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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第7章:獣魔最強決定戦
159/527

闘技大会、開幕

⋇残酷描写あり

⋇暴力描写あり

⋇胸糞描写あり






 闘技大会まであと七日。特に差し迫った予定も無いから、僕はだらだらと時を過ごした。

 具体的にはこの街の奴隷市場を巡って、良さそうな奴隷がいないか探してみたり。せっかく冒険者になったんだから、皆で冒険者のお仕事をこなしてみたり。あとはパワフルでクレイジーな獣共を相手に、毎晩ベッドでプロレスしたり……まあ、そこそこ充実した時間を過ごせたね。

 他の奴らも思い思いに過ごしてたみたいで、大体いつも僕の傍にいたのはリアくらいかな。何だかんだで闘技大会に参加するミニスは頑張って修行してるみたいだし、キラはキラで強くなるために修行してるみたいだし、トゥーラは僕の役に立つために修行を――いや、修行ばっかりだなお前ら。いつから僕の仲間たちはそんなストイックな集団になってしまったんだ? とはいえ僕も闘技大会三位入賞を目指してるから、人の事は言えないんだが?

 まあそんなわけで、皆思い思いに過ごして一週間。ついに闘技大会の日がやってきたんだよ。


『レディィィィィィスエェェェンド、ジェントルメェェェェェン!!』


 やっぱり円形闘技場だったコロシアムの中に、司会サキュバスの透き通るような声が響き渡る。マイクみたいなもん手に持ってる辺り、アレは拡声器的な魔道具なんだろうね。

 そう、司会がいることから分かる通り、ここはすでにコロシアムの中だよ。もう人も熱気も本当に凄いわ。何十段もある円形の観客席に、所狭しと人々が詰めてるからね。司会サキュバスが突っ立ってるリングの広さも相当なものだし、これはちょっと舐めてたかもしれん。コミケに勝るとも劣らないレベルだ……。


『さあ、ついにこの時がやって参りました! 四年に一度の力と力のぶつかり合い! 血沸き肉躍る暴力の祭典! 第二百八十五回、獣魔最強決定戦、ここに開幕です!』

「うおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「待ってましたああぁぁぁぁぁっ!!」

「ひゃっほおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 開幕が宣言されて更にヒートアップしたのか、そこかしこから興奮に弾けた感じの声が轟く。席を立ってジャンプする奴もいれば、雄たけびを上げる奴もいるし、思わず耳を塞ぐくらいにはうるさかったよ。


「うるさいなぁ。ノリが蛮族じゃんか、これ」

「ハハハ、みんな強さを誇示するのが大好きだからね~。聖人族はどうか知らないが、私たち魔獣族は強さへの飽くなき欲望と憧れがあるんだよ~」


 などと冷静に解説するのは隣に座るトゥーラ。でも僕と同じくうるさく感じてるみたいで、さりげなく犬耳を伏せてるぞ。まあ僕にピッタリくっついてるせいか、尻尾はブンブン振られてるんだけどね?


「ふーん。まあ四年に一度の催しだし、みんなが楽しみにしてるのは分からんでもない」


 などと言いつつ、僕はトゥーラとは反対側の隣を見る。そこには近い順にキラ、リア、ミニスが座ってるんだけど……。


「あわわわ……どうしよう、こんな大勢の人の前で戦うなんて……!」

「ミニスちゃん、大丈夫ー? ポップコーン食べるー?」


 ミニスは人の多さに怖気づいたのかガチガチに緊張してるし、リアは周りの熱気なんて感じないとばかりに、ジュース片手にポップコーン摘まんでるよ。緊張してるミニスは仕方ないとして、リアはせめて戦いが始まってから飲み食いしような?

 というか司会がサキュバスなのに、思ったよりも闇を漂わせて無いな。昨晩サキュバスを拷問させてあげたせいかな?


「………………」


 なお、キラちゃんは僕の右肩に寄りかかる形でお昼寝中。猫は夜行性だし隙あらば昼寝するような生き物だから、まあこれは仕方ない事かな。さすがに周りがうるさいのか、猫耳がピクピク動いてるけど。

 それに最近のキラは起きてる時、修行してるか人を殺してるか僕とエッチしてるかのどれかだからね。きっと疲れてるんでしょ。とりあえず予選が始まるまでは寝かしといてやるかぁ。


『さて、まずはこの大会のルール説明から行きましょう! 今回が初参加の方もいらっしゃいますからね! ですが、それでは今まで何度も観戦や参加をしていらっしゃる方々は退屈でしょう! なのでもちろん、今回も余興を用意しておりますよー!? というわけで、余興係たちの入場でーす!』

