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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第6章:童貞卒業の時
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再度の決闘

 ⋇今回はかなり短め



「さて、ついたよ~。ここが、私がよく使っている鍛錬用の場所さ~」


 腕にギュッと抱き着いてくるトゥーラに連れられ、辿り着いたのは街の外の森の中。その一角に存在する、円形に開けた空間。草木が一切存在しない硬い岩盤のみの場所で、到底自然に出来たものとは思えなかった。


「良い感じに開けた場所だね。しかも雑草すら生えてないし」

「元は花畑だったんだが、私が激しい鍛錬で何度も何度も踏みにじってしまったせいか、すっかり大地が死んでしまってね~。たぶん相当な年月が経過しないと、草木一本生えてこないよ~?」

「まあ別に良いじゃん? この世界はわりと自然が有り余ってるっぽいし」


 そう返しつつしゃがんで地面をじっくり観察すると、見渡すかぎりに同じ靴跡がうっすら刻まれてる。それも何重にも重なる形で。これだけやってたら確かに雑草すら生えてこなさそう。


「そんなことより――契約内容の再確認だ」


 自然環境にそこまで関心は無いから、立ち上がってもっと重要なことを話題に出す。

 ここに来たのはトゥーラの鍛錬場所を見たかったからってわけじゃない。トゥーラが身に着けた拳の極みとも言える技術を、僕にコピーするための条件を満たすためだ。コイツ恥知らずにも条件を出してきやがったからね。

 そしてその条件っていうのが、これまた不穏なもので――


「そのいち~、模擬戦が終了するまでお互いに魔法を使用できない~。そのに~、模擬戦の終了条件はどちらかが降参を宣言すること~、あるいはどちらかが気絶ないし死亡すること~」


 自分と再度の模擬戦を行うこと、これがトゥーラが提示してきた条件。

 うん、分かってる。怪しさ抜群だよね? だって一回目では僕の喉を潰して降参を封じて、ひたすらボコボコにしようと画策してたドSなんだよ? そんな奴がまた魔法を封じて模擬戦をしようって言ってきたら、そりゃ警戒するよね? 魔法で蘇生から何からできるせいで若干危機意識が欠けてる僕でも、怪しさ抜群で警戒せざるを得ないよ。

 ただそれでも、僕がこの条件を受け入れた理由っていうのが――


「そのさ~ん、主クルスが勝利した場合、私トルトゥーラは主の童貞を狙うことを潔く諦める~。そのよ~ん、私トルトゥーラが勝利した場合、主クルスは私との子作りを拒否できず、抵抗も逃走もできない~……という条件で、よろしいかな~?」

「もちろん。いい加減ウザったいからここで諦めさせてあげるよ」


 この模擬戦――いや、決闘に勝利すれば、トゥーラが僕の童貞を諦めることが契約で履行されるから。ただ僕が負けた場合は……まあ、何と言うか、その時はこっちが諦めなきゃいけない感じ? ハイリスクハイリターン的な?

 でもどっちにしろ、僕にはほとんどメリットしかないんだよね。だってこの決闘を行えば勝敗に関わらず、後でトゥーラの研鑽してきた武術をコピーさせてくれることになってる。その上で、僕が勝てば童貞を狙われない。仮に負けても僕の初めての相手がSM変態ワンコになるだけで、性癖を度外視すればトゥーラは普通に美少女だから言うほど悪くはない。

 要するにどう転んでもそこまで悪い事ではないんだよね。そもそも僕が負ける確率はかなり低いし。隠し技である時間操作は魔法じゃないから、この決闘でも問題なく使えるからね。ただ一つ気になることがあるとすれば――


「でも、どうして僕の隠し技を禁止しないの? お前はもう僕の隠し技が時間操作だってことは知ってるじゃん?」


 すでに隠し技のことを知ってるのに、何故禁止しないのか。

 うん、実はキラとトゥーラにはバレたんだよね。いや、バレたっていうか、カマをかけられて見事に引っかかったていうか……まあ、ブラフを考える時点である程度は正解に辿り着いてたんだろうね。僕も模擬戦の時にちょっと激情に駆られて見せすぎてた感は否めないし、魔法が禁止されてる模擬戦中だったって状況を踏まえて考えれば、多少回る頭があれば真実に辿り着くのは不思議じゃないか。


「ハハハ、主は何を言っているんだい~? 幾ら主といえど、肉体は貧弱極まる人間のものだろ~? 時を操るという絶技がなければ、私と勝負になるはずがないじゃないか~」

「なんだぁ、テメェ……?」


 苦笑しながらもムカつく口調で煽ってくるトゥーラに、思わずちょっとキレそうになる。

 なるほどぉ? 僕に対するハンデというわけですかぁ? 一回僕にボコボコにされた癖に、随分と余裕ですねぇ?

