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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第7章:獣魔最強決定戦
162/527

メスガキ小悪魔

⋇残酷描写あり






 いやぁ、予選はなかなか面白かったね。ミニスが思いのほか奮闘して何度も僕の不意を突いてきたし、たぶん僕の作戦を散々メタってきたんだろうけど、あそこまでやれるとはびっくりだよ。ご褒美に一発殴らせちゃうくらいには満足だし、心なしか成長を喜んでる自分もいるね。これが父性愛ってやつ?

 何にせよ予選を突破した僕は、その場で司会サキュバスから軽いインタビューを受けたよ。聞こえてた実況の内容から何となく分かるけど、予選の段階じゃ司会は選手の個人名とかいちいち把握してないみたいだしね。まあ選手は二千人以上いるし無理もないか。

 というわけで、不審に思われない程度にインタビューに答えたよ。インタビューってことで一部ちょっと変な答え方しちゃった気がするけど……まあ、多少はね?


「よーし、本戦出場決定。予選はあと二日続くし、今日はもう宿に帰ろうかな」


 そんなわけで、インタビューを終えた僕はコロシアム内部に戻った。選手と運営の人以外通っちゃいけない関係者通路を通って客席に戻る道すがら、本日の予定を考える。

 予選はあと二日、それも昼の部と夜の部があるんだよね。どうにもヴァンパイアは日の光が苦手らしいから、そっちは夜の部でやってるっぽい。ちょっとヴァンパイアへの対応が過剰じゃない? いや、まあ予選始める前に日の光を浴びて灰になられても困るか。

 

「……ふざけやがって。後で覚えてろよ、テメェ」

「卑怯な真似しやがって。絶対後悔させてやるからな」


 なんてことを考えながら歩いてると、通路の先に二人の野郎が立ってた。何やらクッソ悔しそうに僕を睨んでくる辺り、たぶん場外でギャーギャー喚いてた奴らかな? 


「んー、負け犬の遠吠えが聞こえるなー? 小娘は生き残って奮闘したのに、自分たちは手も足も出ずに負けたから悔しいのかなー?」

「て、テメェ!」

「ぶっ殺してやるっ!!」


 だいぶ沸点が低いみたいで、ちょっと煽ったら武器を取り出して飛び掛かってきたよ。別に僕は事実しか言ってないのになぁ。僕の作戦をメタったとはいえミニスが滅茶苦茶頑張ってたのに、お前らはあっさり場外に落ちたじゃん?

 しかし、うーん……これどうしようか。そもそも試合外の私闘ってオッケーなのかな? 向こうが殺そうとしてきたことに対する正当防衛だから、一般的には殺しても構わないはずだけど、場所が場所だからなぁ……。


「――おや?」


 どうすべきか頭を悩ませてると、通路の曲がり角から小柄な影が飛び出してきた。向こうの増援かと思ったらどうやら違うみたいで、小柄な影は両手に握った短剣を閃かせ、野郎二人の首を刎ね飛ばした。


「え……?」

「あ……?」


 首を刎ねられたことに気が付いてなかったのか、馬鹿っぽい声を出しながら野郎たちの首が床に落ちる。同時に残された胴体の首から噴水みたいな鮮血が狭い通路の天井まで噴き上がって、わりとスプラッタな光景になったよ。

 清掃さんごめんね。でもこれは僕のせいじゃないからね。


「――アハッ! 危ない所だったね、おにーさん! 雑魚共に絡まれて可哀そーだったから、ついつい助けちゃった!」


 二人の野郎の首を刎ねた小柄な人影――もとい、ロリ悪魔っ子が元気いっぱいに話しかけてきた。

 そう、首を刎ねたのはこの悪魔っ子だから僕は悪くない。というかこの悪魔っ子、凄いメスガキ小悪魔みを感じる……髪も瞳も薄い紫色だし、何か人を食ったような感じの笑みを浮かべてるし。それに何より、この小悪魔は角も尻尾も翼も全部揃ってる。自分が完全で素晴らしい存在だと思ってそうだよね。