「おん? 余興係?」


 そろっとキラの服を捲って胸の谷間を覗こうとしてると、気になる単語が聞こえてきてリングに目を向ける。見れば僕が座ってるのとは反対側にある観客席の真下、そこにある重厚な金属扉がゆっくりと開いてた。見れば右手側と左手側の観客席の真下にも扉があるし、もしかしたら四方に扉があるのかもね。

 で、その扉から現れたのは……ああ、うん。ボロ切れを身に纏って貧相な武器を携えた、人間や天使の集団。安定の剣闘奴隷だね。ざっと百人くらいはいるんじゃないかな。

 でも街で見た奴らとは違って、全然幸せそうじゃない。遠目から見ても皆目が血走ってる感じだし、命を賭けて決戦に臨む勇者みたいな気迫を感じるよ。


『これらは通常の奴隷たちとは異なり、過酷な戦闘訓練と地獄のような拷問の日々を過ごした、この日のためだけに育て上げられた剣闘奴隷たちです! 彼らは今からこの場で奴隷同士殺しあい、生き残った五人だけが解放されることになっています! きっと死に物狂いで戦い、私たちを満足させてくれることでしょう!』

「うわぁ……」

「えぇ……」


 とんでもない扱いにさしもの僕もドン引きで、もちろんミニスも同じ反応をしてる。

 そりゃあ地獄のような日々から解放されるためなら、死に物狂いで戦うだろうよ。それが例え魔獣族の娯楽扱いだろうともね。よくもまあこんな惨たらしい見世物が許されるもんだ。いや、僕が元いた世界でも昔はこういうのあったんだったか?


『では奴隷共、殺しあえー!!』

「うあああぁぁぁあぁぁっ!!」

「死ねええぇぇぇぇぇぇっ!!」


 司会サキュバスがリングから退避しつつ命じると、奴隷たちは鬼気迫る表情で殺しあいを始めた。使用を禁止されてるのか魔法は一切使われてないけど、そんなことが気にならなくなるくらいに凄惨で悲惨な命のやり取りだったよ。

 片腕を叩き切られても戦意は毛ほども衰えず、むしろ噴き出す鮮血を目潰しに使う。武器を失えば近くに落ちてる奴隷の腕や足を拾って武器にする。四肢が使えなくなれば惨めに這いずり回り、無様に噛みついてでも生き残ろうとする。それこそ石に噛り付いてでも生き残るっていう、燃え上がるような強い意志を感じるよ。

 嘘みたいだろ? これただの余興なんだぜ?


「……これが余興ってマジ? 魔獣族クソ過ぎない?」

「何なの、これ……? 同族でも頭おかしいって思うわよ?」

「ハハハ、返す言葉もないね~。ちなみに五人生き残ったとしても、結局彼らは自由にはなれないよ~。解放と言ってもこの世から解放されるだけだからね~」

「うん、知ってた。それくらいはやると思ったよ」

「本当に、酷い……何でこんなことができるわけ……?」


 生き残るために同族を殺し、無様に醜く足掻いてるのに、どっちにしろ殺されるとかもう涙を禁じ得ないね。まあ『許せない! 僕が助けるぞ!』とは毛ほども思わないけど。可哀そうって言っても、助けてあげたいとは露ほども思わないし。


「聖人族の人たち可哀そー。もぐもぐ……」

「…………んがっ……」


 なお、多感な僕らと違ってリアとキラは相変わらず。ポップコーンをもぐもぐ、僕の右肩ですやすやだよ。一応リアは同情を示してるような気がしなくもないが……。


『さあ、それではルール説明を始めて行きましょう! これから行われる予選の内容は百人規模のバトルロイヤルです! 何分今回の参加者は二千三百七十五名もいらっしゃいますからね! 大幅にふるいにかけさせて頂きますよ!』 

「うわ、結構いるな。その中で三位以上にならないといけないのかぁ……」

「まあ主なら大丈夫さ~。私が長い年月をかけて修得した技術が、主の剣となり盾となってくれるからね~。いや~、奴隷冥利に尽きるな~?」


 僕の左隣で身体をクネクネさせるトゥーラ。

 確かにコイツからコピーした技術があれば、大概の敵はどうにでもなりそうなんだよなぁ。魔法を使わない単なる技術だから、幾ら使っても不審に思われたりはしないし。


「無理……棄権したい……」

「頑張って、ミニスちゃん! 応援してるよ!」


 参加者の数に気圧されたのか、ミニスが泣き言を零してリアに元気づけられてる。

 僕を殴り飛ばしたいならこの程度で棄権を考えるんじゃないよ。参加者全員ぶっ飛ばすことすら考慮に入れろ。


『さて、バトルロイヤルに関してですが注意点がございます! 一つは敗北条件ですね! リングから出て、地面に身体の一部が付いてしまった場合は敗北となります! それから気絶・死亡した場合も敗北になりますからご注意くださいね! まあ死亡した場合は敗北以前の問題がありますけどね!』