 いや、あるいは一度ボコボコにされたからこそ、攻略法が見えたのかもしれないな。仮にも時間操作という答えに辿り着いた相手だ。何の策も無くこんな圧倒的なアドバンテージを与えてくるわけがないか。

 それにトゥーラはたぶん間違った情報で戦力換算してるから、自信満々で僕に勝てると思ってる節がある。僕だってブラフに引っかかってそのまま泣き寝入りしたわけじゃないもんね。実は騙されたことが悔しかったから、能力に制限があるってそれっぽい嘘をついたんだよ。具体的には長時間の連続使用は不可、操作の最大倍率は五十倍まで、っていう感じでね。実際には連続使用なんて屁でもないし、倍率に関しては理論上無限だと思うけど。


「フフフ~。悔しかったら主の力を見せてみたまえ~?」


 明らかに僕を挑発しつつ、トゥーラは両腕に真っ赤な手甲を装着する。

 何が悔しいって言ってることは全く間違ってないってことだよ。武術云々を抜きにしても、トゥーラは身体能力に優れる獣人。僕はひ弱極まる人族。素のままじゃ相手にならないのは明白だよ。たぶん僕はミニスにも勝てないだろうしね。


「上等。完膚なきまでに叩きのめして、二度と僕の童貞を狙えないようにしてやるよ。自動蘇生オート・リザレクション再生(リジェネレイション)契約(コントラクト)!」


 死んだら自動で蘇生と治療が行われる魔法をお互いにかけてから、契約の魔法を行使して三度条件を確認しながら契約を交わした。

 五百倍くらいに時間を加速して、一瞬でケリをつけるのは簡単だ。でもそれじゃあ素の僕がクソザコナメクジっていう事実の裏付けになるだけで、何ら見返すことはできない。ここはひとまず五十――いや、三十倍くらいで開始して、状況を見て少しずつ上下させていくのが無難かな。となると武器は回転率や取り回しを考えて、やっぱり短剣の二刀流にするべきか。


「――これで準備は完了したね~? ではでは、まずはお互いに距離を取ろうじゃないか~」


 契約を終えて、トゥーラはこの開けた空間の外縁部へと背を見せて歩いてく。

 その背中に不意打ちを仕掛けたくなったけど、残念ながら決闘はまだ始まってないから仕掛ける意味が無いね。だから僕も反対側の外縁部に移動しつつ、空間収納から短剣を取り出した。外縁に立ち並ぶ樹が良い感じに闘技場っぽく仕立ててくれてるじゃん?


「さあ、覚悟は良いかな~? 本気で行かせてもらうよ、主ぃ~?」

「それはこっちの台詞だね。あの時は殺さないように気を付けてたけど、今回は一切遠慮なくやらせてもらうよ?」


 お互いに睨み合いながら、それぞれの構えを取る。

 実際今回は遠慮なんてしてたらやられかねない。そもそも僕がクソザコじゃないことを証明するために、加速倍率もギリギリで行く予定なんだ。その時点でもう結構な綱渡りだっていうのに、遠慮だの何だのするのは間違いなく自殺行為だよ。だから今回は本気で行く。


「それじゃあ、決闘――」

「――開始だ~!」


 両者の同意が為され、決闘が始まり、契約が効力を発揮する。

 さて、絶対に負けられない戦いの始まりだ。僕の童貞は絶対お前みたいな変態には渡さないからな! リアとイチャイチャラブラブな初々しいエッチをするために取ってるんだからな!

 








⋇さすがにちょっと短すぎたので、お茶を濁すための情報を幾つか


 ・ミニスからの好感度は、女神様 >>> ハニエル >>> リア > レーン >>>(越えられない壁)>>> クルス > キラ > トゥーラ という感じ

 ・ミニスはその場のノリで出したキャラ。本来は存在しなかったし、何ならド田舎でのお話も無かった。本来はただの襲撃者Aとして雑に処理される予定でした

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