 ただまあ、スタイルは普通にロリらしく貧相まな板洗濯板って感じだよ。やっぱ見た目ロリなのに出る所出てるリアとかリリスがおかしいだけだよね、アレ……。


「……ちょっと魔力量的に厳しかったから助かったよ。ありがとう。ところで君は誰?」

「あっれー? おにーさん、私の事知らないのー? もー、そんなんじゃ本戦苦労しちゃうよー?」


 とりあえず魔法主体であることを演じつつ、お礼を口にしておく。

 でも何だろうな。若干腹が立つ。メスガキだからか、口調の端々から見下すような雰囲気を感じるんだよね。


「いやぁ、今回が初出場だからね。それに田舎から出てきたから都会の事には疎くて」

「あー、それじゃあしょうがないねー。うん、私はルア! この闘技大会の本戦常連、って言えば凄さは田舎者のおにーさんでも分かるんじゃない?」


 メスガキ小悪魔ことルアはニヤリと笑いながら、『田舎者』の部分を妙に強調して口を開く。

 うん。やっぱこいつ僕を下に見てるな。舐めやがって……男ってもんを分からせてやろうか? クソガキがぁ?


「へぇ、それは凄い。こんなに可愛い女の子が本戦常連だなんてびっくりだよ」

「そうでしょー? それにしても、私もびっくりだなー。リング全体っていうすっごい広範囲の魔法を何度も使う人が一体どんな人かと思ったら、まさかこんな――おにーさんだなんて?」


 途中で一瞬言葉を切って、僕を上から下まで眺めてから口にしてくる。

 その生意気で不躾な視線が僕の背中やケツの方に行ったのもちゃんと見てるからな、クソガキ。言いたいことがあるならハッキリ言えよ。あぁん?


「あはは。とりあえず誉め言葉として受け取っておくよ。それで、君は今回も本戦出場決定してるの?」

「ううん、まだだよ。というか次の試合に出場するから、おにーさんのことを見るために早めに来たんだ」

「ふーん、そうなんだ……お気に召した?」

「うん! おにーさんはとっても面白いね?」


 ニヤニヤとクソ生意気な笑みを浮かべて、ルアは頷く。

 コイツ、絶対悪い意味で面白いって思ってるだろ。しかも隠す気も無く、意図的に匂わせてる感じだし。僕を見下して蔑んで楽しいかぁ、クソガキがぁ? お仕置きしてやろうか? 


「………………」

「………………」


 そして表面上は人当たりの良い笑顔を浮かべてる僕も、内心では自分の事をクソみたいに思ってるってルアも気付いてるみたい。そのまましばらく無言で笑顔で睨み合ったよ。ここがリングの上ならしばき回してるのになぁ、残念……。


「……じゃあ、僕はもう行くよ。試合頑張ってね、ルア?」

「うん! そっちも本戦勝ち抜けるように頑張ってね、ニカケのおにーさん!」

「……ニカケ?」


 表面上はお互いに鼓舞しつつ、通路をすれ違っていく。最後に聞き覚えの無い言葉をかけられたから思わず振り返ったけど、その時にはもうルアの背が声をかけるのが面倒になるくらい遠ざかってた。

 うーん、『ニカケ』って一体何だろうね? まあ後でトゥーラ辺りにでも聞いてみるか。どうせいい意味じゃなさそうだが。


「……で、この死体どうしようかな。まあ僕は手を下してないし、放置で良いか」


 ちなみに転がった生首二つと胴体二つは放置の方向で決定したよ。別に片付けてやる義理も無ければ埋めてやる義理も無いしね。

 でも通路のど真ん中にあるのは邪魔だから、他の人のために端に寄せておこう。僕って何て気が利くんだろうね?

 そんなわけで僕は生首と胴体を通路の端に寄せて、空間収納から適当な用紙とペンを取り出して、『負け犬』と『敗北者』って書いた紙を生首の額にペタリと張っておいたよ。これで少しはスプラッタな光景の衝撃も薄れるんじゃない?

 軽い悪戯を終えた僕は、悠々とその場を後にしました。そのまま関係者通路の出口まで向かったんだけど……出口の前に誰かいるなぁ? また何か変な奴か?


