あんまり長く怖がらせるのもかわいそうだし、さっさとお仕置きをしちゃおうか?」
「ぁ、う……!」
変態を尻目に、ミニスにゆっくりと近づいていく。
ぷるぷると震えて怯えるミニスだったけど、逃げることも抵抗することもできないってことは分かってるみたい。その場から動くことは無く、すぐに手で触れられる距離まで近づけた。
「ご主人様ー、痛いのは可哀そうだからやめてあげようよー?」
「ははっ、サキュバスを拷問したお前がそれを言う? 心配しなくても無駄に抵抗したりしなければそこまで痛くないよ。じゃあ今からお仕置き始めるから、覚悟しとけよ」
「っ……!」
苦言を呈するリアをお前が言うなと一蹴しつつ、かがんでミニスと視線の高さを合わせる。
メンタルが鋼なミニスちゃんはその場から一歩も動かず、きゅっと唇を噛んで瞼を固く閉じて、ウサミミの先までぷるぷる震えながらお仕置きを受ける覚悟を決めてたよ。涙目で怯える女の子ってどうしてこんなに愛らしいんだろうね? これはもう辛抱溜まらん。
「――んっ!?」
というわけで溢れる愛を抑えられなくなった僕は、ミニスの頭を引き寄せるようにしてその唇を奪った。
やっぱりひたすら殴られるんだと思ってたみたいで、この行動には驚愕と困惑が入り混じった感じの声を上げてたよ。まあその口は僕の口が塞いでるから、くぐもった声しか上がってないんだけどね?
「は?」
「ふえっ!?」
「あぁ~っ!?」
どうにも他の奴らも僕の行動を予想してなかったみたいで、それぞれ驚きの声を零してる。
本当にコイツらは僕を何だと思ってるんだろうね? 真の仲間には酷いことしないって、今まで何度も言ったじゃん? あ、無理やり唇を奪うのは酷いことに入らないよ?
「ん……む、うぅっ……!?」
とりあえず他の奴らの反応は無視して、苦しそうに喘ぐミニスと熱烈なベーゼを交わす。
貪るように唇を触れ合わせながら、ちっちゃな唇を舌で割り開いて、奥の方で縮こまってるミニスの舌先を探り当てる。そのまま逃げる舌先を絡め取って、ねっとりと舌同士を擦り付けあう。うん、ウサギっ子のタンは甘くて美味しいね!
「ん、く……む、う……んんっ、ん……!」
ちなみにこれだけ好き放題やってるにも拘わらず、ミニスは抵抗してこなかった。そりゃあぎゅっと瞑った瞳の端に涙がうっすら浮かんできてるけど、反応はそれだけで大人しいもんだよ。ねっとりじっとり舌を絡め合ってるのにこれだよ? さすがは鋼メンタルの持ち主だね。
「~~~~~~っ!!」
問題無さそうだから、そのまま更に口付けをヒートアップさせてく。僕の唾液をたっぷり送り込んで、無理やり飲ませてミニスの身体を内から穢したのが一番興奮したね。何か声にならない悲鳴を上げてる気がしなくもないけど、抵抗してこないんだから問題ないよね?
というわけでそこから体液交換を交えつつ、ネチョネチョとした口付けを続けていったよ。うーん、この凍り付いたような反応は新鮮だね。どっかの変態と狂人は逆に貪るように食らいついてくるからね……。
「……ふうっ。お仕置き終わり、お疲れさまでした」
「………………」
たっぷりとキスをして唇を剥がすと、僕らの舌先から混ざり合った唾液が糸を引いて垂れる。これってとってもエッチな糸だよね。
でもちょっとやりすぎたのか、ミニスは失神してるのか放心してるのか良く分からない感じになってた。そういやミニスちゃん、僕とキスするのってこれでまだ二回目じゃない? さすがにちょっと刺激が強すぎたかもしれんね。手を離したらそのまま倒れそうになったし、とりあえずベッドにぶん投げておこう。えいっ。
「でぃ、ディープキス……フレンチキス……大人のキス……ベロチュー!?」
「い、一体何をしているんだい主~!? 私にすらあんなに優しくキスしてくれたことは無いじゃないか~!?」
「テメェはそいつが一番気に入ってるってか。なるほどな。殺す」
「どうどう、三人ともちょっと落ち着け」
豊富な語彙をアピールしつつ顔を真っ赤にしてるリア、泣きそうな顔で足元に縋りついてくるトゥーラ、右手に鉤爪を装着してミニスの元へ歩いてくキラ。そんな三人を僕は何とか宥めたよ。正直キラが一番ヤバかったね。
「何をしてるって言われても、普通にご褒美をあげただけだよ。だってミニスは滅茶苦茶頑張ったしね。僕は頑張りを評価するタイプだよ?」
「ならば私にも! 私にもご褒美を~! 主の情けを私の子宮にたっぷり注ぎ込んで――ああぁぁああぁぁぁぁっ!!」
くわっと目を見開いて足元から這い上がってこようとしたトゥーラがあまりにもキモかったから、指を鳴らして電撃を与える。床の上でビクンビクンしてるけど、すっげぇ幸せそうな顔してんだよね。やっぱり無敵じゃないか……。
「……まあこの変態クソマゾワンコは置いといて、キラは何が不満なの? お前は別に愛に溢れたエッチとか求めてないでしょ?」
「そりゃあそうだが、テメェがあのクソ兎を労わってんのが腹が立つ。あたしにやってねぇことをアイツにやったのがムカつく」
「滅茶苦茶心狭い上に独占欲クソ強いねぇ、君……」
キラちゃんはとってもご機嫌斜め、尻尾も不快気に不規則に揺れてる。さすがはサイコな連続殺人猫。
これヤキモチ焼いてるってことにしても良いかな? さすがにそれは一般的なヤキモチを焼く普通の女の子に失礼かな? どう思う?
「じゃあ後で愛情たっぷりにキス以外も全部してあげるから、ちょっとくらい大目に見てよ。あんまり口うるさい子は僕嫌いだよ?」
「……チッ。しょうがねぇな。それで許してやるよ」
僕の答えに一応妥協してくれたみたいで、鉤爪を外したキラはベッドで失神してるミニスを一瞥してから部屋を出て行った。たぶんまたお外に修行しに行ったんじゃないかな。ちょっと今夜性的に襲われそうで怖いね……。
「……あれがツンデレってやつなの、ご主人様?」
「うーん……ちょっと違うかな? そんな可愛いタイプのものじゃないよ、アレ」
勉強によってその手の知識が増えたリアが、首を傾げながら尋ねてくる。
でもアレをツンデレって言ったら一般的なツンデレに失礼だと思うんだ。確かにエッチしてる時はノリノリだし、良い声でニャアニャア鳴いてくれるんだけどさ? これはツンデレって言うよりギャップ萌えの領域だと思う。
「あ、主~……わ、私にも……私にも、たっぷりの、愛情を~……!」
「はいはい。お前は本戦のこと色々教えてくれたら考えてやるよ」
そういうサブカルチャー的な事は置いといて、とりあえず本戦に関しての事をトゥーラに聞くことにした。一応コイツは本戦に出場した経験がある奴だからね。ちょっとやらかして失格になって出禁になったらしいけど。
ただまあ、電撃の余韻に涎垂らしながらビクビク震えつつうっとりしてる奴だからなぁ……参考になるかはちょっと怪しいですね……。