 何故か最後の部分で観客の大半が『ハハハハ!』と笑う。

 まあ最強を決めるための大会なのに死亡するとか、恥知らずも良い所だって思ってるんじゃない? あるいは今のは笑う所だったんだろうか。


「あっ、そうなの? じゃあいざとなったら自分でリングから飛び降りれば……」

「絶対それは阻止してやるからなぁ? 自力で場外に行けると思うなよ?」

「ヒッ……!」


 何やら卑怯な事を考えてたミニスに注意しておく。どうせ負けるなら精一杯戦ってから散ろうね?

 ちなみに僕とミニスは奇跡的に予選第四試合の出場者で、同じブロックだったりする。予選で当たらなかったら僕を殴るためには本戦に出場するしかないからね。なかなか運が良いじゃないか。


『二つ目は制限時間です! たかが予選に時間をたっぷり使うのは無駄の極みなので、制限時間は三十分とさせて頂きます! その三十分の間に、自分以外の全ての参加者を打ち倒し、生き残ってください! そう! 予選を突破できるのは百人中一人だけです! なので自分以外は全て倒すべき敵です! 難しく考える必要はありません! とにかく倒して生き残ってください!』


 なるほど。正にバトルロイヤルだね。三十分以内に自分以外の全員を倒せばいいとか、脳筋にもほどがあるぞ。でも参加者が二千人を軽く超えてるし仕方ないか。むしろ全員にチャンスが与えられる分、まだ有情なまである。


『それ以外は特に小難しい決まりはございません! 協力も同盟も裏切りもご自由に! 自慢の武器や拳を用い、鍛え上げた魔法や武術で以て、存分に強さを発揮してください! 観客席には防御魔法が展開されていますので、流れ弾を気にする必要もありませんよ! でも、だからと言って防御魔法が破れるか試すために観客席を攻撃するのはやめてくださいね! マナー違反ですよ!』

「あ、ダメなの? 残念」


 ちぇっ。『防御魔法が展開されていますので』の時点で、もう試す気満々だったんだけどなぁ。マナー違反とまで言われては試すに試せないじゃないか。じゃあもう流れ弾を装って試すしかないのでは……?


「まあこう言っても絶対に試そうとする奴がいるんだがね~? あっ、主は絶対に試さないでくれよ~? たぶん主なら破れてしまうから~」

「そっか、じゃあやめとく。注意されてるんなら破ったら罰せられるかもだしね」


 試す気満々だったけど、トゥーラが指摘してきたからやめることにした。コイツがわざわざ注意してくるってことは、破ると何かペナルティありそうだからね。破れるって分かってるなら試す必要は無いかな。


『これで予選の説明は終わりです! あー、でもまだ余興が続いてますねー!? なので観客席の皆さん、さっさと決着がつくように力を貸してあげてください!』

「任せろー! ウィンド・ブレード!」

「ちんたらやってんじゃねぇぞ! ファイア・ボール!」

「オラオラ、精々逃げ惑えや! ロック・スピア!」


 司会サキュバスが声を上げると、観客席から色んな魔法が雨あられとリングに降り注ぐ。

 風の刃が奴隷たちの身体を切り刻み、火の玉が奴隷たちの身体を焼き焦がし、石の槍が奴隷たちの身体を刺し貫く。もちろんここで挙げたのは一部だけで、実際には数えるのも馬鹿らしくなるくらい多種多様な魔法がリング上の奴隷たちを襲ってる。正直余波で破壊されたリングの粉塵が凄すぎて、もうどうなってるのか分からん。

 それでも観客たちは笑いながら粉塵の中に魔法を叩き込むんだから手に負えないね。これ僕とアイツら、どっちが狂ってると思う?


「これは酷い」

「……もうさ、皆纏めて滅ぼした方が良いんじゃない? きっとその方が良い世界が出来上がるわよ?」


 これにはさすがの僕も呆れたし、ついにミニスも過激派みたいな意見を出してきた。

 何が酷いって、ミニスの意見は何ら間違ってないんだよね。だってこんな悪趣味の極みみたいなことする奴らが生きてたら、それだけで美しい世界を汚すことになるでしょ? むしろ殲滅は当然だよね?


「僕もその意見には賛成だよ。でも女神様に怒られちゃうから、絶滅させるのはちょっとね……」

「ああ……じゃあ、仕方ないわね……」


 でも僕らは敬虔な女神様の信徒だから、過激極まる行動はNG。女神様がプンプン怒っちゃうからね。でもこれ、わりとマジで滅尽滅相した方が良いのでは……?




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