「――本戦突破おめでと~、主よ~! 主の雄姿はたっぷりと見せてもらったよ~!」


 とか思ってたら、変な奴じゃなくて変態(トゥーラ)だった。余計に性質が悪いって感じだね。

 でも滅茶苦茶嬉しそうに笑ってて、尻尾をブンブン振ってるのが可愛いって思っちゃうんだよなぁ。熱く愛し合う関係になった弊害かなぁ?


「雄姿とか言うほどまともに戦ってないけどね。ていうかわざわざここで待ってたのか、お前」

「もちろん! 私は忠誠心のある奴隷なのだから、主を迎えに馳せ参じるのは当然だろ~?」

「お前ドのつく変態なのに有能だからちょっと腹が立つんだよなぁ……」


 ドヤ顔で言い放つトゥーラからドリンクのカップを受け取り、軽く呷る。味わい的にスポーツドリンクに近い感じのものだね。何気にコイツ、ドリンクだけじゃなくてタオルも持ってきてくれてるんだよなぁ。別に汗はかいてないから今は必要ないけど、妙に気が利くっていうかね……。


「そうなのか~い? 私に腹が立つというのなら~、是非ともお仕置きをして欲しい――あばばばばっ!」


 何かムカついたから指を鳴らし、遠慮なく首輪の電撃刑に処す。最初の時よりも出力を三倍くらい上げてるから、さしものトゥーラも床に崩れ落ちてビクンビクンしてるよ。それでも手にしたタオルを汚さないよう高く掲げてるあたり、忠誠心が高いって申告に嘘偽りは無さそう。


「あっ、そうそう。さっき生意気なメスガキ小悪魔とお話したんだけどさ、何か最後に良く分かんない事言われたんだよね。『ニカケ』とか何とか。お前どういう意味か知ってる?」


 たぶん蔑称だってことは分かる。でもどの程度かは分かんないし、知ってたら良いなくらいの軽い気持ちで尋ねてみた。 


「……本当に、そう言われたのかい? 主?」


 そしたら電撃の余韻にびくびく痙攣しながら振られてたトゥーラの尻尾が、ピタリと動きを止めたよ。口調も何か冷たい感じになってるし。どうにもこれは相当な蔑称らしいね……。


「うん。去り際にニカケのおにーさんって言われたんだ――って、ちょいちょいちょい、ちょっと殺意昂らせすぎ」

「おっと~、申し訳ない。ついうっかりだ~」


 通りすがりの選手が反射的に身構えるくらいの殺意を放ち始めたトゥーラを諫めて、その手を取って立ち上がらせる。それだけのことなのにトゥーラはいつもの調子に戻って、尻尾をブンブン振り始めたよ。相変わらずチョロすぎん?


「お前がそんな反応するってことは、やっぱり極めて侮辱的な言葉だったりする?」

「うん、相当侮辱的な蔑称だよ~。ニカケというのは、本来三つあるべきものが二つも欠けている悪魔を指しているのさ~。言われたらぶん殴っても許されるくらいには差別的な言葉だね~。主はちゃんとそのメスガキ小悪魔を分からせたのかな~?」

「いや、そこまでの蔑称だとは知らなかったし。それに僕はそもそもニカケでも足らないしね……」


 今の僕は角が生えた悪魔の姿。でも角だけの悪魔の姿はあくまでも偽装の姿で、本物じゃない。だからニカケ呼ばわりされてもそこまで怒りは沸いて来ないな。そんな蔑称を使うほど僕を見下してるのはクッソ腹が立つけどね?


「あー、そういえばそうだったね~」

「まあそれはそれとして、あのメスガキは分からせるけどね? この僕をコケにしてくれたんだから当然じゃん?」

「さすが主~! 頑張ってくれ~、応援してるよ~!」


 メスガキを絶対分からせることを決意した僕に対して、トゥーラはパチパチと拍手をしてくる。

 幾ら何でもボコボコにしてMに目覚めたりするのはコイツくらいだから、死ぬ一歩手前まで痛めつければ分からせられるでしょ。あー、でも試合でそういう拷問行為は駄目なんだっけ? うーん、どうするかなー。いっそプライベートで襲うのもありか……?





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